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【獣医師監修】犬に枝豆を与えても大丈夫。枝豆を食べるメリットと与え方を解説

佐野 忠士 先生

枝豆はタンパク質やビタミン、ミネラルが豊富で、中毒を起こすような有毒物質は含まれていないので、犬に与えても問題ありません。ただし、愛犬が欲しがったからといって、たくさん与えるのはよくありません。犬の体にプラスになる枝豆の栄養素と適正な摂取量、与える際の注意点を紹介します。

犬は適量なら枝豆を食べても大丈夫

調理済み枝豆
KPS/gettyimages
ビールのお供といったら、枝豆がまっさきに頭に浮かぶのでは。愛犬に見つめられると、ついお裾分けしてあげたくなる飼い主さんも多いのではないでしょうか。結論からいえば、枝豆は犬に与えても大丈夫です。タンパク質や食物繊維、各種のビタミン、ミネラルなどが豊富で、中毒の原因となるような有害な物質は含まれていないからです。

そもそも枝豆はマメ科の植物である大豆の未成熟な豆のことで、完熟した豆は「大豆(だいず)」と呼ばれます。つまり、枝豆と大豆は同じ植物であり、枝豆は大豆の成長途中だといえます。旬の時期は品種によって違いますが、早生種は枝豆として実がふっくらした緑色になる夏場に収穫され市場に出回ります。一方、晩生種は茎や葉、実が茶色くなるまで畑に植えられていて、秋になって収穫され、さやから取り出された豆は乾燥してから大豆として出荷されます。

植物分類としては、枝豆は緑黄色野菜、大豆はマメ科。大豆に成長する前の枝豆は、大豆と比べると少ないものの、タンパク質や食物繊維、ビタミンEなどの栄養素が含まれているのに加え、大豆にはあまり含まれていないビタミンCやβカロテンを含んでいます。つまり、枝豆はマメ科の大豆と緑黄色野菜の両方の特徴を持ちあわせている野菜といえます。

そんな栄養価の高い枝豆ですが、愛犬が欲しがるままにたくさん与えるのはよくありません。枝豆は100gで125Kcalと、野菜のなかでは比較的カロリーのある食べ物です。一粒が小さいので、意識しないまま与えていると、意外とハイカロリーになっているかもしれません。枝豆はあくまでおやつとして、主食と合わせて1日の総摂取カロリーを超えないよう注意しましょう。

枝豆のおもな栄養素|タンパク質、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富

鼻の頭に枝豆を一粒載せてじっとこちらを見ているボーダーコリーの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
枝豆に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー125kal
水分71.7g
タンパク質11.7g
脂質6.2g
炭水化物8.8g
灰分(無機質)1.6g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬が枝豆を食べるメリット|丈夫な体をつくり、健康を維持する

頭の上に枝豆の鞘を一個載せ、口を少し開けているゴールデン・レトリーバー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
枝豆に含まれるおもな栄養素のうち、犬の体に役立つ代表的なものを紹介します。

タンパク質|筋肉、皮膚など体の基礎となる栄養素。活動のエネルギー源にも

マメ科と緑黄色野菜の両方の特徴をもっている枝豆。マメ科の特徴的な栄養素であるタンパク質を多く含んでいます。
タンパク質は、犬の筋肉や臓器、皮膚などをつくり、エネルギー源にもなる大事な栄養素です。緑黄色野菜は、淡色野菜よりもタンパク質を多く含んでいますが、そのなかでも枝豆は100gあたり11.7gと高い含有量を誇っています。

脂質|効率のよいエネルギー源。ビタミンの吸収もサポート

タンパク質、炭水化物とともに犬の3大栄養素のひとつである脂質。炭水化物やタンパク質よりも効率よくエネルギー源となる栄養素で、犬の体内でつくれない成分を補ったり、ビタミンの吸収を助けたりといった働きをします。
枝豆には、100gあたり6.2gの脂質が含まれていますが、これは野菜のなかではかなり多い含有量といえます。

脂質が不足すると、皮膚や肌のパサツキや免疫力の低下が考えられる一方、過剰に摂取すると肥満や糖尿病などの病気の原因になるので注意が必要です。

ビタミン|健康な体づくりと健康維持、アンチエイジング

枝豆には、ビタミン群も豊富に含まれています。

ビタミンK

ビタミンKは、骨にカルシウムを沈着させ、骨を丈夫にする働きをします。また、出血があった際に血を止める凝固作用もあります。犬は自分の腸内細菌でビタミンKを合成することができますが、それだけで十分な1日の必要量を満たすことはできません。主食に総合栄養食を与えている場合は、とくに不足する心配する必要はありませんが、食欲がないときなどは枝豆でビタミンKを補うのもよいでしょう。

ビタミンC

ビタミンCには、 コラーゲンの合成、鉄分の吸収促進や解毒、ホルモン代謝をサポートする作用があります。さらに、強い抗酸化作用もあるので、病気の予防やアンチエイジングにも役立つことが期待されます。
枝豆には、大豆の約9倍(可食部同量比)のビタミンCが含まれています。ビタミンCが豊富だというイメージのあるりんごと比べても、ビタミンCの含有量は約7倍(可食部同量比)です。

なお、健康な犬は自分の体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができるため、犬にはビタミンCの摂取は必要ないと考えられていました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかっています。健康な犬でも5歳を過ぎれば体内のビタミンC合成能力が低下するとも考えられているので、シニア犬などは枝豆などからビタミンCの補給を図ってもよいでしょう。

βカロテン(ビタミンA)

