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獣医師が解説する、愛犬の老化サインやシニアになってからの暮らし方

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愛犬に健康で長生きしてもらうためには、今現在の年齢をどうとらえるかにかかってきます。飼い主さんにとっては、いつまでも子犬のようなかわいさがある愛犬ですが、いずれは加齢に伴う諸問題が起きることでしょう。そうした現実を見つめつつ、今以上に愛犬と楽しく暮らすためにも、犬の「老化」について考えたいですね。

人より、ずっと速い犬の老化スピード

愛犬の年齢を人に換算すると、身近に感じられ、お世話のヒントに。たとえば犬の5才は、小・中型犬なら36才で、大型犬なら40才です。7才だと小・中型犬は44才で大型犬は54才、10才では小・中型が56才で大型は75才になります。つまり、犬では5~7才あたりがシニア犬の入り口と考えていいでしょう。個体差はありますが、ちょうど見た目や行動に老化の兆しが出始める時期。予防と早めの対応で、充実したシニア期を送らせてあげたいですね。そして、大型犬なら12才(人だと89才)、小・中型犬は16才(人だと80才)を超えたら、立派なご長寿犬。この年齢を、自力で歩ける状態で迎えられたら、「健康長寿犬」です。元気なシニア犬を目指したいですね!

犬の老化サイン(見た目と行動)をよく観察しよう

シニア犬になると、外見にさまざまな変化が目立ち始めます。見た目や行動に出がちですので、注意深く観察したいですね。同時に、今からできる予防や対処法も解説します。

犬の見た目に表れる老化のサイン

□鼻がカサカサに乾く
鼻の表面が乾燥しやすくなります。以前はつややかな黒色だった鼻の色も全体的に薄くなることが。角質の新陳代謝が悪くなることが影響しています。
→今からできる対処法は?
ビタミンAやE、必須脂肪酸などの栄養素が肌に関係しているので、総合栄養食を与えて栄養管理を。乾燥しすぎも皮膚によくないので、室内の湿度は50~60%に保つよう加湿器などで調整を。

□歯が黄ばむ、口臭がきつくなる
長年蓄積された食べ物による色素沈着により、歯が黄ばんできます。口内を殺菌する役目がある唾液の分泌が減ることで歯石がつきやすくなり、口臭も強くなります。
→今からできる対処法は?
歯の黄ばみや、口臭の原因になる歯石は、毎日の歯みがきで予防できます。歯みがきが難しい場合は、ガーゼで磨く方法もあります。

□白髪が生える
鼻や口、目のまわりから白髪が生えはじめ、しだいに全身で目立つように。毛色が薄くなることもあります。どちらも老化で、毛の色をつくる細胞の働きが弱まるためです。
→今からできる対処法は?
白髪や退色の予防は難しいですが、ブラッシングなどのまめなお手入れで、清潔で若々しい外見を保てます。

□目が白っぽくなる
黒目部分が白く濁って見えるようになります。加齢とともに水晶体が変性して視力低下が起こる「白内障」と、水晶体の核が硬化しているだけで、視力は衰えない「核硬化症」などが原因です。
→今からできる対処法は?
週に1回は愛犬の目を見て、変化に早く気づきましょう。白内障になる前なら、ルテインなどの抗酸化作用のサプリメントを。初期の白内障なら薬で進行を抑えられます。

□太りやすくなる
年をとると運動量が落ち、寝る時間も増えます。筋肉量も減るので基礎代謝が低下。それでも若いころと同量の食事をとらせていると、太りやすくなります。
→今からできる対処法は?
年齢に応じて、カロリーを抑えた専用フードに切り替えを。運動不足にも気を付け、ゆっくりでもいいので、毎日の散歩で運動させるようにしましょう。

□毛がパサつく、皮膚が乾燥しやすくなる
代謝の低下や、皮膚の血流が悪くなることで、毛がパサパサとして抜けやすく、ツヤがなくなります。皮脂が減るので、毛の潤いもなくなります。
→今からできる対処法は?
毛づやを補う保湿剤が効果的です。ブラッシングは保湿剤をかけてから行って。動物の油脂分が含まれた獣毛ブラシもおすすめです。

□筋肉が落ちて、お尻が小さくなる
老いとともに、犬は運動意欲が低下し、体の痛みにより運動量が減って全身の筋肉が徐々に落ちます。後ろ足を支える筋肉は変化が大きく、お尻が小さくなったように見えます。
→今からできる対処法は?
健康なうちから、筋肉が衰えないようトレーニングをしましょう。足の筋力が衰え始めても、病院のリハビリで回復できる場合もあります。

□イボができる
皮脂腺が詰まってしこりになる皮脂線腫や、皮膚の表面に飛び出す突起状の腫瘍(皮膚乳頭腫など)ができやすくなります。
→今からできる対処法は?
良性のイボでも、トリミング時にひっかかり出血することがあります。予防は難しいので早期発見に努めましょう。愛犬の体をよく観察し、イボがあったら触らずに動物病院へ。

