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【獣医師監修】犬に卵を与えるときは加熱してから。卵アレルギーにも要注意! 与えるメリットとデメリットを解説

卵は犬の体に必要な必須アミノ酸のほか、ビタミン、ミネラル、脂肪などが含まれる栄養価の高い食品です。基本的には犬に与えても大丈夫ですが、与える分量や与え方には注意が必要です。また、犬によっては卵にアレルギー反応を示す場合も。犬が卵を食べるメリットとデメリットを紹介します。

佐野 忠士 先生

犬に「生の卵」は避けて。アレルギー持ちの犬は注意が必要

茶色の鶏の卵
Magone/gettyimages
卵は「栄養の優等生」ともいわれるくらい、栄養価の高い食品です。ビタミンCと食物繊維を除いたほぼすべての栄養素が含まれているといっても過言ではありません。

とくに皮膚や筋肉、抗体などを作るのに欠かせない栄養素であるタンパク質が豊富。ビタミンはA、E、K、B2、B12、葉酸、ビオチンなど、ミネラルはカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ヨウ素、セレンなど多種多様な栄養素がバランスよく含まれています。

もちろん、普段から総合栄養食のペットフードを与えていれば、愛犬が栄養不足に陥る心配はまずありませんが、食欲が落ちて体力低下が心配される場合や手作りご飯の栄養バランスが気になるときは、卵を活用するのもよいかもしれません。

ただし、犬に卵を与える場合は、食中毒を避けるためにも加熱してから与えましょう。とくに、生の卵白だけを与え続けると皮膚病などの原因になるので生で与えることは避けてください。

また、タンパク質を豊富に含む卵は犬にとってもアレルゲンとなりうる食品のひとつです。体がまだしっかりできあがっていない乳児期の犬や、過去になんらかの食物アレルギーを起こしたことのある犬に卵を与えるのは避けたほうが安心でしょう。

卵のおもな栄養素|タンパク質、脂質、ビタミンが豊富で高カロリー

4個の卵が入った竹のザルを持って前足で差し出しているようなワイアー・フォックス・テリア
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
卵に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー142kal
水分75.0g
タンパク質12.2g
脂質10.2g
炭水化物0.4g
灰分(無機質)1.0g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬が卵を食べるメリット|健やかな成長と健康維持、エネルギーチャージ

3つの卵型のボールを前に、腹這いになり小首を傾けてカメラを見つめている犬(白、耳のあたりは薄茶色)
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の体に役立つ卵の栄養素について紹介します。

タンパク質|犬に必要な10種類の必須アミノ酸を含有

タンパク質は犬の体内で「アミノ酸」に分解されます。アミノ酸は、皮膚や筋肉、ホルモン、抗体などを作るのに役立つもので、犬の健やかな成長や健康維持に必要なものです。

犬の体内で働くアミノ酸は約20種類あり、その多くは体内で合成できますが、必要とする量を外部から、すなわち食べ物から摂取しなくてはならないものを「必須アミノ酸」といい、10種類あります。卵にはこの必須アミノ酸10種類すべてが含まれているため、卵ひとつでバランスよく必要なアミノ酸を摂り入れることができます。

犬が1日の食事で摂取すべき理想的なタンパク質の割合は、成長期の犬で22.5%以上、成犬で18%以上であるといわれています。必要以上に摂取したタンパク質は、エネルギー源としても活用されますが、過剰に摂取することでタンパク質を分解する肝臓、分解物を排泄する腎臓に負担がかかり、腎臓病の発生や、状態悪化の原因になることもあるので、与える量には注意が必要です。

脂肪|効率よくエネルギーチャージ

タンパク質、炭水化物とともに犬の3大栄養素のひとつである脂質。炭水化物やタンパク質の2.5倍ものエネルギーを供給できる栄養素で、黄身に多く含まれています。さらに、犬が体内で作れない必須脂肪酸の供給源になったり、ビタミンの吸収を助けたりといった働きも。

脂質が不足すると、皮膚や肌のぱさつきや免疫力の低下が考えられる一方、過剰摂取は肥満や糖尿病などの病気の原因にもなります。

ミネラル|相互作用で健康をサポート

ミネラルとは、栄養成分表で「灰分」と示されているもので、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、マンガン、ヨウ素などさまざまな種類があります。
ミネラルはほかのミネラルと助け合って機能しますが、バランスを崩すと機能を低下させることもあるので、それぞれを適量ずつ摂取し、バランスを保つことが大事です。
卵には、これら多種多様なミネラルが少量ずつ含まれている点からも、健康維持に役立つ食べ物といえるでしょう。

