犬が肥満になると病気にかかりやすくなり、健康的に生活できる健康寿命が短くなってしまいます。最悪の場合、命に関わることもあるので注意が必要です。
今回は、犬の肥満がもたらすリスクについて、獣医師の牛草貴博先生にお話を伺いました。
犬の肥満のリスク(1)肥満症になる
肥満症とは、太りすぎが原因で何かしらの異常や病気が起きている状態のこと。たとえば、糖尿病や脂質代謝異常、脂肪肝、呼吸器の低下、関節炎などが挙げられます。
減量すると改善が期待できるので、治療の一環としてダイエットを行います。
犬の肥満のリスク(2)呼吸器障害を起こしやすくなる
とくに呼吸器の問題に注意したいのは短頭種でしょう。犬が太ると首まわりに脂肪がついて気道を圧迫しますが、短頭種は生まれつき気道が狭い犬も多いため、呼吸が苦しくなりやすいのです。
また、短頭種はのどの奥にある軟口蓋(なんこうがい)が長い犬も多く、太って軟口蓋に脂肪がつくことによって、呼吸が苦しくなるケースも珍しくありません。
犬の肥満のリスク(3)病気が悪化しやすくなる
犬が肥満になると、以下のような病気が悪化しやすくなると考えられています。
熱中症
肥満の犬は厚い皮下脂肪に覆われているため、体内に熱がこもりやすくなります。それに加え、首まわりに脂肪がついて気道が狭くなると、熱を逃すために呼吸をしても体温が下がりにくくなるため、肥満の犬は熱中症になりやすく、悪化しやすい傾向に。
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
膝蓋骨脱臼は「パテラ」とも呼ばれ、ひざのお皿が外れる病気です。進行度合いによって4つのグレードに分けられますが、肥満が悪化原因のひとつと考えられています。重い体を支えるひざ関節に慢性的に負担がかかることによって、ひざのお皿がより外れやすくなってしまうのです。
犬の肥満のリスク(4)命に関わる病気を引き寄せる
犬が肥満になると、体に蓄えられた脂肪から炎症を引き起こす物質が絶えず分泌されるようになり、その影響で体内に毒性の高い物質が増えると、体のさまざまな場所に炎症が起こります。
この炎症が免疫機能やホルモンに影響を与えることで、がんやすい炎、糖尿病といった命に関わる病気を引き起こしていると指摘されています。
犬の肥満のリスク(5)関節に負担がかかり歩けなくなることも
ひざやひじの関節、股関節などに異常がなかった犬でも、肥満が原因で過度な負担が慢性的にかかったことによって、関節の軟骨などが損傷することがあります。
関節の痛みや腫れ、こわばりなどが続いて関節が変形していく、変形性関節症になってしまうケースもあるでしょう。
そのほか犬の肥満は、厚い皮下脂肪によって臓器が見えにくくなるなどの理由から、手術に時間がかかるといった問題をかかえることもあります。犬の肥満は食べ物を与えすぎてしまう飼い主さんにも責任があるので、肥満の怖さを知って今すぐ意識改革をしましょう。
お話を伺った先生/牛草貴博先生(獣医師 獣医学博士 関内どうぶつクリニック代表 動物再生医療センター病院技術顧問)
参考/「いぬのきもち」2022年9月号『「ぽっちゃり」はかわいいけれど…肥満は思ってるよりずっと怖い!』
文/長谷部サチ
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。