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【獣医師監修】犬にはちみつを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

はちみつは犬に与えても基本的には問題ありません。ただし糖分が多くカロリーが高いので、与えるときは少量に。また、ボツリヌス菌による食中毒や花粉症の心配もあるので、子犬や老犬に与えるのは避けたほうが安心です。犬がはちみつを食べるメリットと与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬にはちみつを与えるときはボツリヌス菌や花粉に要注意

おいしそうなハチミツ
kuppa_rock/gettyimages
健康や美容によいと注目が集まっている「はちみつ」。愛犬の健康のために与えたいと考える飼い主さんも多いようです。

結論からいえば、はちみつは少量なら犬に与えても問題ありません。
はちみつには、体や脳を動かすためのエネルギー源となる糖類が多く含まれているほか、強い抗菌作用を持つポリフェノールや血液や骨などをつくるのに必要なミネラル類など、犬の体に役立つ栄養素が少しずつ含まれています。

ただし糖類が多いということはカロリーが高く、摂取量が多いと肥満や糖尿病の原因になる可能性があります。健康のために与えるなら、過剰摂取にならないよう与える量には注意が必要です。

また、はちみつには中毒の原因となる「ボツリヌス菌」が含まれている場合があります。商品として市販されているはちみつにも、ボツリヌス菌が少し残っているものがあるといわれていますので、安易に愛犬にはちみつを与えるのはよくありません。
さらに、はちみつには花粉が混じっていることもあるので、花粉症のある犬の場合も注意が必要です。

はちみつのおもな栄養素|糖分が約8割

頭の上に淡いピンク色の薔薇の花を載せ、斜め右横を向いて微笑んでいるミニチュア・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
はちみつに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー329kal
水分17.6g
タンパク質0.3g
脂質0g
炭水化物81.9g
灰分(無機質)0.1g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がはちみつを食べるメリット|疲労回復と病気の予防、アンチエイジング

赤い首輪をして、左斜め横を向いて微笑んでいる口元と眉のあたりが白い、黒の柴犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
はちみつに含まれる栄養素のなかで、犬の健康維持に役立つと考えられる代表的なものを紹介します。

ぶどう糖・果糖|多彩な糖類で持続的にエネルギー補給

はちみつの約80%は糖質です。「ぶどう糖」「果糖」「オリゴ糖」「ショ糖」といった糖類が多く含まれています。なかでも主成分である「ぶどう糖」と「果糖」はこれ以上分解する必要がない単糖類なので、犬の体内に入ると胃腸に負担をかけずに、速やかにエネルギーに変換されます。疲労が溜まって元気がない犬にはちみつを与えれば、素早いエネルギーチャージを期待できるかもしれません。

ポリフェノール|病気の予防、アンチエイジング

はちみつには、「カフェ酸」「フェルラ酸」「ケンフェロール」「クリシン」など、10種類以上のポリフェノールが含まれています。
ポリフェノールには、体の細胞をサビさせる活性酸素を除去する抗酸化作用や殺菌作用、抗菌作用があるので、病気の予防や老化防止に役立つと考えられます。
ちなみに、はちみつは色が濃いほど、ポリフェノールの含有量が多いといわれています。

ミネラル|さまざまな働きの相互作用で健康をサポート

はちみつには、鉄分、マグネシウム、カリウムなど多種類のミネラルが微量ずつ含まれています。ミネラルはさまざまな種類の相互作用によって血液や筋肉、骨などをつくったり、神経の伝達をスムーズにしたりして、健康な体づくりに役立ちます。

グルコン酸|殺菌作用と保湿効果、腸内環境の改善効果も

はちみつには、殺菌作用や皮膚を保護する保湿効果があるグルコン酸も含まれています。
さらに、グルコン酸には腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増やす働きがあるともいわれているので、毛艶をよくする美容効果に加え、便秘の解消効果なども期待できそうです。

犬がはちみつを食べるデメリット|ボツリヌス菌中毒や花粉アレルギーに要注意

クッションに顎を載せて目をぎゅっと閉じている、目の周りが茶色いチワワの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
ナチュラルな健康食品というイメージがあるはちみつですが、犬の体質によってはデメリットになることもあります。犬にはちみつを与える前に知っておきたい成分などを紹介します。

