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【獣医師監修】犬の去勢手術は必ず必要?費用や術後ケアなどを解説

オス犬を迎える際に悩むのが、去勢手術を受けさせるかどうかですよね。そこで今回は、去勢手術の必要性からメリット・デメリット、費用などの基本情報、術後のケア方法や注意点まで、去勢手術に関する飼い主さんたちの意見や体験談とあわせてご紹介します。

オス犬には必ず去勢手術が必要なの?飼い主さんの意見をご紹介

お外でお昼寝タイムの柴
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
健康なオス犬の体にメスを入れて、生殖器官を取り除く去勢手術。愛犬の負担を考えると、受けるべきなのか思い悩んでしまう飼い主さんは多いはず。そもそも、オス犬には必ず去勢手術を受けさせる必要はあるのでしょうか?手術を受けるべきか否かについて、飼い主さんたちの意見を見てみましょう。

愛犬に去勢手術を受けさせた理由・キッカケ

オス犬は去勢したほうがよいと考えている人でも、実際に手術をしようと決断するのは難しいもの。実際に愛犬に去勢手術を受けさせた飼い主さんは、以下のような理由やキッカケで手術にふみきったそうです。


  • 発情期のメスに激しく興奮する未去勢のオスを目撃したことで、愛犬や周囲が安心して暮らすには去勢が必要と家族全員で決断し、手術を受けました。(トイ・プードル)

  • 犬の本能的なものを奪うのはどうなのかと悩みましたが、室内へのマーキングやマウンティングがひどかったため手術を決意。術後はどちらもおさまりました。(ポメラニアン)

  • 先代犬が避妊手術を受けたおかげで大病もせず長生きしたので、今の愛犬たちも長生きしてもらいたいと避妊・去勢手術を受けました。(ウェルシュ・コーギー・ペンブローク)

  • 先代犬が未去勢で前立腺の病気になった経験があったため、新しく迎えたオス犬は迷わず去勢手術をしました。(パピヨン)

愛犬に去勢手術を受けさせなかった理由

愛犬に去勢手術を受けさせた飼い主さんもいれば、去勢手術は必要ないと受けさせなかった飼い主さんもいます。去勢手術を受けさせないと決断した飼い主さんは、以下の理由で手術を見送ったそうです。


  • 去勢手術をするべきか獣医師に相談したところ、「1才未満で去勢すると皮膚トラブルを起こすかも」といわれ見送りました。今は子犬期にあった甘噛みやマーキングも指示を出せばやめるので、このまま未去勢のままでいようかと考えています。(ボストン・テリア)

  • 過去に飼っていた犬も未去勢で、外飼いにしているわけでもないので去勢する必要性を感じていません。手術には全身麻酔をする必要があるのも受ける気にならない理由です。(シー・ズー)

  • 愛犬が停留睾丸なので獣医師には手術をすすめられましたが、精巣の位置によっては大きな手術になるといわれ、取り返しがつかないことになっても嫌なので去勢手術は受けませんでした。(ヨークシャー・テリア)

手術が必要かどうかは飼い主さんの判断次第

去勢手術に関して飼い主さんがさまざまな選択をしているように、オス犬は必ず去勢手術を受けなければならないというわけではありません。とはいえ、去勢手術は繁殖能力をなくすために行う手術なので、受けない場合は発情期を迎えたメスを追いかけるといった交尾行動は続くと考えたほうがよいでしょう。

去勢手術にはどんなメリット・デメリットがあるのか、将来どんなリスクを避けられるのかなどをよく理解したうえで、愛犬に去勢手術を受けさせるかどうか検討してみてください。

去勢手術を受けるメリット・デメリットは?

紙をくわえる犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
では、去勢手術を受けると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

去勢手術を受けるメリット

去勢手術を受けることで得られるメリットとして、以下の4つがあげられます。

メリット1.発情に伴うストレスの軽減

オス犬には定期的な発情サイクルはありませんが、発情中(ヒート)のメス犬のニオイに性的興奮を起こし、発情中のメス犬を追いかける、マウンティングするなどの性行動を行うことがあります。

繁殖させるなら問題ありませんが、発情しているのにメス犬と交尾できないという状態は、オス犬にとって強いストレスとなってしまいます。去勢には性ホルモン(男性ホルモン)を減らし、発情したメス犬に性的興奮を起こさせなくする効果があるため、交尾できないことによるストレスを回避することができます。

メリット2.マーキング・マウンティングの予防・軽減

個体差があるため一概にはいえませんが、前述した性ホルモン減少の影響で、オス犬特有のマーキングや足上げオシッコ、マウンティングなどの問題行動が予防・軽減できるといわれています。

ただし、すでにマーキングを行っている犬は、その行動を学習してしまっているため、去勢手術のタイミングによってはマーキンググセが治まらない可能性があります。また、マウンティングは遊びやコミュニケーションの一種として行われることもあるため、メス犬に発情しなくなったとしても、行う回数が0になるわけではないと覚えておきましょう。

