犬でも車酔いをするコ子が多くいます。そこで今回は、犬が車酔いをする原因やおもな症状について解説します。乗車前や乗車中にできる車酔い対策、万が一車酔いしてしまったときの対処法、飼い主さんたちが実践する車酔い対策もぜひ参考にしてみてください。
犬が車酔いする原因と症状
犬が車酔いをする原因
犬が車酔いをするメカニズムは人と同じで、主に次の3つがあげられます。
三半規管が刺激されるから
車酔いは、車の揺れやエンジンの振動などが内耳にある三半規管や前庭を刺激し、自律神経や平衡感覚を乱すことによって起こります。
ニオイに刺激されるから
車内のニオイも車酔いを引き起こす一因とされています。芳香剤などのニオイは、嗅覚の優れた犬にとっては刺激が強すぎるので、なるべく使用を控えましょう。
苦手意識があるから
一度車酔いを経験したことのある犬は、車に乗ることが“嫌なこと”になってしまい、その記憶から、次に車に乗った途端にストレスから車酔いの症状が出てしまうことがあるようです。
犬の車酔いのおもな症状
- 大量のよだれが出る
- 嘔吐する
- 震える
- そわそわする(落ち着きがない)
- 頻繁にあくびをする
- キュンキュンと鳴く/吠える
もっともわかりやすい症状は嘔吐ですが、犬が車酔いで嘔吐するまでには、よだれなどの症状が現れているケースが多いようです。愛犬を車に乗せる際は、様子に異変はないかなど、こまめに観察してあげましょう。
様子を見ても大丈夫?ひどい車酔い
具合が悪そうな愛犬を見ると、飼い主さんなら心配になるでしょう。実際に犬が車酔いで死亡することはありませんが、車酔いと似た症状の出る病気に熱中症があります。熱中症は放置すると死に至ることもある危険な病気なので、愛犬の様子に異変がある場合は、単なる車酔いと決めつけずに注意が必要でしょう。
乗車前にできる車酔い対策
たとえ車が苦手でも、どうしても愛犬を車に乗せなければならないこともあります。乗車前に次の対策を行うと、酔いにくくなるかもしれません。
直前にゴハンや水を与えない
車に乗る直前の食事は、車酔いを誘発するといわれているので、車に乗せる2時間前までには、食事をいつもより少な目に済ませるようにしておきましょう。ただし、空腹過ぎても犬は車酔いしやすくなるので、注意してください。
車内の換気をする
先述した通り、車内の芳香剤のニオイは犬の車酔いの原因となります。愛犬を車に乗せる必要がある場合は、予め芳香剤などのニオイを放つものを撤去し、車内の空気を入れ替えましょう。
酔い止めの薬を飲ませる
いろいろな対策を行っても車酔いしてしまう場合は、獣医師に相談し、犬用の酔い止め薬を処方してもらう手もあります。インターネットなどでは、「人用の酔い止めは使用できる?」という質問も目にしますが、それは絶対にNGです。必ず犬用に処方された酔い止めの薬を飲ませるようにしてください。
乗車前に運動させる
車の中で眠ってしまえば、愛犬も具合の悪さを感じずに過ごせます。車に乗せる前に散歩や運動をさせ、乗車中に眠くなるようなリズムを作っておくのもひとつの手でしょう。
車酔いに効果的なツボをマッサージする
飼い主さんのなかには、愛犬を車に乗せる前、車酔いに効くとされるツボをマッサージする人もいます。車酔いに効くとされるツボとマッサージのポイントを紹介するので、興味のある人は試してみてください。
・車酔いに効くツボ
内関(ないかん)
前足首の内側にある2本の筋の間で、犬の指3本幅分上のところにあるツボ。
・マッサージ法
親指と人差し指で挟むように抑え、足先に向かってさするように指圧します。両足6~10回を目安に、車に乗る20分程前に行いましょう。
乗車中の車酔い対策
乗車中は、次のことを心掛けると車酔いを避けられるかもしれません。
クレートに入れる
