愛犬の健康維持や皮膚トラブルを防ぐためにも、シャンプーやお風呂に入れて清潔を保ちましょう。そこで今回は、犬のお風呂の必要性から入れる頻度、お風呂に慣らす手順や入れ方、体の乾かし方まで、犬飼い初心者に向けてわかりやすく解説します。
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犬のお風呂の頻度は月に1回が目安
「犬は人のように毎日お風呂に入るの?」と、疑問に思っている飼い主さんも多いでしょう。結論からいえば、答えは「ノー」です! 犬は本来お風呂に入る動物ではありません。犬はお風呂やシャンプーをすることに、人が思っている以上に体力を使ううえ、長時間拘束されることにストレスを感じます。そのため毎日お風呂に入ると、犬は疲弊してしまうのです。さらに、たとえ低刺激なシャンプーを使っていたとしても、犬の肌に負担をかけてしまうことも。
毛質や皮膚の状態にもよりますが、犬は月に1回程度を目安にお風呂に入れるのがよいとされています。ただし、梅雨時期で雨に濡れたり、夏場で皮脂の分泌の多い犬は2週間に1回程度お風呂やシャンプーで清潔にしてあげましょう。
子犬の場合、汚れたり皮膚病などの理由があって獣医師の指示がある場合を除いて、生後半年くらいまでは洗う必要はありません。体力や免疫力がしっかりつくまえに洗うと、体調を崩す原因になるので注意しましょう。
犬は必ずお風呂に入れる必要がある?
ブラッシングで、毛のもつれや汚れを取ることができますが、地肌の被毛の奥までついた汚れを完全に落とすことはできません。皮脂や汚れが地肌に残っていると、悪臭や皮膚炎などの皮膚トラブルを引き起こすことがあります。お風呂やシャンプーでたまに汚れを落としてあげることでこのトラブルを防ぐことができます。
犬をお風呂やお手入れに慣らす方法
犬は一度でも「嫌だ!」「こわい!」と感じると、その事柄に対してずっと苦手意識を持ってしまいます。慣らさずにいきなりお風呂に入れてしまうと、今後お風呂に入ることを嫌がるおそれもでてくるので、以下のステップを踏みながら徐々にお風呂に慣らしていきましょう。
手で少しずつ犬の体に触れていく
そもそも体に触れられないと、お風呂どころか最低限のお手入れすらできません。まずは頭や首、背中やしっぽなど体の各部位に少しずつ触れていき、触られるのが苦手な場所がないか探してみてください。愛犬の苦手ポイントを見つけたら、ごほうびを与えながらやさしく数秒触るとこから始め、触られることに徐々に慣れさせましょう。
ブラシを使って犬の体に触れていく
手で触られることに慣れてきたら、次はブラシで体に触っていきましょう。一度に全身をとかそうとするとブラッシングに苦手意識を持ってしまうため、手のときと同様にごほうびを与えながら、回数を分けて少しずつとかしていくのがポイントです。
お風呂場でもリラックスできるよう慣らす
犬によっては、お風呂場に入るだけでストレスを感じてしまうことも考えられます。まずはお風呂場でおやつを与えてみて、食べるかどうかチェックしてみてください。おやつを食べない場合は場所自体を怖がっている危険性大なので、おやつを与えながら、少しずつお風呂場にいられる時間が長くなるよう慣らしていきましょう。
シャワーの音やかけ湯に少しずつ慣らす
お風呂場にいることに慣れたら、ごほうびを与えながらシャワーの音を聞かせてみましょう。シャワーの音を怖がらないようであれば、足先や体に少しずつかけ湯をしながら、体を濡らしてみてください。
ドライシャンプーからシャンプーを始める
最後の仕上げとして、シャンプーに挑戦してみましょう。水に濡れないドライシャンプーで洗うことから始めて、犬が嫌がったらシャンプーをやめる、ごほうびを与えるというのを、泡立てたシャンプーで体を洗えるようになるまで繰り返していきましょう。
犬をお風呂に入れる手順・注意点
それではここからは、犬をお風呂に入れる手順と注意点について紹介していきます。
シャンプーに必要なグッズをそろえる
全ての工程をできるだけ早く終わらせるために、以下のようなシャンプーに必要なグッズを近くに用意しておきましょう。
- 犬用シャンプー・リンス
- コームなどのブラシ類
- ゴムブラシ(大型犬用)
- 泡立てネット
- 泡立てボウル
- タオル
- ドライヤー など
ちなみに、シャンプーに慣れていない犬などは、耳の中に水が入らないように、綿など水をはじきやすい素材でできた「耳栓」を入れる方法もあります。
全身をブラッシングする
被毛に毛玉やもつれがついたままだと、地肌までしっかり洗うことができません。お風呂に入れる前日に全身をブラッシングして、毛玉やもつれ、抜け毛などを取り除いておきましょう。抜け毛が多い犬の場合は、ムダ毛取り専用のコームを使うのがおすすめです。
地肌までしっかりと濡らす
基準は37~38度、夏場は36~37度まで下げたぬるま湯で、地肌までしっかりと濡らしていきます。シャワーを離してかけると、シャワーの音や水圧で犬がびっくりしてしまうので、シャワーヘッドはなるべく犬の体に密着させてください。
洗面器に入れたお湯を少しずつかけるのでもOK
シャワーを怖がったり動き回ったりするやんちゃな犬の場合は、ぬるま湯をためた洗面器に足先を入れて、少しずつお湯をかけてもOKです。
シャンプーで洗う
体全体をしっかりと濡らしたら、以下の順番で体を洗っていきます。このとき目や鼻、口や耳などの敏感な箇所にシャンプー液が入らないよう、注意しながら洗うようにしてくださいね。
薄めのシャンプーで下洗いをする
