今回は、犬のストレスの原因やストレスサインをご紹介します。ストレスの原因のなかには、飼い主さんが無意識に与えてしまっている“意外”なものも。ストレス解消のポイントも解説するので、参考にしてくださいね。
犬のストレスの原因とは?
ストレスってどんなこと?
ストレスは、刺激によるストレス刺激(要因)とそれによるストレス反応からなります。たとえば、犬は暑いと感じると、舌を出しながら激しく呼吸(パンティング)して体温を下げようとします。これは“暑い”という刺激に、“パンティング”という反応を起こすことで、なんとか対処しようとしているのですが、犬にとって、“暑い”と感じることも、“パンティング”することもストレスになるのです。
そして、ストレスの原因となる刺激が強すぎたり長く続いたりすると、体が対処できなくなってしまうことも。すると最悪の場合、病気や体の不調となってあらわれることがあるので、注意が必要です。人とともに暮らすなかで、犬にとっては極端にストレスがかかるものもありますので、極力取り除いてあげるようにしましょう。
では具体的にどのようなことに犬はストレスを感じるのでしょうか?
犬のストレス原因1. 空腹やのどの渇き
日常的に水やゴハンが与えられないなど、空腹やのどの渇きは肉体的なストレスになります。暑い時節、特に車内では脱水症状を起こすなどのケースもあるので気をつけましょう。
犬のストレス原因2. 肉体的な苦痛
病気やケガをしているのに放置されたり、しつけと称して体罰を与えられるとストレスになります。日ごろから犬の全身をチェックしたり、定期的に動物病院を受診して健康管理をしましょう。
犬のストレス原因3. 精神的な苦痛
犬が苦手なものなどに対して恐怖や不安を感じるとストレスになります。犬が恐怖や不安に感じることを、飼い主さんが早めに察知して回避したり、原因となるものに徐々に慣れさせることが大切です。
犬のストレス原因4. 不快な環境
暑すぎたり寒すぎたり、寝る場所が汚れているなど、不快な環境は犬にとってストレスとなります。こまめな掃除やエアコンで湿度温度を調整するなど、犬にとって快適な空間をつくりましょう。
犬のストレス原因5. 犬らしい行動の禁止
ニオイかぎによる探索や、獲物を追いかけて捕まえるなどの犬らしい行動を極端に制限されるとストレスを感じます。遊びや散歩などで、それらを満たしてあげることが必要です。
レベル別に見る!犬のストレスサインとは?
愛犬の様子がいつもと違うと感じたときは、 “好きなものに注目できるか”でストレスレベルをチェックしてみてください。強いストレスを感じていると、目の前におやつがあっても食べられなくなります。また、犬は言葉で訴えることができないため、ストレスを感じるとしぐさや行動でそれを表現します。
まずは、ストレスのレベル別に、ストレスサインを知りましょう。
ストレスレベル【低】カーミングシグナル
カーミングシグナルとは、恐怖心や不安感でこわばった体をほぐしたり、気持ちを落ち着けようとしたりする行動のこと。トラブルにならずに争いを避け、ストレスを軽減したいという気持ちの表れです。
◆主なストレスサイン
体をかく/体をブルブル振る/舌をペロリと出す/目をそらす/伸びやあくびをするなど/軽度の食欲不振など
ストレスレベル【中】攻撃、威嚇などの問題行動
威嚇や攻撃的な行動をすることで、トラブルになってでもストレスの原因を遠ざけようとしている状態です。ほかの人や犬にケガをさせることもあるので、なるべく早くストレスを取り除く必要があります。
◆主なストレスサイン
吠える/うなる/震える/腰が引けてしっぽが下がる/逃げようとする/噛む/飛びかかるなど
ストレスレベル【高】体調不良・病気
自分ではコントロールできず、体に不調があらわれてしまっている状態です。健康を大きく損なうおそれがあるので、すぐに動物病院を受診しましょう。
◆主なストレスサイン
血が出るほど自分のしっぽを噛む・追い回す/脱毛や皮膚炎を起こすほど執拗に体を舐め続ける/(激しい)脱毛/下痢・嘔吐など
愛犬のことをかわいがりすぎて、ついそれと気づかずに与えてしまいがちなストレスがあります。当てはまることがあれば今すぐストップしましょう!