□肉球が硬くなる
皮脂の減少や新陳代謝の低下で、肉球がガサつきます。弾力も弱まるため、出血もしやすくなります。歩行にクセがあると、力がかかる部分だけがタコのようにかたくなることもあります。
→今からできる対処法は?
ふだんから、就寝前や散歩の前後など、愛犬の肉球にクリームを塗って保護を。急な肉球の硬化は、肝機能不全などの可能性もあるので注意して。

□声が低くなる、イビキがひどくなる
年をとり、肥満気味になると、鼻やのどに脂肪がつき、声が低くなり、イビキがうるさくなるといった変化も。急なイビキは呼吸器の病気かもしれないので受診を
→今からできる対処法は?
正しい食事と、適度な運動で肥満予防を心がけて。とくに短頭種はイビキの音が大きくなったら要注意。気管虚脱などの病気かもしれません。

□体臭が強くなる
皮膚の皮脂腺から分泌される皮脂やたんぱくが、体臭の原因。年をとって免疫力が落ちると、皮膚の常在菌への抵抗力が弱くなり、体臭が強くなる場合も。病気で体臭が強くなることもあるので、異変には早めに気づいて。
→今からできる対処法は?
愛犬が毛がべたつきやすく皮脂が多いなら、動物性たんぱく質や脂肪分が少ないフードの変更したり、薬用シャンプーで改善を。

犬の行動に表れる老化のサイン

□歩くのがゆっくりになる、歩くのを拒む
後ろ足の筋肉が衰えたり、年のせいで疲れやすくなって歩行のスピードが落ちてきます。なかには散歩が大好きだったのに、シニアになると散歩を好まなくなる犬も。
→今からできる対処法は?
若いうちから、体幹や筋肉を鍛えるトレーニングが有効。ただし、足腰の悪い犬なら無理は禁物。歩行の変化は、骨・関節などの病気やケガの可能性もあるので、獣医さんに相談を。

□段差を越えられない、段差につまずく
筋力が衰えてくると、散歩時に段差を越えられなくなり、よくつまずくように。また、脳神経や平衡感覚の異常、関節痛で歩きにくくなっていることも考えられます。
→今からできる対処法は?
脳神経の異常や関節痛も疑われるので、早めに受診を。段差にスロープなどを設けて歩きやすくするといった対処をして。

□呼んでも反応しなくなる
背後から愛犬の名前を呼んでも振り返らないように。周囲への関心が低くて反応しない可能性もあります。呼びかけた際に愛犬の耳が動かなければ、聴覚の衰えと考えられます。
→今からできる対処法は?
聴覚の衰え自体は予防できるものではないので、接し方に注意を。急に触ると犬をビックリさせてしまうので、愛犬から見えるところから近づいて。

□物によくぶつかる
視力が衰えてくると、物にぶつかることが増えます。室内なら家具の角にクッション材を張ったり、愛犬のハウスまわりには物を置かないようにして。散歩中は周囲に十分注意を。
→今からできる対処法は?
サプリで栄養補助を。目が見えづらくなっても犬は感覚で家具などの場所を覚えていますので、家具の配置はなるべく行わないで。

□粗相をする
膀胱にためられる尿の量が減ったり、歩行困難でトイレまで間に合わなかったりして、トイレの失敗が増えます。腎臓に問題があって尿の量が増えることも。
→今からできる対処法は?
トイレへ連れて行ってあげて予防を。それでももらすようならオムツをはかせて。蒸れて皮膚炎などの原因にならないよう、こまめに取り替えて。

□オスワリやフセができなくなる
意外に筋肉を使う、これらのポーズは、シニアになると難しくなります。立ち上がったり座ったりするのに時間がかかる犬も。
→今からできる対処法は?
若いころからきれいな姿勢を意識して。横座りしたり、フセが左右対称にできない犬は要注意です。

□おもちゃで遊ぼうとしなくなる
シニアになると、好奇心が薄れて新しいおもちゃでも関心を示さなくなることが。体力の低下や体に痛みがあって反応を示さない恐れも。
→今からできる対処法は?
おもちゃに興味が薄れても、食べ物には反応する場合が。オテなど簡単な指示を出して、できたらおやつを。触れ合うことが犬の心身の刺激にも。

□食べ物の好みが変わる
噛む力が衰えるなどが影響して、かたいものを嫌がるようになる、同じ食事を続けて食べないなど、食に関してわがままになる面も。
→今からできる対処法は?
食べ物は、やわらかくする、温めてニオイを立てるなどして、食欲をそそる工夫を。口内のトラブルで食べられない可能性もあるので、よくチェックして。

大型犬は5才、小・中型犬なら7才過ぎたら年2回の健康診断を

愛犬が出している小さなサインを見落とさないよう、日ごろから注意深く観察しましょう。見た目には表れない病気のサインもあるので、小・中型犬なら7才、大型犬なら5才を過ぎてからは、少なくとも年2回以上は健康診断を受けるようにしましょう。

犬がシニア期にかかりやすい病気は?

