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【獣医師監修】犬の椎間板ヘルニアの原因とおうちでのケア

犬の椎間板ヘルニアは、早期発見・治療が肝心です。そこで今回は、犬の椎間板ヘルニアの原因や症状、検査、診断、治療法、ホームケア、予防のポイントを解説します。飼い主さんに聞いた、愛犬の椎間板ヘルニア体験談もご紹介するので参考にしてみてください。

犬の椎間板ヘルニアってどんな病気? 原因やなりやすい犬種とは

パグ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
「椎間板」とは、背骨と背骨の間(椎間)にあり、クッションのような機能をもつ柔らかい組織のこと。木の年輪のように何層にも重なった丈夫な繊維輪で囲まれた中央に、柔らかな髄核がある構造をしています。

その椎間板が変形したり、中身が神経(脊髄)の通る空間に飛び出したりして神経を圧迫することで、強い痛みや麻痺の症状が突然起こるのが「椎間板ヘルニア」です。

椎間板ヘルニアの症例写真

ヘルニアMRI写真
上の写真は、椎間板ヘルニアの患部のMRI写真です。写真中央にあるアルファベットの「T」のように見える部分が、椎間板から内容物が飛び出している箇所。
このように飛び出した内容物が脊髄を圧迫することで、圧迫された部分やその周辺で痛みが生じたり、圧迫された箇所よりも後方全体に麻痺や機能障害が生じたりすることがあります。

椎間板ヘルニアの主な原因

加齢によるもの

加齢によって椎間板の変性が起こると、線維輪に亀裂が入ってそこから髄核が入り込むことがあります。髄核が入って厚くなった線維輪は、神経の通り道(椎孔)側(写真の上の方向)へと膨れて脊髄を圧迫し、椎間板ヘルニアを引き起こすおそれがあります。

脱力状態から激しい動きをする

体から力が抜けた状態で急に飛び起きると、椎間板の中身が飛び出して椎間板ヘルニアを引き起こすことがあります。吠えグセや興奮グセがある犬は注意が必要です。

椎間板ヘルニアになりやすい犬種も

ミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギー・ペンブローク、シー・ズー、ビーグル、ペキニーズなどは、遺伝的な軟骨の変化を起こす「軟骨異栄養性犬種」です。そのため、若い年齢から椎間板が硬くなる症状が起こりやすく、椎間板ヘルニアについても、比較的若い年齢での発症ケースが多く見られます。
なお、軟骨異栄養性犬種が椎間板ヘルニアを発症すると、同時に麻痺が起こり、重症化してしまうこともあります。

犬の椎間板ヘルニアの主な症状とは

ミックス
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
椎間板ヘルニアは軽症から徐々に進行する場合もありますが、ケースによっては、突然重度の症状があらわれることもあります。
また、犬の椎間板ヘルニアには「グレード」と呼ばれる以下の5つの進行段階があり、動物病院ではそのグレードに分けて処置を行うのが一般的です。

椎間板ヘルニアのグレード別の症状

グレード1

椎間板ヘルニアのなかでもっとも軽度な症状で、この場合、神経の機能はほぼ正常で、痛みのみが見られる状態です。主な症状としては、背中を触られたり抱き上げられたりするときにキャンと鳴く、好きだった散歩や遊びを嫌がったりするなどが挙げられます。

グレード2

グレード2になると、神経の圧迫が進んで麻痺が起こるため、歩行はできるものの、圧迫された神経より後ろにある足の力が入りにくくなったり、足の正しい位置や姿勢などを感じにくくなったります。

そのため、グレード1の症状に加え、後ろ足を動かしにくそうに引きずったり、足がふらついたりするほか、左右の足が交差してしまい、正しい位置を保ちにくい様子などを示しながら歩くような症状が見られます。

グレード3

グレード3は麻痺の症状がさらに強く、自分の力で麻痺した部分を自由に動かすことができない状況です。

ただし、動かせない部分の感覚は残っています。また、尿が溜まった状態を自分で感じて、自力で排泄することも可能です。

グレード4

グレード4では、グレード3と同じようにヘルニアの発症部位から後ろが自由に動かせなくなる症状が見られます。

さらに、体の表面の痛覚が失われたり、尿が溜まった状態を感じることができずに排泄のコントロールもできなくなったりするため、膀胱には常に尿がたまった状態になり、少量ずつ常に尿を垂れ流すような状態になることも。そのため、日常的なケアとして、定期的な排泄の介助が必要になります。