飼い主さんが愛犬に与えてしまっているストレスの意外な原因
犬のストレスの原因のなかには、無意識に飼い主さんが与えてしまっている“意外”なものも。以下に当てはまることがあれば、今すぐストップしてください。
叱られるストレス
犬が問題行動をおこしたときに言葉で強く叱る……実はこれ、犬には通じにくい方法といわれ、飼い主さんの“怒った雰囲気”しか伝わりません。たとえば、粗相をしたときはすぐ片付け、別なときにトイレに行きたい様子が見られたらトイレへ導き、上手にトイレ内に排泄できたらほめてあげましょう。しつけは、よい行動を褒めることがポイントです。
甘やかされストレス
しつけなどをせずに犬を甘やかしてばかりいることも、犬にとってはストレスの原因に。たとえば、留守番が苦手な犬だからといって、四六時中飼い主さんが一緒に過ごしていると、災害時など、やむを得ず一緒にいられないときに、「不安」という大きなストレスを与えることになります。
かまわれすぎストレス
ずっと誰かしらがかまっているという状態も、犬にとってはかなりの苦痛。コミュニケーションはもちろん大切ですが、犬が単独でリラックスできる場所や時間を確保してあげることも必要です。
飼い主さん自身の不安ストレス
犬は飼い主さんの行動をよく見ているため、飼い主さん自身が不安を感じていたり、家族内で争いが起こったりすると、犬も影響されてストレス状態に陥ることがあります。飼い主さんのストレスは、犬にとってもストレス。犬の前ではなるべく不安な姿を見せないようにしましょう。
雷、花火ストレス
雷や花火が苦手な犬は多くいます。近くで花火大会が開催されるときや雷が落ちそうな悪天候のときは、雨戸を閉めたり、クレートの中へ入れたりするなど工夫をしましょう。また、ふだんから効果音のCDやDVDなどを使って、おやつを与えながら雷や花火の音に慣らしておくのも効果的です。
無理強いストレス
たとえば、散歩の途中で歩くのをやめてしまった犬を歩かせようと、リードで無理やり引っ張ることなどが当てはまります。これは犬にとって肉体的にも精神的にも苦痛です。犬が自分から歩きたくなるようにおやつで誘導したり、少し休憩するなどして、歩くことを無理強いするのはやめるようにしましょう。
犬のストレスの解消法
犬のストレスを解消するためには、ストレスの原因を突き止め、それを取り除いたり、徐々に慣れさせたりすることが重要です。たとえば、飼い主さんの構いすぎによってストレスを感じている可能性があるなら、自分の犬に対する行動を、しつけ教室の先生など第三者にチェックしてもらうとよいでしょう。
犬は人に合わせて生活するなかで、飼い主さんが思う以上に多くのストレスを感じています。日ごろから愛犬の様子をよく観察して、余計なストレス要因を取り除いたり、徐々に慣れさせたりするなど、ストレスとうまく付き合っていくことが大切です。
参考/「いぬのきもち」2016年10月号『健やかな「犬生」を送るために知っておきたい 年代別 犬種別 ストレス解決法』(監修:「Can!Do!Pet Dog School」代表 西川文二先生、代官山動物病院獣医師 獣医行動診療科認定医 藤井仁美先生)
「いぬのきもち」2017年9月号『乗り越えればHAPPYになるストレスもある!犬にいいストレス・悪いストレス』(監修:「Can!Do!Pet Dog School」代表 西川文二先生)
監修/草場宏之先生(横浜戸塚プリモ動物病院院長)
文/hasebe
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。