この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。
今回ご紹介するのは、3才で若年性白内障を発症し、両目の視力を失ったトイ・プードルのぷりんちゃんのお話です。
2017年7月、保護団体から一時預かりをしていたぷりんちゃんが、正式にSさん家の家族として迎えられた頃
両目の視力を失っても、前と同じように元気いっぱい
「両目の視力を失いましたが、私はぷりんが自信を失ってしまわないよう、あえて見えていたときと同じように接しているんです。また、先住犬のイヴの存在も、ぷりんの大きな励みになっているんですね。イヴは今年17才になりますが、目も見えていて、とても元気。ぷりんは、以前からイヴをリードする〝姉ゴ気質〞だったので、イヴに負けていられない!ってますます奮起している感じです(笑)」
Sさん宅の庭には広いウッドデッキがあり、お天気のいい日は、2頭で仲よくひなたぼっこをします
ぷりんちゃんは、家の中の地図を記憶していて、見えていたときと同じように自由に移動できるそう。ただし、外での散歩時には、当初ちょっと戸惑う場面が見られたとSさん。
「いつもの散歩コースでも、段差の前や、排水溝の鉄製のフタの前などでピタッと止まって動かなくなってしまうことがありました。お散歩が大好きだったぷりんが、怖がらずに楽しく歩けるように、ドッグトレーナーさんにお願いして、トレーニングをすることにしました」
散歩時は、Sさんのすぐ隣を歩かせます。Sさんの足音を聞くことで、まっすぐ歩くことができます
それは、ぷりんちゃんが苦手な排水溝のフタの前で「ジャンプ!」と言葉で誘導したり、またリードの引き方で正しい方向に誘導するやり方など。何度か練習するうちにぷりんちゃんは、すぐに習得したとのこと。そして、ひとつひとつをクリアしたときは、「すごいね! できたね!」と思いきりほめてあげるのも大切だそう。
「ぷりんを見て実感したのは、犬の潜在能力の高さと感覚の鋭さは本当にすごいということ。目が見えないから『かわいそう、大変だ』と犬に対してネガティブな気持ちをもってしまったら、それは犬にも伝わるはずなので、本来できることもできなくなると思うんです。これからも、変わらずぷりんとイヴといろいろな場所に出かけて楽しい時間を過ごせたら」と最後にSさんは語ってくれました。
目が不自由なぷりんちゃんにストレスがかからないよう、また、全身の健康も保つために定期的に鍼灸治療も受けています
※掲載の情報は「いぬのきもち」2022年5月号発売時のものです。
出典/「いぬのきもち」2022年5月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
写真/犬丸美絵
写真提供/Sさん
取材協力/駒沢どうぶつ病院、マリーナストリートおかだ動物病院
取材・文/袴 もな