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【獣医師解説】犬の食物アレルギー対処法や食事管理のポイント・注意点

犬は人と同じように、食物アレルギーを発症することがあります。今回は、犬の食物アレルギーの原因や症状、治療方法、食事管理のポイント・注意点について解説します。

徳本 一義 先生

 獣医師
 有限会社ハーモニー代表取締役
 日本ペット栄養学会理事
 ペットフード協会新資格検定制度実行委員会委員長
 日本獣医生命科学大学非常勤講師
 帝京科学大学非常勤講師
 など

●資格:獣医師 経営学修士(MBA)

●所属:日本ペット栄養学会

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犬の食物アレルギーとは

いぬのきもち投稿写真ギャラリー
動物には、体に侵入したウイルスなどを撃退する、免疫機能が備わっています。この免疫機能によって病気から体が守られるのですが、時に有害ではない物質に対しても過剰な反応を引き起こすことがあります。この反応を食品に対して起こすのが「食物アレルギー」です。

・犬のアレルゲンの多くは「タンパク質」
筋肉などの体組織や、ホルモン、抗体などの免疫機能の元になる「タンパク質」。犬の体をつくるのに欠かせない栄養素ですが、食物アレルギーを引き起こす最たる原因の一つといわれています。⽝の場合、食べ物に含まれる⽜⾁や乳製品、鶏⾁などの動物性タンパク質のほか、あらゆるタンパク質がアレルギーの原因になる可能性があります。

・消化管が未発達な1才未満の犬で発症しやすい
食物アレルギーは、とくに1才未満の子犬に発症しやすいといわれています。消化管が未発達な子犬は、腸の免疫機能が十分に備わっていません。そのため、離乳期に摂取した食事にアレルギーを起こすことが多いのです。食べたことのない食材を一度にいろいろ与えたり、拾い食いやもらい食いをさせたりしないように注意し、愛犬に与えたものはしっかり記録しておくとよいでしょう。

食物アレルギーの主な症状や検査方法

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アレルゲンが個体によって異なるように、アレルギーによって起きる反応や症状もさまざまです。

・食物アレルギーで起きる症状
犬が食物アレルギーになると、主に皮膚症状と消化器症状を発症します。愛犬に以下のような症状が出ている場合は、動物病院を受診しましょう。

【食物アレルギーの主な症状】
・年中かゆがって体をかく
・口や顔周り、耳の内側、背中や腹、尻や足に炎症がある
・下痢や嘔吐をする

前述したように、食物アレルギーは1才未満で発症することが多いので、子犬期に非季節性の皮膚のかゆみや慢性の下痢が見られたら食物アレルギーの可能性が大きくなります。犬がかゆみで体を噛むなどして悪化させるおそれもあるので、アレルギーの兆候が少しでも見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

・食物アレルギーの検査方法
・⾎液検査
アレルギーの原因となる物質「アレルゲン」の簡易検査法のひとつが、動物病院で採取した⾎液を専⾨機関で調べる「⾎液検査」です。⾎液検査には、⾎中に含まれる免疫グロブリンであるIgEを調べる「IgE検査」と、リンパ球が引き起こすアレルギー反応を⾒る「リンパ球反応検査」の2種類があります。検査機関によって検査⽅法や判定できるアレルゲン、検査費⽤が異なりますので、事前に確認すると安⼼です。
ただし⾎液検査では、原因と思われる物質をいくつか知ることはできますが、実際にアレルゲンとなっているものがどれかまで断定することはできません。そこでアレルゲンの確定診断として⽤いられているのが、次にご紹介する除去食試験・経口負荷試験です。

・除去食試験・経口負荷試験
除去食試験・経口負荷試験とは、獣医師の指導のもと、アレルギー源であると思われる原材料が排除された「除去⾷」を与え症状が改善した後に、アレルゲンの疑いがある⾷品を1品ずつ試し、アレルゲンを特定すること。症状の改善度合いを⾒て⾷物アレルギーかどうか、アレルゲンは何かを判断していきます。⾷物アレルギーに対する診断と治療が一体化した、「治療的診断」といえるアプローチです。

食物アレルギーの治療法とは

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では、実際に愛犬が食物アレルギーを発症してしまった場合、どのように治療を進めればよいのでしょうか。

・療法食による食事管理が基本
療法食とは、特定の疾患に合わせて栄養バランスを調整した食事のこと。食物アレルギーの場合は、前述した「除去食試験・経口負荷試験」で用いられる「除去食」が療法食にあたります。食物アレルギーの治療ではアレルゲンを排除することが肝心ですが、疑いのある症状が本当に食物アレルギーによるものなのか、またどの食物がアレルゲンなのかを特定することはとても困難です。そのため、この療法食を与えながら治療的診断を進めていく必要があるのです。

・食物アレルギー用の療法食の特徴
食物アレルギー用の療法食には、大きく分けて2つの種類があります。
一つはアレルゲンと考えられる食材を使っていない食事です。たとえば、タンパク質源を鹿肉・ラム肉・カンガルー・魚といった、今までに食べたことのない新奇タンパク質に置き換えたフードなどが挙げられます。もう一つは加水分解タンパクやアミノ酸を使用した食事です。加水分解タンパクとは、消化酵素などを用いて分解した状態のタンパク質で、免疫細胞にアレルゲンとして認識されにくいという特性があります。
食材や成分で見るとさまざまな療法食が開発されているので、必ず獣医師のアドバイスに従って選ぶようにしましょう。

・膿皮症や外耳炎を併発している場合は投薬治療が必要
食物アレルギーでは、膿皮症や外耳炎など別の病気を併発しているケースも。食物アレルギーで皮膚にかゆみが生じ、犬がかきむしることによって皮膚バリアが壊れ、感染が起きやすくなるということもあるようです。その場合は、抗生物質や抗真菌薬を使った投薬治療をおこないながら、回復経過をみていくことになります。

食物アレルギーの食事管理のポイント&注意点

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愛犬が食物アレルギーと確定診断された場合の、食事管理のポイントや注意点を見ていきましょう。

・獣医師の指導に従って療法食を与え続ける

食物アレルギーは短期で治る病気ではなく、長期のつきあいとなる可能性が高い病気です。治療によってアレルゲンが特定でき症状が安定した後も、そのアレルゲンの入っていない食事を与え続けることが重要です。愛犬の様子を観察しながら、獣医師の選んだ療法食を継続してください。飼い主さんの勝手な判断で、療法食をやめたり変更したりするのは厳禁です。

・余計なおやつや人の食べ物は与えない

療法⾷によってアレルゲン除去をおこなっているのに、アレルゲンが含まれているかもしれないおやつを与えていては意味がありません。また、⼈の⾷べ物の中には、⽝の体に害となる成分が含まれている場合もあります。愛⽝の健康のためにも、療法⾷中のおやつや⼈の⾷べ物の管理は徹底しましょう。また、食べ物だけでなく、飲み物にも注意が必要です。牛乳などにアレルゲンが含まれていることもあります。アレルゲンが特定されていない場合は、療法食と水だけを与えるようにしましょう。
監修/徳本一義先生(有限会社ハーモニー代表取締役)
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