ただし、骨や筋肉など、体の表面よりもやや深い部分の痛みの感覚(深部痛覚)は残されている状態です。

グレード5

椎間板ヘルニアの中でも重度の状態です。この段階では、ヘルニアの発症部位から後ろが動かせなくなる症状とともに、深部痛覚まですべて神経の感覚が失われ、強い痛みも感じなくなります。そのため、麻痺した足を触ったりつかんだりしても、何も感じなくなります。

また、グレード4と同じく、尿が溜まった状態を感じることができず、排泄のコントロールもできないため、定期的な排泄の介助が必要になります。
※椎間板ヘルニアの症状は、神経が圧迫された場所や程度によって異なります。グレードにもよりますが、一般には、痛みの症状は病変部周辺でより強く見られる傾向があり、麻痺や機能障害の症状は、病変部から体の後ろの方(しっぽに近い方)全体にかけて見られます。

そのため、病変部が頚椎(首)の場合は、首周辺の痛みや首よりも後ろの四肢の麻痺などの症状を起こし、腰椎(腰)の場合は、背中や腰の痛みや後肢の麻痺などの症状が起こるでしょう。

なお、グレード3よりも症状が重度の場合は、椎間板ヘルニアの発症部位よりも後ろ全体に強い麻痺の症状が見られ、自由に動かせなくなります。例えば、腰付近で椎間板ヘルニアを発症した場合は、おすわりの姿勢のまま前足だけで体を引きずるように移動するようになるでしょう。

犬の椎間板ヘルニアの検査・診断・治療法とは

プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

椎間板ヘルニアの検査・診断法

椎間板ヘルニアを疑う場合、動物病院では問診や触診のほかに、レントゲン撮影や神経学的検査(主に、姿勢の変化に伴う動きや、適切な刺激に対する反応や反射行動などから、神経の反応を確認する検査)、血液検査などが行われます。
外科手術の必要がある場合には、これらの検査に加えてCT検査やMRI検査を行い、神経を圧迫している部分を特定することもあります。

椎間板ヘルニアの治療法

薬でコントロールする内科的治療

炎症を抑える薬や痛み止めなどの薬を使用し、犬の痛みの症状の緩和や、脊髄の負担や炎症を軽減することで、機能の回復を図る治療法です。内科的治療では薬の使用に加えて、安静に過ごすことが重要視されます。

ヘルニアによる症状が比較的軽く、また発症の初期段階であれば、内科的な治療によって重症化を防ぎ、症状の改善を促すことができる場合もあります。そのためにも、早めの動物病院の受診がポイントです。

手術を行う外科的治療

外科手術を行い、飛び出してしまった椎間板物質を取り除いたり、周囲の骨を取り除いて神経の圧迫を減らしたりする治療法です。ヘルニアの症状がより重度の場合に選ばれる治療法であり、神経へのダメージが長期間続かないうちに、なるべく早く手術を受けることが望まれます。

ただし、一度大きなダメージを受けてしまった神経は、速やかに適切な手当てをしたとしても、元通りにはならない場合があります。また、順調に回復したとしても、治るまでに時間がかかることも。そのため、手術をして神経の圧迫を取り除いても、症状が完治するとは限りません。傷ついた神経の機能がそのまま回復しなかったり、症状が改善せずに足を引きずるなど、歩き方が変わらなかったりといったケースもあります。

ただしいずれにしても、まずは速やかに受診をして手当てを受けることで、その後の回復の可能性を、より高めることはできるでしょう。愛犬の異変に気付いたら、速やかに動物病院に受診をし、必要な手当てについて相談をしてください。

犬が椎間板ヘルニアになったときのホームケアの注意点

ボーダー・コリー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

犬を触る・抱き上げる際は慎重に行う

背中や腰に痛みがある場合、犬は触られたり抱っこされたりするのを嫌がることがあるため、必ず声をかけてからゆっくり触り、痛みが激しい場合は無理して犬の姿勢を変えないようにしましょう。

