ペットホテルとは、飼い主が旅行や出張などで家を空ける際にペットを預かってくれる施設ですが、種類やサービス内容はさまざまです。愛犬を安心して預けるために知っておきたい、ペットホテルの基本情報や選び方のポイント、利用方法などを紹介します。
吉田 大祐 さん
有限会社ファニーテール代表
日本ペットサロン協会理事長
Funnnytail Maltese 犬舎主代表
ファニーテール ストラテジー主宰
大学卒業後、他業種を経験したのちペットサロンを開業。“ワンコ第一主義”をモットーに地元では絶大な人気を誇る。
オーナーとしてマルチーズを専門犬種とし、全国の”マルチーズファンシャー”からも信頼を得ている。
毎週1回は東京・浅草のトリミングサロンを間借りして、マルチーズ専門のグルーミングを実施。
2021年から日本ペットサロン協会の理事長に就任。業界全体の社会的地位向上にも精力を出している。
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ペットホテルとはどんなところ?
ペットホテルは、ペットを宿泊させたり一時的に預かってくれたりなど、飼い主に代わってペットのお世話をしてくれる施設です。旅行や出張、急な外出などで家を空ける際、利用するケースが多いようです。ホテルによって受けられるサービスが異なるので、初めて利用する人は、飼い主の状況やペットの性格に合うかどうかをよく検討したうえで選びましょう。
ペットホテルにはどんな種類があるの?
ペットホテルは大きく4タイプに分けられます。滞在中の過ごし方やサービス内容についてはホテルによって異なるので、ホームページなどで確認しましょう。
ペットホテル専門店タイプ
ペットを預かる専門の施設。比較的都内に多くあるタイプで、時間単位の一時預かりも可能です。
動物病院併設タイプ
愛犬のかかりつけの動物病院に併設されているホテルなら、急な体調不良にも対応してもらえるほか、高齢犬や投薬の必要があるペットも安心して預けることができます。ただし、病院によっては、夜間に人が不在であったり、愛犬が過ごすスペースが狭かったりといった不自由なこともあります。
ペットショップやトリミングサロン併設タイプ
トリミングサロン内にあるホテルなら、希望すればお預かり中にシャンプーやトリミング、爪切りなどをしてもらうことも。キレイにさっぱりした状態でお迎えできる嬉しいサービスです。
また、飛行機を利用した長期出張や旅行の場合に便利な空港のペットホテルも、トリミングサロンやドッグランなどを併設しているケースが多いようです。愛犬に合った施設を選ぶとよいでしょう。
ドッグトレーナーや訓練所が経営しているタイプ
ドッグトレーナーが運営していたり、訓練所に併設されているホテルの場合、広いドッグランがあるところが多いです。トレーニングなどに興味がある人、愛犬のしつけの相談をしたいという人は問い合わせてみるのもよいかもしれません。
ペットホテルのおもなサービスとは?
ペットホテルに愛犬が宿泊したとき、どのようなお世話をしてもらえるのでしょうか。ホテルによって異なりますが、一般的におこなわれているおもなサービス内容を紹介します。
宿泊
対応期間は、1泊から数カ月単位の宿泊までさまざまです。長期の場合は、割引サービスを設けているところもありますが、シニアや病気治療中の場合などは、長期宿泊を受け付けていないところもあるため確認が必要です。
一時預かり
たとえば、朝から夕方まで家を留守にする、家での仕事に集中したい、そんなときなどに1時間から日帰りまで預かってもらえるサービスです。料金は、1時間単位または3時間、6時間、9時間など時間で区切っている場合があります。
散歩の代行
1日1〜2回程度、屋外の散歩に連れて行ってくれます。ドッグランが併設されている施設では、ドッグランで遊ばせてくれるケースもあります。
食事・トイレの世話
食事は、飼い主が持ち込む必要がある場合もあればホテル側で用意してくれる場合もあります。トイレは散歩中に済ませるか、室内に設置されたトイレスペースで排泄できます。
グルーミング
トリミングサロンが併設されている場合は、宿泊している間にグルーミングやトリミングを依頼することもできます(別途追加料金がかかります)。
ペットホテルの相場は?
