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【獣医師監修】犬に生のイカは絶対にNG。スルメは? 生のイカを食べてしまったときの症状と対処方法

犬に生のイカを食べさせてはいけません。食べた瞬間に中毒を起こしたり、死に至ったりするわけではありませんが、生のイカは犬の体に害を及ぼす可能性が高い食べ物です。理由は異なりますが、スルメも犬にはNG。それらの理由と万が一誤食してしまった場合の対処法を解説します。

佐野 忠士 先生

犬は生のイカを食べてはいけない

クローズアップ新鮮なヤリイカの市場
jeep5d/gettyimages
タンパク質が豊富で日本の食卓ではおなじみのイカ。愛犬に食卓からお裾分けしてあげたくなるかもしれませんが、犬に生のイカを与えてはいけません。愛犬がイカの刺身を一切れ食べたからといって、すぐに中毒を起こす、死に至るというわけではありませんが、イカは生でも加熱しても消化に時間がかかる食べ物なので、消化不良を起こす可能性があります。

また、生のイカには「アニサキス」という寄生虫がいる場合があり、食中毒やアレルギーの原因になることも。さらに、新鮮な生のイカに含まれる「チアミナーゼ」という酵素がビタミンB1を破壊するため、健康を害する可能性もあります。

これらの理由から、イカは犬に与えてはいけない、とくに「生のイカは絶対にNG」と覚えておいてください。

犬が生のイカを食べたときに見られる症状|嘔吐、ふらつき、けいれん、立ち上がれない、など

子犬たち
犬が生のイカを食べた場合に考えられる症状を紹介します。

中毒(アレルギー)が考えられる症状

犬が以下を食べた場合、以下のようなアレルギー症状が見られることがあります。

ビタミンB1欠乏症(チアミン欠乏症)の場合

〈初期症状〉
食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、など

〈進行症状〉
めまい、ふらつき、筋力の低下、など

〈重篤症状〉
けいれん、昏睡状態、など

脚気の場合(最近は「多発神経炎」と診断されることが多い)

背中や四肢の筋肉が萎縮、立ち上がれない、など

アニサキス症の場合

胃のけいれん(お腹を床につけて苦しそう、背中を丸めてお腹を引っ込めじっとしている、動かない)、嘔吐を繰り返す、など

症状が出るまでの時間

食べてから短時間で症状が現れる場合もあれば、数時間たってからの場合もあります。食べたイカの状態や量、犬の体調や体質によっても違いがあるので、一概にどのくらいで症状が現れるとはいえません。少しの量なら・・・と安易に与えないようにしましょう。

危険な量の目安

明確な危険目安量は報告されていません。同じ量でも個体の体重や体質などによって作用が異なるので、食べてしまった場合は、摂取量をできる限り正確に把握しておくことが大切です。

犬がイカを食べてしまった場合の対処方法

白い小型犬(MIX)の顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
目を離したすきに愛犬がテーブル上のイカ料理を食べてしまった場合は、どのように対処したらよいのでしょうか。万が一の場合の対処法と病院での処置について紹介します。

普段と違う様子が見られたら病院へ

愛犬が加熱したイカを少し食べてしまったくらいなら、すぐに重篤な症状に陥るわけではないので、慌てて病院に駆け込む必要はありません。しばらく犬の様子を観察し、体調に何らかの変化があるようなら獣医師の診察を受けてください。

もし生のイカを食べて何らかの症状が現れている場合や、加熱したイカでも大量に食べてしまった場合は、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。飼い主が自己判断で無理やり食べたものを吐かせようとするのは、たいへん危険です。催吐処置は医療行為なので、飼い主さんは絶対にしないでください。

なお、病院でスムーズに診察&処置を受けるために、以下の内容をメモしていきましょう。

  • 誤飲・誤食した時間(何時間前か)

  • 誤飲・誤食したイカの状態(生か、加熱したものか)

  • 誤飲・誤食した(と思われる)おおよその量


大事なのは、飼い主さんがパニックにならないことです。万が一のときのために、深夜でも受診できる動物病院を探しておくことをおすすめします。

病院での治療方法

病院で行うおもな治療は以下のとおりです。

血液検査、超音波検査など

イカを食べたことによる影響を調べますが、血液検査ですぐに大きな変化が出ないこともあります。超音波検査では、胃のなかの量を把握します。

催吐処置・摘出処置

食べた量が多く、まだ胃の中に残っていると考えられる場合は、胃の中身を吐かせる「催吐処置」を行う場合があります。嘔吐促す薬剤を使い、体に負担をかけないよう注意しながら行われますが、犬が吐ききれない場合には全身麻酔をかけて内視鏡や開腹手術によって取り出すこともあります。

点滴・投薬

ビタミンB1欠乏症の症状が認められる場合は、ビタミンB1を投与するための注射や点滴を行い、症状の改善を図ります。また、嘔吐などで脱水が生じることもあるので水分補給のために点滴をします。

犬がイカを食べてはいけない理由|チアミナーゼ、寄生虫アニサキスに厳重注意

砂利の上に立っている黒&茶のミニチュア・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
なぜ犬に生のイカを与えてはいけないのか、その理由を解説します。

