白内障と聞くと、「年をとるとなるもの」「失明する」というイメージを持っていませんか? 犬が加齢で白内障になることは少なく、必ずしも失明するとは限りません。今回は犬の白内障について、獣医師の小林一郎先生に教えていただきました。
犬の白内障とは?
白内障とは、目の中でカメラのレンズのような役割をしている「水晶体」が白く濁ってしまう病気のこと。この濁りは水晶体のたんぱく質が変性したもので、水晶体全体に広がると視界に影響が出ます。
<とくによく見られる犬種>
柴、プードル、フレンチ・ブルドッグ、アメリカン・コッカー・スパニエル、イタリアン・グレー・ハウンドなど
紫外線との関連は?
人の白内障の場合は、紫外線が目に与えるダメージも発症の一因とされています。犬も同じなのではないかという向きもありますが、現段階ではまだ関連性がわかっていません。
2〜3才までに発症することが多い
犬の白内障の多くは、遺伝的な要因で起こるとされています。そのため若齢期に発症することが多く、2〜3才までに水晶体に濁りが生じます。小さな濁りや進行スピードによっては飼い主さんが気づかないことも珍しくありません。
6才以降の発症は基礎疾患によるものが多い
白内障は、糖尿病をはじめとする全身性疾患やほかの目の病気などが原因となり、二次的に引き起こされることもあります。とくに、6才以降で発症した犬はこのケースが多いようです。一方で、中高齢で白内障と診断されたケースには、遺伝性の白内障がゆっくり進行していると推測されることもあります。
シニア犬の目が白いのは老化現象かも
6才以上になるとどの犬にも起こる核硬化症は、いわば犬の老眼。加齢に伴う水晶体の変化によって目が白くなりますが、見えなくなることはありません。シニア犬の目が白くても白内障とは断定できないので、動物病院での鑑別が必要です。
人とは違い、発見が遅れがち
犬の場合、水晶体の濁りが小さい段階では視覚への影響は少なく、行動やしぐさに変化は見られません。この点は、少しの違和感で受診する人との違いです。愛犬が物にぶつかる、目が白いなどに気づいたころには、すでに見えていないこともあります。
進行すると失明や合併症のおそれも
白内障が進行すると、水晶体全体に濁りが広がって失明するだけでなく、変性したたんぱく質が水晶体の外へ漏れ出ると、目の中に炎症や痛み(ぶどう膜炎)を起こします。緑内障や網膜剥離など、別の目の病気を引き起こすおそれもあります。
早めの対処で「見える」を守る!
遺伝性の白内障は2〜3才までに発症することが多いので、生後半年、1才、2才のときにアイチェック(目の健康診断)を受けましょう。
また、目に白っぽい濁りがないか、白目に赤みがないかなど、ふだんから愛犬の目を注意深く観察することも大切です。
なお、犬の白内障は外科手術(水晶体内部の濁りを取り除き、人工眼内レンズの挿入)で治せます。白内障が進行して炎症や眼圧の上昇などがあると、術後の合併症のリスクが高くなるため、水晶体の濁りが小さい段階で手術したほうがよいでしょう。
少しでも気になることがあれば、すぐに獣医師に相談してくださいね。
お話を伺った先生/小林一郎先生(「どうぶつ眼科EyeVet」院長 獣医師 獣医眼科学専門医)
参考/「いぬのきもち」2024年10月号『若い犬もかかるから早めに気づいて 「見える」を守る!犬の白内障』
文/柏田ゆき
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