メリット3.性ホルモンの影響による攻撃性の改善

こちらも個体差がありますが、性ホルモンの減少やストレス軽減の影響で性格が穏やかになり、オス犬特有の攻撃性が改善するといわれています。ただし、攻撃性については犬の性格によるところも大きく、去勢することで必ずしも攻撃性がなくなるわけではないので注意してください。

メリット4.病気の予防

去勢手術を受けることによって、以下のような生殖器や性ホルモンに関係する病気を予防できるといわれています。


  • 精巣腫瘍

  • 前立腺肥大

  • 会陰ヘルニア

  • 肛門周囲腺腫

  • 精巣炎 など



ちなみに、生後6カ月を過ぎても精巣が陰嚢内に降りてこない「停留睾丸(潜在精巣)」は、放置すると腫瘍化するリスクがかなり高くなるため、去勢手術で取り除くのが望ましいとされています。

去勢手術を受けさせた飼い主さんのなかには、去勢手術で愛犬が長生きしたという意見をあげている人がいましたが、心身の健康を害すストレスや、命を脅かす病気の予防ができることで、結果的に長生きできる可能性が高いのかもしれませんね。

去勢手術を受けるデメリット

一方、去勢手術を受けることのデメリットとしては、以下の3つが考えられるでしょう。

デメリット1.繁殖ができなくなる

生殖器官を取り除いてしまうので、繁殖させることは一切できなくなります。将来愛犬の子犬を産ませたいかどうかなど、慎重に検討する必要があります。

デメリット2.全身麻酔で体調不良を起こすことがある

去勢手術は全身麻酔をかけて行いますが、まれに手術中に血圧低下などの体調不良を起こす場合があります。とはいえ、体調不良を起こす割合は0.1%~0.2%と少ないうえ、不調が起こる可能性を見極めるために、血液検査やエックス線検査などの術前検査も受けるので、そこまで過剰に心配しなくても大丈夫です。

ただし短頭種は、麻酔をかけるために装着していた気管チューブをはずした後に、呼吸困難を引き起こす可能性があるので、手術はかかりつけの先生と相談して決めましょう。

デメリット3.ホルモンバランスの変化で太りやすくなる

性ホルモンの減少でホルモンバランスが変化し、基礎代謝が下がります。また、発情に伴うストレスが減少することで食欲も増すため、去勢手術後の犬は太りやすい傾向にあります。
その他、災害時のペット同行避難の際、避難所から去勢・避妊済みであることが求められる場合があります。
去勢手術に関するメリット・デメリットなどは、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。

犬の去勢手術の方法や費用

振り返る犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
次に、手術の方法や受ける時期など、去勢手術の基本情報について見ていきましょう。

去勢手術の方法

去勢手術は、全身麻酔をかけて、陰嚢内にある2つの精巣(睾丸)を外科的に摘出して生殖能力をなくす手術です。皮膚のみを切開して傷口を縫うシンプルな手術なので、手術そのものは通常10~20分程度、毛刈りや消毒等含めても1時間以内で終わります。日帰りが可能なことが多いですが、動物病院の方針や愛犬の状態によっては、入院が必要なケースもあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。

去勢手術にかかる費用の目安

去勢手術の費用は動物病院によって異なるうえ、受ける犬の体格に比例して高くなりますが、一般的に小型犬~中型犬は15,000~30,000円ほどが費用の目安だといわれています。ただし、これは手術だけの価格で、術前検査代や薬剤代、入院費などの費用が別途必要になるので、50,000円前後はかかると思っていたほうがよいかもしれません。

ちなみに、地域によっては自治体や獣医師会から助成金や補助金が出て、手術費用の一部もしくは全額を負担してくれる場合があります。ご自分が住んでいる地域が対象になっているかどうか、一度確認してみてはいかがでしょうか。

去勢手術を受ける時期・タイミング

去勢手術には、この時期・この年齢までに受けなければならないという決まりはありません。ただ小・中型犬の場合は、早く受けたほうが病気の予防やオス犬特有の問題行動の改善がしやすいといわれているので、性成熟する前の生後6カ月前後(5~8カ月ごろ)を目安に受けるのがおすすめです。

一方で、体が大きくゆっくりと成長する大型犬は、手術を早く受けすぎると骨格のバランスが崩れてしまうおそれがあるので、最低でも生後10カ月までは待つ方がよいでしょう。ただし、犬の成長や体格には個体差があるので、獣医師と相談して手術時期を決めるようにしましょう。
去勢手術の方法や費用、助成金を実施している地域などについては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。

去勢手術を受ける際の流れ・注意点

診察台にのる犬
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ここからは、実際の去勢手術の流れや注意点について見ていきましょう。