ペットホテルの料金は、犬のサイズ(体重)や宿泊する部屋の大きさ、設備やサービスの違いなどにより異なります。
たとえば「1泊あたり、小型犬3000円、中型犬4000円、大型犬5000円」というように、一般的には犬のサイズ(大きさや体重)で料金が分かれていることが多いようですが、価格帯は1泊3000円程度から2万円程度までとかなり幅があります。複数頭での利用時や長期宿泊などに割引サービスを用意しているホテルもあります。
ペットホテルとペットシッターとは何が違うの?
ペットシッターは、飼い主が家を留守にするときに、シッターが家で愛犬のお世話をしてくれるサービスです。まずはペットシッターのメリット・デメリットについて紹介します。
ペットシッターのメリット
ペットホテルなど宿泊場所への送迎が不要なので、飼い主の手間が省けます。愛犬にとっては自宅にいながら食事や散歩などのお世話をしてもらえるので、知らない場所に預けられるストレスがありません。事前の打ち合わせで、愛犬に合わせて細かくリクエストできる点もペットシッターならではです。とくに多頭飼いの飼い主にとっては、ペットシッターは頼もしい存在と言えるでしょう。
ペットシッターのデメリット
ペットシッターの場合、お世話してもらう時間以外は愛犬だけになってしまうという不安があります。愛犬が体調をくずしてしまった場合、災害時や天候不良などにより室内の温度管理ができなくなった場合など、緊急対応ができないのが難点です。
また、ペットシッターに鍵を預けることを不安に思う飼い主さんもいるようです。
ペットホテルとの違いは環境の変化とお世話の時間
ホテルの場合、ほかの犬やスタッフがほぼ終日いますが、ペットシッターの場合は、食事・散歩・トイレの掃除・遊び時間を入れても1回のサービスは約1時間前後。愛犬だけで過ごす時間が多く、寂しい思いをさせてしまうこともあるかもしれません。
一方、自宅でお世話してもらえるので、環境の変化がない分、ストレスを感じずに過ごせます。ペットホテルとペットシッター、それぞれメリット・デメリットがあるので、愛犬の性格を考えたうえで選択するとよいでしょう。
ペットホテルを選ぶポイントは?
クチコミやネットなどで調べて何件かホテルの候補を挙げたら、事前に電話で問い合わせたり実際に訪れたりして、選ぶのがおすすめです。以下のポイントを参考にチェックしてみましょう。
第一種動物取扱業の登録と動物取扱責任者が設置されている?
ペットホテルは、「第一種動物取扱業(保管)」としての登録と「動物取扱責任者」の設置が義務付けられています。ホームページに掲示されているところが多いですが、情報が見当たらない場合は直接確認したほうがよいでしょう。
預かってもらえる犬種やサイズ、コンディションは?
ホテルによって、預かれる犬種や大きさ、年齢、体質や体調などの条件があるので、必ず事前に確認しておきましょう。また小型・中型・大型のサイズも、大きさなのか体重なのかはホテルによって定義が異なるので注意が必要です。
預かるときの条件はしっかりしている?
動物病院発行の混合ワクチンの予防接種証明書や狂犬病予防注射済票の提示、およびノミ・マダニの予防や病気の有無などが預かり条件に入っているかどうかの確認を。預かり条件が緩いところは、預けやすい反面、伝染する病気や寄生虫感染への予防が不十分な犬と近距離で過ごす可能性もあるため、愛犬の健康面でのリスクが高まります。ペットホテルはさまざまな環境で飼育された犬が集まるので、ワクチン接種などの証明書の提示を求めないペットホテルは避けたほうがよいでしょう。
宿泊する部屋のタイプは?
