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【獣医師監修】犬に柿を与えても大丈夫。柿を食べるメリットと与え方を解説

日本の秋の風物詩ともいえる柿は、 基本的に犬が食べても大丈夫な果物です。柿にはビタミンCや食物繊維、ポリフェノールのタンニンなど犬の体によい栄養素が豊富で、 中毒を引き起こす有害物質は含まれていません。犬が柿を食べるメリットと与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬は適量なら柿を食べても大丈夫

柿の木の実が色づき始めると、本格的な秋の訪れを感じる飼い主さんも多いのではないでしょうか。そんな日本の秋の風物詩ともいえる柿は、犬が食べても大丈夫なのでしょうか。
答えはOK。柿には犬が中毒を起こすような有害物質は含まれていないので、食べさせても大丈夫です。

以前、いぬのきもちWeb編集室で犬の飼い主さんに「柿は犬に食べさせてもよいと思いますか?」という質問したところ、約半数の人が「食べさせてもよいと思う」と回答。一方、「食べさせてはダメだと思う」という人が約4割、「わからない」と答えた人が約1割。つまり、柿を食べさせてよいと思っている飼い主さんが半数いる一方で、半数の飼い主さんは「食べさせてよいとは思っていない」ということがわかったのです。
柿に含まれる栄養成分には、抗酸化作用のあるビタミンCやβカロテン、腸内環境をよくする食物繊維のペクチンや便秘の予防に役立つ不溶性食物繊維、体のエネルギー源となる果糖など、犬の体に役立つ栄養素が数々含まれています。糖分が多くカロリーが高いので、与え過ぎには注意しなければなりませんが、旬の時期に犬の体調に合わせて適量を与えるのであれば、とくに問題はないと考えられます。
まずは、飼い主さんが柿に含まれる成分のメリット、デメリットを知り、与える際の注意点を知っておくことが大事です。

柿のおもな栄養素|水分は約8割、糖分、食物繊維が豊富

飼い主の手から柿を食べている茶色のチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
柿に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー63kal
水分83.1g
タンパク質0.4g
脂質0.2g
炭水化物15.9g
灰分(無機質)0.4g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬が柿を食べるメリット|健康の維持と病気予防、アンチエイジング

柿にはさまざまな栄養素が含まれています。そのなかから、犬の体のためによい栄養素とその働きを紹介します。

ビタミンC|歯や骨の健康、解毒、ホルモン代謝、病気や老化の防止

ビタミンCには愛犬の長期的な健康維持に役立つさまざまな働きがあります。コラーゲンの合成、鉄分の吸収促進、解毒やホルモン代謝のサポート、さらには病気や老化の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用もあります。

柿に含まれるビタミンCは100gあたり70mgで、りんごの約5倍(可食部同量比)になります。ビタミンCが多いといわれるレモン果汁でも、100g中のビタミンC含有量は50mgなので、いかに柿がビタミンC豊富なフルーツであるかがわかります。

なお、人にとっては食べ物から摂取しなければならない必須栄養素のビタミンCですが、健康な犬は体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができます。そのため、長い間「犬にビタミンCの摂取は必要ない」と考えられていました。

しかし最近の研究により、犬にもビタミンC欠乏症があることがわかってきました。健康な犬でも5歳を過ぎればビタミンC合成能力が低下してくるとも考えられているので、シニア犬などでは食べ物やサプリメントからビタミンCの補給を図るとよいかもしれません。

βカロテン|健康な皮膚や被毛、粘膜、歯を維持

柿はβカロテンが豊富な果物のひとつです。
βカロテンは、犬の体内で必要な分だけのビタミンAに変換され、愛犬の健康維持に役立ってくれるものです。ビタミンAには、おもに皮膚や被毛の健康状態を保ち、粘膜を強くしたり歯をつくったりする働きがあります。
さらに、βカロテンはビタミンAとして働くだけではなく、それ自体が持つ抗酸化作用で、有害な活性酸素を除去して老化を防ぐ効果もあるといわれています。

ただし、βカロテンはおもに肝臓でビタミンAに変換されるので、たくさん摂取すると肝臓に負担がかかり、ビタミンA中毒を起こす可能性があります。毎日、柿を大量に与え続けなければ、とくに心配はありませんが、過剰摂取にならないよう注意しましょう。

食物繊維|腸内環境の整備と免疫機能の向上、便秘の予防・解消

食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。
水溶性食物繊維は、糖質の吸収を緩やかにして、食後の血糖値の急激な上昇を抑えたり、コレステロールを下げたりする作用があります。一方の不溶性食物繊維には、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便のカサを増やして腸を刺激し、排便を促す作用があります。

柿には、可食部100gに対して水溶性が0.2g、不溶性が1.4g含まれています。水溶性食物繊維の「ペクチン」は、新しい研究において、人間の血中コレステロールの正常化や食物アレルギーの抑制、抗腫瘍などの作用が発見されていますが、犬においてもそうした作用が期待できるかは明らかになっていません。

ただし、柿に含まれる食物繊維は、不溶性が水溶性の約7倍。不溶性食物繊維のほうが圧倒的に多いので、多量に柿を摂取すると、便が大きくなり過ぎ、かえって便が出にくくなるかもしれません。柿を与え過ぎないように注意しましょう。