シニア期、とくに小型犬は10才、中型犬は9才、大型犬は7才を過ぎるとかかりやすい病気は、なんといってもがんです。とくにかかりやすいがんの種類と、その他のシニア期にかかりやすい病気は次の通りです。

年をとったら注意したがんのリスト

・肥満細胞腫…皮膚の表面にできるがん。おできのようなものから、こぶのようなしこりまで、形も現れる部位もさまざま。
・リンパ腫…血液中のリンパ球のがん。食欲低下や元気消失など、どんな病気にも起こりうる症状が多いため、発見が遅れることも。
・血管肉腫…心臓や脾臓、肝臓、皮膚、骨などに発症する悪性の腫瘍。愛犬が突然がくんと元気をなくしたら、腫瘍が破裂した可能性が。
・乳腺腫瘍…乳腺にできるがんで、不妊手術をしていないメスになりやすい傾向が。しこりは体表にできるため、発見しやすいので、まめに触ってチェックを。
・骨肉腫…骨をつくる細胞のがん。体重が重い大型犬の肥満犬に多く、足にできやすい傾向が。歩き方が変で、消炎鎮痛剤ではなかなか治らなかったり、足の腫れが引かないときは骨肉腫が疑われることも。
・甲状腺がん…のどの両脇にしこりができます。8才を過ぎたビーグルが圧倒的にかかりやすいといわれています。
悪性黒色腫…メラノーマとも呼ばれる悪性腫瘍。犬の場合は口の中にできることが多く、口臭や血混じりのよだれが出ることがあります。

シニア犬が注意したい、がん以外のかかりやすい病気は?

がんのほか、気をつけなければいけないシニア特有の病気は何でしょうか?

・白内障…目の中のレンズ(水晶体)が白く濁り、視力が低下する病気。多くは加齢に伴ってかかりますが、糖尿病が原因で発症するケースも。
・僧房弁閉鎖不全…心臓の中の心室と心房を区切っている僧房弁が完全に閉まらなくなる病気。
・クッシング症候群…ホルモン分泌を行う脳下垂体や副腎が腫瘍化して、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される病気。左右対称に脱毛したり、多飲多食が見られます。
・変形性骨関節症…関節の骨の先が、とげのようにギザギザになり、歩くたびに痛みが出る病気。大型犬に多い傾向が。
・変形性脊椎症…背骨を形成している椎体が、加齢とともに変形する病気で、老化現象のひとつ。9才以上の犬の75%がなるといわれます。
・会陰ヘルニア…肛門のまわり(会陰部)にある筋肉が弱くなり、間にできた隙間に付近の臓器が飛び出してしまう病気。未去勢のシニア犬や、吠えクセのあるオスの犬に多い傾向が。
・子宮蓄膿症…子宮に細菌が入り込み、子宮内に膿がたまってしまう、避妊手術をしていないメス特有の病気です。
前立腺肥大…加齢でホルモンバランスが崩れることでかかりやすくなるオスの病気。前立腺の肥大によって、尿道などが圧迫されて二次的な病気も引き起こします。
認知障害…老化に伴い、脳が委縮。同じ場所をグルグル回る、夜中に鳴くなどの行動が。柴などの日本犬の発症が多いといわれます。

愛犬が健康で長生きするためにできることは?

愛犬のさまざまなお手入れ、自宅で行っていますか? トリマーさんに任せっぱなしにしないで、飼い主さんが愛犬としっかり向き合うことで、体調変化にも気づきやすくなり、そのことが結局アンチエイジングにもつながります。

お手入れがアンチエイジングにつながる5つのメリット

1 異変の早期発見ができる
お手入れ時に愛犬の体を触ることで、しこりやできものを発見したり、嫌がったり鳴いたりするしぐさでいち早く異常を発見できます。

2 外見の若々しさもキープできる
愛犬を常にきれいな状態に保つことで、見た目も汚れず若々しくいられいます。

3 動物病院でのストレスを軽減できる
お手入れで体を触られることに慣れていれば、動物病院での受診も苦にならず、犬がストレスを感じることも減ります。

4 感染症の病気を防げる
散歩などでつく可能性があるノミ・ダニ対策をしていれば、それらが媒介する感染性の病気を防ぐことにもつながります。

5 皮膚病予防にもなる
犬にとって汚れが残っていることは、「不潔ストレス」に。体がかゆくなったり、しつこく掻き続けることで皮膚病を引き起こすこともあるので、お手入れすることは皮膚病予防にもなります。

まとめ

愛犬の老化のスピードは想像するよりずっと速いものです。でもその年代ごとに適切なお世話をすることで、人と同様、健康寿命を伸ばすことにもつながります。愛犬が老いるとどんな変化が起こるのか、しっかり知っておけば、その対処もできるはず。老化は悪いことばかりでなく、飼い主さんとの絆がいっそう強くなるなど良い意味もたくさんありますから、できる限り「健康長寿犬」を目指したいですね。

出典:いぬのきもち特別編集「愛犬のための健康長寿ガイド」(1)犬の病気大百科 (監修:藤田桂一先生)(2)体の健康ガイド(監修:佐々木彩子先生/二村陽子先生)

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