室内での愛犬に対する飼い主さんの行動や、生活・留守番時の環境など、おうちのなかにも犬のストレスの原因となるものが多々あります。今回は、おうちでありがちな犬のストレス3つと、それぞれの対策方法について、獣医師の藤本聖香先生に伺いました。
おうちでありがちなストレス(1)24時間飼い主さんの視界に入るようにいさせる
飼い主さんが適度に見守ることは犬に安心感を与えますが、犬にもプライバシーがあります。そのため、24時間常に飼い主さんの視線にさらされることはストレスに。
人でたとえるなら、カメラだらけの部屋で生活して、寝るときでさえ誰かに監視されているようなもので、まったく落ち着くことはできないでしょう。
クレートで目隠しになる場所をつくろう
犬のプライバシーを確保するのにおすすめなのが、室内にハウスとしてクレートを置くこと。人と視線が交わらないように、置き方を工夫してあげるといいでしょう。愛犬がクレートに入っているときは“ひとり”になりたいときなので、飼い主さんものぞきこまないようにしましょう。
おうちでありがちなストレス(2)部屋の床がすべりやすい
部屋の床がすべりやすいのは、ケガや足腰を痛める心配があるのはもちろんのこと、思うままに動けないことでストレスにもなります。
人でいえば、アイススケート場で生活しているようなもの。足がすべってあせったり、すべらないようにずっと緊張したりして、まったくリラックスできないでしょう。
マットやカーペットを敷くなどのすべり防止対策をしよう
床がすべらないように、マットやカーペットを敷く、すべり止めワックスを塗るなど、できる限りのすべり防止対策をしましょう。また、犬は肉球がすべり止めの役目になるので、肉球が床にしっかり接地できるよう、爪や肉球の間の毛をカットするのもおすすめです。
おうちでありがちなストレス(3)留守番のときにケージに入れておもちゃも与えない
犬は狭い空間を好む習性があるとはいえ、留守番時に狭すぎるケージの中に入れられるのはストレスになります。
さらに、おもちゃもないとなると、人なら狭くて何もない空間に、一人で数時間閉じこめられているようなもの。犬が感じる息苦しさと退屈さは、想像以上のものといえるでしょう。
安全なおもちゃを与えて、部屋でフリーにさせるのが理想
犬を留守番させるときは、留守番のしつけをしたうえで、安全に留意して部屋でフリーにさせることが理想です。そして、夢中で遊ぶ時間がつくれるように、安全性のあるおもちゃを置いておきましょう。ストレス発散には、噛めるおもちゃがおすすめです。
ストレスが原因で犬の問題行動や病気につながることも
犬はストレスが強すぎたり、繰り返しストレスにさらされたりすると、ストレスホルモンが過剰に分泌されてセロトニンの働きを抑制してしまい、精神的な安定を保てなくなります。その結果、攻撃的に激しく吠えたり、うなったり、クッションを破壊したりなどの問題行動を起こすことが。
また、自律神経が乱れることでおう吐や下痢などの「胃腸炎」を起こしたり、気持ちを落ち着かせようと足やわき腹をなめ続けて「皮膚病」を起こしたり、免疫力の低下によって「膀胱炎」や「感染症」を起こしたりと、ストレスによってあらゆる病気にもかかりやすくなります。
愛犬の健康のためには、できるだけストレスを軽減できるよう、飼い主さんが対応してあげることが大切。今回ご紹介した内容を参考に、愛犬のふだんのおうちでの過ごし方や接し方について見直してみてくださいね。
お話を伺った先生/藤本聖香先生(英国APDT認定ペットドッグトレーナー 獣医師)
参考・写真/「いぬのきもち」2024年10月号『対策急務!人に置き換えてそのヤバさがわかった!じつはしんどい犬のストレス』
文/宮下早希
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