また、柿にはポリフェノールの一種である「タンニン」も含まれています。タンニンには、組織や血管を収縮させる作用による胃の粘膜の保護や高血圧の予防、粘膜の痙攣を抑える作用による下痢の解消、抗酸化作用による生活習慣病の予防、老化防止などの効果が期待されています。

果糖|スピーディなエネルギー補給、ただし糖尿病には注意

糖質は犬が生きていくために必要なエネルギー源となる大切なものです。糖質は、「多糖類」「二糖類」「単糖類」の3つに分類されますが、柿に含まれているおもな糖は「果糖(フルクトース)」で、消化が簡単で吸収されやすい性質があります。一方、消化・吸収されやすいことから、食後の血糖値の上昇を心配する飼い主さんも多いようです。たしかに、100gで63Kcalとカロリーが高い果物なので、糖尿病などで獣医師から糖分を制限されている犬に柿を与えるのは、避けたほうが安心でしょう。

カリウム|利尿作用と高血圧の予防、ただし腎臓病には注意

カリウムには、体液の浸透圧を調整する作用があり、体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出する利尿作用で、血圧が高くなることを防ぐ役割を担っています。また、神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっていて、健康な体の維持にはなくてはならない大事なミネラルのひとつです。

ただし、腎臓病がある場合、カリウムの摂取には注意が必要です。腎臓の機能が低下すると尿へのカリウムの排出が減って、血液中のカリウム濃度が高まる「高カリウム血症」となるからです。「高カリウム血症」になると、四肢のしびれや筋力の低下、不整脈などを引き起こす危険があるので、腎臓病や心臓病がある場合は注意が必要です。

ナトリウムやカリウムなど電解質への影響は、健康だから大丈夫!とは言い切れないことも多いです。とくに高齢の場合は、定期的に血液検査などで体の状態をチェックしてください。

水分|約80%が水分、栄養と一緒に水分補給

水分が多い果物というイメージはあまりないかもしれませんが、柿の約80%は水分です。愛犬にもっと水を飲んでもらいたいとき、また食欲が落ちているときでも、甘みを好む犬なら柿に興味を示して食べてくれるかもしれません。少しずつ食べながら水分と栄養補給を同時に行うことができます。

渋柿・甘柿どちらも与えて大丈夫?

ソファの上に座り、まっすぐ前を見てペロリと舌なめずりしている焦げ茶色のミニチュア・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
生の渋柿には、嘔吐や下痢を引き起こす恐れのある「アルカロイド」という有害成分が含まれています。わざわざ飼い主さんが渋柿を愛犬に与えることは考えにくのですが、木の下に落ちている渋柿を愛犬がかじってしまう可能性もゼロではないでしょう。
愛犬が散歩の際に落ちている柿をかじったりしないよう、注意しましょう。

愛犬に与えるなら、人間も食べられる甘柿を。ただし、渋柿で作った干し柿はアルカロイドが消失しているので、犬に与えても問題ありません。

ちなみに、お菓子の「柿の種」「柿ピー」は形と色が柿の種に似ているから付いた名称であって、原料および成分に柿はまったく含まれていません。人間用に作られた米菓には、塩分や調味料が使われているので、犬に与えないようにしましょう。

犬に柿を与えるときの注意ポイント|皮を剥いて種を除き、喉に詰まらせないよう小さくカット

青い絨毯の上に座り、前足を舐めている茶色の柴犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

与えてよい部位

柿の葉やヘタはもちろん、皮も消化しにくいので、取り除いてください。市販されている柿のなかには種がないものもありますが、庭の木からもいだ柿や農産物直売所などで売られている柿のほとんどに種があります。柿の種は大きく、犬が誤って飲み込んだら食道に詰まらせる恐れがあります。運よく胃から腸まで到達しても、腸管に詰まれば腸閉塞を起こしかねないので、愛犬が誤飲しないよう注意が必要です。

与えるときの適量

犬に柿を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)30g~59g(1/4個~2/5個)
中型(6~15kg)68g~136g(1/2個~1個)
大型(20~50kg)168g~334g(1・1/4個~2・1/2 個)

※小さめの柿1個135g(可食部123g)と して計算
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理のしかた

完熟して実がトロトロになっている柿は、犬も食べやすいのですが、そこまで熟していない柿は喉に詰まらせないような大きさにカットして与えます。小型犬やご飯にトッピングする場合は、すりおろすのもおすすめです。

まれにタンパク質がアレルギー症状を引き起こすことも

柿にはわずかですがタンパク質が含まれています。食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応する現象なので、まれに柿を食べてアレルギーを起こす犬もいます。最初はまず少量から与えてみて、皮膚の痒みや湿疹、下痢、嘔吐などが起こらないことを確認してから、その後も与えるようにしましょう。

犬は柿を食べても大丈夫。種の誤飲には気をつけて

柿は犬が食べてもとくに問題のない果物です。おやつやご飯のトッピングに取り入れて、愛犬と一緒に秋の訪れを楽しむのもよいかもしれません。ただし、散歩の途中や庭の柿の木から落ちた渋柿などを愛犬がかじらないよう、くれぐれも注意を。また、柿の種も犬が食べてしまったら、喉に詰まらせる可能性があります。柿の種を愛犬が誤飲しないよう、床に落ちた種は必ず拾い、犬の口に入らないようきちんと始末しましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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