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【獣医師監修】犬にパイナップルを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

パイナップルは、食べる量に気をつければ犬が食べても大丈夫な果物です。「ビタミンC」「食物繊維」「クエン酸」など、犬の体によい栄養素がたっぷり。ただし、与える量によっては犬の体に害を及ぼす栄養素もあります。パイナップルに含まれる栄養素と与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬にパイナップルを与えるときは、与える量に要注意

木製のテーブルの上のクレートでおいしいカットパイナップル、フラットレイ
Liudmila Chernetska/gettyimages
パイナップルは、食べる量に気をつければ、飼い主さんと愛犬が一緒に楽しめるフルーツです。
タンパク質を分解する酵素「ブロメライン」が含まれているのが特徴的で、ビタミンC・ビタミンB1などのビタミン、食物繊維・マンガン・鉄・銅な」どのミネラルも豊富に含まれています。犬の体に中毒を引き起こすような有害物質は含まれていません。

そんな犬の体にも役立つ栄養素が豊富なパイナップルですが、与える量には注意が必要です。体によい作用を及ぼす栄養素でも、過剰に摂取すれば反対に体によくないことも。パイナップルの豊富な栄養素を愛犬の健康に活かすためには、それぞれの栄養素の作用をよく理解し、愛犬にとっての適量と正しい与え方を知っておくことが大事です。

パイナップルのおもな栄養素|水分は約85%、ビタミン、ミネラルが豊富

パイナップルの被り物、パイナップルの洋服で、全身パイナップルコーデのチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
パイナップルに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分

エネルギー54kal
水分85.2g
タンパク質0.6g
脂質0.1g
炭水化物13.7g
灰分(無機質)0.4g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がパイナップルを食べるメリット|病気予防、疲労回復、アンチエイジング

パイナップルの葉の匂いを嗅いでいる黒いミニチュア・ダックスフンドの横顔
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
パイナップルにはたくさんの栄養素が含まれています。
そのなかから犬の体によいと思われるものをピックアップして、それらに期待される作用について紹介します。

ビタミンC|健康な骨、関節の維持、アンチエイジング

パイナップルに多く含まれているビタミンCには、鉄分の吸収促進や解毒、ホルモン代謝を担う酵素のサポート、コラーゲン合成への関与など、さまざまな働きがあります。体を錆びさせる活性酸素を除去する抗酸化作用もあるので、病気の予防や老化防止にも役立つと考えられます。

犬は体内でビタミンCを作り出すことができるので、従来、「犬にビタミンCの補給は必要ない」と考えられてきました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかってきました。5歳を過ぎる頃からビタミンCの合成能力が衰え始めるともいわれているので、総合栄養食を与えている場合はそれほど心配する必要はありませんが、食べ物やサプリメントからビタミンCの補給を図るのもよいかもしれません。

ビタミンB群|エネルギー代謝

ビタミンB群には、「ビタミンB1・B2・B6」「ナイアシン」「葉酸」「パントテン酸」などの8種類があります。その役割は、脂肪や炭水化物、タンパク質、糖の代謝をサポートし、エネルギーを産生すること。犬が元気に活動するのに役立つ栄養素といえます。

パイナップルにはビタミンB1・B6、ナイアシンが多く含まれています。総合栄養食を主食にしていれば、犬に必要なビタミンB群が不足することはありませんが、パイナップルから補給するのもよいかもしれません。

βカロテン|健康な皮膚や被毛、粘膜、歯をつくり、維持する

パイナップルに含まれるβカロテンは、犬の体内で必要な分だけのビタミンAに変換され、活用されます。

ビタミンAは、おもに皮膚や被毛の健康状態を保ち、丈夫な粘膜や歯をつくるのに役立ちます。
さらに、βカロテンはそれ自体で強い抗酸化作用を持っているので、老化防止や免疫力アップにも役立つと考えられます。

ブロメライン(ブロメリン)|消化をサポート、消化不良の予防

肉をパイナップルと一緒に調理すると、肉が柔らかくなると聞いたことはありませんか?
それは、パイナップルに含まれる「ブロメライン」という酵素が、肉のタンパク質を分解してくれるからなのです。
肉や魚などのタンパク質と一緒にパイナップルを食べれば、ブロメラインがそれらを柔らかく分解して、消化吸収しやすくしてくれるので、消化不良が予防できると考えられます。

ただし、ブロメラインは熱に弱いので、消化を助ける目的の場合は、生のパイナップルを用いましょう。

クエン酸|疲労回復

レモンや梅干し、酢など「酸っぱい」ものに多く含まれている成分「クエン酸」。クエン酸には体内の代謝を促し、体にたまった疲労物質の乳酸を分解する作用があるため、疲労回復に役立つことが期待されます。
パイナップルには、このクエン酸も豊富です。

犬がパイナップルを食べるデメリット|消化不良や便秘、肥満、アレルギーに注意

パイナップルのおもちゃをかじっている黒いトイ・プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の体によい栄養素でも、摂り過ぎるとかえって体にダメージを与えることも。
パイナップルに含まれる栄養素のなかで、摂取量に気をつけたほうがよいものを紹介します。

