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【獣医師監修】犬にはちみつを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
はちみつは犬に与えても基本的には問題ありません。ただし糖分が多くカロリーが高いので、与えるときは少量に。また、ボツリヌス菌による食中毒や花粉症の心配もあるので、子犬や老犬に与えるのは避けたほうが安心です。犬がはちみつを食べるメリットと与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬にはちみつを与えるときはボツリヌス菌や花粉に要注意
結論からいえば、はちみつは少量なら犬に与えても問題ありません。
はちみつには、体や脳を動かすためのエネルギー源となる糖類が多く含まれているほか、強い抗菌作用を持つポリフェノールや血液や骨などをつくるのに必要なミネラル類など、犬の体に役立つ栄養素が少しずつ含まれています。
ただし糖類が多いということはカロリーが高く、摂取量が多いと肥満や糖尿病の原因になる可能性があります。健康のために与えるなら、過剰摂取にならないよう与える量には注意が必要です。
また、はちみつには中毒の原因となる「ボツリヌス菌」が含まれている場合があります。商品として市販されているはちみつにも、ボツリヌス菌が少し残っているものがあるといわれていますので、安易に愛犬にはちみつを与えるのはよくありません。
さらに、はちみつには花粉が混じっていることもあるので、花粉症のある犬の場合も注意が必要です。
はちみつのおもな栄養素|糖分が約8割
エネルギー | 329kal |
---|---|
水分 | 17.6g |
タンパク質 | 0.3g |
脂質 | 0g |
炭水化物 | 81.9g |
灰分(無機質) | 0.1g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬がはちみつを食べるメリット|疲労回復と病気の予防、アンチエイジング
ぶどう糖・果糖|多彩な糖類で持続的にエネルギー補給
ポリフェノール|病気の予防、アンチエイジング
ポリフェノールには、体の細胞をサビさせる活性酸素を除去する抗酸化作用や殺菌作用、抗菌作用があるので、病気の予防や老化防止に役立つと考えられます。
ちなみに、はちみつは色が濃いほど、ポリフェノールの含有量が多いといわれています。
ミネラル|さまざまな働きの相互作用で健康をサポート
グルコン酸|殺菌作用と保湿効果、腸内環境の改善効果も
さらに、グルコン酸には腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増やす働きがあるともいわれているので、毛艶をよくする美容効果に加え、便秘の解消効果なども期待できそうです。
犬がはちみつを食べるデメリット|ボツリヌス菌中毒や花粉アレルギーに要注意
ボツリヌス菌|ボツリヌス菌中毒で筋肉や神経にダメージ
その理由として挙げられているのが、はちみつに含まれている可能性があるボツリヌス菌です。
ボツリヌス菌は、土の中に広く存在している細菌で、熱に強いため加熱しても死ぬことがありません。体内に入っても腸内環境が整っていれば摂取しても問題ないのですが、赤ちゃんの場合はボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出し、中毒を起こすことがあり、重い場合はアナフィラキシーショック(全身にアレルギー症状が出る反応)を引き起こす可能性も。
人間よりずっと体が小さい犬にとっては、成犬であってもボツリヌス菌で中毒を起こす危険性が高いといえます。ボツリヌス菌は筋肉や神経に影響を及ぼすので、中毒になると歩けなくなったり、呼吸困難に陥ったりして、最悪の場合は死に至ることも。
ボツリヌス菌を死滅させるには120度以上で30分以上加熱しなければならないのですが、そこまで完全に加熱処理されずに、ボツリヌス菌が少し残ったまま販売されているものがあるといわれています。
加熱処理されているかどうか、また加熱して与えるかどうかにかかわらず、免疫力が低い子犬や老犬、毒素を排出しにくい腎不全の犬には感染のリスクが高いので、はちみつを与えないようにしましょう。
ちなみに、犬がボツリヌス菌に感染すると角膜炎やドライアイ、巨大食道症などの病気を併発する恐れがあります。これらの病気を発症させないためには、ボツリヌス菌中毒を進行させないことが大事です。もし、愛犬がはちみつを食べてしまったあとに大量のよだれを頻繁に垂らしたり、歩きづらそうにしていたり、顔まわりの筋肉が(気になる強さで)ピクピク動くなどしたら、すぐに動物病院に連れて行ってください。
花粉|皮膚の赤みや痒みなどアレルギー症状
なお、これまで花粉症がなかった犬でも、はちみつを食べたあとに目や口の周りが赤くなっていたり、体を痒そうに壁などに擦り付けていたりしたら、花粉アレルギーの可能性が考えられます。掻きむしると耳や皮膚に炎症を起こしてしまうので、すぐにはちみつを与えるのをやめて獣医師の診察を受けましょう。
高カロリー|膵炎や糖尿病の犬は要注意
犬にはちみつを与えるときの注意ポイント|与えるはちみつの種類と量に気をつけて
犬に与えるならどんな蜂蜜を選べばよいのか、また与えてよい量とはどのくらいなのかを紹介します。
与えてよい種類
いずれのはちみつも、先述の注意点を理解したうえで、適量であれば犬に与えても大丈夫です。
◆純粋はちみつ
蜂が花や樹木から集めてきた蜜に、一切の添加物を加えず、成分の調整も行っていないはちみつです。商品には「純粋」「Pure」と書かれています。
◆加熱はちみつ
加熱はちみつとは、蜂が集めた密に、水飴や果糖、ショ糖などを加えて加工されたものです。国際基準では加糖は認められていませんが、日本では糖類を40%未満まで添加したものが「加熱はちみつ」として認められています。
◆精製はちみつ
蜂が集めた蜜から匂いや色などを取り除き、はちみつの甘味だけを抽出したものを、精製はちみつといいます。加熱濃縮処理をしたあとに、色や香りを調整していることが多いようです。
マヌカハニーは犬に与えて大丈夫?
先述したように、そもそもはちみつには、消毒・殺菌効果のある「グルコン酸」が含まれています。ただし、グルコン酸は体内に入るとその作用が失われるといわれ、殺菌・消毒作用が期待できるのは外傷に対してと考えられてきました。
しかしながら、マヌカハニーには一般のはちみつにはない「メチルグリオキサール」という成分が入っています。これは、体内に入っても失われることがないので、人では胃がんの原因になるピロリ菌の除去や口腔ケアの効果が期待されています。
そんなマヌカハニー、適量を守れば犬に与えても問題ありません。ただし、人にとっての健康効果は認められているものの、まだ犬に同様の効果が期待できるかは明らかになっていません。
さらに、最近はいろいろな商品が「マヌカハニー」として販売されていますが、品質のよい本物を選ぶことが大事です。「UMF」「MGO」「MGS」というニュージーランド政府公認のマークが表示されている商品なら安心でしょう。
なお、高い効能が期待できるマヌカハニーですが、一切の加工を行っていない純粋なはちみつなので、ボツリヌス菌や花粉が入っている可能性はゼロではありません。腸の働きが弱い子犬やシニア犬、毒素を体外に排出する機能が低下している腎不全の犬に与えるのは避けましょう。
与えるときの適量
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 6g~11g(小さじ1~大さじ0.5) |
中型(6~15kg) | 13g~26g(小さじ2~大さじ1.2) |
大型(20~50kg) | 32g~64g(大さじ1.5~大さじ3) |
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
はちみつの加工品は与えて大丈夫?
はちみつ梅干し
はちみつレモン
はちみつ入りパン・クッキー
犬にはちみつを与えるなら、メリットとデメリットをよく理解しておくことが大事
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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