愛犬を「なでる」ことはマッサージよりもずっと簡単ですが、少しだけ〝上手になでる〞ことを意識してみましょう。愛犬をとろけさせられることはもちろん、落ち着かせられたり、絆が深まったりと、その恩恵をさまざまに増やしていけます。今回は犬がなでられるとうれしい部位と心地よいときのサインについて、ドッグトレーナーの油木真砂子先生に教えていただきました。
なでられるとうれしい部位を知っておこう!
個体差はあるものの、なでられてうれしいと感じやすい場所と、慣れさせていないと苦手に感じるところがあります。なで上手になるためにぜひ覚えたい、犬がとろけるごくらくスポットを紹介します。
背中・胴体/ふだんなでられているかどうかで程度は異なる
無意識だと、手を伸ばしたときに届きやすい首や肩甲骨をなでることが多く、その先の背中や胴体は犬によってなでられ慣れていない場所であることも。様子を見ながらなでていきたい部分です。
頭/急になでられるとびっくりしちゃう!
頭はなでられること自体よりも、急に下りてきた手に驚き警戒することが多い部分です。最初になでる場所としては避け、たとえば肩甲骨あたりから少しずつなで進めるとうっとりさせやすいです。
マズルまわり/向き合ってなでると警戒しやすい
口内や口まわりのケアをする際にも大切な部分ですが、犬の苦手意識は高め。見つめながら両手でマズルをはさむようななで方は、犬に好戦的な行為ととられやすいので注意して。
耳まわり/なでられると気持ちがいい!
耳や耳まわりをなでるのは、犬が自分の足でかくことを代わりにしてあげている状況に近く、犬が気持ちいいと感じやすいです。下から手を伸ばし、驚かせずになでてあげて。
胸や首、肩甲骨まわり/犬にとって心地がよく人もなでやすい
習慣的になでやすい場所でもあり、犬もうれしいポイント。多くの犬が受け入れやすい部分のため、なでられ慣れていないコはとくに、ここからスタートするのがオススメ。
おなか/警戒心の強いコはとくに苦手意識が強い傾向に
おなかは毛が少なく、犬にとってデリケートな部分。ふだんからなで慣れていないと、警戒心を与えてしまう可能性があります。少しずつ慣らしていくようにしましょう。
足先やしっぽなど先端部分/先端にいくほど、触られることへの警戒が高まる
足はよくても足裏を触れられることには警戒するなど、先端に近くなるほどごくらく度は低下。散歩後の足拭きや爪・肉球のケアのためにも、少しずつ慣れさせましょう。
とろけるサインを知っておこう
なで上手への第一歩は、犬の「サイン」を知ることから。心地よいと感じているのかどうか、愛犬をよく見ながらなでましょう。
「なでる」は愛犬の気持ちを最優先に
じつは、「なでる」は犬同士のかかわりには存在せず、子どもを抱いたりなでたりする習性をもつ人に由来する行為。抵抗を示す犬がいるのもそのためです。飼い主さんと愛犬の、「なでたい」「なでられたい」という気持ちを一致させられると、絆も深まっていきます。犬のサインをキャッチし、なで上手になりましょう。
【とろけているサイン】
●うっとり目を細める
●表情がうっとりしている
●そのまま眠ってしまう
なでるときの鉄則1 犬が受け入れやすい部位から
ごくらく度が高いところからなでるようにすると、「なでられることは気持ちがいい」と犬に思ってもらえるようになります。苦手なポイントはなでられ好きになってからと心得て、ゆっくり進めましょう。
なでるときの鉄則2 自分で思っている以上にやさしく、ゆっくり
筋肉まで刺激するマッサージとは異なり、「なでる」は犬の皮膚を動かす程度の強さが◎。自分のまぶたを揺すってみて、眼球への圧がない程度が目安です。リラックスできるよう、速さは極力ゆっくりが基本。
「やめて」サインも知っておこう
●あくびをする
ストレスを感じていることの表れ。「拘束されている」という意識のほうが強い可能性も。
●体を引く
驚きや警戒心からビクッとしている。触れられたところをサッと振り返るのも同様です。
●おなかを見せる
両前足を折るようにしておなかを見せたときは、信頼や甘えとは異なり「やめて」を意味。
●しっぽを振る
興奮した状態であり、うれしいときだけでなくネガティブな感情から振ることもあります。
愛犬が喜ぶなで方やなでられてうれしい部位を知っておけば、もっと愛犬をリラックスさせられて、絆も深まりそう。ぜひ試してみてくださいね。
お話を伺った先生/ドッグトレーナー、テリントンT タッチ®認定プラクティショナーP2 油木真砂子先生
参考/「いぬのきもち」2023年10月号『愛犬がとろけるなで方』
写真/伊東武志
文/川本央子