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【獣医師監修】犬が吐く原因は?危険な嘔吐の見分け方や対処法も解説
人よりも吐きやすいといわれている犬。しかし、病気が原因で吐いているケースもあるため、犬が吐いたときは迅速かつ適切な対処が必要です。今回は、犬が吐く原因や吐きやすいといわれる理由、吐出との違い、危険度の見極め方や対処法について解説します。
石田 陽子 先生
石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
●経歴:ぬのかわ犬猫病院本院副院長/ぬのかわ犬猫病院中田分院院長 など
●資格:獣医師
●所属:日本小動物歯科研究会/比較歯科学研究会/日本獣医動物行動研究会
犬は体の構造的に吐きやすい
二足歩行の人は食べたものが重力に従って下に落ちていくため、吐くときは食べたものを重力に逆らって口まで戻す必要があります。一方、四足歩行の犬は消化器官が地面と平行になっているため、人のように食べ物が下に落ちていかず、重力に逆らわなくても容易に吐けてしまうのです。
犬が吐く前は、口をぺちゃぺちゃさせる、よだれが多くなる、そわそわ歩き回るなどの症状や行動が見られることが多いので、吐く前後の様子に注意しましょう。
「吐く(嘔吐)」と「吐出」の違い
吐出とは、食べた直後に未消化のフードを吐き出す行動のことで、主に早食い、フードが合っていない、異物、食道の動きが悪くなる病気などの原因で起こります。吐き出したフードを食べようとする場合や、吐いたあとスッキリしていて食欲が落ちる様子が見られない場合は、この吐出の可能性が高いでしょう。
吐出は犬にとって珍しい行動ではありませんが、吐出の回数があまりに多い場合は、食道の病気や嚥下障害を起こしているおそれもあるので、一度動物病院で検査を受けることをおすすめします。
吐しゃ物から考えられる犬の吐く原因と危険度
茶色の吐しゃ物
しかし、未消化のフードが含まれていないのに茶色い場合は、急性胃腸炎や胃潰瘍などが原因で胃腸から出血し、その酸化した血液が吐しゃ物に混ざっていることが考えられます。命にかかわる場合もあるので、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
ピンクや赤、赤黒い色の吐しゃ物
それよりも濃い、赤黒い色の吐しゃ物を吐く場合は、胃潰瘍や消化管にできた腫瘍からの出血が疑われます。
黄色や緑色の吐しゃ物
胆汁嘔吐症候群は、空腹で胃が空っぽになっているときに起きやすい症状なので、食事の回数や時間帯を調整することで防ぐことが可能です。ただし、吐く量や回数が増える場合は別の原因も考えられるため、その際は早めに動物病院へ相談しましょう。
透明や白、泡の混じった吐しゃ物
こちらは命にかかわるものではないですが、食事回数の調整、休む、乗り物酔いであれば事前に酔い止めを飲むなどの対処が必要となります。
異物の混じった吐しゃ物
ネギ類やチョコレート、タバコなど食べたものの種類や量によっては、すぐに吐き出させないと命にかかわることもあるため、すぐに動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。
なお、換毛期など被毛の抜けやすい時期は、毛玉や被毛混じりの吐しゃ物を吐き出すこともあります。
犬が中毒を起こすものについては、下記の記事も参考にしてください。
動物病院の受診が必要な危険な吐き方と症状
何度も吐く
しかし、何度も何度も繰り返し吐く場合は、消化器疾患や内臓疾患など、命にかかわる病気を発症していることが疑われます。また、吐くうちに脱水状態になってしまうこともあるため、愛犬に何度も吐く様子が見られたらすぐに動物病院を受診しましょう。
下痢・軟便・腹痛を伴う嘔吐を繰り返す
嘔吐の症状が見られるウイルス性疾患としては、コロナウイルス腸炎やレプトスピラ症、パルボウイルス腸炎などがあげられますが、身近で注意したいのが、パルボウイルス腸炎です。ワクチン接種をしていない子犬に多く見られる病気で、感染すると最悪の場合、1~2日で死に至ります。
