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【獣医師監修】犬に卵を与えるときは加熱してから。卵アレルギーにも要注意! 与えるメリットとデメリットを解説
卵は犬の体に必要な必須アミノ酸のほか、ビタミン、ミネラル、脂肪などが含まれる栄養価の高い食品です。基本的には犬に与えても大丈夫ですが、与える分量や与え方には注意が必要です。また、犬によっては卵にアレルギー反応を示す場合も。犬が卵を食べるメリットとデメリットを紹介します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬に「生の卵」は避けて。アレルギー持ちの犬は注意が必要
とくに皮膚や筋肉、抗体などを作るのに欠かせない栄養素であるタンパク質が豊富。ビタミンはA、E、K、B2、B12、葉酸、ビオチンなど、ミネラルはカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ヨウ素、セレンなど多種多様な栄養素がバランスよく含まれています。
もちろん、普段から総合栄養食のペットフードを与えていれば、愛犬が栄養不足に陥る心配はまずありませんが、食欲が落ちて体力低下が心配される場合や手作りご飯の栄養バランスが気になるときは、卵を活用するのもよいかもしれません。
ただし、犬に卵を与える場合は、食中毒を避けるためにも加熱してから与えましょう。とくに、生の卵白だけを与え続けると皮膚病などの原因になるので生で与えることは避けてください。
また、タンパク質を豊富に含む卵は犬にとってもアレルゲンとなりうる食品のひとつです。体がまだしっかりできあがっていない乳児期の犬や、過去になんらかの食物アレルギーを起こしたことのある犬に卵を与えるのは避けたほうが安心でしょう。
卵のおもな栄養素|タンパク質、脂質、ビタミンが豊富で高カロリー
エネルギー | 142kal |
---|---|
水分 | 75.0g |
タンパク質 | 12.2g |
脂質 | 10.2g |
炭水化物 | 0.4g |
灰分(無機質) | 1.0g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬が卵を食べるメリット|健やかな成長と健康維持、エネルギーチャージ
タンパク質|犬に必要な10種類の必須アミノ酸を含有
犬の体内で働くアミノ酸は約20種類あり、その多くは体内で合成できますが、必要とする量を外部から、すなわち食べ物から摂取しなくてはならないものを「必須アミノ酸」といい、10種類あります。卵にはこの必須アミノ酸10種類すべてが含まれているため、卵ひとつでバランスよく必要なアミノ酸を摂り入れることができます。
犬が1日の食事で摂取すべき理想的なタンパク質の割合は、成長期の犬で22.5%以上、成犬で18%以上であるといわれています。必要以上に摂取したタンパク質は、エネルギー源としても活用されますが、過剰に摂取することでタンパク質を分解する肝臓、分解物を排泄する腎臓に負担がかかり、腎臓病の発生や、状態悪化の原因になることもあるので、与える量には注意が必要です。
脂肪|効率よくエネルギーチャージ
脂質が不足すると、皮膚や肌のぱさつきや免疫力の低下が考えられる一方、過剰摂取は肥満や糖尿病などの病気の原因にもなります。
ミネラル|相互作用で健康をサポート
ミネラルはほかのミネラルと助け合って機能しますが、バランスを崩すと機能を低下させることもあるので、それぞれを適量ずつ摂取し、バランスを保つことが大事です。
卵には、これら多種多様なミネラルが少量ずつ含まれている点からも、健康維持に役立つ食べ物といえるでしょう。
なお、卵に含まれているミネラルのひとつ、セレンはビタミンEと協調することで強い抗酸化作用を発揮することがわかっています。人の体においては、血液中のセレンの濃度が高いほど、皮膚ガンや前立腺ガン、肺ガンの発症率が低いことが報告されていますが、残念ながら犬において同様の研究報告はまだありません。
ビタミン|体の正常な機能や代謝をサポート、皮膚や被毛、粘膜の健康維持
ビタミンA(βカロテン)
ビタミンD
ビタミンK
犬は自分の腸内細菌でビタミンKを合成することができますが、それだけで十分な1日の必要量を満たすことはできません。総合栄養食を与えている場合は不足を心配する必要はありませんが、卵でビタミンKを補うのもよいでしょう。
ビオチン(ビタミンB7)ほかビタミンB群
卵に多く含まれているビオチン(ビタミンB7)には、消化や代謝を助ける「補酵素」の働きがあり、犬の粘膜や皮膚、神経を正常に保つのに役立ってくれます。皮膚の保湿効果、脱毛やフケの防止効果も期待されます。