乗車中は、しっかりと固定したクレートなどのケースの中で、静かに過ごさせることも大切です。扉の位置が車の進行方向を向いていると、酔いにくくなるでしょう。飼い主さん一人の場合は安全面も考慮し、助手席にクレートを置くようにしてください。
安全運転を心掛ける
犬の車酔いを予防するには、飼い主さんの運転テクニックも必要になってきます。急ブレーキや急ハンドルは人でも酔いやすいですし、車嫌いの原因にもなってしまうこともあります。安全運転を心がけ、揺れを最小限に抑えましょう。
窓を開けて換気する
乗車前の換気も重要ですが、乗車中も窓が開いていることで外のさまざまなニオイを嗅げるため、気分転換になることもあります。窓を開けてこまめに空気の入れ替えを行いましょう。
ただし、窓を全開にして犬に顔を出させる行為は、道路交通法違反になるので注意が必要です。ちなみに、運転中の車内で運転手の膝の上に乗せるのも、安全な運転ができないリスクがあるため違反行為です。愛犬の安全と法律はしっかりと守るようにしましょう。
長距離の移動は休憩を入れる
長時間のドライブになる場合は、1時間を目安に休憩するようにしましょう。公園やパーキングエリアにあるドッグランをうまく活用して、愛犬を休ませてあげましょう。
アロマオイルを置く
人がガムや飴で気分をリフレッシュするように、犬もペパーミントの香りを嗅ぐと気分がスッキリするといわれています。極少量のペパーミントのアロマオイルをティッシュペーパーなどにつけ、車内に置いておくと車酔いしにくくなる場合もあるでしょう。ただし、ペパーミントの香りが乗車と関連付けられて、車酔いが誘発される場合もありますので、犬の様子を見ながら試してみてください。
それでも車酔いしたら!車に慣れさせる訓練も大事
もし愛犬がドライブ中に車酔いしてしまったら、休憩を取って外の空気を吸わせることが大切です。たとえ嘔吐してしまったとしても、大声を出さず、冷静に対処しましょう。犬に余計な不安を与えないようにしてください。
また、車酔いは、車に慣れることで改善することもあります。ふだんから、次のような対策を取っておくと、車に乗るときも安心でしょう。
車にいいイメージを持つことが大切
ある程度車やドライブに慣れている犬なら、近場のドッグランや公園などへ連れて行き、“車に乗るとよいことがある”と覚えさせることも有効です。また、車に乗っただけでどうしても酔ってしまうなら、車内で遊んであげるなどして苦手意識を少しずつ解消させましょう。
車に慣れるトレーニング法
愛犬と車でドライブを楽しむためには、まずクレートに慣れ、次に車に慣れておく必要があります。次の記事ではクレートや車の慣れさせ方について詳しく説明しているので、トレーニングしたい人は、参考にしてみてください。
飼い主さんに聞く!愛犬の車酔い事情
愛犬の車酔いに対して、飼い主さんたちはどのように対策しているのでしょう。2021年11月にいぬのきもち公式アプリ内で実施されたアンケートをもとに、車酔いする犬の割合や飼い主さんたちが実践する車酔い対策を紹介します。
車酔いする犬の割合
いぬのきもち公式アプリ内のアンケートによると、およそ半数の犬が車酔いをしたことがあるとわかりました。
愛犬が車に酔ったときの様子
犬が車に酔った場合は、どんな様子の変化が見られるのでしょうか。先ほどの質問で「はい」と回答した人に、その様子を聞いてみました。
- 「あくびが多くなり、吐いた」
- 「いつもより元気かなく、ゴハンを食べなかった」
- 「いつも通りに乗っていたが急に嘔吐した」
- 「おとなしくなった」
- 「キュンキュンと鳴いて吐いた」
- 「ずっとあくびをしていて、ソワソワしていた」
- 「ハアハアした後に吐いた」
- 「よだれが大量に出た」
