犬と暮らす
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『いぬ・ねこのきもち』編集室が人気No.1*フードブランドのフランス工場に現地取材!
*※「いぬのきもち・ねこのきもち」アプリユーザー調査の「みんなが選ぶ!本当に使って良かった犬/猫グッズランキング」 ドッグフード部門・キャットフード部門でそれぞれ第1位を獲得。※2023年11月~12月実施(回答数:いぬ348・ねこ561)
最新鋭の設備と徹底した品質管理の現場を見学
ロイヤルカナンの全ての製品を開発しているのは、フランスの栄養学の専門家チーム。 犬と猫が健康でいるために、科学と観察に基づいた、最適な栄養バランスのフードを開発・製造するための全てのノウハウや情報が、集約されています。
そして、世界各国にある工場の製造管理体制はまったく同じで、どこで作っても差が出ないよう徹底しているそう。以前、編集室では韓国工場も取材しましたが今回、そのことをこの目で確認できました。品質が同じというのは飼い主からみても安心です。
私たちは、スタッフの案内のもと、各国のメディアの方々と一緒に工場見学に参加しました。
工場に入る前に、まずは見学用の服を着て、ヘルメットやグラスをかけ、手や靴裏を消毒。印象的だったのは、取材のために持ち込むペンも、万が一紛失した際に探知機ですぐに見つかるものを手渡されたこと。犬と猫のための安全かつ高品質なフードを作る姿勢に、妥協は一切ありません。
パッキングの機械は日本製を導入!
特に、ロイヤルカナンでは、数多くの種類のフードを製造しているため、違う製品を作るたびにクリーニングは徹底しているそう。
完成したフードは、18カ月品質がキープできるようになっており、工場内では、サンプルを見ることもできました。
それぞれの犬猫に最良のフードを作るためにかかせないペットセンター
その数の多さは、多種多様な犬猫の細かなニーズに合わせていくうちに増えていったそう。犬猫ファーストな姿勢がここでも伺えます。
そんな犬種・猫種ごとに最適な形状のキブル(粒)を追求するためにできたのが、
犬と猫がどのようにフードを食べるかを、日々観察・研究しているペットセンター。
日々の健康チェックはもちろんのこと、犬はお散歩を日課とし、猫はグルーミングが施され、くつろぎやすそうなソファや庭などでまどろんでいました。
約40人のスタッフがお世話をし、お部屋も相性の良いコ同士にするなど、ストレスのない環境を意識しているそう。
世界64か国・550人以上の獣医療関係者を迎えてのシンポジウムを開催
今年のテーマの「健康な子犬・子猫期」のほか、獣医師としてのキャリア構築のためのヒントの共有などが行われました。
一見、一般の飼い主にとってはあまり関係のない内容にも見えますが、獣医師のメンタルケアについての講義などもあり、私たちが犬猫を託す獣医師さんの健康も、犬猫にとって不可欠と感じました。
そのほかにも、子犬・子猫の生後1年のケアが大切ということ、中でも「成長曲線」を理解する大切さと、成長に合わせて適切なタイミングで適切な栄養価を与えることの重要性を訴えていたのが印象的でした。
飼い主として気になることを、3名のスペシャリストに直撃!
1.オリビエ・レイモンドさん
ノルウェーから南フランスまで約 30 年にわたり従事。べテリナリー事業部とコーポレート・アフェアーズの両部門の責任者に加え、ロイヤルカナン財団の会長にも就任。ルースティグリくんという16才のヨーロッパ猫(ミックス)を飼っています。
シンポジウムは今年で23年目を迎え、毎年様々なテーマを議論しています。
ターゲットはプロの獣医師ですが、シンポジウムでは科学的な内容など、最新情報を共有することで、ペットを飼う際のケアの質が向上すると考えています。
今回のような、メンタルの悩みなどは、ヘルスケアのプロである獣医療関係者がしっかり認識をして、解決していく。そうすることで獣医師たちのよりよい行動・気持ちにつながり、飼い主さんにも還元できるはずです。
Q.ロイヤルカナンが目指していること、製品で最も重きを置いていることは何ですか?
犬猫の健康維持や増進のために、日々製品を改善していくことが目標であり、栄養価の高いフードをいかに安定的に提供できるかということが命題です。
そのためには、栄養価がそれぞれの犬猫にベストなフードを提供すること、そして獣医師などペットに携わるプロの人々に、しっかりとサービスと知見を提供することの両軸が大切だと思っています。その意味でも、こういったシンポジウムで獣医師同士が議論を交わすことで品質が向上することを期待しています。
また、製品工場においては、約30年前から日本の品質管理メソッドを採用しています。あわせて日本製の機材も導入しており、特に梱包プロセスは日本の品質管理の体制が反映されています。
栄養価の高いペットフードの知識がフランス側でしっかり確立され、日本の非常に良いパッケージング技術で届けられるという、合わせ技とも言えるでしょう。
ペットフードには離乳食と同様の品質の保たれ方が必要
犬猫のペットフード栄養価の基準は、人間の赤ちゃん用の離乳食の栄養価の基準と、非常に類似性の高い品質の保たれ方が必要というのが業界の考え方です。例えば、赤ちゃんがミルクを飲み続けるのと同じように、わが家の猫・ルースティグリは同じ栄養価のフードだけを数年食べ続けています。
Q飼い主さんの中には動物病院に連れて行きたがらない方もいますが、どのような啓発が必要でしょうか?
