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【獣医師監修】犬にヨーグルトを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えるヨーグルト。じつは、ビタミンやカルシウムなどの栄養素も豊富で、犬の「腸活」と健康の維持に役立つ食べ物です。ただし、与える際には少し注意したいことも。ヨーグルトを犬に与えるメリットとともに、与えるときに注意したいことを紹介します。

佐野 忠士 先生

犬にヨーグルトを与えるときはラクトース(乳糖)と脂肪に要注意

朝食のヨーグルト
kuppa_rock/gettyimages
腸内環境を整える「腸活」が注目されるなかで、人気なのがヨーグルト。愛犬のお腹のために、ヨーグルトを与えたいと考えている飼い主さんも多いのでは。

結論からいうと、犬にヨーグルトを与えても基本的には問題ありません。ヨーグルトの栄養素としてよく知られているのは乳酸菌ですが、それ以外にもタンパク質、ビタミン、カルシウム、脂質とさまざまな栄養成分が含まれています。しかも、それらは乳酸菌によって分解されているので体に消化吸収されやすいといわれています。総合栄養食を主食に与えていれば、犬の体に必要な栄養素が不足することはまずありませんが、健康をサポートする意味でヨーグルトをプラスするのもよいかもしれません。

ただし、ヨーグルトは脂肪分が多いので、与える量には注意が必要です。また、なかにはヨーグルトを食べてお腹を壊したり、アレルギー症状が見られたりする犬もあります。いくら体によい食べ物でも、愛犬の体に合わない場合があるので、愛犬の体調を観察しながら与えるようにしましょう。

ヨーグルトのおもな栄養素|9割近くが水分、タンパク質、脂質も豊富

茶色いトイ・プードルの顔正面アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
ヨーグルト(全脂無糖)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー56kal
水分87.7g
タンパク質3.6g
脂質3.0g
炭水化物4.9g
灰分(無機質)0.8g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がヨーグルトを食べるメリット|腸内環境の改善、健康な体づくりと維持に役立つ

シー・ズーの顔正面アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

乳酸菌|腸の善玉菌を増やして腸内環境を整える

人も犬も、腸の中にはよい働きをする善玉菌と、悪い働きをする悪玉菌、善玉と悪玉の中間に位置する菌の3種類が存在していて、善玉菌より悪玉菌が多くなると腸の働きが悪くなるといわれています。

そこで期待されるのが、ヨーグルトのおもな栄養成分として知られている乳酸菌の働きです。
乳酸菌とは、炭水化物や糖を分解して多量の「乳酸」を作り出す菌の総称で、ビフィズス菌やブルガリスク菌、ガセリ菌などたくさんの種類があります。ヨーグルトによって腸内に到達した乳酸菌は、乳酸を作ることで腸内を酸性にし、悪玉菌の増殖を抑えてくれるので、その結果、腸内環境が改善し、便秘や下痢の解消が期待できます。

また、ロイテリ菌やLS1という乳酸菌は、犬の口内細菌の繁殖を防ぐといわれているので、歯周病や口臭予防にも役立つと考えられます。

カルシウム|丈夫な骨や歯、筋肉の収縮をサポート

カルシウムは、リンとバランスをとって丈夫な骨や歯を作り、健康を保つのに役立つ栄養素。筋肉の収縮や弛緩、つまり筋肉をスムーズに動かすのにも必要な栄養素です。ヨーグルトはカルシウム豊富な牛乳から作られるので、同様にカルシウムがたっぷり含まれています。さらに、ヨーグルトはカルシウムが乳酸とくっついて「乳酸カルシウム」となり、牛乳より吸収されやすいというメリットもあります。

ちなみに、犬は体内でカルシウムを合成することができないため、食べ物から摂取する必要があります。総合栄養食のドッグフードを主食として与えていれば、カルシウムが不足することはまずありませんが、カルシウムが豊富で吸収率の高いヨーグルトやサプリメントで補うのもよいかもしれません。

ビタミン|健康な皮膚、被毛、粘膜の維持など

ヨーグルトには、正常な視覚や健康な皮膚・被毛を作るビタミンA、粘膜や皮膚を健康に保つビタミンB1、細胞の修復に役立つビタミンB2、カルシウムの吸収をサポートするビタミンDが含まれています。
ビタミンは、犬の成長期と繁殖期にはより多く必要となる栄養素ですが、さまざまなビタミンが相互に作用しながら働くため、バランスよく摂取する必要があります。ヨーグルトは、おもなビタミンのうちビタミンC以外が含まれている優等生といえるでしょう。

犬がヨーグルトを食べるデメリット|乳糖不耐症の犬は下痢や腹痛を起こす可能性あり

茶色のシェットランド・シープドッグの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の体によい栄養素が多いヨーグルトですが、なかにはヨーグルトが体に合わない犬や、与える際に気をつけたいことがあります。愛犬にヨーグルトを与える前に、以下のことを覚えておきましょう。