ボツリヌス菌|ボツリヌス菌中毒で筋肉や神経にダメージ

蜂が花の蜜から集めたナチュラルな健康食品。そんなイメージのあるはちみつですが、1歳未満の赤ちゃんにはリスクの高い食品です。厚生労働省からも「はちみつを与えるのは1歳を過ぎてから」という注意喚起が広報されているので、乳幼児のいる家庭では周知のことと思います。

その理由として挙げられているのが、はちみつに含まれている可能性があるボツリヌス菌です。
ボツリヌス菌は、土の中に広く存在している細菌で、熱に強いため加熱しても死ぬことがありません。体内に入っても腸内環境が整っていれば摂取しても問題ないのですが、赤ちゃんの場合はボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出し、中毒を起こすことがあり、重い場合はアナフィラキシーショック(全身にアレルギー症状が出る反応)を引き起こす可能性も。

人間よりずっと体が小さい犬にとっては、成犬であってもボツリヌス菌で中毒を起こす危険性が高いといえます。ボツリヌス菌は筋肉や神経に影響を及ぼすので、中毒になると歩けなくなったり、呼吸困難に陥ったりして、最悪の場合は死に至ることも。
ボツリヌス菌を死滅させるには120度以上で30分以上加熱しなければならないのですが、そこまで完全に加熱処理されずに、ボツリヌス菌が少し残ったまま販売されているものがあるといわれています。

加熱処理されているかどうか、また加熱して与えるかどうかにかかわらず、免疫力が低い子犬や老犬、毒素を排出しにくい腎不全の犬には感染のリスクが高いので、はちみつを与えないようにしましょう。

ちなみに、犬がボツリヌス菌に感染すると角膜炎やドライアイ、巨大食道症などの病気を併発する恐れがあります。これらの病気を発症させないためには、ボツリヌス菌中毒を進行させないことが大事です。もし、愛犬がはちみつを食べてしまったあとに大量のよだれを頻繁に垂らしたり、歩きづらそうにしていたり、顔まわりの筋肉が(気になる強さで)ピクピク動くなどしたら、すぐに動物病院に連れて行ってください。

花粉|皮膚の赤みや痒みなどアレルギー症状

はちみつは、蜂が花や樹木から採取した蜜を加工したものです。蜂が花に触れたときに蜜と一緒に花粉を拾ってきて、はちみつの中に花粉が紛れ込んでいる場合があります。もともと花粉症のある犬は、花粉アレルギーの症状をきたすこともあるので、はちみつを与えるのは避けたほうが安心です。

なお、これまで花粉症がなかった犬でも、はちみつを食べたあとに目や口の周りが赤くなっていたり、体を痒そうに壁などに擦り付けていたりしたら、花粉アレルギーの可能性が考えられます。掻きむしると耳や皮膚に炎症を起こしてしまうので、すぐにはちみつを与えるのをやめて獣医師の診察を受けましょう。

高カロリー|膵炎や糖尿病の犬は要注意

はちみつは糖分が多くカロリーの高い食品です。甘いものを好む犬は多いので、喜んではちみつを舐めたがるかもしれませんが、膵炎や糖尿病のある犬は病気を悪化させてしまう可能性があるので、はちみつは与えないでください。

犬にはちみつを与えるときの注意ポイント|与えるはちみつの種類と量に気をつけて

黄色の花が咲いている緑の草原で気持ちよさそうに少し目を細めて右を向いている黒いラブラドール・レトリーバー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
はちみつには、いくつかの種類があるのを知っていますか。
犬に与えるならどんな蜂蜜を選べばよいのか、また与えてよい量とはどのくらいなのかを紹介します。

与えてよい種類

はちみつは、蜂が採取した花の種類による区分のほかに、製造方法による成分の違いによって以下のように3種類に分類されています。
いずれのはちみつも、先述の注意点を理解したうえで、適量であれば犬に与えても大丈夫です。

◆純粋はちみつ
蜂が花や樹木から集めてきた蜜に、一切の添加物を加えず、成分の調整も行っていないはちみつです。商品には「純粋」「Pure」と書かれています。

◆加熱はちみつ
加熱はちみつとは、蜂が集めた密に、水飴や果糖、ショ糖などを加えて加工されたものです。国際基準では加糖は認められていませんが、日本では糖類を40%未満まで添加したものが「加熱はちみつ」として認められています。

◆精製はちみつ
蜂が集めた蜜から匂いや色などを取り除き、はちみつの甘味だけを抽出したものを、精製はちみつといいます。加熱濃縮処理をしたあとに、色や香りを調整していることが多いようです。

マヌカハニーは犬に与えて大丈夫?