この10年間、ロイヤルカナンでは、毎年「動物病院に連れて行こう!」というキャンペーン・啓発活動を行っています。「ただ飼うのではなく、きちんと獣医師に関与させる」という活動です。
特に猫科の動物のジャガーやトラ、ヒョウなどは孤立する動物なので、何か問題があっても隠します。それはイエネコも同様です。飼い主さんに見えていないものが獣医師に診てもらうことで分かることもありますし、病気などの早期発見にもつながると思います。
Qフランスでの保護犬猫活動はどのような状況でしょうか?
フランスでは保護犬猫活動件数が伸びています。コロナの時期2020年~2021年の1年間をみただけでも、引き取られた数は多くなっています。一方で、コロナが落ち着いたことでのペットの放棄問題は、フランスでも高まっていく可能性があります。
ロイヤルカナンでは、「レスポンシブルペットオーナーシップ=責任あるオーナーになる」というキャンペーンを実施しています。新しい家族になることはどういうことなのか、どうやって犬猫に適切なケアをすべきかをプロモーションしています。
Q最後に会長をされている「ロイヤルカナン財団」について教えてください
ロイヤルカナン財団の目的は「動物に還元」というループを描くこと。そこには、動物が果たす社会での重要な役割が推進されていくべきという目的があります。
つまりは、犬猫がもたらす効果をもっと発信していきたいと思うのです。
今までに、メキシコでの救助犬活動や、イタリアでの視覚障害のある方へのケアとして猫が活躍している現場など、数多く支援しています。
世界各国からプロジェクトへの申請が毎年40件ほどあり、それらを厳正に審査し、6~7件サポートをしています。実は、まだ日本でのプロジェクト実施は実現していませんが、今年は期待しています。
2 ポーリン・デブリンさん
ポーリーンさんは 25 年にわたり、マース ペットケアに従事。
2019 年に研究開発部門に戻り、エマルグにあるキャンパス(本社)のデザインチームで、ペット・製品サイエンスチームと、健康体重と子犬・子猫期に戦略的焦点を当てた健康プラットフォームの両方を率いています。仕事をしていないときは、南フランスの美しい風景の中で、言うことを聞かないテリアを追いかけているそう。
まずきちんとケアをすることですね。犬猫も5頭に1頭が生後2ヶ月以内で死亡してしまうというデータがあります。
その多くがケア不足で起きてしまいます。生まれた直後から2ヶ月以内は非常にケアが重視され、成長をしっかり観察していくということが必要です。
犬猫の正しい成長の度合いをみるものに「成長曲線」というものがあるのですが、
私たちは、この成長曲線をしっかりと統計として出すためのプロジェクトに従事してきました。
その成長の度合いは、早すぎても遅すぎても過ぎても良くありません。
飼い主さんも獣医療関係者も、正しい成長曲線で、愛犬愛猫が成長を続けているかどうかを確認することは大切です。
Q体重に関してですが、子犬子猫は少しぽっちゃりしている方がキュートだと思われがちですが、いかがでしょうか。
成長的には正しい見方ではありません。
何をフードとして与えるか、そしてどういう形でフードを提供するかといったところが非常に重要になってくると思います。
特に小さな時からそれをやっていかないと、その成長カーブが狂いますし、体重も変わってきてしまいます。
また、肥満で生まれてきた犬猫は、体質的に肥満細胞を持っている可能性が高いと思います。
そうすると成長曲線が、うまく適切な形でカーブを描かないことがあるのです。
成長曲線を管理すること、そして体重管理をすることで、
寿命は少なくとも2年は伸びると、ロイヤルカナンのリサーチでは実証しています。
人と比べると犬猫の薬の開発はまだまだこれから
獣医師によって処方される犬猫への薬の開発は、これまでもいろいろ進んできたと思いますが、
それを人間の子供向けの薬剤開発と対比したときには、獣医学の世界では薬の発達はまだ伸びしろがあると思います。
先程5頭に1頭が、2ヶ月以内に死んでしまうと言う数字を出しましたが、
これがもし人間の世界だったとしたら、もってのほかだと思います。
今回、「成長曲線」がシンポジウムの1つのテーマになっていますが、健康的な成長はどうすれば果たせるのかを、シンポジウムに参加した獣医師の先生の人たちに理解いただき、
その知見をもって、自信を持って子犬子猫たちをケアしてくれるような担い手になってほしいなと願っています。
Qフードが日本では290種類以上ありますが、今後も増えていくのでしょうか。
そしてフードの10年後の見通しがあれば教えてください。
ロイヤルカナンとしては、今後10年もペットフードの進化はずっと続いていくと思います。
そうすれば私自身もエネルギッシュに仕事を続けていけると思っています 笑。
また、今後、栄養強化がさらに進むことによって、10年後はよりフードのカスタマイズ化が進んでいくのでないかと思っています。
ここからはあくまでも私の夢を語りますが……。
まずDNAテストをして、オーナーさんがこの愛犬・愛猫の健康リスクを特定して、その情報に基づいたフードを調達できるようになります。
例えば、どういう食事をすることで、食べやすさや味など、好みのものをずっと食べていけるかをモニタリングしていくこと。
それによって、適量のペットフードや理想の体重コントロールもでき、情報に基づいて適切なペットフードをカスタマイズして提供する。
そのことでより長生きが可能になるのではないかと思います。
3 タバサ・フキーさん
元開業獣医師であり、現在は獣医栄養士の認定資格を持ち、ロイヤルカナンのグローバル R&D 部門で 5 年以上のキャリアを持つ。健康体重と糖尿病というロイヤルカナンの優先分野に焦点を当て新しく創設されたヘルスプラットフォームチームの科学スペシャリストとして活躍。愛犬のテリアを飼っています。
Q健康寿命を延ばすために飼い主さんができることはありますか?