乳糖(ラクトース)|乳糖を分解できない犬も

「牛乳を飲むと、お腹の具合が悪くなる」という人がいますね。牛乳に含まれる「乳糖」という成分を分解する酵素「ラクターゼ」の分泌が間に合わないために起こる症状で、そうした体質を「乳糖不耐症」といいます。
犬も同様で、乳糖を多く含む牛乳でこの乳糖不耐症になる犬が多いので、「牛乳が原料のヨーグルトもやっぱりNGでは」と思っている飼い主さんも少なくないようです。

子犬のときは、乳糖を分解する「ラクターゼ」が多く分泌されているものの、成長とともに分泌量が減るので、生後一定期間を経たあとは、ほとんどの犬が乳糖不耐症ともいわれています。また、生まれたときからすでに乳糖不耐症の犬もいるようです。


「ヨーグルトは、牛乳を原料としながらも、乳酸菌を加えて発酵させる工程で、乳糖が分解されるから『乳糖不耐症』のリスクはない」」という情報を目にすることがありますが、発酵工程で分解されるのは、牛乳の2~4割程度。牛乳ほどではないにしろ、乳糖不耐症のリスクはゼロではありません。腸が弱い犬にヨーグルトを与えるときは、注意が必要です。

脂肪|食べ過ぎは肥満の原因に

ヨーグルトには脂肪が含まれています。脂肪は、犬の体に必要な三大栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)のなかでも一番効率のよいエネルギー源ですが、過剰に摂取すると使われなかった分が体内に蓄積され、肥満の原因になります。与え過ぎないように注意してください。肥満が心配の場合は、脂肪分を抑えた低脂肪ヨーグルトがおすすめです。

タンパク質が食物アレルギー症状を引き起こすことも

ヨーグルトにはタンパク質が含まれています。このタンパク質に犬の免疫機能が過剰に反応することで、稀にアレルギーを起こすことがあります。初めてヨーグルトを与えるときは、少しずつ与えながら体調に変化がないかよく観察してください。

犬にヨーグルトを与え続けたら結石症になるってホント?

犬の結石症で多いのは、カルシウムがシュウ酸と結合してできる「シュウ酸カルシウム結石」、血液中のマグネシウム濃度の上昇や細菌感染によって起こる「ストルバイト結石」です。
食事や水からカルシウムやマグネシウム、リンなどのミネラルを多量に摂取すると、尿の中の濃度が高くなり、結石ができやすくなりますが、総合栄養食を主食として与えていて、おやつ程度に適量を守ってヨーグルトを与えるのなら、結石の原因物質が体内に蓄積されるリスクは低いでしょう。

また、水を飲む量が少ないことや排尿回数が少ないことも結石の原因になりますが、ヨーグルトは全体の9割近くが水分。利尿作用があるカリウムも含まれているので、結石の形成を防いでくれる効果が期待されます。

ただし、すでに結石症を患っている犬にヨーグルトを与える場合は、注意が必要です。かかりつけの獣医師に相談してから与えるようにしましょう。

犬にヨーグルトを与えるときの注意ポイント|無糖、低脂肪または無脂肪を選ぼう

気持ちよさそうに眠っている茶色いチワワの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
市販されているさまざまなヨーグルトのなかから、どんなヨーグルトを選んで愛犬に与えたらよいのでしょうか。

与えてよい種類

愛犬に与えるなら、甘味を加えていない無糖のプレーンのヨーグルトを選びましょう。できれば、低脂肪や無脂肪のものがおすすめです。
フルーツなどが入っているタイプもヨーグルトも、犬にはNG。糖分が多いという理由のほかに、ぶどうやいちじくなど、犬が食べると中毒になる危険な果物が入っているリスクがあるからです。

なお、最近は犬用ヨーグルトも市販されているので、そうした商品を利用するのもよいでしょう。

与えるときの適量

犬にヨーグルトを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)34g~67g(大さじ2杯~大さじ4杯)
中型(6~15kg)77g~153g(大さじ5杯~大さじ10杯)
大型(20~50kg)189g~376g(大さじ12杯~大さじ25杯

※数値は、全脂無糖ヨーグルト、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

与え方

犬にヨーグルトを与えるなら、食前や食間より食後がおすすめです。乳酸は胃酸に弱いため、胃酸が弱まっている食後に与えると乳酸が働きやすく、ヨーグルトの効果をより享受することができるからです。

また、冷蔵庫から出した冷たいヨーグルトをすぐに与えるのは、胃腸に負担をかけるので避けたほうが安心です。冷蔵庫から出して常温になってから与えましょう。電子レンジで少し加熱する方法もありますが、乳酸菌は熱に弱いので加熱し過ぎるとヨーグルトの健康効果をあまり期待できなくなります。

先述したように、愛犬がヨーグルトにアレルギーを持っている可能性もあります。初めてヨーグルトを与えるときは、ごくごく少量から。翌日まで様子を見て、何も変化がないようなら少しずつ量を増やして与えるようにしてください。

犬にヨーグルトを与えてもOK。ただし乳糖不耐症やアレルギーには気をつけて

腸内環境をよくする乳酸菌をはじめ、たくさんの栄養成分が含まれているヨーグルト。愛犬の健康サポートに取り入れるのもよいかもしれません。ただし、牛乳に比べると、乳糖不耐症によって下痢などを起こす心配は少ないものの、リスクはゼロではないこと、アレルギー源になる可能性があることも覚えておきましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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