- 「何度も生唾を飲むような感じにしていた」
- 「小刻みに震えていた」
- 「目的地に着いてから伏せていて、あまり動かなくなり吐いた」
- 「いつもは元気一杯なのに、何だかおとなしくて少しえづいた」
- 「ぐったりして少し吐いた」
- 「少し震えていた」
やはり、車酔いの主な症状が出る犬が多いようです。
実践している車酔い対策
では、愛犬の車酔いに対応する飼い主さんたちは、乗車時にどのような対策を行っているのでしょう。「愛犬が車酔いする」と回答した飼い主さんからは、次のような回答があがりました。
- 「体にフィットするバッグ兼ドライブベッドを試した」
- 「なるべく揺れないようにゆっくり運転する」
- 「ゴハンの量を調整する」
- 「クレートに入れて外が見えないようにする」
- 「ゆっくり走行して、窓をあける。また、名前呼びかける」
- 「動物病院から酔い止めの薬をもらって飲ませる」
- 「好きなおやつを用意する」
- 「気持ち悪そうな素振りが見られたらパーキングを探してすぐに停車する」
- 「出発の少し前から車に乗せエンジンをかけ、落ち着いてから出発するようにする」
- 「寝かせる」
- 「声かけやマッサージをしている」
- 「歯磨きガムを与える」
- 「信号待ちなどで撫でる」
- 「犬を後部座席にのせ、助手席のシートを倒して視界をひろくする」
本記事で紹介した対策のほかに、お気に入りのおやつを与えたり、声を掛けたりする対策を行っている飼い主さんもいるようです。
どうしてる?長距離の移動
移動距離が長くなると、それだけ厳重な対策が必要です。飼い主さんたちは、長距離移動時にどのようなことに気を付けているのでしょうか。
- 「休憩を多く取る」
- 「後ろの座席にクレートをセッティングしてなるべく休めるようにする」
- 「食事してから、時間をあけるようにする」
- 「1時間に1回休む」
- 「パーキングエリアなどで散歩させ、長めに休憩をとるようにしている」
- 「酔い止めを処方してもらい飲ませている」
- 「高速道路の方が落ち着いていることが多いので、なるべく使用している」
- 「車に乗る前にしっかり散歩をして、眠くなるようにする」
- 「荒い運転をしない」
- 「山道を避ける」
- 「クッションベッドや低反発座布団、お気に入りのぬいぐるみなどで姿勢を固定して安定させる。振動軽減を考慮してケージの外側からもクッションでかためる」
- 「車内でニオイが強い食べ物を食べたり、飲み物を飲んだりしないようにする」
なかには、「わからないので、長距離乗せるのを諦めた」「いろいろ試したが良い方法が無い」と回答する飼い主さんもいました。移動距離が長くなる分、ふだん以上に休憩の回数を多く取り、パーキングエリアなどを見つけては散歩させる人が多いようです。また、カーブの多い山道で車酔いする犬も少なくないようで、山道を避けて移動する人もいました。
慣れて車酔いを克服する犬も……ただし無理は禁物!
一切車酔いをしない犬もいれば、乗ってすぐに吐いてしまう犬もいるなど、車酔いの程度は個体差が大きいようです。ご紹介したような方法を繰り返すことで、克服できる犬もいますが、やはりどうしても車が苦手な犬も少なくありません。困ったときは無理をせず、獣医師へ相談するようにしましょう。
参考/「いぬのきもち」2018年1月号『12回で基本をすべてマスターできる!はじめてしつけコンプリートドリルvol.11車の乗せ方・お出かけ』
「いぬのきもち」2017年2月号別冊『犬だって、お疲れです… 愛犬にしてあげたいツボ・マッサージ』
文/こさきはな
監修/芝崎考次郎先生(獣医師 相模大野プリモ動物病院副院長)
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。