なお、卵に含まれているミネラルのひとつ、セレンはビタミンEと協調することで強い抗酸化作用を発揮することがわかっています。人の体においては、血液中のセレンの濃度が高いほど、皮膚ガンや前立腺ガン、肺ガンの発症率が低いことが報告されていますが、残念ながら犬において同様の研究報告はまだありません。

ビタミン|体の正常な機能や代謝をサポート、皮膚や被毛、粘膜の健康維持

ビタミンは、体の機能や代謝をスムーズに行うために必要なもの。卵には多種多様なビタミンが含まれていますが、なかでも多いのがビタミンA、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンB群、ビオチン(ビタミンB7)などです。

ビタミンA(βカロテン)

卵に含まれるβカロテンは、犬の体内で必要な分だけビタミンAに変換されて活用されます。ビタミンAは、犬の皮膚や被毛の健康維持や丈夫な歯や骨を作るのに役立つ栄養素です。人の場合は、夜間の視力の維持を助けるともいわれています。犬の場合も同様の作用が期待できるかどうかは明らかになっていませんが、もしかしたらそのような作用が期待できる「かも」しれません。

ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を助け、体内のカルシウムの濃度を調整するのに役立つ栄養素。犬の丈夫な骨や歯を作り、維持するのに欠かせないものです。

ビタミンK

骨にカルシウムを沈着させ、骨を丈夫にする働きをするビタミンK。また、ビタミンKには出血があった際に血を止める凝固作用もあります。
犬は自分の腸内細菌でビタミンKを合成することができますが、それだけで十分な1日の必要量を満たすことはできません。総合栄養食を与えている場合は不足を心配する必要はありませんが、卵でビタミンKを補うのもよいでしょう。

ビオチン(ビタミンB7)ほかビタミンB群

卵にはビタミンB1、B2、B6、B7、B12などが含まれています。
卵に多く含まれているビオチン(ビタミンB7)には、消化や代謝を助ける「補酵素」の働きがあり、犬の粘膜や皮膚、神経を正常に保つのに役立ってくれます。皮膚の保湿効果、脱毛やフケの防止効果も期待されます。

ビタミンB1、B2、B6は皮膚や被毛、粘膜を健康な状態に保つのに役立ちます。ビタミンB1が不足すると、皮膚にトラブルが起こったり、毛艶が悪くなったりするほか、歩行障害や筋力の低下の原因にも。ビタミンB2の不足は皮膚や被毛の乾燥を、B6が欠乏すると皮膚や神経のほか、血液の異常を引き起こすことがあります。

また、ビタミンB12は卵のほかにレバーやシジミなどの貝類に多く含まれている栄養素で、タンパク質の合成や赤血球の合成に役立つと考えられています。

カルシウム|歯や骨を丈夫に。骨粗鬆症の予防にも

カルシウムは、丈夫な骨や歯の維持や正常な筋肉の収縮のために不可欠なミネラルの一種。卵の黄身と殻には、カルシウムが多く含まれています。

卵の殻は細かく砕けば、犬が食べても大丈夫ですが、手で砕く程度では口の中や食道を傷つける恐れがあるので、おすすめできません。カルシウムを摂取させる目的で殻を与える場合は、スーパーなど店頭で購入した卵であってもサルモネラ菌などによる中毒が起こらないよう殻をよく洗って細かく砕くなどの注意が必要です。

犬が卵を食べるデメリット|菌による食中毒やアレルギーに要注意

オレンジ色の丸いボールを口いっぱいに加えてカメラを見つめている大きな耳の犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
栄養価の高い卵ですが、犬が食べるデメリットも知っておく必要があります。注意すべきことを紹介します。

サルモネラ菌・大腸菌|嘔吐、下痢など食中毒の原因

一般的に日本で市販されている卵は、きれいに洗浄されているために、生食しても問題ないといわれています。ただし、高温多湿のなかに長い時間放置されていた場合や、扱う人の衛生状態によってはサルモネラ菌に汚染されていたり、殻に大腸菌が付着していたりするケースも考えられます。
愛犬の健康を考えるなら、卵は加熱してから与えたほうが安心です。

アビシン(アビジン)|多量摂取は皮膚炎や成長不良原因

卵の卵白に含まれるタンパク質の一種「アビシン(アビジン)」。アビシン(アビジン)の多量摂取は、犬の皮膚炎や成長不良の原因になるため、生卵を犬に与えるのであれば、卵の黄身だけにしましょう。
ちなみに、アビシン(アビジン)は熱には弱いため、加熱した白身であれば犬に与えても問題ありません。