また、犬の腰に負担をかけないよう、抱っこをする際は“犬が4本の足で自然に立っているときの姿勢”に近い形になるよう、犬の背中が地面となるべく平行になるように抱きかかえるのがポイントです。

運動については獣医師とよく相談する

犬が椎間板ヘルニアになった場合、安静にしておくのが基本です。しかし、ずっとケージの中にいるのでは、犬のストレスが溜まってしまいますので、かかりつけの獣医師と相談しながら、徐々に運動の計画を立てるとよいでしょう。

なお、椎間板ヘルニアの犬を散歩する場合は、階段などの上下運動を避ける、最初は無理して歩きすぎない、冬場は患部を冷やさないようにするなど、十分に注意しながら行ってください。

飼い主さんに聞いた! 愛犬の椎間板ヘルニアに気が付いたきっかけ・治療法は?

椎間板ヘルニアになったことがある?
※2021年8月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 139人)
犬の椎間板ヘルニアに関するアンケート(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
いぬのきもちアプリでは、「椎間板ヘルニア」に関するアンケート調査を実施し、139名の飼い主さんに回答をいただきました。

その結果、25%の飼い主さんが「愛犬が椎間板ヘルニアになったことがある」と回答。「ある」と回答した飼い主さんには以下のような質問も行いました。

※2021年8月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数139名)

愛犬の椎間板ヘルニアに気付いたきっかけ

犬の椎間板を疑うきっかけ
※2021年8月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 139人)
犬の椎間板ヘルニアに関するアンケート(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
アンケート結果を見ると、「歩きたがらなくなった」がもっとも多いものの、飼い主さんが愛犬の椎間板ヘルニアを疑うきっかけとなったと症状には、個体差があるようです。
なお「その他」の回答としては、「後肢が動かず、前肢だけで歩こうとしていた」「下半身に麻痺が見られた」など、比較的重度の症状が最初から見られたというケースも。

愛犬の椎間板ヘルニアの治療法は?

椎間板ヘルニアの治療内容
※2021年8月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 139人)
犬の椎間板ヘルニアに関するアンケート(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
アンケート結果を見ると、薬の内服をして治療したというケースが多く、外科的治療は全体の11%という結果に。「その他」では、「とにかく安静にした」という回答が多く見られました。

犬の椎間板ヘルニアの予防のためにできることとは

ビション・フリーゼ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

滑りにくい床にする

ツルツルと滑るフローリングの床はバランスが安定せず、犬が足腰を痛める一因となります。犬がよく歩く場所には、必要に応じて滑りにくい素材のマットを敷いてあげましょう。

高い所から飛び降りないようにする

高い所からの飛び降りを避けることで、足腰への負担を軽減することができます。

家の中を走り回る犬の場合は、なるべくソファに飛び乗ったり飛び降りたりしないよう、部屋の環境を整えましょう。飛び降りる場所が決まっているのなら、そこに段差やスロープを設置したり、衝撃を減らすようなフロアマットを置いたりするなどの対策もできます。また、ソファなどに上がらないようにしつけをするのも有効です。

体重管理

体重が重いと足腰に負担をかけるため、椎間板ヘルニアを予防するためには、適正体重の維持を心がけることが大切です。一般的には、犬の背中に手を当てて背骨が確認できなければ肥満とされていますが、犬の体型には個体差もありますので、肥満かどうかは獣医師に相談するのがよいでしょう。

犬の様子をよく観察し早期発見につなげよう

カニーンヘン・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の椎間板ヘルニアは、初期症状の段階で発見すればそれだけ治りやすい病気です。日頃から愛犬を観察し、もし愛犬の体の動きがいつもと違って少し変だと思ったら、できるだけ早めに獣医師に相談してくださいね。
参考/「いぬのきもち」2016年9月号『増えてきている病気から、注目の治療法まで一挙解説! 獣医師(スペシャリスト)が今、伝えたい犬の病気』
   「いぬのきもち」2016年11月号『3ステップで健康長寿を目指そう 骨&関節ケアのかんたんレッスン』
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
文/Yoko N
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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