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【獣医師監修】犬にチーズを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

タンパク質やカルシウムなどの栄養が豊富なチーズは、基本的には犬が食べても大丈夫です。ただし、塩分や脂肪など与えるときに気をつけなければならない点も。犬がチーズを食べるメリットとデメリットの両面を栄養の観点から解説するとともに、与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬にチーズを与えるときは種類と量に要注意

テーブルの上のチーズを見つめる犬
Jupiterimages/gettyimages
チーズはタンパク質やカルシウムが豊富なうえ、脂質やコレステロール、ビタミンAやビタミンB2、ナトリウムなど犬の体に役立つ栄養素が豊富に含まれている食品です。中毒を起こすような有害な物質は含まれていないので、基本的には犬に与えても問題ありません。

ただし、チーズは脂質が多いのでカロリーが高いので、過剰に与えると1日の必要な摂取カロリーを超えてしまい、肥満や糖尿病の引き金になりかねません。総合栄養食と表示されているドッグフードを与えている場合は、犬の体に必要な栄養が不足する心配はほぼないので、栄養価が高いからといっていつもの食事に加えてチーズを過剰に与えるのはよくありません。あくまでおやつとして、カロリーオーバーにならないように気をつけてください。

また、おもなチーズの原料は牛乳の原料である「生乳」。生乳には犬が消化しにくい「乳糖(ラクトース)」が含まれています。チーズに含まれる乳糖の量は、牛乳と比べると1/4〜1/5程度といわれていますが、犬の体質や体格によっては、微量の乳糖でも消化不良を起こすことがあります。チーズには牛の乳を原料としないものもあるので、乳糖による消化不良が心配ならヤギの乳を原料としたチーズなど種類を選ぶとよいでしょう。

さらに、チーズはアレルギーの原因になる可能性もあるので、ほかの食べ物でアレルギーを発症したことのある犬にチーズを与えるときは、最初から多くの量を与えないようにしてください。

チーズのおもな栄養素|タンパク質と脂質がそれぞれ2割以上と豊富

真正面を向いてカメラをじっと見つめている白いマルチーズ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
チーズ(プロセスチーズ)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー313kal
水分45.1g
タンパク質22.7g
脂質26.0g
炭水化物1.3g
灰分(無機質)5.0g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がチーズを食べるメリット|健康な体づくりと正常な体の機能を維持

ブルーに白の模様がある布の上に立ち、カメラを見上げているシー・ズー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の体に役立つと考えられるチーズのおもな栄養素は以下の通りです。

タンパク質|体をつくり、維持するのに必要。エネルギー源にも

チーズに豊富に含まれるタンパク質は、犬の体の細胞や免疫機能のもとになる栄養素で、犬の体を構成する物質の約20%を占めるものです。酵素として体の調子を整えたり、エネルギー源として使われたりするなど、犬が生きていくうえでなくてはならない重要な栄養素です。

タンパク質はアミノ酸がいくつも鎖状につながったもので、犬の体のなかで働くアミノ酸は約20種類あります。そのうち約10種類は犬の体内でつくれないので、食事から補給しなければなりません。総合栄養食のドッグフードを与えていれば、タンパク質が不足することはまずありませんが、食欲が落ちているときなどにチーズでタンパク質を補うのもよいかもしれません。

ただし、肝臓病や腎臓病を患っている犬は、タンパク質を控えたほうがよい場合もあります。

脂質・コレステロール|効率のよいエネルギー源、皮膚や肌の健康維持も

タンパク質、炭水化物とともに3大栄養素のひとつである脂質。炭水化物やタンパク質よりも効率よくエネルギー源となる栄養素です。犬の体内でつくれない成分を補ったり、ビタミンの吸収を助けたりといった働きをします。

脂質が不足すると、皮膚や肌のパサツキや免疫力の低下が考えられる一方、過剰に摂取すると肥満や糖尿病などの病気の原因に。健康な成犬に与える脂質の目安は、食事の約15%といわれています。

なお、一般的に「体によくない」イメージがあるコレステロールですが、じつは脂質の一種で、犬の体内でさまざまな臓器に役立っています。コレステロールが不足すると血管がもろくなるなどの心配があるので、適量を摂取することが大切です。ドッグフードを食べている場合は、必要なコレステロールが不足することは考えにくいので、気にすべきは過剰摂取のほうでしょう。

ビタミン|皮膚や被毛、皮膚などの調子を整える

チーズには、ビタミンAとビタミンB2が豊富に含まれています。

ビタミンAは、正常な視覚、健康な被毛・皮膚・粘膜・歯をつくる働きがあります。ビタミンAが不足すると、目や皮膚にトラブルが生じる心配があり、逆に過剰に摂取すると生殖機能の低下や関節の異常などが起こる可能性が高くなります。

ビタミンB2もビタミンAと同様、皮膚や被毛を健康に保ったり、質を高めたりする働きがあります。また、タンパク質や脂質などのほかの栄養素と化学反応を起こし、エネルギーを生成する働きも。不足すると皮膚に痒みが生じるなどの影響が考えられます。

カルシウム|骨や歯の健康、筋肉の収縮をサポート

乳製品であるチーズには、カルシウムが豊富です。
カルシウムは、リンとバランスをとって丈夫な骨や歯をつくり、健康を保つのに役立つ栄養素。筋肉をスムーズに動かすのにも役立ちます。

