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【獣医師が解説】犬にパンを与えるのは注意が必要 含まれる食材によっては危険なものも

犬に人間用のパンを与えてはいけません。パンには人間がおいしいと感じられるよう、砂糖や塩、バターなどいろいろな材料が加えられているからです。また、調理パン、菓子パンには、犬が食べてはいけない素材が含まれていることも。犬にパンがNGな理由と、誤食してしまった場合の症状と対処法を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬は人間用のパンを食べてはいけない。調理・菓子パンの食材によっては命の危険も

Burke/Triolo Productions/gettyimages
焼き立てのトーストの匂いにつられて愛犬がそばにやってきたら、ついお裾分けしてあげたくなる。そんな飼い主さんもいるのではないでしょうか。しかし、可愛いくおねだりされたからといって、安易に与えてしまうのは考えものです。

なぜなら、人間が食べておいしいパンには、塩や砂糖、バターなどさまざまな材料が入っているからです。ほんの少しお裾分けしてあげただけでも、それが度重なれば愛犬が健康を損なう原因になるかもしれないのです。

また、食パンやロールパン、フランスパンなどのプレーンなパン以外にも、調理パンや菓子パン、デニッシュなど、パンにはさまざまな種類があります。人間にとっておいしいパンは、いずれも犬の体には塩分過多、糖分過多、ハイカロリーなものばかり。

犬が食べると危険な玉ねぎなどのネギ類やチョコレート、ココア、レーズン、ナッツ類が使われているパンもあれば、これらのNG食材が生地に練り込まれていて一見そうとわからないパンもあります。

さらに、パンの主原料である小麦は、牛肉、チキン、ラムなどの動物性たんぱく質、大豆、卵、乳製品、とうもろこしと同様、犬のアレルギー源となりやすい食べ物です。アレルギーの観点からも、パンは犬に与えないほうがよいでしょう。

犬がパンを食べたときに見られる症状|嘔吐、下痢、ふらつく、痙攣、意識混濁などの中毒症状

青空をバックにバギーに乗って舌を出して斜め上を見上げている、ピンクの洋服を着たトイ・プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
チョコレートやレーズン、玉ねぎなど犬にとって危険な素材が入っているパンはたくさんあります。
代表的なNG素材を例に、犬が食べてしまった場合に考えられる症状を紹介します。

チョコ入りパンを食べた場合

チョコレートの原料であるカカオ豆に入っている「テオブロミン」という成分は、犬の体内では分解されにくいため、中毒症状を引き起こす原因となります。加熱など、調理を経てもテオブロミンの毒性は変わりません。犬のテオブロミン中毒のおもな症状は以下の通りです。

  • 水を欲しがる

  • 嘔吐、下痢

  • 尿を漏らす

  • 落ち着きがなくなる

  • 呼吸が荒くなる、苦しそう

  • 頻尿、多尿になる

  • 脈の異常(頻脈、不整脈、徐脈)

  • ふらつく

  • 高熱が出る

  • 痙攣する、硬直する

  • 意識を失う、昏睡 など

レーズン入りのパンを食べた場合

犬はぶどうを食べると「ぶどう中毒」ともいわれる急性腎不全になる危険性があります。加熱などの調理を経てもそのリスクは変わりません。その症状は以下の通りです。

  • 急に食欲や元気がなくなり、ぐったりしている

  • 嘔吐する

  • アンモニア臭のような口臭がある

  • 普段より尿の量が少ない、尿が出ていない

  • 意識混濁

  • 背中を丸めてじっとしている(腎臓やその周辺が痛むため)など

玉ねぎ入りパンを食べた場合

玉ねぎには硫黄の一種である「有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)」が含まれていて、この成分が犬の体内で赤血球を破壊して貧血を起こす「玉ねぎ中毒」を発症します。玉ねぎだけでなく、ネギやニラ、ニンニクなどネギ科の野菜はすべて中毒の原因となります。加熱などのリスクを経てもそのリスクは変わりません。犬の玉ねぎ中毒のおもな症状は以下の通りです。

  • 元気がなくなる

  • 下痢、嘔吐をする

  • 血尿が出る

  • 発熱する

  • ふらついて歩けなくなる

  • 歯茎や目の結膜が白くなる(貧血の症状)

  • 粘膜が黄色く見える(黄疸が出る)

  • 呼吸や脈が速くなる

  • 呼吸困難になる

  • 血便が出る

  • 吐血する

  • 意識を失う など

症状が出るまでの時間

パンは、メーカーやお店によって原材料もレシピも異なるので、同じ種類のパンであっても一概に症状が出るまでの時間を示すことはできません。

犬がパンを食べてしまった場合の対処方法

外で青い座布団の上に腹ばいになり、振り向いてこちらを見ている茶色いMIX
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
飼い主さんが与えなくても、目を離したすきに愛犬がパンを食べてしまう可能性も考えられます。万が一、愛犬がパンを誤食してしまったら、どのように対処したらよいのかを以下に紹介します。