健康志向の高まりのなかで注目を集めている「マヌカハニー」です。ニュージーランドに自生するマヌカの花から採取されたはちみつで、強力な殺菌・消毒作用が認められています。

先述したように、そもそもはちみつには、消毒・殺菌効果のある「グルコン酸」が含まれています。ただし、グルコン酸は体内に入るとその作用が失われるといわれ、殺菌・消毒作用が期待できるのは外傷に対してと考えられてきました。
しかしながら、マヌカハニーには一般のはちみつにはない「メチルグリオキサール」という成分が入っています。これは、体内に入っても失われることがないので、人では胃がんの原因になるピロリ菌の除去や口腔ケアの効果が期待されています。

そんなマヌカハニー、適量を守れば犬に与えても問題ありません。ただし、人にとっての健康効果は認められているものの、まだ犬に同様の効果が期待できるかは明らかになっていません。
さらに、最近はいろいろな商品が「マヌカハニー」として販売されていますが、品質のよい本物を選ぶことが大事です。「UMF」「MGO」「MGS」というニュージーランド政府公認のマークが表示されている商品なら安心でしょう。

なお、高い効能が期待できるマヌカハニーですが、一切の加工を行っていない純粋なはちみつなので、ボツリヌス菌や花粉が入っている可能性はゼロではありません。腸の働きが弱い子犬やシニア犬、毒素を体外に排出する機能が低下している腎不全の犬に与えるのは避けましょう。

与えるときの適量

犬にはちみつを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)6g~11g(小さじ1~大さじ0.5)
中型(6~15kg)13g~26g(小さじ2~大さじ1.2)
大型(20~50kg)32g~64g(大さじ1.5~大さじ3)

※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

はちみつの加工品は与えて大丈夫?

ブルーの絨毯の上に立ち、口を開けて右上を向いている薄茶色のヨークシャー・テリアの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
はちみつを使ったスイーツや加工食品も多く見かけますが、それらを犬に与えてもよいのでしょうか。代表的なものを以下に紹介します。先述したとおり、中毒を引き起こす「ボツリヌス菌」は120度以上で30分以上加熱すれば死滅するといわれているので、加熱処理をしている食品はそれほど心配する必要はありませんが、与える前にはちみつの含有量や他の原材料などはきちんと確認してください。

はちみつ梅干し

梅を漬ける際に少量のはちみつを加えて、まろやかに食べやすく仕上げた梅干し。普通の梅干しもはちみつ梅干しも、量と塩分に気をつければ犬に与えても問題ありません。ただし、商品によって塩分とはちみつの含有量は異なりますので、塩分、糖分ともに摂り過ぎないよう商品の成分表をよくチェックしましょう。

はちみつレモン

レモンの皮に含まれる「ソラレン」という成分は、嘔吐や皮膚炎の原因となる、犬にとって有害な物質です。子犬や体が小さい犬には少量であっても命にかかわりますので、はちみつレモンは与えないでください。

はちみつ入りパン・クッキー

犬用に販売されているクッキーなら、栄養面やカロリー面に配慮して作られているので、犬に与えても大丈夫です。しかしながら、人用のはちみつ入りクッキーやパンは、はちみつの含有量が多く、犬の体にはよくない材料が使われている可能性もあります。犬に人用のクッキーやパンを与えるのはやめましょう。

犬にはちみつを与えるなら、メリットとデメリットをよく理解しておくことが大事

はちみつは、犬にとってプラスになる栄養成が豊富な一方で、犬の体にダメージを与える成分も含まれていることがわかりました。健康商品といわれている食品にも、体に与えるメリットとメリットの両面があるのです。はちみつは少量であれば犬に与えても大丈夫ですが、与える量や与え方には注意が必要な食品であることも覚えておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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