ケージ(ゲージ)スタイル
ペットホテルの部屋は一般的にケージタイプが多いようですが、ケージの大きさはホテルによってさまざまです。プライベート空間が確保されているという見方もできますが、ケージに慣れていない、狭いところが苦手という犬にとってはストレスになります。ケージ利用の場合は、1日に数回散歩や広い部屋で遊ぶ時間を用意しているところが多いです。
寝るときだけケージ(ゲージ)スタイル
日中はほかの犬と一緒に過ごして、寝るときはそれぞれのケージで休みます。愛犬の性格にもよりますが、ほかの犬に慣れている場合や寂しがり屋の場合はよいかもしれません。ただし、ほかの犬との相性によっては、じゃれ合いが加熱してケガをしたりしてしまうこともあります。
また、対応に注意が必要な犬種などは預かってもらえないこともあるので、事前に確認しておきましょう。
個室風や完全個室スタイル
部屋を細かく仕切った個室型の部屋があるところも。利用料金は高くなりますが、「感染症などが心配」「2頭一緒に預けたい」などの場合は、このようなタイプがおすすめです。
なお、動物の生態や習性などをさらに考慮した環境を整える必要があるとして、「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正されました(2022年6月から施行)。飼養設備(ケージなど)のサイズほか仕様についても定められているので、詳細が気になる場合は、「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針(案)」を確認してみてください。
ホテル内は清潔に保たれている? 見学できる?
ホームページなどに掲載されている写真は、隅々まで掃除をした状態で撮影されているため、実際とは異なることもあります。受付やロビーなどパブリックスペースがキレイでも、犬舎スペースが不衛生だったり悪臭がしたりすることもあるので、愛犬が過ごすスペースは実際に見学させてもらいましょう。
ペットが宿泊する環境があまりよくないホテルの場合、見学を拒否されることも。実際に見学するかどうかはさておき、見学可能かどうか質問をして、スタッフの対応を確認してみてください。
食事の持ち込みはできる?
ふだん食べているフードを持ち込むケースのほうが多いようです。食物アレルギーのある犬はもちろん、偏食、お腹をこわしやすい、環境が変わると食欲がなくなるなどの場合は、持ち込んだほうが安心です。もし持ち込めない場合は、ホテルで提供されるフードの内容をチェックしておきましょう。
散歩の体制や内容は?
まずは滞在中に「散歩」があるのか聞いてみましょう。散歩する場合は、スタッフひとりにつき何頭の犬を散歩させるか、万が一リードが切れたときのために2本リードにしているのかなど、安全対策がきちんととられているか確認を。また散歩コースや散歩時間、雨の場合の対応策なども確かめておきましょう。
宿泊しているほかの犬との接触は?
ドッグランやフリースペースを設けているホテルでは、ほかの犬と一緒に遊ばせてくれるというメリットもあります。ですが犬同士の相性などもあるので、どのような気配りや管理をしているのかチェックしておいてください。日中、ほかの犬とどのくらいどのように接触があるのかなども確認しておきましょう。
見守り・監視カメラは設置されている?
ホテルによっては、飼い主が好きなときに愛犬の様子を見られる「見守りカメラ」を設置しているところも。また、万が一具合が悪くなったり、事故が発生したりした場合などに備えて、監視カメラがあるかも確認しておきましょう。トラブルが起きた場合のスタッフの対応をチェックするポイントにもなります。
預かり中、状況報告などのサービスはある?
ホテルによっては1日の様子をメールやSNSで知らせてくれるところもあります。とくに初めて預ける場合、愛犬の様子や体調などは気になるので、こうしたサービスがあるホテルを選ぶと安心です。
万が一体調が悪くなったときの対応は?
健康な犬でも慣れない場所で過ごすことで体調をくずすことも。そのような事態に備えて、専門知識をもったスタッフがいるかどうか、提携している動物病院があるかどうかも確かめておきましょう。
細かくヒアリングしてくれるか?
愛犬の性格や食事内容、健康状態、服用中の薬の内容など詳しくヒアリングしてくれるかどうかは、預けるうえで重要なポイント。細部まで聞いてくれる施設は、それだけ愛犬に注意を払ってくれている証拠です。なお、ホテルによっては薬の投与はNGというところもあるので、投薬が必要な場合は事前に問い合わせてください。
料金設定は明確になっている?