普段と違う様子が見られたら病院へ

食べてしまったのがプレーンな食パンやロールパンなど、具材が何も入っていないもので、食べた量も少量であったなら、慌てて病院に駆け込む必要はないでしょう。まずは、飼い主さんが落ち着いて愛犬の様子を見守り、普段と変わった様子がないかを確認し、もし何らかの症状が確認されたら病院へ連れていきましょう。プレーンなパンでも食べた量が多い場合は、症状の有無に関係なく、念のため動物病院で診察を受けたほうが安心です。

ただし、食べてしまったパンにチョコやレーズン、玉ねぎが含まれていた場合は、症状が現れていなくても、なるべく早く病院へ相談してください。
なお、病院に行く際には、何をどのくらい食べたか、食べてからの経過時間、症状などをメモして持っていくと、診察および治療がスムーズに進むでしょう。

病院での治療方法

病院で受ける可能性がある治療法を紹介します。

中毒症状の原因物質を取り除く

食べてからあまり時間が経っていない場合は、食べたものを吐き出させます。摂取してから約2〜4時間以内で緊急性が高いと思われる場合は、全身麻酔をかけて胃洗浄が行われることがあります。また、活性炭などの吸着剤や下剤を使って毒物の除去を図る場合もあります。

ちなみに、食べたものを吐き出させる催吐処置は医療行為なので、飼い主が素人判断で無理やり吐かせようとするのはやめましょう。犬の体にダメージを与える非常に危険な行為なので、絶対にしてはいけません。

症状に応じた対症療法を行う

重度の貧血があれば、輸血を行う場合があります。また、腎臓がダメージを受けている場合や、その他の症状に対して、点滴や経口でビタミン剤や薬を投与し、症状の改善と体力の回復を図る場合もあります。

犬がパンを食べてはいけない理由|多様な調味料、NG食材、アレルギーの危険性

白いシャツとストライプのスカートをはいてソファに座っている鼻周りと頭のてっぺんが白い茶色の小型犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬に人間用のパンを与えてはいけない理由を紹介します。

市販品は調味料などさまざまな材料が含まれている

一般的に店頭で売られているパンの原材料をみると、小麦以外にも塩、砂糖、バターなどの油脂類、イースト菌、などじつにさまざまな調味料が加えられていることがわかります。それらは人間にとってごく少量であっても、体の小さな犬にとっては多量にあたります。過剰な塩分は高血圧の原因となり、心臓や腎臓に負担を与え、糖分や脂分の摂り過ぎは肥満や糖尿病、歯周病を誘発しかねません。

市販の調理パンや菓子パンには犬に有害な原料が使用されていることも

チョコレートやネギ類、ぶどう、アーモンドやピーナッツ、人間用の牛乳など、犬に与えてはいけない食べ物はたくさんあります。調理パンや菓子パンには、生地に練り込まれているなど、見た目でわからなくてもこれらのNG食材が入っている場合があるので、とくに注意しましょう。

食物アレルギー

パンの主原料である小麦は、人間と同様に犬にとってもアレルゲンになりやすい食材のひとつです。食物アレルギーはタンパク質に免疫機能が過剰反応して起こる現象ですが、小麦粉にはグルテンというタンパク質が含まれています。このグルテンをうまく消化・吸収できないことによってアレルギー症状が起きることがあります。

また、パンには小麦以外にも食物アレルギーの原因となりうる材料が含まれていることがあります。たとえば卵、とうもろこし、牛乳などが一例です。最近は小麦の代わりに米粉を使ったパンも目にするようになりましたが、小麦アレルギーは回避できても、原材料として含まれていた卵や牛乳でアレルギーを発症する場合もあるので、もともとアレルギー体質のある犬がパンを誤食しないよう注意しましょう。

危険な量の目安

食パンやロールパンほかプレーンなパンに含まれている材料や調味料の量や、調理パンや菓子パンなどに含まれる犬にとって危険な食材の量は正確に測ることが難しいので、どのくらいの量を食べたら危険なのかは明示できません。参考までに、犬の体に害を及ぼす危険な食べ物に関する致死量を以下に示しておきます。

チョコレート(テオブロミン中毒量)

体重1kあたり20mg~100mgを摂取すると中毒症状が起こり、体重1Kgあたり250mg以上で命が危ないといわれています。

ネギ類(ネギ中毒量)

一般的には体重1Kgあたり5g~10gで中毒症状が現れるといわれています。致死量は明らかではありませんが、個体差もあり、ほんの少しでも致死量になる場合があります。

レーズン(ぶどう中毒量)

