犬と暮らしていると「やさしい!」「なんて健気なの?」と感心したり、さらに愛情が深くなること、ありますよね? 動物行動学に詳しい獣医学博士で獣医師の増田宏司先生の解説つきで、胸キュン必至の健気すぎる犬たちをご紹介します。
夫婦で口論になると抱っこをせがむポーズで仲裁してくれる
「ちょっとした口論で夫の声がいつもより大きくなると、愛犬が私の足元で抱っこをせがみます。愛犬に甘々な夫は、「あーごめん!」と私でなく愛犬に謝っています(苦笑)」
「落ち着きましょう」と伝えてくれています
「間に入ってくるのは本来、犬同士のケンカ中に両者を同時に落ち着かせるためのカーミングシグナル。抱っこをせがむ、手をなめるといった行動は、自分に注目を集めれば飼い主さんをいつもどおりに戻せると、これまでの経験から学習した行動といえそう」(増田先生)
泣いていると、なぐさめるように顔をペロペロしてくれる
亡くなった母のことを思い出して涙を流していると、愛犬が私の顔をペロペロしてくれたことが2回ありました。なんだか「大丈夫、大丈夫」となぐさめられているようでした。
やるせない思いでいるとき、後ろから見守ってくれた
「『家族はそれぞれ自分のことだけし、なぜ自分だけが家事をしなくては?』とむなしい思いでトイレ掃除をしていると、寝ていたはずの愛犬が後ろで静かに見守っていました。泣きましたね、そのときは」
負の感情に敏感。〝元に戻って〞と健気に寄り添います
「犬は人の負の感情にとても敏感に気づくことができる動物ですが、大好きな飼い主さんならなおさらでしょう。なめたりくっついたりして、奥ゆかしくいつもの飼い主さんに戻ってくれるのを期待しながら、我慢強く待っていてくれたのだと思います」(増田先生)
介護中の父を後ろから見守ってくれる
「介護が必要な私の父のことをいつも気にかけていて、常に後ろについて見守っています。父の様子を見ていて「自分が守らなければ」と思っているのでしょうか」
まわりをよく見て、悪いことを繰り返さない、犬に備わる能力
「犬は人の様子を見てどう行動するのがよいか、判断することができます。適応力も高いので、大事な人が痛い思いをしたのを覚えていれば、それを防ごうとして自身の態度を決めることができます。まさに犬が人類の最良のパートナーといわれる理由でしょう」(増田先生)
ドッグランで犬同士のケンカの仲裁をしてくれる
「ドッグランではいつもパトロールをして、ケンカをしている犬がいるとすぐに仲裁に入ります。とばっちりを受けることもあるのですが、ドッグランに行けば必ずパトロールにいそしんでいます」
コミュ力が高い! 〝チーム”で暮らしてきた犬という動物ならでは
「人に対してやさしい犬ですが、じつは犬に対してのほうが紳士的・平和的にふるまいます。それは群れで暮らしてきた犬ならではの『仲間とうまくやりたい』という気持ちから。狩りや繁殖も持ち前のコミュ力で成功させてきた経験から、遺伝子レベルでインプットされているのです」(増田先生)
健気すぎる犬たちをご紹介しました。今まで気づかなかった、愛犬の健気なところを探してみるのも楽しいかもしれませんね。
お話を伺った先生/獣医師。博士(獣医学)。東京農業大学農学部動物科学科(動物行動学研究室)教授 増田宏司先生
参考/「いぬのきもち」2024年9月号『いい犬すぎるよ図鑑』
イラスト/藤井昌子
文/いぬのきもち編集室