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【獣医師監修】犬にきゅうりを与えても大丈夫。きゅうりを食べるメリットと与え方を解説
きゅうりはほとんど水分でできていて、犬にとって有害な成分は含まれていないので、犬に与えても大丈夫です。きゅうり100gあたりのカロリーが13Kcalしかないことから、水分以外は何も栄養がない野菜だと思われがちですが、犬にとってメリットのある栄養素もちゃんと含まれています。

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬は適量ならきゅうりを食べても大丈夫
きゅうりは、犬に与えてもよい野菜のひとつです。
きゅうりの成分の大半を占めるのは水分なので、100gあたりのカロリーは13Kcalと低カロリーな食べ物です。中毒を引き起こすような有害な成分は含まれていないので、夏バテ気味の犬に水分補給の目的で与えたり、ダイエット中のフードのかさましに利用したりするのもよいでしょう。
なお、大半が水分とはいえ、きゅうりにはカリウムやビタミンK、βカロテンなど犬の体を健康に保つのに役立つミネラルやビタミン類も含まれています。それらを愛犬のために有効活用するには、与え過ぎないことが大事です。水分が多いので、過剰に摂取すると下痢をする心配があるので、適量を守って与えましょう。
きゅうりのおもな栄養素|95%以上が水分、ビタミン・ミネラルも
きゅうりに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー | 13kal |
---|---|
水分 | 95.4g |
タンパク質 | 1.0g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 3.0g |
灰分(無機質) | 0.5g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬がきゅうりを食べるメリット|水分補給と健康維持、アンチエイジング
きゅうりに含まれる栄養素のうち、犬にメリットがあると考えられるものを以下に紹介します。
水分|約95%が水分、水分補給で熱中症予防
夏に暑さが厳しくなると、犬も人間同様に夏バテして水分補給すらまともにできなくなることがあります。そんなときは、きゅうりを与えて水分補給を図るのもよいでしょう。今は一年中、市販されているきゅうりですが、本来は夏に春を迎える夏野菜のひとつ。水分が多く、体を冷やす作用があるといわれています。
ただし、過剰に食べると体を冷やし過ぎて下痢の原因にもなるので、与え過ぎないよう注意しましょう。
カリウム|余分な塩分の排出、ただし腎臓病には注意
カリウムは細胞を正常な状態に保ち、体液の浸透圧を調整する役割を果たすミネラルの一種です。体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧を下げる作用もあります。
ただし、腎臓が弱っているシニア犬や腎臓病を患っている犬の場合は、注意が必要です。腎臓の働きが低下すると、カリウムが十分に尿に排出されず、体内に蓄積されて血液中のカリウム濃度が高まる「高カリウム血症」になることがあるからです。
「高カリウム血症」になると、四肢の痺れや筋肉の衰え、けいれん、不整脈や頻脈などが起こり、最悪の場合は突然死することもあります。シニア犬や腎臓病のある犬、心臓病を患っている犬には、きゅうりは与えないほうが安心でしょう。
ナトリウムやカリウムなど、体内の水分に含まれる電解質のバランス影響は、健康だから大丈夫!とはいい切れないことも多いです。とくに高齢の場合は、定期的に血液検査などで体の状態をチェックしてください。
ビタミンK|止血、骨を丈夫に
出血があった際に血を止める凝固作用に影響を及ぼすのが、ビタミンKです。また、骨にカルシウムを沈着させ、骨を丈夫にする役割も果たします。犬は自分の腸内細菌でビタミンKを合成できません。主食として「総合栄養食」を与えている場合は不足を心配する必要はありませんが、きゅうりから補うのもよいでしょう。
βカロテン|皮膚や被毛、粘膜の健康、老化防止
きゅうりに含まれるβカロテンは、犬の体内で必要な分だけのビタミンAに変換され、愛犬の健康維持に役立ってくれる栄養素です。
ビタミンAは、犬の皮膚や被毛を健康な状態に保つほか、丈夫な粘膜や歯をつくるのに役立ちます。
また、βカロテンはビタミンAに変換されて働くだけではなく、それ自体が強い抗酸化作用を持っているので、体内に発生した有害な活性酸素を除去し、老化を防いでくれる効果も期待できます。
さらに、βカロテンは必要な分だけ変換されて使われるため、たくさん摂取しても健康に害を及ぼすことはないと考えられてきましたが、最近の研究で、犬はビタミンAへの変換能力が高く、少量のβカロテンでも多くのビタミンAを生成できることがわかってきました。βカロテンは、小腸で吸収されて肝臓に蓄積されやすいため、大量に摂取すると「ビタミンA中毒」になり肝臓に負担がかかるので、注意しましょう。
「犬にきゅうり」でよくあるギモン
「犬ときゅうり」に関してよくいわれている疑問についてお答えします。
Q.きゅうりは腎臓に悪いってホント?
