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【獣医師監修】犬にみかんを与えても大丈夫。みかんを食べるメリットと与え方を解説
晩秋から冬に旬を迎える「みかん」は、日本の家庭でよく食べられている果物のひとつといえるでしょう。そんな私たちに身近なみかんは、犬に与えても大丈夫なフルーツです。犬がみかんを食べることで得られる健康効果と食べさせるときの注意点について紹介します。

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬は適量ならみかんを食べても大丈夫
みかんにビタミンCがいっぱい含まれていることは、よく知られていることですが、じつはそれ以外にも犬の体に役立つ要素が含まれています。水分が多いので、水を飲みたがらない場合の水分補給にも役立ちます。
オレンジ色の皮を剥いて、一房ずつ愛犬に食べさせるのは少々手間かもしれませんが、愛犬とコミュニケーションを交わすのにもよい時間となるでしょう。
ただし、みかんは犬がおもちゃのように転がしたり、かじったりして遊ぶ可能性もあります。みかんの外皮には、犬の健康を害する成分が含まれているので、注意が必要です。
愛犬にみかんを与える前に、みかんに含まれる栄養素が犬の体に与える影響と、みかんを与えるときの注意点をよく理解しておきましょう。
みかんのおもな栄養素|ビタミンCがたっぷり!
エネルギー | 49kal |
---|---|
水分 | 86.9g |
タンパク質 | 0.7g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 12.0g |
灰分(無機質) | 0.3g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬がみかんを食べるメリット|老化防止、皮膚や粘膜の保護、免疫機能のアップ
水分|水を飲まないときの水分補給に役立つ
犬の体を構成する成分の60%は水分。犬の体の機能を正常に保ち健康を維持するには、水分が不可欠です。つねに体内に水分が60%ある状態を保つことが大切で、とくに暑い季節にはしっかりと水分を補給させてあげなければなりません。
犬が1日に必要とする水分量は、体重の5〜7%と考えられています。愛犬が脱水状態になっていないかどうかチェックするなら、首や肩のあたりの皮下脂肪を手でつかんで放してみてください。つまんだ皮膚がなかなか戻ってこなかったら、脱水状態に陥っている可能性があります。また、歯茎を指で押したときにすぐにピンク色に戻らない場合は、循環が悪くなっていることを示すサインです。とくに、子犬や老犬は脱水状態に陥ると命に関わるので、こまめに水分補給することを心がけましょう。
犬に水を差し出しても飲みたがらない場合は、目先を変えてみかんで水分補給を図る方法も。犬は糖分を感じる味覚が優れていると言いわれているので、糖度の高いみかんなら犬が興味を示して食べてくれるかもしれません。
ビタミンC|強い抗酸化作用で老化防止、免疫機能向上にも期待
ビタミンCは愛犬の長期的な健康を維持するために役立つものです。コラーゲンの合成、鉄分の吸収促進、解毒やホルモン代謝のサポート、さらには病気や老化の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用もあります。
みかんと同じように晩秋から春を迎える果物「りんご」の場合は、可食部100mg中のビタミンCは4 mg。比べてみても、みかんがいかにビタミンC豊富な果物であるかがわかります。
なお、人にとっては食べ物から摂取しなければならない必須栄養素のビタミンCですが、健康な犬は体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができます。そのため、以前は「犬にビタミンCの摂取は必要ない」と」と考えられていました。
しかし最近の研究により、犬にもビタミンC欠乏症があることがわかってきました。健康な犬でも5歳を過ぎればビタミンC合成能力が低下してくるとも考えられているので、シニア犬などでは食べ物やサプリメントからビタミンCの補給を図るとよいかもしれません。
βカロテン|皮膚や眼、粘膜、被毛、歯をつくる。抗酸化作用で病気予防も
βカロテンは犬の体内でビタミンAに変換され、皮膚や眼、粘膜の保護、健康な歯をつくるのに役立ちます。
さらに、βカロテン自体には抗酸化作用もあるので、体内の有害な活性酸素を除去することで、愛犬の病気予防とアンチエイジングに役立つと考えられます。
なお、βカロテンのビタミンAへの変換は、体の中(とくに肝臓)での合成能力によるので、βカロテンを多く含む食べ物を多く与えた分だけ多くのビタミンAが合成され、体によい影響を与えてくれるというわけではありません。
βクリプトキサンチン|アンチエイジング、肝機能向上、骨粗しょう症の予防
βクリプトキサンチンとは、オレンジ色の色素で、天然のカロテノイド。犬の体内で必要に応じてビタミンAに変換され、正常な視覚や健康な皮膚や粘膜、被毛、歯をつくるのに使われます。
さらにβクリプトキサンチン自体には、強い抗酸化作用や肝臓機能の向上、骨粗しょう症の予防にも効果があるといわれています。
なお、みかんは柑橘類のなかでも、とくに多くβクリプトキサンチンを含んでいることがわかっています。オレンジに比べるとその含有量は約8倍(可食部の同重量比)。さらに、糖度の高いみかんに、より多くのβクリプトキサンチンが含まれているという研究報告があります。
カリウム|不要な塩分の排出と高血圧の予防
ただし、加齢や腎臓病で腎臓の機能が低下していると、余分なカリウムを上手に体外に排出できなくなり、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になる心配があります。シニア犬や腎臓病のある犬、心機能が低下している犬の場合は、過剰摂取しないように注意しましょう。
犬にみかんを与えるときの注意ポイント|皮を剥き、薄皮や種も除いてあげよう
与えてよい部位
実を包んでいる薄皮や種は犬にとって消化しにくいものですから、取り除いてから与えてください。また、薄皮にある白い筋は食物繊維が豊富ですが、犬にとっては消化しにくいものです。薄皮、種と同様、下痢や嘔吐の原因になるので、取り除いてからあげましょう。
与えるときの適量
犬にみかんを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 38g~76g(中1/2個~中1/3個) |
中型(6~15kg) | 88g~174g(中1個~大1・1/3個) |
大型(20~50kg) | 216g~430g(中2・4/5個~中5・1/2個) |
※ みかん中100g(可食部75g)、大161g(可食部121g)として算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
缶詰・ゼリー・ジュースなどの加工品は与えない
缶詰やゼリー、果汁100%以外のジュースには、人工甘味料や着色料、防腐剤、香料などの添加物を使っているものも多いようです。これらの添加物は、犬にとって必要のないものです。とくに、人間用の甘味料は、犬が必要とする量をはるかに超えています。
たとえば、みかんの缶詰は人間用の糖分が多いシロップ漬けであり、あえて犬のおやつに選ぶ必要はありません。また、人工甘味料の種類によっては、犬に有害なものもあります。どうしても犬にみかんを使用した加工品を与えたい場合は、みかんを絞った果汁100%の手作りジュースやゼリーを。ただし、あくまで少量にとどめてください。
タンパク質が食物アレルギー症状を引き起こすことも
犬にみかんを与えてはいけないと思っている飼い主さんが意外と多い!
たしかに、肉食傾向の強い犬の場合、酸味は肉の腐敗を意味するために好まないことも多いようです。柑橘系の匂いを嫌ってくしゃみをする犬もいるので、愛犬の様子を見ながら与えることをおすすめします。
あくまでも「おやつの代わりのみかん」という認識を忘れずに、適量を守って与えましょう。
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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