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【獣医師監修】犬にアーモンドはNG。食べてしまったときの症状と対処方法

犬は「ナッツ中毒」を起こすことがありますが、アーモンドで中毒を起こすことはありません。ただし、粒のままのものは、のどに詰まらせる懸念や、高カロリーであるだけでなく、不溶性食物繊維が多いことも犬の体によくない影響をもおよぼす心配があります。アーモンドを犬に与えてはいけない理由と、過剰摂取で見られる症状と対処法について紹介します。

佐野 忠士 先生

犬 アーモンド
Coprid/gettyimages

犬はアーモンドを食べてはいけない。高カロリーやアレルギーで健康を損なう可能性あり

キッチンに座り横を向いて舌舐めずりしている黒いラブラドール・レトリーバー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
健康志向の高まりに伴いアーモンドの体へのよい効果が注目されていますね。アーモンドミルクやアーモンドフィッシュ、さまざまなナッツ類の入ったグラノーラを常備し、愛犬の健康のためにも食事やおやつに取り入れたいと考える飼い主も多いのではないでしょうか。
しかし人間にとってヘルシーな食べ物が、犬にとっても同じ効果が期待できるとは限りません。アーモンドは、犬に重篤な中毒症状を引き起こすものではありませんが、含まれる豊富な不溶性食物繊維やハイカロリーは犬の健康を損なう原因になりかねません。犬にアーモンドを積極的に与えるのはやめておいたほうがよいでしょう。

とくに注意が必要なのが、アーモンド入りチョコレートです。アーモンドが犬に与えるリスクとともに、チョコレートに含まれる「テオブロミン」という成分が、犬に重篤な中毒症状を引き起こします。チョコレートの甘さや脂肪分はワンちゃんの口触りにとって「たまらない」ようです。犬の手に届くところにアーモンド入りチョコレートを置いておかないよう、くれぐれも注意してください。

なお、犬の中毒の原因になる危険なナッツは、マカデミアナッツとビターアーモンドです。ビターアーモンドは野生種なので、食品として市場に出回ることはないため、犬の口に入る心配はありません。

犬がアーモンドを食べてはいけない理由|高カロリー&高脂肪、過剰な食物繊維、アレルギーの心配も

アーモンドアイの柴犬、りりしい横顔のアップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
人間にとってヘルシーなイメージのあるアーモンドですが、犬の体にとってはさまざまなデメリット要素があります。とくに注意したいポイントを紹介します。

高カロリー|高脂肪&高カロリーで肥満や高脂血症になりやすい

アーモンドに含まれる水分はわずか約5%、それに対して脂質は50%強、炭水化物が約20%を占めています。ほかの野菜や果物に比べてきわめて脂質が高く、高カロリーな食品といえます。
人間に比べて体の小さな犬にとっては、少しの量でも多過ぎる脂肪とカロリーを摂取することになってしまいます。高脂肪&高カロリー食品は、過剰摂取が肥満につながりやすく、糖尿病や高脂血症、膵炎の原因にもなります。

食物繊維|不溶性食物繊維の過剰摂取で排便困難に

食物繊維は、腸内環境を正常に保ち、快便をもたらすメリットだけが注目されがちですが、じつは過剰に摂取することでのデメリットもあります。
アーモンドには、水溶性食物繊維に比べ10倍強の不溶性食物繊維が含まれています。
水溶性食物繊維は、水溶性食物繊維は食後の血糖値の上昇を緩やかにし、コレステロールの排出をサポートする作用があります。一方、アーモンドに多く含まれる不溶性繊維質は、腸内で水分を吸って便のカサを増し、便通を改善したり、腸内の善玉菌のエサになって腸内環境を整えたりするものです。

このように腸によい影響をおよぼす食物繊維ですが、もともと犬は食物繊維を消化しにくい動物です。不溶性食物繊維をたくさん摂ると、便が大きくなり過ぎて排便が困難になるデメリットが生じてしまうので、アーモンドを与えるのは避けたほうがよいでしょう。

塩分|塩分過多で心臓や腎臓に負担

人間用に市販されている多くのナッツ類には、味付けに食塩が使われています。人間にとって美味しく感じる塩分は、体の小さな犬にとっては過剰な塩分。塩分の摂りすぎは、心臓や腎臓機能に負担をかけることになり、健康を損ねることにつながります。アーモンドフィッシュやミックスナッツなどを食べながら、愛犬にお裾分けするのは禁物。目を離したすきに、犬が食べないよう気をつけましょう。

のどに詰まらせやすい|窒息や腸閉塞の原因にも

アーモンドは犬が丸ごと飲み込みやすい大きさと形状です。そもそも犬は、口の中で食べ物を噛み砕いてから飲み込む習性がないので、小さなアーモンドはそのまま丸呑みする可能性があります。小さな犬は食道が狭いため、固いアーモンドがのどに詰まると窒息する可能性も考えられます。
また、のどを無事に通過しても腸で詰まれば腸閉塞になり、緊急の処置が必要になる場合があります。

