人と接しているように、愛犬にも話しかけてしまう飼い主さんは多いはず。それはとても重要で、とくにシニア犬には「見て話す」という行動が、大きな役割を果たしているようです。
今回は獣医師の佐々木彩子先生に、シニア犬にとっての「見て話す」の重要性や、正しい方法を教えていただきました。
シニア期は3つのことを意識して
犬は年をとると、視覚や聴覚、体の動きなどが鈍くなります。犬は、老化による変化が自分ではわからないので、今までできていたことができなくなり、不安や戸惑いを感じたり、ときにはいらだちを覚えたりすることもあります。
でもそんな不安や不調も、「見て話す」「触れる」という基本的なお世話と、犬の「立つ」行為についてそれぞれ見直せば解決できるでしょう。いつまでも明るく元気な愛犬でいてもらえるように、さっそく今日から実践してみてください。
今回は3つのうち、「見て話す」について詳しくお伝えします。
見て話すことで、思いが伝わりやすい
犬は年をとると不安から吠えたりしがちですが、飼い主さんに笑顔で見つめられれば絆を深めるホルモンが分泌され、安心感がアップするそう。さらに声をかければ、長年のつきあいから、シニア犬は飼い主さんの話をなんとなく理解するため、不安が解消されやすく問題行動も抑えやすいです。また話すことは、愛犬の脳の活性化にも効果的です。
基本の「見て話す」
シニア犬は視力が衰えがちなので、できるだけ愛犬の正面から名前を呼んで笑顔で見つめ、こちらの存在を知らせてください。続けて、耳の近くでゆっくりはっきり話しましょう。背後から声をかけたり、早口や怒鳴り声は、混乱や不安を助長するのでNGです。
こんな「見て話す」も取り入れて
愛犬が見つめてきたら
シニア犬は不安から、相手をしてほしくて自ら見つめてくることもあります。このとき「犬からのおねだりはダメ」と頭ごなしに無視するのではなく、まずは目を見て「どうしたの?」などと声をかけてください。
お手入れ中の「見て話す」
シニアになると我慢がききにくくなって、お手入れ開始早々に嫌がることも。そのためお手入れ中は、名前を呼んで見つめたあと、ほめたり励ましたりして不安をぬぐい、愛犬に「よし、がんばろう!」と自信をもたせてあげてください。
散歩中の「見て話す」
外でも積極的に見つめ合って声がけをしてみて。ただ闇雲に話しても周囲の物音に紛れがちなので、「段差があるよ」などの注意喚起や、イイコでいたときのほめ言葉など、意味のある声がけを心がけるとGOOD。
シニア期の犬にとって、飼い主さんからの「見て話す」は不安や不調を和らげてくれそうですね。散歩中やお手入れ中など、日常生活でできることが多いので、ぜひ実践してみてくださいね。
お話を伺った先生/佐々木彩子先生(キュティア老犬クリニック獣医師)
参考・写真/「いぬのきもち」21年1月号『愛犬の心をつかみ、アンチエイジングにも! 見て話す 触れる 立つ 3つのキーワードで考えるシニア犬との接し方』
文/宮田あゆみ