犬と暮らす
UP DATE
【獣医師監修】犬の椎間板ヘルニアの原因とおうちでのケア
犬の椎間板ヘルニアは、早期発見・治療が肝心です。そこで今回は、犬の椎間板ヘルニアの原因や症状、検査、診断、治療法、ホームケア、予防のポイントを解説します。飼い主さんに聞いた、愛犬の椎間板ヘルニア体験談もご紹介するので参考にしてみてください。
石田 陽子 先生
石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
●経歴:ぬのかわ犬猫病院本院副院長/ぬのかわ犬猫病院中田分院院長 など
●資格:獣医師
●所属:日本小動物歯科研究会/比較歯科学研究会/日本獣医動物行動研究会
犬の椎間板ヘルニアってどんな病気? 原因やなりやすい犬種とは
その椎間板が変形したり、中身が神経(脊髄)の通る空間に飛び出したりして神経を圧迫することで、強い痛みや麻痺の症状が突然起こるのが「椎間板ヘルニア」です。
椎間板ヘルニアの症例写真
このように飛び出した内容物が脊髄を圧迫することで、圧迫された部分やその周辺で痛みが生じたり、圧迫された箇所よりも後方全体に麻痺や機能障害が生じたりすることがあります。
椎間板ヘルニアの主な原因
加齢によるもの
脱力状態から激しい動きをする
椎間板ヘルニアになりやすい犬種も
なお、軟骨異栄養性犬種が椎間板ヘルニアを発症すると、同時に麻痺が起こり、重症化してしまうこともあります。
犬の椎間板ヘルニアの主な症状とは
また、犬の椎間板ヘルニアには「グレード」と呼ばれる以下の5つの進行段階があり、動物病院ではそのグレードに分けて処置を行うのが一般的です。
椎間板ヘルニアのグレード別の症状
グレード1
グレード2
そのため、グレード1の症状に加え、後ろ足を動かしにくそうに引きずったり、足がふらついたりするほか、左右の足が交差してしまい、正しい位置を保ちにくい様子などを示しながら歩くような症状が見られます。
グレード3
ただし、動かせない部分の感覚は残っています。また、尿が溜まった状態を自分で感じて、自力で排泄することも可能です。
グレード4
さらに、体の表面の痛覚が失われたり、尿が溜まった状態を感じることができずに排泄のコントロールもできなくなったりするため、膀胱には常に尿がたまった状態になり、少量ずつ常に尿を垂れ流すような状態になることも。そのため、日常的なケアとして、定期的な排泄の介助が必要になります。
ただし、骨や筋肉など、体の表面よりもやや深い部分の痛みの感覚(深部痛覚)は残されている状態です。
グレード5
また、グレード4と同じく、尿が溜まった状態を感じることができず、排泄のコントロールもできないため、定期的な排泄の介助が必要になります。
そのため、病変部が頚椎(首)の場合は、首周辺の痛みや首よりも後ろの四肢の麻痺などの症状を起こし、腰椎(腰)の場合は、背中や腰の痛みや後肢の麻痺などの症状が起こるでしょう。
なお、グレード3よりも症状が重度の場合は、椎間板ヘルニアの発症部位よりも後ろ全体に強い麻痺の症状が見られ、自由に動かせなくなります。例えば、腰付近で椎間板ヘルニアを発症した場合は、おすわりの姿勢のまま前足だけで体を引きずるように移動するようになるでしょう。
犬の椎間板ヘルニアの検査・診断・治療法とは
椎間板ヘルニアの検査・診断法
外科手術の必要がある場合には、これらの検査に加えてCT検査やMRI検査を行い、神経を圧迫している部分を特定することもあります。
椎間板ヘルニアの治療法
薬でコントロールする内科的治療
ヘルニアによる症状が比較的軽く、また発症の初期段階であれば、内科的な治療によって重症化を防ぎ、症状の改善を促すことができる場合もあります。そのためにも、早めの動物病院の受診がポイントです。
手術を行う外科的治療
ただし、一度大きなダメージを受けてしまった神経は、速やかに適切な手当てをしたとしても、元通りにはならない場合があります。また、順調に回復したとしても、治るまでに時間がかかることも。そのため、手術をして神経の圧迫を取り除いても、症状が完治するとは限りません。傷ついた神経の機能がそのまま回復しなかったり、症状が改善せずに足を引きずるなど、歩き方が変わらなかったりといったケースもあります。
ただしいずれにしても、まずは速やかに受診をして手当てを受けることで、その後の回復の可能性を、より高めることはできるでしょう。愛犬の異変に気付いたら、速やかに動物病院に受診をし、必要な手当てについて相談をしてください。
犬が椎間板ヘルニアになったときのホームケアの注意点
犬を触る・抱き上げる際は慎重に行う
また、犬の腰に負担をかけないよう、抱っこをする際は“犬が4本の足で自然に立っているときの姿勢”に近い形になるよう、犬の背中が地面となるべく平行になるように抱きかかえるのがポイントです。
運動については獣医師とよく相談する
なお、椎間板ヘルニアの犬を散歩する場合は、階段などの上下運動を避ける、最初は無理して歩きすぎない、冬場は患部を冷やさないようにするなど、十分に注意しながら行ってください。
飼い主さんに聞いた! 愛犬の椎間板ヘルニアに気が付いたきっかけ・治療法は?
その結果、25%の飼い主さんが「愛犬が椎間板ヘルニアになったことがある」と回答。「ある」と回答した飼い主さんには以下のような質問も行いました。
※2021年8月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数139名)
愛犬の椎間板ヘルニアに気付いたきっかけ
なお「その他」の回答としては、「後肢が動かず、前肢だけで歩こうとしていた」「下半身に麻痺が見られた」など、比較的重度の症状が最初から見られたというケースも。
愛犬の椎間板ヘルニアの治療法は?
犬の椎間板ヘルニアの予防のためにできることとは
滑りにくい床にする
高い所から飛び降りないようにする
家の中を走り回る犬の場合は、なるべくソファに飛び乗ったり飛び降りたりしないよう、部屋の環境を整えましょう。飛び降りる場所が決まっているのなら、そこに段差やスロープを設置したり、衝撃を減らすようなフロアマットを置いたりするなどの対策もできます。また、ソファなどに上がらないようにしつけをするのも有効です。
体重管理
犬の様子をよく観察し早期発見につなげよう
「いぬのきもち」2016年11月号『3ステップで健康長寿を目指そう 骨&関節ケアのかんたんレッスン』
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
文/Yoko N
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
UP DATE