宿泊料金、延長料金、キャンセル料など料金設定がきちんと表記されているかは大事です。○○円〜のようにあいまいな表記の場合、思いがけない請求がくることもあるので事前に見積もりを出してもらいましょう。
ペットホテルに預ける前に準備しておきたいこと
安心&安全に預かってもらうためには、飼い主としての事前準備も重要になります。できるかぎり愛犬がストレスなく過ごすために、ヌケモレがないよう余裕をもって準備にとりかかりましょう。
ワクチン接種やノミ・ダニ対策
感染症予防のためにワクチン接種は必ず受けておきましょう。動物病院が発行する「混合ワクチンの予防接種証明書」、市区町村が交付する「狂犬病予防注射済票」などが必要になります。万が一、紛失した場合は、再発行に時間がかかることもあるので事前にあるかどうか確認を。
なお、ホテルによっては「混合ワクチン接種から〇年以内」などという条件があるので、規約を確認したうえで接種日も併せてチェックしておきましょう。証明書をもらったら、スマホで撮影しておくのもおすすめです。体質の問題でワクチン接種ができない犬の場合は、抗体検査結果の提示などで預かってもらえるかを確かめておきましょう。
また皮膚炎を起こすだけでなく病原体を媒介して健康を害することもあるノミ・ダニについても、動物病院で予防薬を処方してもらい事前に投薬しておきましょう。
動物病院で健康チェックを
健康な犬でも環境が変わることにより体調をくずすこともあります。そのためホテルに預ける前に動物病院で健康チェックをしてもらうと安心です。なお、ヒート(発情前期~発情期)中の犬は預かってもらえないため、愛犬の様子をしっかり確認しておいてください。
ホテルによっては、生後3カ月未満、シニア、病歴など、預かれる犬の年齢や健康状態において条件があるところもあるので、事前に問い合わせておきましょう。
クレートや屋根付きケージ(ゲージ)で過ごすことに慣らす
ふだん自由に動き回れる環境で過ごしている犬の場合、いきなり狭いクレートや屋根付きケージに入れられたらストレスを感じてしまうことも。クレートや屋根付きケージに入ってリラックスするという習慣をつけておくと、車での移動やペットホテルでも快適に過ごせるようになります。ケージを使うのが初めてという犬の場合、おやつやおもちゃなどでケージの中に誘導して短時間そこで過ごすことからはじめ、過ごす時間を徐々に長くして慣らしていくトレーニングをしておくとよいでしょう。
クレートや屋根付きケージが犬にとって安心できる場所になることが大切
逸走に備えて迷子札を着用
散歩中や思いがけないアクシデントなどで、愛犬が逃げだし迷子になってしまうことも。不慮の事態に備えて、マイクロチップの挿入や首輪に連絡先を記した迷子札や鑑札をつけておくなどの対策を整えておく必要があります。
できれば宿泊の予行練習を
預けるホテルが決まったら、数時間のショートステイや日帰り利用などで予行練習をしておくと安心です。スタッフや施設の雰囲気に触れることで、愛犬にとって何が不安で何にストレスを感じるのかも確認できます。旅行や出張の予定がなくても、事前に一時預かりなどで少しずつ慣らしておいて、ホテルとの信頼関係を築いておくことも大事です。
愛犬を安心して預けられるペットホテル選びを
初めてホテルを利用する際は、飼い主さんも愛犬も不安かもしれません。時間をかけて準備万端に整えたのですから、預けると決めたらあとはスタッフを信じて笑顔で送り出して、笑顔でお迎えに行きましょう。1度きりでなく今後も利用するために、不安な点や疑問に思うことはその場で確認を。ペットホテルのスタッフとしっかりコミュニケーションをとって、安心して預けられる関係性をつくっておきましょう。
監修/吉田大祐先生(日本ペットサロン協会理事長)
文/山本 花
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。