子犬期のしつけで悩む人も多い、犬の噛みグセ。飼い主さんが誤った対応を続けていると、成犬になってますます噛みグセの激しい犬になってしまうことも。
今回は、飼い主さんが悩みがちな噛みグセのケースを3つ紹介! 「犬がどのようなきもちで噛んでしまうのか」、「飼い主さんがどのように対応すればいいのか」も専門家の先生が解説します。
※噛みグセの対策は危険を伴います。不安を覚える方は、愛犬が噛んでくるときの力の強さにかかわらず、ドッグトレーナーや行動治療にくわしい獣医師に相談しながら行ってください。
ケース1 知らない人が家に来ると噛んでしまう!
事例
家にお客さんが来ると、誰に対しても噛もうとします。いつもはクレートなどに入れずフリーにさせていますが、来客時は夫婦のどちらかが愛犬の体を押さえるようにしています。そうしないとお客さんに方に行き、噛んでしまうので……。(大阪府/Zさん)
噛む犬の気持ち
来客に対して吠えたり噛んだりするのは、「知らない人が家に来ること」が苦手な証拠。原因のひとつに、社会化不足が考えられます。愛犬の気持ちに寄り添って、無理に来客と対面させないことも大切です。愛犬は、知らない人が苦手だと理解しましょう。
噛み癖を直すための対策
家族以外の人と、同じ空間で落ち着いて過ごす経験を積んで、知らない人と一緒にいても怖くないということを分かってもらうようにしましょう。既に噛みグセがついている犬に対しては大事があってはいけないので、しつけ教室などで必ず専門家のサポートを受けて、慣れさせるように。お客さんを噛む恐れのある犬は、来客時に愛犬を別の部屋に移動させておくのがベスト。
ケース2 愛犬の相手をしていないときに噛んでくる!
事例
家にいるときは「愛犬を自由にさせてあげたい」とサークルから出していますが、テレビを見ているときにときどき噛んでくるので困っています。また部屋を移動するときも、かまってほしいのか、高確率で噛まれますね……。
(東京都/Oさん)
噛む犬の気持ち
犬がサークルの外に出て自由になっているときに、飼い主さんの関心を引こうとして噛む行動は、子犬期によく見られる自然な行動です。その時に飼い主さんが反応していると、「噛めば反応が得られる」と犬が覚えて、成長しても関心をひくために噛む行動を繰り返します。
噛み癖を直すための対策
噛み癖を直すためには、まず「噛む」状況を作らないことが大切です。愛犬をサークルから出すときは、飼い主さんと遊ぶ、知育おもちゃで遊ぶなど、やること(目的)を与えるようにしましょう。また、飼い主さんが家事や食事などで、愛犬の相手ができないときはサークル内で休ませてください。
部屋から出る際に噛まれることを防ぐためには、「ハウス」や「オスワリ」「マテ」など適切な行動を教えるといいでしょう。たとえば「ハウス」の指示で、サークルに戻ることができれば、噛む行動を未然に防ぐことができます。適切な行動をしたときは、褒めるようにしてください。
ケース3 食事中に触ろうとすると噛みつく!
事例
成犬になってから迎えた愛犬。食への執着が強く早食い防止のフードボウルを使っているのですが、ある日、愛犬が食べにくそうにしていたので手でフードを寄せようとすると噛まれました。今も手を近づけると噛もうとするので、気をつけています。同様に歯みがきガムなど長くかじるものへの執着も強く、興奮しがちです。
(埼玉県/Nさん)
噛む犬の気持ち
「大切なフードを奪われてしまう!」と感じて、うなる・噛むという行動が起きています。フードを守る意識は、遺伝や幼少期の経験によって影響を受けますが、食事を邪魔された経験によっても強くなりますので、食事中にむやみに触ったり、食事を邪魔したりすることは禁物です。また、床に落としたフードを拾う場面も、噛みつきが発生しやすいので要注意。
噛み癖を直すための対策
まず、食事中に飼い主さんが近づくだけでうなるようなら、安全にフードを与えられて、愛犬が落ち着いて食べられる環境づくりが重要です。部屋を分けて食べさせるなどの工夫を。
歯磨きガムやジャーキーなどのおやつにも執着する犬の場合、おやつはすぐに食べきれるものを与えるように。どうしても歯みがきガムなどを与える場合はハウスの中で与えて、食べている最中は邪魔しないようにしましょう。
飼い主さんが近づくだけでは唸らないのなら、下記イラストのようにフードボウルを手に持って与える方法がオススメです。可能なら手から少量ずつ与えてもOK。ボウルを床に置くとフードを守る意識が強くなるのですが、こうすることでフードを守りにくくなります。フードボウルを手に持つと、うなるようなら、噛まれる危険性があります。即中止を。
絶対にしてはいけない対応
犬が噛む理由を「犬が家族より偉いと思っているから」と考え、家庭内順位を教えようと体罰を用いる飼い主さんもいますが、痛みや恐怖を与えるしつけは厳禁です。噛む行動には明確な原因があり、「上下関係」で発生しているわけではありません。たたいたり、マズルを強くつかんだりすると、手の接近や飼い主さんに対して恐怖を覚えて、余計に噛む問題が悪化します。
犬の噛みグセを直すためには、噛みつきのパターンに応じた対応が必要です。犬の気持ちに寄り添い、なぜ噛んでしまうのか、考えながら接するようにしましょう。
参考/「いぬのきもち」2020年8月号『こんなとき愛犬に噛まれました』(監修:獣医行動診療科認定医・奥田順之先生)
イラスト/えのきのこ
文/ichi