チアミナーゼ|ビタミンBを破壊する酵素。「腰を抜かす」といわれるふらつきの原因に

生のイカには、ビタミンB1を破壊する「チアミナーゼ」という酵素が含まれています。
ビタミンB1は、細胞が活動するためのエネルギーを作り出す栄養素で、神経機能を正常に保つためにも必要不可欠です。ビタミンB1ほか水溶性のビタミンは、尿に溶けて体外に排出されやすいので、毎日食べ物から摂取する必要があり、ドッグフードにも必ず必要量が含まれています。

そうした大事な栄養素を破壊してしまうのが、チアミナーゼです。イカを食べることで、愛犬の体内のビタミンB1が破壊されると、「ビタミンB1欠乏症」になる可能性があります。ビタミンB1が欠乏すると、食欲低下や嘔吐、目の瞳孔が開くといった症状のほか、運動失調、体の麻痺やけいれん、てんかん発作などの神経症状や心筋の肥大などが見られるようになります。とくに象徴的なのが、足元がふらついて上手に歩けないという症状で、「犬や猫がイカを食べると腰を抜かす」といわれるものです。

なお、チアミナーゼは新鮮なイカにはほとんど含まれていないという情報もありますが、新鮮かどうかの判断はしにくく、また真偽のほども確かではないので、「犬に生のイカはNG」と考えたほうがよいでしょう。

寄生虫アニサキス|重篤な食中毒で胃潰瘍のような激しい痛み

アニサキスは寄生虫の一種で、その幼虫であるアニサキス幼虫はイカ、サバ、アジ、サンマ、カツオ、サケなどの魚介類に寄生します。おもに内臓に寄生しているのですが、魚介類が死亡すると内臓から筋肉へと移動していきます。
そうして魚介の身に移動した幼虫も冷凍したり加熱したりすれば死滅するのですが、生の状態では生きたまま胃や腸に到達し、胃壁や腸壁に突き刺さって食中毒を引き起こす場合があります。

人の症状としては、みぞおちの激しい痛みや嘔吐などで、食後数時間から十数時間後に現れることが多いようですが、なかには食後十数時間から数日後に下腹部が激しい痛みに襲われるケースも。あまりの痛さに胃潰瘍だと思う人もいるようです。そうした激しい苦しみを愛犬に与えないためにも、生のイカは絶対に与えないでください。

なお、最近では「アニサキスアレルギー」の存在も知られています。「青魚を食べて蕁麻疹ができる」という人を調べたところ、アニサキスに対するアレルギーが原因であることがわかりました。犬も同様にアニサキスが原因でアレルギーを起こすかどうかは今のところわかっていませんが、犬に「アニサキスアレルギーが起きない」ということも明確になってはいないので、いずれにしても注意が必要ということです。

加熱したイカは大丈夫?

水色のフード付き洋服を着て立って遠くを見ているシー・ズー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
ビタミンB1欠乏症の原因となるチアミナーゼは、加熱すると効力を失います。また、寄生虫アニサキスは冷凍または加熱することで死滅するといわれています。

そのため、「生のイカはダメでも加熱したイカなら犬に与えても大丈夫」という情報もあります。イカはタンパク質が豊富な食べ物なので、安全なイカなら食べさせたいと考える飼い主さんもいるかもしれません。しかしながら、冷凍や加熱によって完全に有害な成分がなくなり、寄生虫が死滅したかどうかは、見た目ではわかりません。また、イカは消化に時間がかかる食べ物なので、消化器官が発達していない幼犬やシニア犬にとっては負担になり、消化不良を起こして下痢や嘔吐してしまうかもしれません。

完全に加熱、冷凍処理をしたイカなら、少量であれば与えても大きな問題はありませんが、栄養補給のために積極的に与えたい食べ物ではないことは理解しておきましょう。

スルメ(あたり目)、イカの燻製は大丈夫?

スルメ(あたりめ)やイカの燻製は、生のイカに比べて塩分がとても多い食べ物です。しかも、どちらも固いので犬が噛まずに飲み込んでしまい、喉につまらせる恐れがあります。仮に食道を通過したとしても、胃から腸へ進む間に水分を吸って大きく膨らめば、急性胃拡張を引き起こすこともあります。イカと同様に、スルメ(あたりめ)やイカの燻製は、犬に与えないようがよいでしょう。

また、「さきイカ」「酢イカ」「すだれ」などのイカを使った加工食品も、人間のおつまみやおやつ用に塩分や糖分などの調味料を加えてあるものがほとんどです。愛犬の健康を考えるなら、そうしたイカの加工品も与えないでください。

犬のイカ誤飲を防ぐ方法

腹ばいになって目をこちらに向けている茶色のトイ・プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
愛犬がイカを誤食しないためには、イカの入った料理をテーブルなどに放置しておかないことが大事です。イカを調理する際は、内臓などを捨てたゴミの処理にも注意を。愛犬がごみ箱をひっくり返して中のものをあさったりしないよう、ごみ箱はきちんと管理しましょう。

生のイカは犬には厳禁。健康を守るなら加熱したイカも与えないで

生のイカは犬の健康を害する可能性の高い食べ物です。人間にとっては少ない量でも、犬の体にとっては大きな健康被害を与えかねないので、生のイカは与えないようにしてください。熱を加えて調理したイカでも100%安全とは断言できないので、加工品も含めて「イカはすべて犬にNG」と覚えておいたほうが安心でしょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 准教授 )
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのいぬのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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