手術当日の予定を空けておく

手術前後に何か確認や連絡が必要になった、入院のはずが日帰りになったなど、予定外のことが起こる場合もあります。緊急で連絡が入る可能性もあるので、すぐに対応できるよう、手術当日は予定を空けておいてください。

術後のお世話のために室内を整理しておく

詳しくは後述しますが、術後は首元にエリザベスカラーを着用する場合があります。室内に物や家具が雑然と置かれていると、エリザベスカラーが引っかかって生活しづらいので、できるだけ室内は整理しておきましょう。

愛犬のクセや特徴をまとめて動物病院に伝えておく

入院となった場合のお世話に役立つので、「トイレシーツを食べてしまう」「ある声がけをすると排泄してしまう」など、注意したい愛犬のクセや特徴がある場合は、事前にまとめて動物病院に伝えておきましょう。

手術前日は無理をさせず普段通りに過ごす

飼い主さんが不安そうにしたり、いつもより散歩量や食事量を増やすなど普段と違うことをしたりすると、愛犬も不安になったり、体調をくずしたりするおそれがあります。できるだけ、いつも通りの接し方や過ごし方をするよう心がけてください。

手術当日は絶食させる

胃に食べ物が残っていると、麻酔をする際や目を覚ました際に嘔吐して命にかかわる危険性があります。手術当日は基本的に絶食させ、万が一食べさせてしまった場合は、必ず獣医師に相談しましょう。

去勢手術後のケア方法・注意点

診察を受ける犬
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愛犬が去勢手術を終えて帰宅した後は、以下の点に注意しながらケアを行いましょう。

愛犬の体調や様子をこまめにチェックする

停留睾丸の手術を除き、通常の去勢手術では愛犬の状態が安定し次第、その日のうちに帰宅できる場合がほとんどです。ただし、術後2~3日は本調子でない犬が多いので、帰宅後はできるだけ一緒にいてあげて、愛犬の体調や様子をこまめにチェックしてください。

また、手術による精神的なダメージや、動物病院に置いていかれたショックで食欲が低下する犬もいます。積極的にスキンシップをとったり、好物のおやつをあげたりして、愛犬がリラックスして元の状態に戻れるように努めましょう。もし元気がない状態が何日も続く場合や、オシッコが出ないなどの不調が見られる場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。

エリザベスカラーや術後服で傷口を保護する

傷口をなめさせてしまうと、そこから菌が入って化膿したり炎症を引き起こしたりする危険性があります。抜糸までの間だけでなく、抜糸した後も傷口の赤みがひくまでは、エリザベスカラーや術後服で傷口を保護するようにしましょう。

術後しばらくは散歩や運動を控える

術後すぐに体を動かすと、傷口が開いたりよれたりして痛みが出てしまうことがあるので、抜糸がすむまでは過度な運動は避けましょう。通常の散歩は術後2~3日経ち、獣医師がOKと判断すれば行っても問題はありません。

ただし、走らせると腹圧がかかって傷口が開いてしまうおそれがあるので、ドッグランなど犬が興奮して走りだしてしまうような場所には連れて行かないようにしてください。

抜糸までシャンプーやあおむけの抱っこはNG

傷口は極力ぬらさないほうがよいため、抜糸が終わって傷口の赤みがひくまで、シャンプーするのは避けてください。また、体を縦やあおむけにして抱っこすると傷口に負担がかかるため、抜糸が終わるまでは、お腹を下にして背中が水平になるように抱っこをしましょう。その際、患部を触らないように気をつけることも重要です。

脱水や肥満にならないよう飲料水や食事を管理

去勢手術をすると食欲が増すだけでなく、エネルギー(カロリー)消費量が変化することもあります。以前と同じ食事量を与えると体重が増加して肥満になるおそれもあるので、獣医師と相談して、食事内容の見直しや術後用の療法食への切り替えなどを検討するのもアリでしょう。

また、傷口保護用のエリザベスカラーが邪魔をして、十分な量の水を飲めないこともあります。愛犬の飲水量を毎日チェックして、飲めていないようであれば水飲みボウルの置き場や高さを変えるなどのフォローをしてあげてください。
去勢手術後のケア方法については、以下の記事でより詳しく解説されているので参考にしてみてください。

去勢手術はリスクや愛犬の健康を考慮したうえで受けるか決めよう!

遊びに誘うMix小型犬
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去勢手術を受けるのは必須ではありませんが、ストレスや病気の予防などさまざまなメリットがあります。愛犬の子犬を産ませる予定がないのであれば、愛犬や周囲が安心かつ快適に暮らしていけるよう、メリットやデメリットを比較したうえで去勢手術を検討してみてはいかがでしょうか?
参考/「いぬのきもち」2016年10月号『体の変化や去勢・避妊手術の知識も身につく 男子犬 女子犬 違いを生かす育て方』
   「いぬのきもち」2017年4月号『受ける?受けない?決断の理由を教えて!避妊・去勢術 みんなの体験談』
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
文/pigeon
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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