犬目線で日常の暮らしを見渡すと、犬の体に害を及ぼす「毒」が案外身近なものだと気づきます。愛犬を守るためにも、犬にとって何が毒になるのかを知っておきたいですね。万が一愛犬が口にしてしまったときの対応とともに、獣医師の佐向敏紀先生に聞きました。
【洗剤】界面活性剤による中毒が起こる
界面活性剤は、洗濯用や食器洗い用、風呂場用など多くの洗剤に含まれます。口にすると、口の中や消化管の表面をおおう粘膜がただれてしまいます。口やのどの痛み、嘔吐などの症状が出ます。
【殺虫剤】有機リン系やカルバメート系は有害
家庭菜園や農地などで使用される殺虫剤のなかでも、有機リン系とカルバメート系のものは、口にすると中毒症状を起こすおそれも。ヨダレや嘔吐、下痢、元気がなくなるといった症状が出ます。
【観葉植物】案外多くの観葉植物に毒成分が
進化の過程で、動物に食べられないよう毒成分をもつようになった植物も多く、身近な観葉植物にも毒をもつものがたくさんあります。口にすると、嘔吐や下痢、胃腸炎などを起こす場合も。
〈毒をもつおもな観葉植物〉
・ポトス
・アンスリウム
・モンステラ
・アイビー
・スパティフィラム
・アロエ
・ポインセチア
・ディフェンバキア など
【人用のサプリメント】人には有用な成分でも犬には毒になることも
人のダイエットなどを目的としたα-リポ酸は犬に有害で、中毒の報告があります。また、鉄や亜鉛、カルシウムなどは犬にも必要な栄養素ですが、人用のもので過剰に摂取して中毒になるおそれも。さらに、犬に毒となるにんにくやキシリトールなどが含まれる製品もあります。
【人用の薬】犬は成分に強く反応しがち
犬は、人に比べると薬物に対しての代謝能力が低いため、体内に蓄積されやすく、中毒を起こすことがあります。解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンやイブプロフェンなどはとくに気をつけて。
【乾燥剤】原料によっては毒になるものも
乾燥剤のなかでも、生石灰(酸化カルシウム)や塩化カルシウムが原料のものは要注意。水を吸収することで熱を発し、口にすると口の中や胃粘膜がただれてしまいます。
愛犬が毒になるものを食べてしまったら?
暮らしの中には、犬に毒になるものが思いのほかあるものです。「愛犬は大丈夫」と考えず、万が一の場合を想定し、対応法を知っておきましょう。
食べたものを見た場合、無理に吐かせようとせず、まずは落ち着いて動物病院へ電話!
「吐かせなくちゃ」とあせる気持ちになりがちですが、自己判断の処置で、かえって毒成分の吸収を早めてしまう場合もあります。まずはすぐに動物病院に連絡を! 食べた時刻、食べたものや量もメモしておきましょう。
犬は、食べてみて自分の体に合わないものは反射的に吐くことも。吐いたあとに、ケロッとして元気でも、食べたものによっては、動物病院で処置をしたほうがベターなケースも。念のため連絡し、その後の対応を確認しましょう。
状況から見て食べたかもしれないときは、愛犬がいつもどおりに見えても動物病院に電話して対応を確認!
部屋に吐瀉物があったり、愛犬の元気がなかったりした場合は、毒を口にした可能性も考えましょう。たとえ、愛犬がいつもどおりの様子でも、状況から疑われる場合は、動物病院に連絡して指示を仰いで。
<電話で伝えられるとベストなこと>
・何を何時ごろ食べたのか
・食べた量
・食べたものの調理法
・嘔吐をしたかどうか
・今の愛犬の状態
犬は、口に入れてから食べられるかを判断する傾向があることに加え、あるだけの量をすべて食べてしまいがち。そのため、口にしたものに毒性があれば、中毒のリスクがぐんと上がってしまうのです。とくに好奇心旺盛な若い犬は要注意。
お話を伺った先生/獣医師。日本獣医生命科学大学名誉教授。日本ペット栄養学会会長。佐向俊紀先生
参考/「いぬのきもち」2024年12月号『暮らしにひそむ犬に「毒」なもの』
イラスト/あらいのりこ
文/伊藤亜希子