まずは表面の汚れを落とすため、水多めの薄いシャンプー液で下洗いをして、泡と水分を全身にいきわたらせていきます。ネットでしっかり泡立てたシャンプー液を犬の体にのせ、なでるように体の隅々までなじませたら、シャワーでサッと洗い流しましょう。
シャンプー液で体の部位ごとに本洗いする
表面の汚れが落ちたらシャンプーをぬるま湯によく溶かして泡立て、体の部位を以下の順で洗っていきます。
- 背中に泡をのせて地肌をなでるように洗う
- 胸、お腹、お尻に徐々に進みながら洗う
- 内股~足、足の指の間、後ろ足のかかとなどをくまなく洗う
- 頭やおでこ、耳のフチ~内側をやさしくもみ洗いする
- 泡やお湯が目に入らないよう、毛並みに沿うように顔まわりを洗う
ただし、毛をもんだり爪を立てたりして洗うと、毛のもつれや皮膚を傷つける原因になります。生卵を持つような力加減で、優しくなでるようにして洗うようにしてください。
シャンプーの代わりに犬用せっけんを使うのもアリ
ベタつきの強い犬の場合、皮膚トラブルが起きやすいので、使うシャンプーについては獣医師に相談するとよいでしょう。シャンプーの代わりに犬用せっけんを使ったり、皮脂を溶かすクレンジングオイルをもみこんで洗い流すという方法もあります。
シャンプーをすすぐ
全身をシャンプーで洗ったらシャワーヘッドを近づけ、手の中にお湯をためながら、シャンプーをすすぎ落としていきます。
地肌にャンプー液が残っていると肌トラブルの原因になるので、ヌルヌル感がなくなるまでしっかりすすぎ落とすことが大切です。すすげたと思った後に、もう1回すすぎくらい丁寧に洗うのがベストです。
顔まわりはガーゼを使う
顔まわりにそのままシャワーをかけると、流したお湯やシャンプー液が目や鼻に入ってしまうことがあるので、顔を濡らすときと同様に、お湯を含ませたガーゼで拭うように落としてあげてください。
リンスを全身になじませる
シャンプー後にリンスもしておくと、被毛がなめらかに仕上がり、毛玉やもつれを予防することができます。ぬるま湯で薄めたリンスや、洗い流さないコンディショナーなどを全身になじませてあげるとよいでしょう。
お湯に数分つからせても
犬が嫌がらなければ、浴槽やたらいなど、犬の体の大きさに合ったものに35~37度くらいのぬるま湯をため、5分程つからせてもよいでしょう。お湯をかけながら一緒にマッサージもしてあげると、老廃物が流れて体もよりスッキリしますよ。
水分を切る
ドライヤーの時間を短縮するためにも、犬の体についた水気はできる限りきっておきましょう。頭からお尻に沿って手をすべらせ、耳は持ち上げるように軽く握って水気を絞り、あとはタオルをやさしく押し当てて水分を吸収させます。
お風呂の入れ方や手順については、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
犬をドライヤーで乾かす手順・ポイント
お風呂とシャンプーが完了したら、水気が残らないようドライヤーでしっかりと体を乾かしていきます。ドライヤーで乾かすコツは以下の通りです。
慣れないうちは2人がかりで行う
犬のお風呂に慣れていないうちは、2人がかりで行うのがおすすめです。犬を抱く人とドライヤーを当てる人と役割分担することで、乾きムラを防いでしっかり乾かすことができます。
嫌がる場合は動かないようリードでつなぐ
どうしても犬がドライヤーの風や音を嫌がる場合は、部屋の隅にあるイスやテーブルの脚にリードでつなぎ、体を動かせないようにしながら乾かしましょう。
温風と冷風を切り替えながら振らずに乾かす
ドライヤーを近づけすぎるとやけどする危険がありますし、遠ざけすぎたり振ったりしながら乾かすと、乾かしムラによる皮膚トラブルの原因にもなります。
ドライヤーは犬の体から30cmほど離し、温風と冷風を2~3秒ごとに切り替えながら、部位ごとにしっかりと乾かすことが重要です。
ドライヤーとブラシで乾かす
手ぐしではなく、ブラシなどを使って、しっかりとかしながら乾かすのもポイントです。ブラシを使うことで、毛の奥にもドライヤーの風が入り、早く乾かすことができます。
乾かし残しがないかチェックする
ドライヤーを当てたときに毛が一本一本きれいに分かれれば、根元までしっかり乾いている証拠です。乾かし残しが起きやすい指の間までくまなくチェックし、もし濡れている部分があれば、被毛が風になびくまで入念に乾かしましょう。
愛犬のお風呂はプロにお願いするのもアリ!
お風呂に入れることも、シャンプー前によく行われる「肛門腺絞り」も、慣れないうちは自分でやるのは難しいことが多いので、「自分でお風呂に入れる」ということにこだわらず、病院やトリミングサロンなどプロの手を借りるのもひとつの手です。
もし自分でお風呂に入れたい場合は、しっかり準備を整えて、愛犬の体調や機嫌を考慮したうえで行うようにしてくださいね!
以下の記事でも、犬のお風呂やシャンプーについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
参考/「いぬのきもち」特別編集『子いぬと仲良くなる育て方【健康・お世話編】』
「いぬのきもち」2016年7月『より涼しくしてあげられるコツをご紹介!夏のひんやりお手入れ術』
「いぬのきもち」2017年7月号『ニオイ・ベタつき・皮膚病を予防する 夏のシャンプーは地肌洗いがカギ!』
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/pigeon
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。