高カロリー|黄身は高カロリー、摂取量に注意

卵のカロリーは、可食部100gあたり142キロカロリーと高カロリーの食品です。卵のカロリーは、黄身の部分が白身の約10倍、栄養素も黄身に多く含まれています。卵を愛犬の栄養補給に用いる場合は、1日に必要な摂取カロリーを越えないよう、ドッグフードの量との調整が必要です。

食物アレルギー(卵アレルギー)|アレルギーが起きやすい食材なので要注意

人の乳幼児において多いといわれている卵アレルギー。じつは、卵は犬にとってもアレルゲンとなる食品のひとつです。

人の場合、乳幼児のうちは消化器官が未発達で、腸の粘膜を守る免疫が少ないため、アレルゲンが容易に腸を通過して体内に入ってしまいます。このことが、アレルギー症状を引き起こす原因と考えられるため、生後4ヶ月までは食物アレルギーを高頻度で発症しやすいといわれています。

一方で、国立研究開発法人国立成育医療研究センターによると、生後4ヶ月までにアトピー性皮膚炎を発症して生後6ヶ月までにアトピー性皮膚炎の治療を行った乳児を対象に研究したところ、「生後6ヶ月より固ゆで卵を与えたグループは、与えなかったグループに比べ、1歳時の鶏卵アレルギーの発症率が約8割減少した」という研究結果※が発表されました。

犬の場合も人間と同様のことがいえると考えられてはいますが、個体の体質や授乳期・幼児期の湿疹の有無などによっても事情が違ってくるので、アレルギーが心配な場合はかかりつけの獣医師に相談してみてください。

成犬であっても、もともとアレルギー体質の犬や鶏肉に対してアレルギー症状を起こしたことのある犬、ワクチンをはじめとする薬の投与や接種の際に「薬疹」を示したことのある犬には、卵は与えないほうが安心でしょう。

参考:離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見(2016年12月9日)|国立研究開発法人国立成育医療研究センター

犬に卵を与えるときの注意ポイント|加熱してから味付けなしで適量を

茶色いソファの背もたれに前足をかけて、上を見上げている茶色いダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
栄養価の高い卵ですが、愛犬の健康維持に役立てるには正しい与え方をする必要があります。卵を与える際の注意点を紹介します。

与えてよい部位

卵は、調理方法次第ですが、黄身、白身、殻いずれも犬に与えて大丈夫です。
人間が食べる場合は殻を捨てますが、殻には炭酸カルシウムが豊富に含まれているので、すり潰して与えれば、骨格を強化したり、神経刺激の伝達に作用するといわれています。

与えるときの適量

犬に卵を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)13g~26g(L0.2個~L0.5個)
中型(6~15kg)30g~60g(L0.5個~L1個)
大型(20~50kg)75g~148g(L1.2個~L2.3個)

※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
※卵Lサイズ1個=64gとして計算

調理方法

卵の黄身は、基本的には加熱してから与えるのがベターです。卵の白身は、必ず加熱してから与えましょう。
卵の殻は、よく洗って熱湯で茹でてからよく乾かし、細かくすり潰してから与えます。

黄身や白身の加熱方法としては、茹でるのがおすすすめ。目玉焼きや卵焼き、スクランブルエッグなどオイルを使う調理法は、カロリーオーバーになるのでおすすめできません。塩などの調味料も不要です。愛犬に卵を与えるときは、飼い主の食卓からのお裾分けではなく、愛犬用に茹でてあげましょう。

卵には犬の体に役立つ栄養素が豊富。ただし、アレルギーや調理法には注意を

タンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素がバランスよく含まれている卵。ドッグフードを食べていれば、栄養不足になる心配はほぼありませんが、成長期や体力の消耗が激しいときなど、卵をフードのトッピングとして加えたり、茹で卵をおやつにしたりすることで、栄養補給を図ってもよいかもしれません。

ただし、卵、とくに黄身はカロリーが高いので、適量を守って与えてください。また、アレルギー体質の犬や鶏肉アレルギーのある犬に卵を与えるのには注意が必要です。初めて犬に卵を与える際は、ごく少量から。少し食べさせたあと、皮膚の痒みや嘔吐、下痢などのアレルギー症状が起こらないことを確認してから、その後も与えるようにしてください。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/ 村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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