「愛犬のこの行動、不思議だなあ……」と思ったことはありませんか? 実はその行動、野生時代の本能が関係しているかもしれませんよ。今回は、獣医師の増田宏司先生に「犬がもつ野生の本能」について教えていただきました。
動くものを追いかける
野生時代の犬は小動物などを獲物にしていたので、すばやく動き回るネコや鳥などに興味を示す習性が残っています。つまり、動くものを追いかけ回したり吠えたりするのは、犬の狩猟本能に基づく行動なのです。獲物を見つけ出して捕らえる猟犬や、羊などの群れを追いかけて誘導する牧羊犬などは、この本能が色濃く残っています。
また、おもちゃをくわえてブンブンと振り回すのも同じ本能。獲物を仕留めたり、食いちぎったりするときの行動を疑似体験しているのです。
穴を掘ってゴハンやおやつを埋める
ゴハンやおやつを穴に埋めるのは、野生時代、狩りをして食べきれなかった獲物を埋めておいて、必要になったときに掘り出して食べていたという習性の名残といわれています。
人と一緒に暮らす現在の犬は食べ物に不自由することはないものの、この本能が働いて、ゴハンやおやつなどを埋めて隠そうとすることがあるようです。
ゴハンを噛まずに食べる
かつて野生で生活していた犬は、手に入れた食べ物をほかの犬に奪われないよう、急いで食べる必要がありました。人と一緒に暮らすようになった今もその習慣は残っており、ゴハンを与えると「待ってました!」とばかりに急いで飲み込む犬が多いようです。
とはいえ、大きな食べ物や固いものをまる飲みすると思わぬ事故につながることも。誤飲や誤食をしないよう十分注意してあげましょう。
ゴハンをあるぶんだけすべて食べる
狩りをして獲物を得ていた時代、犬はいつでも食べ物にありつけるわけではありませんでした。このため、「食べられるときに、食べられるだけ食べる」のが生存本能のひとつだったのでしょう。コンスタントに食べ物が手に入る現代は、目の前のゴハンをすぐに平らげる必要がないため、気が向いたときに食べる犬もいます。
家族とくっついて寝るのが好き
犬の祖先はかつて数頭から数十頭の群れをつくり、群れ全体で行動していました。眠るときも、数頭で折り重なるようにしたり、体の一部をくっつけあったりして寝ていたのでしょう。その名残から、飼い主さんにくっついて眠るのを好む傾向があるようです。飼い主さんのニオイや温もりを感じたくて、布団にもぐりこんでくるコもいます。
ふだんのなにげない行動も、野生時代の名残ということがあるんですね。愛犬の行動を改めて観察してみると、おもしろいかもしれませんよ。
お話を伺った先生/増田宏司先生(獣医師 獣医学博士 東京農業大学農学部動物科学科(動物行動学研究室)教授)
参考/「いぬのきもち」2021年4月号『犬は夜行性?遠吠えで仲間を呼ぶ?気になる習性の真偽に迫ります!犬の習性コレってホント? それともウソ?』
文/柏田ゆき
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。