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【獣医師監修】犬にチーズを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
タンパク質やカルシウムなどの栄養が豊富なチーズは、基本的には犬が食べても大丈夫です。ただし、塩分や脂肪など与えるときに気をつけなければならない点も。犬がチーズを食べるメリットとデメリットの両面を栄養の観点から解説するとともに、与える際の注意点を紹介します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬にチーズを与えるときは種類と量に要注意
ただし、チーズは脂質が多いのでカロリーが高いので、過剰に与えると1日の必要な摂取カロリーを超えてしまい、肥満や糖尿病の引き金になりかねません。総合栄養食と表示されているドッグフードを与えている場合は、犬の体に必要な栄養が不足する心配はほぼないので、栄養価が高いからといっていつもの食事に加えてチーズを過剰に与えるのはよくありません。あくまでおやつとして、カロリーオーバーにならないように気をつけてください。
また、おもなチーズの原料は牛乳の原料である「生乳」。生乳には犬が消化しにくい「乳糖(ラクトース)」が含まれています。チーズに含まれる乳糖の量は、牛乳と比べると1/4〜1/5程度といわれていますが、犬の体質や体格によっては、微量の乳糖でも消化不良を起こすことがあります。チーズには牛の乳を原料としないものもあるので、乳糖による消化不良が心配ならヤギの乳を原料としたチーズなど種類を選ぶとよいでしょう。
さらに、チーズはアレルギーの原因になる可能性もあるので、ほかの食べ物でアレルギーを発症したことのある犬にチーズを与えるときは、最初から多くの量を与えないようにしてください。
チーズのおもな栄養素|タンパク質と脂質がそれぞれ2割以上と豊富
エネルギー | 313kal |
---|---|
水分 | 45.1g |
タンパク質 | 22.7g |
脂質 | 26.0g |
炭水化物 | 1.3g |
灰分(無機質) | 5.0g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬がチーズを食べるメリット|健康な体づくりと正常な体の機能を維持
タンパク質|体をつくり、維持するのに必要。エネルギー源にも
タンパク質はアミノ酸がいくつも鎖状につながったもので、犬の体のなかで働くアミノ酸は約20種類あります。そのうち約10種類は犬の体内でつくれないので、食事から補給しなければなりません。総合栄養食のドッグフードを与えていれば、タンパク質が不足することはまずありませんが、食欲が落ちているときなどにチーズでタンパク質を補うのもよいかもしれません。
ただし、肝臓病や腎臓病を患っている犬は、タンパク質を控えたほうがよい場合もあります。
脂質・コレステロール|効率のよいエネルギー源、皮膚や肌の健康維持も
脂質が不足すると、皮膚や肌のパサツキや免疫力の低下が考えられる一方、過剰に摂取すると肥満や糖尿病などの病気の原因に。健康な成犬に与える脂質の目安は、食事の約15%といわれています。
なお、一般的に「体によくない」イメージがあるコレステロールですが、じつは脂質の一種で、犬の体内でさまざまな臓器に役立っています。コレステロールが不足すると血管がもろくなるなどの心配があるので、適量を摂取することが大切です。ドッグフードを食べている場合は、必要なコレステロールが不足することは考えにくいので、気にすべきは過剰摂取のほうでしょう。
ビタミン|皮膚や被毛、皮膚などの調子を整える
ビタミンAは、正常な視覚、健康な被毛・皮膚・粘膜・歯をつくる働きがあります。ビタミンAが不足すると、目や皮膚にトラブルが生じる心配があり、逆に過剰に摂取すると生殖機能の低下や関節の異常などが起こる可能性が高くなります。
ビタミンB2もビタミンAと同様、皮膚や被毛を健康に保ったり、質を高めたりする働きがあります。また、タンパク質や脂質などのほかの栄養素と化学反応を起こし、エネルギーを生成する働きも。不足すると皮膚に痒みが生じるなどの影響が考えられます。
カルシウム|骨や歯の健康、筋肉の収縮をサポート
カルシウムは、リンとバランスをとって丈夫な骨や歯をつくり、健康を保つのに役立つ栄養素。筋肉をスムーズに動かすのにも役立ちます。
ちなみに、犬は体内でカルシウムを合成することができないため、食べ物から摂取する必要があります。総合栄養食のドッグフードを主食として与えていれば、カルシウムが不足することはまずありませんが、食欲が落ちているときなどはチーズでカルシウム補給を図るのもよいかもしれません。
なお、カルシウムの欠乏は骨格異常の原因に、過剰摂取は尿路結石のリスクとなることがあります。
ナトリウム|体内の水分バランス調整、親族や筋肉の機能を調節
チーズに塩分として含まれているナトリウムは、犬の体内で水分のバランスを整えたり、浸透圧を調整したりして、体の調子を整えます。ドッグフードを主食としていればナトリウム欠乏を心配する必要はありませんが、逆に過剰摂取すると心臓に負担がかかるので注意が必要です。
犬がチーズを食べるデメリット|過剰摂取が病気の原因に。アレルギーにも注意
愛犬にチーズを与える前に知っておきたいことを以下に紹介します。
塩分|過剰摂取は高血圧の原因に
塩分の摂り過ぎが、高血圧の原因となり、心臓や腎臓に負担をかけてしまうのは、犬も人間も同じです。
一般的なチーズのひとつ、プロセスチーズに含まれる食塩相当量は、100gあたり2.8g。人用のチーズは、犬にとって塩分過多な食品です。犬用のチーズとして市販されているものなら、塩分が少ないので安心して与えることができるでしょう。
脂肪|過剰摂取は肥満や糖尿病の引き金に
乳糖(ラクトース)|乳糖不耐症による消化不良に要注意
牛乳に比べるとチーズの乳糖含有量は、1/4〜1/5程度だといわれていますが、乳糖不耐症の犬がチーズを食べて消化不良を起こすリスクはゼロではありません。体質や体調によっては、微量の乳糖でも下痢の原因になることがあるので、牛乳を飲んで消化不良の症状が見られた犬には、チーズを与えないほうがよいでしょう。
牛乳アレルギー|タンパク質にアレルギー反応を示す場合も
犬にチーズを与えるときの注意ポイント|過剰摂取は厳禁!ご褒美の範囲にとどめて
与えてよい種類
なお、人用のチーズのなかでは、比較的脂肪分や塩分が少ないカッテージチーズやモッツァレラチーズがおすすめです。クリームチーズは脂肪分が多いので、与える場合はカッテージチーズやモッツァレラチーズの半量程度に。先述したプロセスチーズやブルーチーズは塩分が多いので犬に与えないでください。
最近は、犬には危険な食べ物であるレーズンやチョコレートなどが入っているチーズもあるようです。愛犬が欲しがるからといってうっかり与えないようしてください。飼い主が目を離した隙に、愛犬が食べてしまわないよう注意が必要です。
与えるときの適量
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 6g~12g(1/3枚~2/3 枚) |
中型(6~15kg) | 14g~27g(2/3 枚~1.5枚) |
大型(20~50kg) | 34g~67g(2枚~3.5枚) |
※人用のスライスチーズ1枚18gとして算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
チーズはあくまでご褒美。過剰摂取にならないように気をつけて
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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