大豆の成長過程である枝豆には、緑黄色野菜の栄養的な特徴であるβカロテンが多く含まれています。βカロテンは、犬の体内で必要な分だけビタミンAに変換されて活用されるもので、犬の皮膚や被毛の健康維持や丈夫な歯や骨をつくるのに役立ちます。ちなみに、枝豆が成長した大豆には、βカロテンは少量しか含まれていません。

ミネラル|相互作用で健康をサポート

ミネラルとは、栄養成分表で「灰分」と示されているもので、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、マンガン、ヨウ素などさまざまな種類があります。
ミネラルにはそれぞれの相互作用でプラスに機能したり、逆に機能を低下させたりもする働きがあります。枝豆に含まれるおもなミネラルを紹介します。

ナトリウム

枝豆に含まれているナトリウムは、犬の体内で水分のバランスを整えたり、浸透圧を調整したりして、体の調子を整える働きをします。ドッグフードを主食としていればナトリウムの欠乏を心配する必要はありませんが、逆に過剰摂取すると心臓に負担がかかるので注意が必要です。

カルシウム、リン

カルシウムはリンとバランスをとって丈夫な骨や歯をつくり、健康を保つのに役立ちます。さらに、筋肉の収縮や弛緩、つまり筋肉をスムーズに動かすのにも必要な栄養素です。枝豆には、その両方が含まれています。

マグネシウム

枝豆はマグネシウムも豊富です。マグネシウムは、心臓の健康維持や骨や歯をつくるのに必要な栄養素ですが、多量に摂取すると「ストルバイト結石」を形成しやすくなるといわれています。尿石症の既往がある犬や、腎臓や肝臓などに問題のある犬の場合、マグネシウムを多く含む食べ物には注意が必要です。

カリウム

枝豆はカリウムが豊富な野菜です。カリウムには、体液の浸透圧を調整する作用があり、体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血液の濃さの調節や水分の量の調節をして血圧が高くなるのを防ぎます。また、神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっているものなので、健康な体の維持にはなくてはならない大事なミネラルのひとつといえます。

ただし、加齢や腎臓病で腎臓の機能が低下していると、余分なカリウムを上手に体外に排出できなくなり、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になる心配があります。高カリウム血症になると、四肢のしびれや筋力の低下、嘔吐、不整脈など体の不調をきたし、重篤な場合は命を落とす場合もあります。カリウムの過剰摂取にならないよう、注意しましょう。

なお、カリウムなどの電解質への影響は、健康だから大丈夫!とは言い切れないことも多いです。とくに高齢の場合は、定期的に血液検査などで体の状態をチェックしてください。

犬に枝豆を与えるときの注意ポイント|加熱して「さや」から出す。刻むかペースト状がベター

笊に入っている枝豆を仰ぎ見ている柴犬の顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
枝豆を愛犬に与える際には、与える量や与え方には少し注意が必要です。

与えてよい部位

犬に枝豆を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)15g~30g(23粒~46粒))
中型(6~15kg)34g~68g(53粒~106粒)
大型(20~50kg)85g~168g(132粒~262粒)

※枝豆(茹で)1粒0.64gとして計算
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法のしかた

枝豆に含まれるタンパク質は、動物性のタンパク質と比べて犬が消化しにくいものです。さらに、枝豆には消化酵素「トリプシン」の働きを妨げる「トリプシンインヒビター」という成分が含まれているので、生のままでは消化不良の原因となります。この「トリプシンインヒビター」は、加熱することで働かなくなるので、愛犬に枝豆を与えるときは、必ず加熱してください。ただし、茹でると水溶性のビタミン(ビタミンC)は流れ出てしまうので、電子レンジでの加熱が手軽でおすすめです。

また、枝豆の粒は小さいので、さやから出してそのまま与えると、犬が丸飲みして便としてそのまま出てきてしまうことがあります。せっかく愛犬に栄養を与えたいと思っても、それでは無駄になってしまいます。効率的に枝豆の栄養を役立てるなら、さやから取り出した粒を刻むか、薄皮を剥いてすり潰しペースト状にしたものをご飯にトッピングするのがベターです。なお、茹でる場合、塩は入れないでください。

「冷凍の枝豆」は与えて大丈夫?

茹でて冷凍してある枝豆なら、解凍してから刻むかペースト状にすれば、与えても大丈夫です。ただし、人間用に塩を加えて茹でてあるものは犬に与えないでください。

大豆アレルギーの犬にはNG。痒み、嘔吐、下痢などアレルギー症状の原因に

犬の食物アレルギーは、牛肉や乳製品など動物性タンパク質に対して生じることが多いのですが、稀に大豆などの植物性タンパク質がアレルギー源になることがあります。枝豆は大豆の未成熟豆なので、大豆アレルギーがある犬には食べさせてはいけません。

食べ物によるアレルギーは子犬期に発症することが多いのですが、成犬になってから発症する場合もあります。大豆アレルギーがあるかどうかわからない犬に枝豆を与える場合は、まず少し与えてみて、下痢や嘔吐、皮膚を痒がるなどのアレルギー症状が出ないかどうか確認してから、その後も与えてよいかを判断しましょう。

枝豆の栄養を役立てるなら、必ず加熱してから。過剰摂取には気をつけて

犬の体に役立つ栄養を豊富に含む枝豆。愛犬の元気な体づくりと健康の維持に役立てるなら、必ず加熱して、刻むかペースト状にするなどひと手間を加えましょう。栄養価が高いからといって、与え過ぎはかえって愛犬の健康を損なう原因になりかねません。愛犬が欲しがっても、過剰摂取にならないよう与える量には注意しましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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