この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。
今回ご紹介するのは、3才で若年性白内障を発症し、両目の視力を失ったトイ・プードルのぷりんちゃんのお話です。
左目も白内障を発症し、10才で両目ともに失明
神奈川県のSさん家に迎えられたぷりんちゃん(メス・11才/7kg/トイ・プードル/意志が強い)
ぷりんちゃんの飼い主のSさんは、もともと犬の保護活動のお手伝いほか『飼い主さんと愛犬が幸せに暮らすための活動』をライフワークとしています。現在、『一般社団法人One for Wan』の代表理事を務め、誰もが愛犬とともに参加できるお散歩レッスンや、自然の中で愛犬とともにアクティビティを楽しむイベントなどを開催。元来、好奇心が強くアクティブなぷりんちゃんは、Sさんとともに海や山の景色を思う存分堪能しました。
そんななか、ぷりんちゃんが9才になったころ、家の中で物にぶつかったり、慣れている場所でもニオイをかいで探るような歩き方になっていることに、Sさんは気づきました。
「かかりつけ医の先生に診てもらったところ、右目の人工レンズが寿命を迎えて、ほとんど見えない状態になっているとのこと。その後、左目も加齢による白内障を発症して、ぷりんは両目の視力をほとんど失うことになったんです」
このときは、シニアになったぷりんちゃんの体への負担を考えて、手術をする選択はしませんでした。かかりつけ医の指導のもと、毎日の点眼によって眼圧が上がらないようにする治療をすることに。
これまでの生活スタイルをキープして、ストレスをかけないように
ぷりんちゃんが目が見えていたころと同じように生活できるよう、それまでの生活スタイルをキープして、できるだけストレスをかけないようなお世話を心がけています。
床には極力物を置かず、ぷりんちゃんが覚えた動線は変えないようにする
撮影/犬丸美絵
広々したリビングはぷりんちゃんが日中を過ごす場所。つまずかないよう、床に物は置かず、水飲みボウルやハウスの位置は変えないようにしています。
使い慣れた水飲みボウルなどは、あえてそのまま使い続ける
撮影/犬丸美絵
水飲みボウルは、ぷりんちゃんが視力を失う前に体高に合わせてオーダーメイドしたもの。見えなくなってからも、同じものを使い続けているので、昔のままの感覚で楽に水が飲めます。
ハウスはリビングのテーブル下の位置に置いて動かさない
撮影/犬丸美絵
ぷりんちゃんはリビングを移動するとき、壁やテーブルなどの位置を基準にして歩いています。ハウスはテーブルの角に据え置きにして、いつでも入れるように。家族みんなに囲まれる安心感もあるそう。
毎日の点眼が苦手なので、散歩直後のどさくさに紛れて行う
撮影/犬丸美絵
目薬を嫌がるぷりんちゃんに、毎日点眼するのはSさんにとって悩みの種だったそう。いろいろ試した結果、散歩から帰って、玄関で足を拭いたあと、そのまま体を固定してサッと目薬をさす方法に落ち着いたそう。楽しい散歩の余韻が残っているぷりんちゃんは、あまり抵抗することなく受け入れてくれます。
目の健康のためのサプリはそのまま飲めないので、おやつにくるんで毎日与える
撮影/犬丸美絵
そのままではサプリを飲めないぷりんちゃん。大好きなさつまいもか、かぼちゃのお団子に小魚を砕いた粉をまぶしたものにくるんで与えます。試行錯誤の結果、この方法がベストでした。
リラックス効果が得られるテリントンTタッチで毎日ケア
撮影/犬丸美絵
テリントンTタッチは、アメリカの馬のトレーナーが開発したケアの方法。愛犬の皮膚を指先でやさしくタッチすることで、リラックス効果が得られるそう。ぷりんちゃんはこのケアが大好き。外での散歩時には、見えていたときと違って少し気を張って歩くので、散歩のあとはこのケアを毎回行うようにしています。
次回は、両目の視力を失っても元気いっぱいなぷりんちゃんに、飼い主さんが教わったことをお届けします。
※掲載の情報は「いぬのきもち」2022年5月号発売時のものです。
出典/「いぬのきもち」2022年5月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
写真/犬丸美絵
取材協力/駒沢どうぶつ病院、マリーナストリートおかだ動物病院
取材・文/袴 もな