飼い主さんには、まずはその犬猫の「健康寿命」を意識して飼うことが、どれだけ重要かということの認識を高めてほしいと感じます。
そのためには、生後に施すべきケアがあります。まずそれを理解し、行動することが、その犬猫たちの将来を形作ると思います。
健康的な体重管理をするというケアはもちろん大切ですし、大人になった時にどういった疾患が出やすいかというリスクも、それまでに栄養がどれだけ提供されたかということと、相関関係にあります。
疾病の原因や、健康寿命が短くなることは何かしらの原因がありますが、「体重管理」は、健康寿命を延ばすための重要なケアだと思います。
Q生後できるだけ早めのケアが必要とのことですが、生後すぐに迎え入れることが難しい場合でも、何かできることはありますか?
例えば、生後3ヶ月のコを迎えたとしても、遅くはありません。それ以上だったとしても、いつからでも遅くはありません。もちろんシニアでもです。
より良く生きてもらうために、できるタイミングからすぐに正しいケアを始めることが大切なのです。
適正な量で正しい栄養価のフードを与えることは、今回のシンポジウムでも注目されている「成長曲線」に沿って成長しているかを観察することにつながり、予防医学的な行動を取ることができます。
犬猫の一番近くにいる飼い主さんが、受け身にならず積極的にケアをすることが大切
幼少期のケアもですが、大人になっても、老犬老猫になっても正しい予防的な行動は、非常に意味があります。
獣医師に相談すること、そして質の高い栄養価を持ってケアをすることなど、深みのあるケアをしっかり施していくこと。そのためにも、飼い主さんには、受け身ではなく、自分から積極的にケアをすると言う姿勢が大事だと思います。
そういう姿勢を持っていれば、何かいつもと違う変化が起きたときに、その度合いが小さくてもすぐ気づくことができるからです。
ですから、積極的かつ予防的であるということが、幼少期にとっては一番大切ですが、シニアであっても、その後の犬猫生をより良く送るための助けになると思います。
Q糖尿病が専門分野とのことですが、
ペットの糖尿病が増えているようです。気を付けるべきことはある?
肥満体質になれば糖尿病に対するリスクが高まるという相関関係があります。特に猫の場合は、スリムな猫に対して肥満の猫は糖尿病のリスク4倍が高いと言われています。
糖尿病の初期症状の1つとして、お腹がすきすぎるという状態があります。こういう症状は未病のサインとして注目できますし、動物病院で治療すれば症状が改善するという期待があります。
もし肥満体質のまま糖尿病を発症してしまったケースでも、治療とアフターケアをしていけば、病状の改善は期待できると思います。
取材を終えて・・・
それぞれ個性のある犬猫1頭1頭が、いかに健康的で幸せな“犬生”“猫生”を過ごせるかを、全力を注いで進化させようとしていることが実感でき、1人の飼い主としても嬉しい発見でした。
また、より良い製品作りのためのフード研究はもちろんのこと、ペットに直接携わる獣医療関係者の体調面などもフォローすることで、ペットにとってベストな環境を作り出そうとしていること、
さらに、ペットが私たちの世界をより良くすることができるという、広い視点からの取り組みを目の当たりにしました。
もちろん、犬猫と一番接している飼い主が、「未病」のために、積極的にケアとコントロールをしていくことも忘れてはなりません。
10年後には、よりカスタマイズされたフードが登場しているのではないでしょうか。
今後の動きに注目していきたいと思います。
撮影/石原さくら
取材協力/ロイヤルカナン ジャポン合同会社
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