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【獣医師が解説】犬を多頭飼いするには?知っておくべきメリット・デメリットと誤解や注意点

犬を1頭だけ飼っている方の中には、新しい犬をお迎えすることを検討している、あるいは多頭飼いに憧れている飼い主さんも多いかもしれません。しかし、安易に多頭飼いを始めてしまうと、「こんなはずじゃなかった」という結果を招くことも…。今回は、多頭飼いを成功させるためのさまざまな方法とコツを解説。実際に多頭飼いを経験した方の体験談や、相性が良いとされている犬同士の組み合わせも併せてご紹介します。

犬同士の関係・相性・種類について

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犬には本来「群れる」という意識がありますが、一般家庭で飼育されている犬に関してはこの犬同士の群れる行為を強制する必要はありません。家庭犬の場合はオオカミの遺伝子から遠ざかってきていることもあり、犬同士の絆よりも人との結びつきを重要視する傾向があるからです。
また犬は人よりもずっとクールで、「社会空間行動(パーソナルディスタンス)」のもと、他者とは一定の距離を保ちながら過ごしたいという気持ちを抱えているもの。つまり犬同士が仲睦まじくなければならないというのは人の思い込みで、実際には犬同士が相手に警戒心を抱かない、問題行動を起こさないだけで十分「仲良し」といえるのです。

多頭飼いに向いている犬種、向いていない犬種

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多頭飼いに向いているのは、フレンドリーな性格の犬種です。個体差はありますが、ラブラドール系などの洋犬にはこの性質が備わっていることが多く、基本的なしつけができていれば多頭飼いがうまくいきやすい傾向にあります。反対に原始的な犬種はテリトリー意識が強いため、多頭飼いに向いていないこともあるようです。

多頭飼いに適している性別の組み合わせ

性別と犬の相性には密接な関係があり、犬を2頭飼う際には異性同士の組み合わせのほうが喧嘩などの問題が起こりにくいといわれています。特にオス同士のケースではお互いに男性ホルモンの影響で縄張り意識や警戒心が強くなり、問題を起こしやすいので注意が必要です。
メス同士であっても互いに排他的になることはありますので、初めて多頭飼いをするときには去勢を済ませたオスとメスの組み合わせを選ぶのが安全です。

多頭飼いに適している年齢の組み合わせ

多頭飼いをするときの犬の年齢は、先住犬と新しい犬で3~4才離れているのが理想的。年齢が近いと介護や別れの時期が重なり飼い主さんの負担が増えてしまいますので、新しく犬を迎えるのであれば先住犬が4才以上になってからのほうが良いでしょう。ただし7才以上離れてしまうと活動量や運動量が大きく異なり、互いにストレスを感じることもあるので気を付けてください。

多頭飼いに向いている犬の性格の組み合わせ

新しい犬を飼うかどうかについては、先住犬の性格を考慮したうえで判断することが大切です。

先住犬がおっとりとしていて穏やかな性格であれば、新しい犬も同じようなタイプの子を選ぶことで多頭飼いが成功しやすくなります。先住犬がおっとりした性格の場合、新し迎える犬がやんちゃなタイプの場合、あまり相性が良くなく、ストレスを感じてしまうケースもあります。

先住犬が好奇心旺盛で明るい性格の場合には、新しい犬が遊び好きな性格でもうまくいく可能性は高いでしょう。また新しく迎える犬が内気な性格だったとしても、先住犬が歩み寄れるのであれば、お互いに楽しく暮らしていくことができます。

多頭飼いを始めるタイミング

飼い主さんや愛犬が多頭飼いで幸せになるためには、先住犬と新しい犬を一緒にするタイミングにも気を配る必要があります。一般的に、先住犬の成長する時期が落ち着き、トイレやクレートトレーニングなど、基本的なしつけがすべてできるようになったタイミンで引き合わせるのがおすすめです。

多頭飼い体験談 失敗例・成功例

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嬉しいことや楽しいことも多い一方で、すべてがうまくいくとは限らないのが多頭飼い。ここでは飼い主さんたちから寄せられた、多頭飼いの失敗談と成功例をご紹介します。

<失敗だったケース・多頭飼いをして大変になったこと>

・CASE①
多頭飼いの失敗談としてよくあるのが、犬同士の相性がよくないというケース。飼い主さんたちからも、以下のような声があがっていました。
「同姓で年齢が近い犬を引き取ったところ、序列争いが勃発…。一触即発の関係のため、それぞれのケージから出すことができず、散歩も別々に行っています。」
「片方がいじめてばかりいるので、見張っていなければいけませんでした。」
「先住犬がストレスでご飯が食べられなくなり、点滴が必要になるほど衰弱してしまいました。」
「ケンカになるとなかなか止められず、みんなケガしてしまうので大変です。メスの犬を避妊することで、だいぶケンカの回数が減りました。」
・CASE②
多頭飼いによって、散歩や病気のときなどのお世話や金銭面での負担が増えたという意見もありました。
「お金も時間も飼っている頭数分かかります。大人しい子であれば病院にも1人で連れて行けますが、怖がりの子を2頭を連れていくのは大変です。」
「先住犬のしつけがきちんとできていないと、トイレや無駄吠えなどすべてが倍大変になります。」