犬がぶどうやレーズンを誤食したときの絶対的な致死量は、今のところわかっていません。しかし、これまでに、ぶどうを食べて中毒症状や急性腎不全などを起こしたという報告は複数あり、その摂取量は体重1Kgあたり10g〜30gとなっています。

食塩

塩は犬の体になくてはならないものですが、過剰に摂取すれば逆に健康を害する危険なものになります。体重1Kgあたり食塩2g~3gで中毒症状が現れ、4gで命を脅かすといわれています。

犬のパン誤飲を防ぐ方法

毛布を敷いたソファの上で眠っている黒いパグの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬は飼い主さんがおいしそうに食べているものに興味を示すことが多いので、席を立った際など目を離したすきに、テーブルの上にあったパンをかじってしまうかもしれません。プレーンな食パンやロールパンをほんの少しかじった程度なら、それほど心配はありませんが、レーズン入りのパンやチョコを生地に練り込んであるパン、玉ねぎの入っている調理パンなど、犬に与えてはいけない食材が入っているパンを食べてしまったらたいへんです。

また、多くの場合、パンを袋に入れてテーブルに置いておくことが多いと思いますが、袋を閉じているプラスチックや針金も一緒に誤飲してしまうと、さらにリスクが高まるので要注意です。
愛犬の手や口が届きそうな場所にパンを出しておかない、床に落ちたパンくずはきれいに掃除しておくなどを心がけましょう。

与えるなら犬用のパンを手作りしよう!

2匹で顔を寄せ合って眠っているボストン・テリアの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬に人間用のパンはNGですが、犬の健康を害さない材料で作られた犬用のパンなら与えても大丈夫です。また、お祝いやイベントの際に愛犬用のパンを手作りするのも楽しいものです。レシピを2つ紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。ただし、アレルゲンになりやすい小麦粉を使っているので、まずは少量を与えてみて様子をみましょう。

自然派志向の犬用パン

【材料】
小麦粉(強力粉)・・・300g
ドライイースト・・・6g
オリゴ糖・・・大さじ1
豆乳・・・200㏄
エキストラバージン オリーブオイル・・・大さじ1

【作り方】

  1. ボウルに小麦粉、ドライイースト、オリゴ糖、オリーブオイルを入れ、豆乳を注ぎ込みながら混ぜます。固まりになったら手で折りたたんだり、ボウルの底に叩きつけたりしながら15分程度こねます。

  2. 生地がなめらかになって薄く伸びるまで引っ張ることができたらOK。いったん生地をまとめ、ボウルにラップをかけ、1時間ほど室温で一次発酵させます。

  3. 2の生地が2倍程度の大きさまで膨らんだら、広い場所に小麦粉を敷いた上に移して、手のひらで抑えてガスを抜きます。

  4. 3の生地を8等分に切り分けて丸め、その上にぬれ布巾をかけてさらに15分ほどおいて休ませます。

  5. 15分経ったらもう一度手のひらで押して潰し、丸め直しながら形を整えます。

  6. 再び室温で30分ほど休ませ、二次発酵させます。

  7. 180℃のオーブンで約20分焼いたら完成です。

パンケーキツリー

【材料(直径6cm×高さ10cm 1個分)】
小麦粉・・・50g
卵(L)・・・1個
イチゴ・・・1/4個
ブルーベリー・・・3粒
ラズベリー・・・1個
スキムミルク・・・適量
ヨーグルト(1~2時間水切りしたもの)・・・15g
エキストラバージン オリーブオイル・・・大さじ1/2
ベーキングパウダー(アルミニウムフリー)・・・小さじ1/2

【作り方】

  1. 卵とオリーブオイルを混ぜ合わせ、小麦粉ベーキングパウダーを振るい入れます。

  2. 1をダマがなくなるまで混ぜ合わせます。

  3. フライパンを熱し、いったん火から下してぬれ布巾の上に置き、2の生地を流し込みます。

  4. フタをして再び火にかけ、表面に気泡ができたらひっくり返します。その後、両面に焼き色が付くまで焼きます。

  5. サイズ違いの星型を用意し、大2枚・中2枚・小1枚にくり抜きます。

  6. パンケーキとヨーグルトを交互に重ね、ラズベリーを載せ、周囲にブルーベリーとイチゴを散らし、スキムミルクを振ったら完成です。

人間用のパンは犬にNG。与えるなら安心の手作りパンを

人間用のパンは、犬に与えないほうがよい食べ物です。プレーンなパンをほんの少し分け与える程度なら、すぐに健康を害することはほぼありませんが、調理パンや菓子パンなどは犬に与えてはいけません。可愛い愛犬の健康を守るのは、飼い主さんの責任ですから、愛犬にねだられても与えないでください。どうしても愛犬にパンを与えたいときは、犬に害のない材料で手作りパンにチャレンジしてみてはいかがでしょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 准教授 )
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのいぬのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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