大豆アレルギーの場合はとくに要注意

アーモンドは大豆と同じマメ科の食物なので、大豆アレルギーがある犬は、同様のアレルギー症状を引き起こす可能性が高いので絶対に食べさせてはいけません。

危険な量の目安

アーモンドによる犬の中毒は報告されていないため、危険な量の目安はわかっていません。
しかし、情報がないからといって、「ちょっとくらいなら与えても大丈夫だろう」と気軽に考えてはいけません。先述したとおりさまざまなデメリットが考えられるので、愛犬がアーモンドの味を覚えないよう、与えないことが大切です。

犬がアーモンドを食べたときに見られる症状|嘔吐、下痢、痒み、元気がなくなる

目をぎゅっと閉じて寝ているポメラニアンの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

過剰摂取で見られる症状

犬がアーモンドを多量に食べると、次のような症状が見られます。

<消化不良による症状>

  • お腹が膨れて元気がない

  • 数時間おきに嘔吐、下痢

  • 祈りの姿勢(頭を下げて、背中を丸めるようにして立っている)


<油分の過剰による症状>

  • 胃もたれや胸焼けで気持ち悪そう

  • 元気がない

  • 下痢・嘔吐

  • 祈りの姿勢(頭を下げて、背中を丸めるようにして立っている)

食物アレルギーで見られる症状


  • 嘔吐・下痢

  • 皮膚の痒み

  • 湿疹

  • 元気がなくなる

  • 目が充血する


ちなみに、アレルギーには食べてからすぐに発症する「I型過敏症」と、数時間以上で発症する「Ⅳ型過敏症」があります。人間は「I型過敏症」が一般的ですが、犬の場合は「Ⅳ型過敏症」が多いようです。犬がアーモンドを食べてから数時間たってから、嘔吐や下痢、体を痒がるなどの症状が見られたら、食物アレルギーかもしれません。

犬がアーモンドを食べてしまった場合の対処方法

ソファの肘掛けに頭を乗せてまどろむチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
アーモンドが毒性のある食べ物ではないので、愛犬がアーモンドを食べてしまったからといって、あわてて病院に駆け込む必要はありません。ただし、いつもと様子がちがう場合は、対処が必要です。

症状が見られたら病院へ

下痢、嘔吐、体が痒そう、急に元気がなくなったなど、なんらかの症状が見られる場合は、動物病院に連れて行きましょう。診察を受ける際には、アーモンドを食べた時間と量、症状などを獣医師に伝えてください。

病院での治療内容

病院では飼い主から話を聞いたうえで、以下のような処置・検査を行い原因を特定、適切な治療を行います。

◇催吐処置、摘出処置
 犬がアーモンドを誤飲してのどに詰まらせると、自力で出そうと何度も吐き出そうとしますが、うまくいかない場合は、獣医師による摘出が必要です。ピンセットで取り出す、麻酔をかけて内視鏡で取り出す、薬によって嘔吐させるなどの方法が考えられます。

◇レントゲン、腹部エコー、血液検査
 アーモンドがどこに詰まっているのかわからない場合は、レントゲン検査や腹部エコー検査を行い、詰まっている場所を特定
します。過剰摂取による腎臓や肝臓など体への影響を調べるために、血液検査を行う場合もあります。

◇点滴・投薬
 症状を緩和し、不調を治すために、点滴や薬の投与が必要な場合があります。
 下痢や嘔吐が続くと脱水状態に陥っている可能性が高いため、水分補給が必要です。具合が悪いときは水も食事も口にしないことが多いので、点滴で水分と養分を補給します。犬の点滴も人間と同様に静脈から行うことができますが、犬はじっとしていないので難しいかもしれません。
そんな場合は、背中の皮膚と筋肉の間にまとまった量の輸液を入れる「皮下点滴」という方法が有効です。10〜20分程度の処置で済むため、病院に愛犬を預ける必要はなく、犬の体への負担も軽く済みます。
ただし、皮下点滴が有効なのは、軽い脱水の場合です。

◇重症の場合は入院が必要な場合も
下痢や嘔吐が激しく重度の脱水を起こしている場合や、腎臓や肝臓、膵臓、腸など内臓がダメージを受けている場合には、入院して処置や治療を行うケースもあります。
また、腸閉塞が認められる場合は、入院して開腹手術を行います。

犬のアーモンド誤飲を防ぐ方法

木のベンチの前で飼い主を見上げるウェルシュ・コーギー・ペンブローク
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
飲酒中におつまみとして食べることが多いアーモンド。飼い主が意識的にアーモンドを与えなくても、気づかないうちに床に落としてそのままにしているケースもあるかもしれません。床に落ちているものを愛犬が誤飲したら大変です。飼い主がアーモンドを食べるときは床に落としたり、犬の目に入るところに置いたりしないようにしましょう。

アーモンドはデメリットが多いので、犬には与えないように!

アーモンドは犬とって有毒な物質は含まれていませんが、犬の体調を崩す原因になりうる要素が多いことがわかりました。人間にとってよい食べ物でも、犬にとってよいとは限りません。犬の健康を守り、一緒に楽しく暮らすために、犬のアーモンドを与えるのはやめましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医保健看護学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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