あらゆる肌トラブルの根源ともいわれる冬の乾燥は、犬にとっても大敵です。犬は人よりも皮膚が薄いのでダメージを受けやすく、乾燥が原因で病気やトラブルを引き起こすこともあります。
今回は獣医師の山岸建太郎先生が、乾燥が原因となりうる病気・トラブルを解説します。少しでも異常を感じたら、動物病院を受診してくださいね。
犬の皮膚は人より薄く、乾燥が皮膚の病気の引き金になることも
犬は全身が被毛でおおわれているぶん、人よりも皮膚が薄いです。空気が乾燥する冬は、特にダメージを受けやすい季節でもあります。乾燥を防ぐには、とにかく「保湿」をしてあげることが大切。生活環境とお世話を見直して、病気やトラブル知らずの冬を愛犬と過ごしましょう。
乾燥によるバリア機能の低下が、トラブル・病気の原因に
乾燥は皮膚のバリア機能を低下させるため、さまざまなトラブルを招き、病気の原因になります。さらには目にも影響が及ぶこともあります。
コロナ禍では、お出かけの機会が減りエアコンの効いた室内で年じゅう過ごす犬が増えているそう。続けると筋力や寒さへの耐性が低下し、冬は暖房器具の近くで過ごしがちに。肌が乾燥しやすくなるので注意が必要です。
乾燥するとこんな病気やトラブルが
乾燥が原因となる病気には、次のようなものがあります。
ドライアイ(乾燥性角結膜炎)
皮膚だけでなく、冬は目も乾燥しやすくなります。ファンヒーターや暖房など、熱を発する器具に近づきすぎると、目が乾燥して涙の量が減少し、ドライアイを招くことがあります。
マラセチア性皮膚炎
皮膚が乾燥すると、体が失われた水分を補おうと、皮膚表面から皮脂を排出します。この皮脂をエサに、酵母菌の一種であるマラセチアが過剰に増殖するとマラセチア性皮膚炎を発症し、ベタつきやフケ、赤みなどが出ます。
膿皮症
乾燥によって皮膚の細胞と細胞の間にある保湿成分が失われると、細胞に隙間が発生します。そこで常在菌であるブドウ球菌が増殖すると、膿皮症を発症することが。かゆみや脱毛、皮膚の赤みや湿疹を引き起こします。
アトピー性皮膚炎
生まれつき皮膚を守る機能が弱く、生活環境にアレルギーをもっている犬に発症するのがアトピー性皮膚炎。慢性的なかゆみを伴う疾患で、少しの刺激で炎症になります。とくに乾燥が大敵で、症状が一気に悪化することもあります。
乾燥によるトラブル
乾燥が原因となるトラブルには、次のようなものがあります。
目ヤニ・充血など
ドライアイで眼球の表面が乾き、涙の量が減少すると、結膜が充血したり、ねばっとした目ヤニが出たり、角膜に炎症を起こすことが。シー・ズーやチワワなど、目が大きい犬種はとくに乾燥しやすいので注意が必要です。
フケ・赤み
皮膚が乾燥すると、皮膚を刺激から守る機能が低下し、角質がフケとなってはがれ落ちます。また、刺激に対して肌が過剰反応し、赤みが出ることもあります。
かゆみ
犬の皮膚が乾燥し、皮膚から水分や油脂が失われると、かゆみを生じることがあります。かゆみが出た部分を犬が爪などでかきこわし、傷ができると皮膚の症状はさらに悪化してしまいます。
人にとっても乾燥は大敵ですが、犬にとっても同じです。乾燥による皮膚や目の病気・トラブルに気をつけ、少しでも異常を感じたら病院を受診するよう心がけてくださいね。
お話を伺った先生/山岸建太郎先生(本郷どうぶつ病院院長 日本獣医皮膚科学会副会長)
参考/「いぬのきもち」2023年2月号『乾燥を放置するととっても危険!病気・トラブルを防ぐ冬の保湿ケア』
文/宮田あゆみ
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。