これらの病気は症状が長く続くことが多いのが特徴です。また、レプトスピラ症など、犬から人へ感染する病気の場合もあります。前述した症状が見られる場合や、トマトケチャップのような便が出たら、すぐに動物病院を受診してください。
下痢と嘔吐が同時に起こった場合の原因や対処などについては、下記の記事でも解説しています。
吐いたあとぐったりしている・熱がある
また、多頭飼いをしている環境だと、ほかの犬たちにも同様の症状が起きてしまう危険性があるため、なるべく早く動物病院へ相談し、診察を受けてください。
血が混ざった吐しゃ物を吐いている
吐く行動は見られるのに吐けていない
これらは胸の深い大型犬や超大型犬に見られることが多い病気で、処置が遅れると内臓の壊死(えし)や血行障害を起こし、全身性のショック症状や多臓器不全で死に至るおそれがあります。食後えずく様子が見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
水を飲んでも吐いてしまう
緊急性の低い吐き方と家庭で様子を見る場合の対処・注意点
家庭で様子を見ていい場合の吐き方や症状
- 1回吐いただけで嘔吐を繰り返さない
- 吐いたあとに苦しそうな様子やほかの症状が見られない
- 吐いたあとも元気にフードを食べる
嘔吐後のフードや水の与え方
症状が軽いようなら、少し時間をおいてから少量の水やフードを与えてみてください。これで問題なければ、いつもどおりの食事に戻して大丈夫です。
早食いで吐いた場合の対処・注意点
そのほか、食べるスピードを遅くする早食い防止の食器を利用して、一気に食べないようにさせることも効果的です。
フードや食材が合わない場合の対処・注意点
なお、軟便や皮膚がかゆくなるなどの症状が伴う場合は、食物アレルギーが関わっている場合もあります。与えたフードや食材のなかに以下のようなものが含まれる場合は、食物アレルギーを疑いましょう。
- 小麦などの穀物類
- 乳や牛乳
- 鶏肉や牛肉などの肉類
- 大豆
- 卵
- きゅうり、すいか、りんご、バナナなどの野菜や果物 など
車酔いで吐いた場合の対処・注意点
また、車に乗せる前は食事や水を与えない、ウンチとオシッコをさせてから車に乗せる、事前に動物病院で酔い止めを処方してもらうなどの対策を行うことも大切です。
なお、乗り物が苦手な犬は、緊張などの精神的なストレスや、移動中の車の揺れによる体への負担で、車の移動のたびに吐いてしまうことが考えられます。愛犬が車に乗るたびに吐くようであれば、車に乗せること自体避けましょう。
犬の車酔いについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。
空腹で吐いた場合の対処・注意点
なお、毎朝のように嘔吐を繰り返す場合は、朝ごはんの時間を早くするか、夜ごはんの時間を遅めにする、食事の量を減らして回数を増やす、間食や少量の夜食を与えるなど、空腹になる時間を短くするような対応をとるようにしましょう。
吐きやすい犬のためにふだんからしておきたいこと
動物病院に慣れさせておく
愛犬が動物病院に慣れていれば、突発的なトラブルが起きたときでも怖がることなく受診できますし、愛犬の性格やふだんの様子を把握している獣医師に診てもらうことで、的確なアドバイスをもらうこともできます。
また、獣医師に気軽に相談できるような関係性を築くことで、飼い主さんの安心感にもつながりますよ。
寄生虫対策を定期的に行う
室内飼いであっても、人が持ち込むこともありますし、布製のおもちゃや愛犬のベッドなどにノミがいるケースもあります。そのため、子犬のころだけでなく、成犬やシニア期になっても、寄生虫対策のために定期的に動物病院に通うことをおすすめします。
寄生虫の駆除薬には、フィラリア・ノミ・マダニ・複数のお腹の虫の駆除が一度にできるタイプのものもあります。かかりつけの獣医師に相談してみてくださいね。
ふだんから愛犬の様子や健康をチェックしておこう
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
文/宮下早希
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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