犬と暮らす
UP DATE
死にいたることも! 本当は恐ろしい「犬の歯周病」
菌が歯の骨を溶かしてしまう!?
口の中の数百もの細菌が歯に付着して歯垢となり、歯肉に炎症を起こすことが歯周病の始まりです。歯垢中の数百もの細菌のうち、歯周病を起こす歯周病原性細菌(歯周病菌)はわずか10種類程度。この歯周病菌が増えて炎症が広がると、歯と歯肉の間の溝が深くなって歯周ポケットとなり、歯の根元まで歯周病菌が入りこみます。その結果、歯周病菌が歯を支えるあごの骨を溶かすこともあります。
日本では3才以上の犬の80%が歯周病とその予備軍といわれ、歯周病をケアしないまま重症化するケースも増えています。また、歯周病菌が、心臓や肺などの病気の発症にかかわっていることもわかってきています。
口臭がキツイ、歯ぐきの腫れで気がつくことが多い
歯についた歯垢が原因で、口の中から悪臭がするのです。また、歯垢が歯ぐきの炎症を引き起こし、「赤く腫れている」「出血している」「膿が出ている」などの歯肉の症状も出てきます。炎症が進んで痛みが出てくると、「かたいものを食べなくなる」「食欲はありそうなのにそれほど食べない」「片側だけで食べる」など食べ方に変化があらわれることも。
さらに病状が進行して歯を支えるあごの骨が溶けると、「くしゃみを繰り返す」「鼻血が出る」「目が開けにくくなる」など歯周病と関係なさそうな症状が出るのも特徴です。
悪化しやすい犬
あごが小さく歯と歯の間が狭いため、歯垢がつきやすい状態です。1才以上の小型犬の約90%が歯周病にかかっているといわれています
短頭種
口腔内が狭く、多くの犬の場合、歯と歯が重なったように生えています。そのため、歯垢が付着しやすい口内の状態になっています
皮膚病の犬
患部をなめたり噛んだりしたときに、抜けて前歯にはさまった毛が細菌の温床になり、歯周病を引き起こすことも。また、病気により体の抵抗力が落ちて悪化しやすい傾向が
シニア犬
歯周病のケアをしていないと、加齢に伴い歯垢・歯石がどんどん蓄積し、歯周病菌が歯の根元まで広がることも。歯が抜ける、あごの骨が折れるなどの重症例も目立ちます
糖尿病の犬
糖尿病の犬は細菌への抵抗力が弱まり、歯周病にかかりやすく悪化しやすい傾向が。また、歯周病を治すと、糖尿病治療薬のインシュリンが効きやすいというメリットも
全身麻酔で歯ぐきの奥の歯垢・歯石を取り除く
犬の歯周病治療も人と同じように超音波の振動を利用して、歯の表面や歯周ポケットの奥に蓄積された歯垢・歯石を取り除きます。犬の措置は全身麻酔で行い、重度の症状では抜歯が必要なケースも多くみられます。
歯垢・歯石を取り除き、場合によって抜歯をすることで歯肉の炎症や化膿がおさまり、健康な歯と歯肉に回復します。目の下に穴があいた重度のケースでも、抜歯をしてたまった膿を取り除くことで骨が再生し、2週間で穴がふさがります。
参考/「いぬのきもち」2020年1月号『犬の現代病ファイル 歯周病』(監修:埼玉県上尾市・フジタ動物病院院長 藤田桂一先生)
イラスト/フジマツミキ
文/サトウ
UP DATE