A.きゅうりに含まれる栄養素のひとつ「カリウム」について先述しましたが、腎臓の機能が低下している犬がカリウムを含む食べ物を多く食べると、「高カリウム血症」になる可能性があります。そのことから、「きゅうりは腎臓に悪い」という説が流れていると思われます。
しかし、きゅうりに含まれるカリウムは微量なので、健康な犬であれば、きゅうりに含まれるカリウムを摂取したことが原因で腎臓を悪くすることはないので、適量であればきゅうりを与えても大丈夫です。
Q.きゅうりを食べると結石になるらしいけど…?
A.きゅうりに、結石の原因になりやすいシュウ酸カルシウムやマグネシウムが含まれていることから、「きゅうりを食べると結石になるのでは」と心配する飼い主さんがいるようです。しかし、きゅうりに含まれるシュウ酸カルシウムとマグネシウムはごく少量なので、適量を守って与えるのであれば結石ができるリスクは低いと考えられます。
犬にきゅうりを与えるときの注意ポイント|よく洗ってから与えよう
人間と同じように、犬にきゅうりを与えるときは、生で大丈夫です。
きゅうりの皮に農薬が残っている可能性があるので、よく洗ってから与えるようにしてください。
与えてよい部位
きゅうりの皮は消化があまりよくないので、消化器官が弱っているシニア犬やお腹を壊しやすい犬の場合には、皮を剥いて与えるほうが安心です。
与えるときの適量
犬にきゅうりを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの接種可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 145g~288g(中1.5本~中2本) |
中型(6~15kg) | 330g~657g(中3本~中6.5本) |
大型(20~50kg) | 815g~1620g(中8本~中16本) |
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
調理方法
犬がきゅうりを前足で押さえてかじっている写真を目にすることがありますが、大きなかけらを飲み込んで喉に詰まらせる危険があります。皮を剥き、薄切りやみじん切りにしてから与えましょう。すりおろしてフードにトッピングするのもよいでしょう。
なお、とくに加熱してから与える必要はなく、生のままで大丈夫です。
カリウムの摂取について健康な犬でも不安があるようなら、薄くスライスするか細かく刻んでから水に30分〜1時間さらしてから与えるとよいでしょう。カリウムは水に溶ける性質なので、水にさらすことで含有量を減らすことができます。
漬物やピクルスは大丈夫?
人間用に調理された漬物は、犬にとって塩分が多いので与えてはいけません。
酢は犬にとって必要のないものですが、健康に害を及ぼすという報告もないので、犬がきゅうりのピクルスを食べてもOKです。
しかし、ピクルス液には塩が入っていることが多いので、あえて愛犬にピクルスを与える必要はないでしょう。
食物アレルギーにも注意
きゅうりには、少量ですがタンパク質が含まれています。食物アレルギーは、食品に含まれるタンパク質に免疫機能が過剰に反応することで起こるので、稀にきゅうりでアレルギー症状をきたす犬がいます。犬に初めてきゅうりを与えるときは、少し食べさせて様子を見てみましょう。食後に皮膚の痒み、湿疹、下痢、嘔吐などが起こらないようなら、食事やおやつに取り入れてみるのもよいかもしれません。
また、きゅうりはスイカやメロン、ズッキー、ゴーヤなどと同じウリ科の植物です。ウリ科の野菜や果物にアレルギー反応を示したことがある場合は、きゅうりは与えないでください。また、ブタクサ(キク科ブタクサ属の草)やにんじんにアレルギーのある犬は、きゅうりに対して交差反応を起こして症状が出ることがあるので、注意してください。
ほぼ水分とはいえ、主食摂取を阻害しないように注意を
ほとんどが水分でできていることから栄養価が低い野菜だと思われがちのきゅうり。じつは、豊富な水分のほかにも犬の体に役立つビタミンやミネラルが含まれています。基本的には「総合栄養食」のドッグフードを食べていれば、ビタミンやミネラルが不足することはありませんが、おやつやフードのトッピングに少量のきゅうりを与えるのは問題ありません。
与え過ぎるとお腹を壊しやすい、カリウムの過剰摂取など心配も多くなるので、1回に与える量は少量に。どんな時でも過剰摂取には注意しましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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