食物繊維|過剰摂取で消化不良や排便困難に

パイナップルの繊維は硬く、犬には消化しにくいものです。パイナップルに含まれるブロメラインが、肉や魚のタンパク質を分解してくれるので、少量を与えるのはOKですが、量が多いとかえって消化不良を起こす心配があります。

さらに、パイナップルには腸内環境を整える水溶性食物繊維と、便のカサを増して便秘の解消に役立つ不溶性食物繊維の両方が含まれていますが、不溶性のほうが多いので過剰摂取には注意が必要です。
不溶性食物繊維を摂り過ぎると、便が大きくなり過ぎて便通がよくなるどころか、排便が困難になってしまうからです。

糖分|高カロリーは肥満や糖尿病の原因に

パイナップルは糖分が多く、可食部100gあたり約50Kcaと高カロリーなフルーツです。
食べ過ぎるとカロリーオーバーで肥満になったり、糖尿病の引き金になったりするので、ダイエットが必要な犬や糖尿病が心配される犬にパイナップルは与えないほうが安心でしょう。

ブロメライン(ブロメリン)|血栓予防薬との併用は避けて

血栓予防薬の「ワルファリン」を飲んでいる犬がブロメラインを摂取すると、ワルファリンの効果が強くなって出血しやすくなる可能性があります。獣医師から血栓予防薬を処方されている犬には、パイナップルは与えないでください。

また、小麦アレルギーがある犬にパイナップルを与えるときも気をつけてください。
小麦とブロメラインの分子構造が似ていることから、「小麦アレルギーがある人は、アレルギーを起こす可能性がある」という研究結果が報告されています。犬も同じアレルギー反応が起こりうると考えられるため、小麦アレルギーのある犬にはパイナップルを与えときは注意が必要です。

ブロメラインの働きは食糞予防になる?

「食糞」とは、犬が自分の排泄した便を食べてしまうこと。消化不良やストレス、遊びなど、食糞を引き起こす原因はさまざまです。

「犬のごはんに生のパイナップルを追加すると、食糞を予防できる」という情報を見かけますが、食糞の原因が消化不良による栄養不足ならば、パイナップルに含まれる消化酵素「ブロメライン」によって消化が進めば、食糞をしなくなるのかもしれません。

現在のところ、パイナップルが犬の食糞を止めるのに役立つかどうか、国内外ともに正式な研究結果は報告されていませんが、いずれにしても、食糞を止めるには、その原因がなんであるかを突き止めることが大事です。

アレルギーに注意。嘔吐や下痢、痒みが出たら与えるのを止めて!

パイナップルを食べるとまれに食物アレルギー反応を示す犬もいます。
食物アレルギーは、食物に含まれているタンパク質に対して免疫機能が過剰反応を起こすことによって生じます。
パイナップルには、少量ですがタンパク質が含まれているので、アレルギー反応を示す可能性はゼロではありません。もともと食物アレルギーがある犬の場合、最初に与えるときは少量から様子を見ながらにしましょう。もし、嘔吐や下痢などの症状が見られたら、すぐに与えるのをやめてください。

また、愛犬がパイナップルを食べたあとに、頻繁に体を掻きむしっていたり、皮膚が赤くなっていたりしたら、アレルギー性皮膚炎が疑われます。

とくに、コッカー・スパニエルやスプリンガー・スプニエル、ボクサー、コリー、ダルメシアンなどの犬種は食物アレルギーが出やすいという報告があります。該当犬種の飼い主さんは注意しましょう。

犬にパイナップルを与えるときの注意ポイント|皮と芯は除いて、細かくカットして与えよう

パイナップル柄のワンピースを着て、カメラを見つめている茶色い柴犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
愛犬が、飼い主さんがデザートに食べているパイナップルを欲しがることもあるでしょう。しかし、人間用に切り分けたパイナップルをそのまま与えるのはよくありません。愛犬にもパイナップルをお裾分けするときは、以下の方法と量を参考にしてください。

与えてよい部位

果皮には棘があるので、必ず厚めに剥いて、果肉の部分だけを与えます。
最近は、芯まで柔らかく、そのまま食べられるパイナップルがありますが、そうしたパイナップルでも犬に与えるときは、芯を取り除いたほうが安心です。

与えるときの適量

犬にパイナップルを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)35g~69g(小2切~小4切)
中型(6~15kg)79g~158g(大3切~大5切)
大型(20~50kg)196g~390g(大8切~大16切)

※パイナップル小1切は約15g、大1切は約24gとして計算
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

生のまま与えて大丈夫ですが、加熱するならブロメラインは熱に弱いので短時間に。パイナップルの繊維質は硬いので、愛犬が消化しやすいよう小さく刻んで与えます。

缶詰、ジュース、ドライフルーツなどの加工品はNG

パイナップルには、缶詰やジュース、ゼリー、ドライフルーツなど加工品もたくさんあります。それらは、人間用に糖分などを加えてつくられているものが多く、カロリーが高いので犬に与えないでください。

過剰摂取とアレルギーに気をつければ、犬にパイナップルを与えてOK

パイナップルにはビタミンや食物繊維、消化酵素など、犬の健康に役立つ栄養がたくさん含まれています。与える量やアレルギーに気をつければ、飼い主さんと一緒にデザートタイムを楽しむことができるでしょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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