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弁護士が教えます!愛犬の事故・ケガ・病気……お金のトラブル、どう解決する!?

ペットと法律の問題に詳しい弁護士さんに聞いたところ、犬に関するトラブルの相談は年々増えているそう。
特にトラブルになりやすいものといえば「お金」にまつわる問題です。自分には関係ないことと思っても、事故やケガ、病気など、もしかすると明日はわが身にふりかかることかもしれません。弁護士さんに多く寄せられたお悩みのなかから、事故やケガ、病気にまつわる相談と、先生の回答をまとめましたので、ぜひ参考にしてください!

お話してくれたのは……渋谷 寛先生

弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。

見知らぬ犬に噛まれた!ワクチン代を請求できる?

イラスト/二階堂ちはる
イラスト/二階堂ちはる
【相談ケース①】自宅の敷地に犬が迷い込み、近づいたときに指を噛まれました。狂犬病ワクチンの注射済票がついていなかったので、念のため自費で狂犬病ワクチンと破傷風ワクチンを自身に接種。保健所へ連絡もしました。飼い主さんが見つかれば、予防接種の費用を請求できるでしょうか?

【弁護士の見解】ワクチン代を請求できるでしょう

【渋谷先生の回答】
犬の飼い主さんは、愛犬が他人に損害をかけたときには、その損害を賠償する義務があります(民法第718条)。犬が逃げ出したのは、その犬の飼い主さんが注意を怠ったことが原因のため、飼い主さんが見つかればワクチン代を請求できるでしょう。噛まれたことを証明するために、医師の診断書と領収書をもらっておくと安心です。

民法第718条って?

飼い主さんや、飼い主さんに代わって動物を管理する人が、事故やトラブルで責任を負うかを判断する際、基準となるのが下記の「民法第718条」。ペットと暮らす人は、知っておくといいでしょう。

1.動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2.占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

愛犬が飛びつこうとして、自転車に乗った相手が転倒!

イラスト/二階堂ちはる
イラスト/二階堂ちはる
【相談ケース②】
愛犬が自転車に飛びつこうとして、接触はしていなかったものの相手が転倒してケガをしてしまいました。接触していないとしても、治療費はこちらが払う必要があるでしょうか?

【弁護士の見解】飼い主さんに支払いの義務がありそうです

【渋谷先生の回答】
おそらくリードをつけていたと思いますが、愛犬が原因で自転車が転倒したのであれば、転倒事故と因果関係のある治療費は支払う必要があります(民法第718条による)。治療費の賠償をする場合には、不当な請求を防ぐために、少なくとも治療費の領収書を提示してもらうことをおすすめします。もし診断書を請求したい場合は、診断書料数千円を飼い主さんが支払う(賠償する)ことになるでしょう。

愛犬を迎えた当日、脱毛を発見。治療費を請求できる?

イラスト/二階堂ちはる
イラスト/二階堂ちはる
【相談ケース③】
ブリーダーからの引き渡しの当日、帰宅後に愛犬の体に脱毛を発見しました。引き渡し以前の脱毛なので、通院や治療費などをブリーダーに請求しましたが、支払ってもらえませんでした。このようなケースでは支払ってもらえないのでしょうか?

【弁護士の見解】証明が難しく、請求できない場合が多いです

【渋谷先生の回答】
できれば引き渡し時に脱毛を発見しておくべきでした。帰宅後に発見した場合、移動中の何らかの原因で脱毛した可能性を否定できないため、その責任をブリーダーに問うのは難しい場合がほとんどです。残念ながら、ブリーダーの落ち度を証明することは相当困難なため、治療費の請求は難しいでしょう。

愛犬の死亡時刻がカルテに記載されていなかった

【相談ケース④】
愛犬が動物病院で亡くなったとき、カルテに死亡時刻の記載がなく、愛犬が息を引き取った時間を知ることができませんでした。この場合、病院側を訴えることはできるのでしょうか? たとえ裁判になってでも、どうしても死亡時刻を知りたいのですが……。

記載義務がないため、訴訟は難しそうです

【渋谷先生の回答】
獣医師法施行規則の第11条に、以下のような規定があります。診療簿に記載しなくてはならない項目を定めたもので、この規則に則ると、死亡時刻の記載は義務ではないことがわかります。規則違反には該当しないため、飼い主さんは大変残念だと思いますが、訴訟するのは難しいでしょう。

<獣医師法施行規則 第11条>
法第二十一条第一項の診療簿には、少なくとも次の事項を記載しなければならない。

一 診療の年月日
二 診療した動物の種類、性、年令(不明のときは推定年令)、名号、頭羽数及び特徴
三 診療した動物の所有者又は管理者の氏名又は名称及び住所
四 病名及び主要症状
五 りん告
六 治療方法(処方及び処置)
いかがでしたか? お金のトラブルに関しては問題も大きくなりやすいので、なかには「知らなかった」では済まされないものも。さまざまなケースを見ておくことで、いざというときに備えましょう。

参考/愛犬との暮らしをもっと楽しむ『いぬのきもち』2021年5月号「犬にまつわる”お金”のトラブル回避術」(監修:弁護士 渋谷寛先生)
イラスト/二階堂ちはる
構成・文/佐藤英美
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