ちなみに、犬は体内でカルシウムを合成することができないため、食べ物から摂取する必要があります。総合栄養食のドッグフードを主食として与えていれば、カルシウムが不足することはまずありませんが、食欲が落ちているときなどはチーズでカルシウム補給を図るのもよいかもしれません。

なお、カルシウムの欠乏は骨格異常の原因に、過剰摂取は尿路結石のリスクとなることがあります。

ナトリウム|体内の水分バランス調整、親族や筋肉の機能を調節

チーズには塩分が含まれています。塩分とは、すなわち食塩のことで、はナトリウムと塩素が結合した「塩化ナトリウム」を指します。
チーズに塩分として含まれているナトリウムは、犬の体内で水分のバランスを整えたり、浸透圧を調整したりして、体の調子を整えます。ドッグフードを主食としていればナトリウム欠乏を心配する必要はありませんが、逆に過剰摂取すると心臓に負担がかかるので注意が必要です。

犬がチーズを食べるデメリット|過剰摂取が病気の原因に。アレルギーにも注意

毛足の長い茶色の敷物の上に顔をつけている茶色いトイ・プードルの斜め横顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
栄養豊富なチーズですが、犬の体にとってデメリットになる成分や、個体差によっては犬に合わない成分もあります。
愛犬にチーズを与える前に知っておきたいことを以下に紹介します。

塩分|過剰摂取は高血圧の原因に

チーズは塩分が多い食品です。
塩分の摂り過ぎが、高血圧の原因となり、心臓や腎臓に負担をかけてしまうのは、犬も人間も同じです。
一般的なチーズのひとつ、プロセスチーズに含まれる食塩相当量は、100gあたり2.8g。人用のチーズは、犬にとって塩分過多な食品です。犬用のチーズとして市販されているものなら、塩分が少ないので安心して与えることができるでしょう。

脂肪|過剰摂取は肥満や糖尿病の引き金に

チーズは脂質が多く、カロリーが高いので、与える量には注意が必要です。高脂質&高カロリーの食品は、肥満につながりやすく、肥満は糖尿病などさまざまな病気の原因になります。チーズをおやつとして与える場合は、主食と合わせて1日の必要消費カロリーを超えないように気をつけてください。

乳糖(ラクトース)|乳糖不耐症による消化不良に要注意

犬は牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)を分解する酵素「ラクターゼ」の保有量が少ないことがわかっています。ラクターゼの保有量がない、または少ない体質を「乳糖不耐症」といい、生後ある一定期間を過ぎると、ほとんどの犬が乳糖不耐症になるといわれています。

牛乳に比べるとチーズの乳糖含有量は、1/4〜1/5程度だといわれていますが、乳糖不耐症の犬がチーズを食べて消化不良を起こすリスクはゼロではありません。体質や体調によっては、微量の乳糖でも下痢の原因になることがあるので、牛乳を飲んで消化不良の症状が見られた犬には、チーズを与えないほうがよいでしょう。

牛乳アレルギー|タンパク質にアレルギー反応を示す場合も

食物アレルギーは、タンパク質に犬の免疫機能が過剰に反応することで起こります。タンパク質が豊富なチーズが、犬のアレルゲンになることも。初めて愛犬にチーズを与えるときは、少しずつ与えながら体調に変化がないかよく観察してください。

犬にチーズを与えるときの注意ポイント|過剰摂取は厳禁!ご褒美の範囲にとどめて

赤い首輪をして真正面からカメラを見つめている茶色いカニーンヘン・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
乳糖不耐症やアレルギーの心配がない犬に与えるときも、注意したいことがあります。与えてよいチーズの種類や量について紹介します。

与えてよい種類

安心して与えられるのは、犬用として市販されているチーズです。スティック状のものから角切りや粒状のものまで、種類はさまざま。乳糖不耐症の犬でも食べられるよう、ヤギの乳を原料としているチーズもあります。

なお、人用のチーズのなかでは、比較的脂肪分や塩分が少ないカッテージチーズやモッツァレラチーズがおすすめです。クリームチーズは脂肪分が多いので、与える場合はカッテージチーズやモッツァレラチーズの半量程度に。先述したプロセスチーズやブルーチーズは塩分が多いので犬に与えないでください。

最近は、犬には危険な食べ物であるレーズンやチョコレートなどが入っているチーズもあるようです。愛犬が欲しがるからといってうっかり与えないようしてください。飼い主が目を離した隙に、愛犬が食べてしまわないよう注意が必要です。

与えるときの適量

犬にチーズを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)6g~12g(1/3枚~2/3 枚)
中型(6~15kg)14g~27g(2/3 枚~1.5枚)
大型(20~50kg)34g~67g(2枚~3.5枚)

※人用のスライスチーズ1枚18gとして算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

チーズはあくまでご褒美。過剰摂取にならないように気をつけて

チーズは、犬にとっても旨味たっぷりでおいしい食べ物のひとつです。愛犬が欲しがるままに与えるのはよくありません。チーズの豊富な栄養を愛犬の健康に役立てるなら、与える種類と量には気をつけて。あくまで愛犬が喜ぶご褒美として、愛犬との楽しく健康的な生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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