ビタミンB1、B2、B6は皮膚や被毛、粘膜を健康な状態に保つのに役立ちます。ビタミンB1が不足すると、皮膚にトラブルが起こったり、毛艶が悪くなったりするほか、歩行障害や筋力の低下の原因にも。ビタミンB2の不足は皮膚や被毛の乾燥を、B6が欠乏すると皮膚や神経のほか、血液の異常を引き起こすことがあります。
また、ビタミンB12は卵のほかにレバーやシジミなどの貝類に多く含まれている栄養素で、タンパク質の合成や赤血球の合成に役立つと考えられています。
カルシウム|歯や骨を丈夫に。骨粗鬆症の予防にも
卵の殻は細かく砕けば、犬が食べても大丈夫ですが、手で砕く程度では口の中や食道を傷つける恐れがあるので、おすすめできません。カルシウムを摂取させる目的で殻を与える場合は、スーパーなど店頭で購入した卵であってもサルモネラ菌などによる中毒が起こらないよう殻をよく洗って細かく砕くなどの注意が必要です。
犬が卵を食べるデメリット|菌による食中毒やアレルギーに要注意
サルモネラ菌・大腸菌|嘔吐、下痢など食中毒の原因
愛犬の健康を考えるなら、卵は加熱してから与えたほうが安心です。
アビシン(アビジン)|多量摂取は皮膚炎や成長不良原因
ちなみに、アビシン(アビジン)は熱には弱いため、加熱した白身であれば犬に与えても問題ありません。
高カロリー|黄身は高カロリー、摂取量に注意
食物アレルギー(卵アレルギー)|アレルギーが起きやすい食材なので要注意
人の場合、乳幼児のうちは消化器官が未発達で、腸の粘膜を守る免疫が少ないため、アレルゲンが容易に腸を通過して体内に入ってしまいます。このことが、アレルギー症状を引き起こす原因と考えられるため、生後4ヶ月までは食物アレルギーを高頻度で発症しやすいといわれています。
一方で、国立研究開発法人国立成育医療研究センターによると、生後4ヶ月までにアトピー性皮膚炎を発症して生後6ヶ月までにアトピー性皮膚炎の治療を行った乳児を対象に研究したところ、「生後6ヶ月より固ゆで卵を与えたグループは、与えなかったグループに比べ、1歳時の鶏卵アレルギーの発症率が約8割減少した」という研究結果※が発表されました。
犬の場合も人間と同様のことがいえると考えられてはいますが、個体の体質や授乳期・幼児期の湿疹の有無などによっても事情が違ってくるので、アレルギーが心配な場合はかかりつけの獣医師に相談してみてください。
成犬であっても、もともとアレルギー体質の犬や鶏肉に対してアレルギー症状を起こしたことのある犬、ワクチンをはじめとする薬の投与や接種の際に「薬疹」を示したことのある犬には、卵は与えないほうが安心でしょう。
犬に卵を与えるときの注意ポイント|加熱してから味付けなしで適量を
与えてよい部位
人間が食べる場合は殻を捨てますが、殻には炭酸カルシウムが豊富に含まれているので、すり潰して与えれば、骨格を強化したり、神経刺激の伝達に作用するといわれています。
与えるときの適量
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 13g~26g(L0.2個~L0.5個) |
中型(6~15kg) | 30g~60g(L0.5個~L1個) |
大型(20~50kg) | 75g~148g(L1.2個~L2.3個) |
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
※卵Lサイズ1個=64gとして計算
調理方法
卵の殻は、よく洗って熱湯で茹でてからよく乾かし、細かくすり潰してから与えます。
黄身や白身の加熱方法としては、茹でるのがおすすすめ。目玉焼きや卵焼き、スクランブルエッグなどオイルを使う調理法は、カロリーオーバーになるのでおすすめできません。塩などの調味料も不要です。愛犬に卵を与えるときは、飼い主の食卓からのお裾分けではなく、愛犬用に茹でてあげましょう。
卵には犬の体に役立つ栄養素が豊富。ただし、アレルギーや調理法には注意を
ただし、卵、とくに黄身はカロリーが高いので、適量を守って与えてください。また、アレルギー体質の犬や鶏肉アレルギーのある犬に卵を与えるのには注意が必要です。初めて犬に卵を与える際は、ごく少量から。少し食べさせたあと、皮膚の痒みや嘔吐、下痢などのアレルギー症状が起こらないことを確認してから、その後も与えるようにしてください。
文/ 村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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