犬と暮らす
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【獣医師監修】犬に枝豆を与えても大丈夫。枝豆を食べるメリットと与え方を解説
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬は適量なら枝豆を食べても大丈夫
そもそも枝豆はマメ科の植物である大豆の未成熟な豆のことで、完熟した豆は「大豆(だいず)」と呼ばれます。つまり、枝豆と大豆は同じ植物であり、枝豆は大豆の成長途中だといえます。旬の時期は品種によって違いますが、早生種は枝豆として実がふっくらした緑色になる夏場に収穫され市場に出回ります。一方、晩生種は茎や葉、実が茶色くなるまで畑に植えられていて、秋になって収穫され、さやから取り出された豆は乾燥してから大豆として出荷されます。
植物分類としては、枝豆は緑黄色野菜、大豆はマメ科。大豆に成長する前の枝豆は、大豆と比べると少ないものの、タンパク質や食物繊維、ビタミンEなどの栄養素が含まれているのに加え、大豆にはあまり含まれていないビタミンCやβカロテンを含んでいます。つまり、枝豆はマメ科の大豆と緑黄色野菜の両方の特徴を持ちあわせている野菜といえます。
そんな栄養価の高い枝豆ですが、愛犬が欲しがるままにたくさん与えるのはよくありません。枝豆は100gで125Kcalと、野菜のなかでは比較的カロリーのある食べ物です。一粒が小さいので、意識しないまま与えていると、意外とハイカロリーになっているかもしれません。枝豆はあくまでおやつとして、主食と合わせて1日の総摂取カロリーを超えないよう注意しましょう。
枝豆のおもな栄養素|タンパク質、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富
エネルギー | 125kal |
---|---|
水分 | 71.7g |
タンパク質 | 11.7g |
脂質 | 6.2g |
炭水化物 | 8.8g |
灰分(無機質) | 1.6g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬が枝豆を食べるメリット|丈夫な体をつくり、健康を維持する
タンパク質|筋肉、皮膚など体の基礎となる栄養素。活動のエネルギー源にも
タンパク質は、犬の筋肉や臓器、皮膚などをつくり、エネルギー源にもなる大事な栄養素です。緑黄色野菜は、淡色野菜よりもタンパク質を多く含んでいますが、そのなかでも枝豆は100gあたり11.7gと高い含有量を誇っています。
脂質|効率のよいエネルギー源。ビタミンの吸収もサポート
枝豆には、100gあたり6.2gの脂質が含まれていますが、これは野菜のなかではかなり多い含有量といえます。
脂質が不足すると、皮膚や肌のパサツキや免疫力の低下が考えられる一方、過剰に摂取すると肥満や糖尿病などの病気の原因になるので注意が必要です。
ビタミン|健康な体づくりと健康維持、アンチエイジング
ビタミンK
ビタミンC
枝豆には、大豆の約9倍(可食部同量比)のビタミンCが含まれています。ビタミンCが豊富だというイメージのあるりんごと比べても、ビタミンCの含有量は約7倍(可食部同量比)です。
なお、健康な犬は自分の体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができるため、犬にはビタミンCの摂取は必要ないと考えられていました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかっています。健康な犬でも5歳を過ぎれば体内のビタミンC合成能力が低下するとも考えられているので、シニア犬などは枝豆などからビタミンCの補給を図ってもよいでしょう。
βカロテン(ビタミンA)
ミネラル|相互作用で健康をサポート
ミネラルにはそれぞれの相互作用でプラスに機能したり、逆に機能を低下させたりもする働きがあります。枝豆に含まれるおもなミネラルを紹介します。
ナトリウム
カルシウム、リン
マグネシウム
カリウム
ただし、加齢や腎臓病で腎臓の機能が低下していると、余分なカリウムを上手に体外に排出できなくなり、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になる心配があります。高カリウム血症になると、四肢のしびれや筋力の低下、嘔吐、不整脈など体の不調をきたし、重篤な場合は命を落とす場合もあります。カリウムの過剰摂取にならないよう、注意しましょう。
なお、カリウムなどの電解質への影響は、健康だから大丈夫!とは言い切れないことも多いです。とくに高齢の場合は、定期的に血液検査などで体の状態をチェックしてください。
犬に枝豆を与えるときの注意ポイント|加熱して「さや」から出す。刻むかペースト状がベター
与えてよい部位
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 15g~30g(23粒~46粒)) |
中型(6~15kg) | 34g~68g(53粒~106粒) |
大型(20~50kg) | 85g~168g(132粒~262粒) |
※枝豆(茹で)1粒0.64gとして計算
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
調理方法のしかた
また、枝豆の粒は小さいので、さやから出してそのまま与えると、犬が丸飲みして便としてそのまま出てきてしまうことがあります。せっかく愛犬に栄養を与えたいと思っても、それでは無駄になってしまいます。効率的に枝豆の栄養を役立てるなら、さやから取り出した粒を刻むか、薄皮を剥いてすり潰しペースト状にしたものをご飯にトッピングするのがベターです。なお、茹でる場合、塩は入れないでください。
「冷凍の枝豆」は与えて大丈夫?
大豆アレルギーの犬にはNG。痒み、嘔吐、下痢などアレルギー症状の原因に
食べ物によるアレルギーは子犬期に発症することが多いのですが、成犬になってから発症する場合もあります。大豆アレルギーがあるかどうかわからない犬に枝豆を与える場合は、まず少し与えてみて、下痢や嘔吐、皮膚を痒がるなどのアレルギー症状が出ないかどうか確認してから、その後も与えてよいかを判断しましょう。
枝豆の栄養を役立てるなら、必ず加熱してから。過剰摂取には気をつけて
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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