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台風で浸水。自宅2階で避難生活を送った大型犬2頭の飼い主さんが備えていたもの

飼い主さんのリアルな被災体験を教訓にしよう

災害は、いつどこで起こるかわかりません。
そして災害の原因は、地震かもしれないし、台風かもわからない。
ゲリラ雷雨や山火事が、そのきっかけになることもあります。
地球上に住んでいる限り、災害は決して他人事ではないのです。
だからこそ、いろいろな可能性を考えて日ごろから備えておくことが、愛犬と飼い主さんの命を守ることにつながります。

今回は、実際に災害に遭ったという飼い主さんの体験談をご紹介。
この機会に愛犬との防災について考え、万が一に備えておきましょう。

実録:台風による洪水の際、大型犬2頭と自宅避難を余儀なくされた

お話を伺ったTさんの愛犬たち。2頭とも大型犬です。
栃木県にお住まいのTさんご家族は、オーストラリアン・シェパードと、シベリアン・ハスキーの2頭と暮らしています。

台風が上陸し、各地の被害が報道されるたびに、自宅近くの川も危ないのでは?と不安を感じていたTさん。
水害に備えて、事前に人の食料の備蓄を買い足したり、濡れると困るものや長靴などを自宅の2、3階に移動したりしておいたそうです。

「いよいよ台風が近づいてきたため、テレビで市内の河川の様子を確認していました。
雨脚が強まったため、避難所へ行こうと考えて市のホームページを確認すると、犬同伴の避難が認められていないことがわかり、自宅避難を余儀なくされました」(Tさん)

Tさん宅は、3階建ての2世帯住宅です。
避難ができないとわかり、自宅の2階に2世帯全員と愛犬が集まって過ごすことにしました。

ついに堤防が決壊。そのとき愛犬は……?

堤防決壊からおよそ10分後の、Tさん宅から見た外の様子。濁流が押し寄せてきているのがわかります。
そして、ついに川の堤防が決壊してしまいます。
30分後にはゴーゴーと濁流のような音が聞こえ始めました。

「車が浮き上がって動くほどの水の勢いでした。
そのときに感じた恐怖は、今でも忘れられません」とTさん。

それでも、愛犬に不安を与えないよう、努めてふだんどおりに接したそうです。
そのためか、愛犬は不安な様子を一切見せず、いつものようにくつろいでいたとか。

翌日の早朝に水は引いたものの、1階は床上52㎝まで浸水。
1階の床には10㎝ほどの汚泥が積もり、外にも一面の汚泥が……。

「汚泥の片づけは気の遠くなるような作業でした。
きれいにしてもニオイが鼻に残り、しばらくはつらかったです」

子犬のころからの習慣が、愛犬をストレスから守った

被災時のTさんの愛犬たち。堤防が決壊したその日、外から聞こえる濁流の音に耳を傾けることはあったものの、いつもと変わらずにいたそう。
片づけに時間を取られ、愛犬のことは後回しになっていましたが、それでも愛犬はストレスなく過ごせていたそうです。

「犬は習慣を覚える動物だと聞いていたので、子犬のころから、散歩の回数や時間、食事の時間などは、私の都合に合わせて毎日バラバラ。
愛犬が習慣として覚えていなかったので、散歩に行けなくてもストレスに感じなかったのかもしれません。
でも久しぶりに散歩に出られたときは、とてもうれしそうでしたし、私もホッとしました」

備えておいてよかったこと「室内排泄の習慣」

愛犬は2頭とも室内でトイレができたので、避難生活中、とても助かったとTさん。
被災して、事前に備えておいてよかったと思うもののひとつが、室内排泄の習慣なのだとか。

大型犬は、外でしか排泄できないとシニア期に大変だろうと考えて、もともと愛犬に室内排泄を教えていたTさん。

「被災のあと、自宅周辺は一面汚泥で、愛犬を気軽に外へ連れだせるような状況ではありませんでした。
そのため、室内排泄ができて本当によかったです」

備えておいてよかったもの「3カ月分の愛犬グッズの備蓄」

充分な愛犬グッズの備蓄があったため、生活に不安はなかったそう。
じつは、実家が仙台市のTさん。
東日本大震災後、備蓄の大切さを痛感したそうです。
そのため、愛犬用品も、2頭が3カ月間暮らせるだけの量を備蓄していました。

水は飲料水以外に、空になったペットボトルに水道水を入れてふだんから常備。
水道水も定期的に入れ替えていました。
そのため、生活の面ではあまり不安がなかったそうです。

これが困った!「車が水没し、愛犬を連れだせなかった」

愛犬たちがストレスを抱えないよう、工夫をしながらいっしょに室内で遊びました。
車が水に浸かって廃車になり、浸水の被害を受けなかった地域に愛犬を連れていくことができなかったそう。

「結局、2カ月ほど愛犬を外に出せませんでした。
そのため、室内で簡単なアジリティをしたり、知育おもちゃで遊んだりして過ごしました」


いかがでしたか?
防災士であり動物福祉活動家の成田司先生によると、Tさんのように、自分の地域の災害を想定して、備えておくことはとても重要とのこと。
避難する際は、中型犬以上場合、避難所に連れて行けても、ずっとつないでおくなど厳しい条件を守らなければいけないケースもあるそうです。
Tさんの例のように、そもそも同行避難を受け入れていないところもあるでしょう。
そうなると、自宅避難や車中避難を想定した備えも必要になると言えます。

愛犬の命を守れるのは飼い主さんだけです。
万が一に備えて、あらゆる可能性をシミュレーションして、今から備えておけるといいですね。

参考/「いぬのきもち」2021年3月号『みんなの体験談から学ぶ犬防災』(監修:防災士・動物福祉活動家 成田司先生)
写真提供/Tさん
文/伊藤亜希子
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