<成功したケース・多頭飼いをして良かったこと>

・CASE①
トイ・プードルと別の犬種を各2頭ずつ、合計4頭飼っている飼い主さん。普段からそれぞれの性格の違いを把握し、1頭ずつときちんとした信頼関係を結ぶことを意識しています。個別のトレーニングやふれあい、話しかける時間を通じて愛犬たちの気持ちを安定させた結果、愛犬同士は絶妙のタイミングで接し合うようになりました。
・CASE②
先住犬がペットショップにいた犬と仲良くなり、しつけの先生も認める相性の良さだったため、飼うことを決めたという飼い主さん。先住犬は新しい犬にトイレの場所を教えるなどいいお姉ちゃんになり、新しい犬もすぐに家に慣れました。仲良しの姿に家族は癒され、近所でも人気者の存在になっています。
・その他多頭飼いして良かったこと
「くっついて寝ていたり、お耳やお口をぺろぺろしあったりしているのを見ると、とても幸せな気持ちになります。おやつのときにもオスワリをしながら並んで食べていて可愛いです」
「外出先から帰宅したとき、2頭揃って出迎えてくれるのがとても嬉しいです」

多頭飼いを始める前に準備すること

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多頭飼いがうまくいくかどうかは、犬を迎える前の飼い主さんの意識と行動にかかっています。「いざもう1頭!」と決めたのであれば、事前準備はしっかりと行いましょう。ここでは多頭飼いを始める前に達成しておきたい7つの項目をご紹介します。

改めて愛犬の社交性をテストする

人や犬が集まる公園などへ散歩に行ったときは、下記のリストを参考に再度愛犬の様子を観察、確認してみてください。もしこれらのことができていないときには、トレーナーなどの専門家に相談して状況を改善させる必要があります。
□散歩中にほかの犬とすれ違ったときには、全身が固まるほど怯えたり、逃げたり吠えたりすることなく見て見ぬふりができている
□散歩中にほかの犬が近づいてきたら、相手のニオイをかいで挨拶したあと、クールダウンできている。あるいは自分が興味のある相手だったとしても、飼い主さんのコントロールに従って元に戻れる

去勢・避妊手術を済ませておく

異性の犬を迎えるときはもちろん、同性同士であっても事前に去勢・避妊手術を済ませておいたほうが安心です。また夫婦として迎え入れて出産を検討しているのであれば、専門家に相談して適切な環境づくりをすることも忘れずに。

ケージやトイレなどの環境を個々で用意する

クレートやケージは1頭につき1つ用意するのが基本です。ケージを設置するときにはケージ同士をくっつけるのではなく、同じ部屋のなかで離れた位置にセットすることを心がけましょう。また目隠しに使える布を準備しておくことも重要です。
トイレは将来的に共有しても構いませんが、個体によっては共有することを嫌がるケースもありますので、念のため個別に用意しておくことをおすすめします。

家庭内での“しつけ&ルール”を確認しておく

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家族間でのしつけやルールの意識がぶれていると、愛犬たちも戸惑ってしまい、しつけが身につかなくなってしまいます。しつけを成功させ、愛犬たちに部屋のなかでリラックスして過ごしてもらうためには、飼い主さん側が共通のルールを定めて同じ手順でしつけを行うことが大切です。
「○○はリビングには置かない」、「愛犬がのりたがっても、ソファの上にはのせない」などのルールを、事前に家族で話し合ってきちんと決めておきましょう。

何度か「顔合わせ」を行う

突然なんの前触れもなく新しい犬が家にやってくると、先住犬によっては大きなストレスを受けてしまうことも。もし状況が許すようなら、事前に先住犬と新しい犬を何回か会わせて相性を確認しておくのも良いかもしれません。一度ではなく何回か会わせることで、犬同士を「知り合い」レベルにしておくのが理想的です。

先住犬に話しかけ、状況を「説明」しておく

先住犬に対して、もうすぐ新しい犬が来るという状況を説明しておくこともまた、多頭飼い成功のためには効果的。愛犬に話しかける際は「新しい犬が来ても吠えないでね、意地悪しちゃだめだよ」といったネガティブなことを伝えるのではなく、ポジティブな言葉をかけることを意識しましょう。
「みんなで仲良くしようね」「我が家のルールをいろいろと教えてあげてね」「もうすぐお姉ちゃん(お兄ちゃんに)になるんだよ。頼むね」など、先住犬への感謝の気持ちも添えて説明してあげてください。

飼い主さん自身も「心を整える」

犬は安心して眠れる、食事ができる、体を動かして遊べるという本能的欲求が満たされて初めて、人やほかの犬との関わりがもてるようになります。
犬の問題行動はこれらの欲求が満たされていないことによって起こりますので、「いい飼い主さん」になるためには犬の本質を客観的にとらえ、自分の理想やイメージを押し付けすぎないことが大切です。

多頭飼いを始めたら気を付けたいこと

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多頭飼いを始めたあとのことは犬同士に任せているといったケースもありますが、それだけに頼るのは危険です。犬の問題行動が深刻化すると飼い主さんの介入が必要になったり、しつけのし直しになったりすることも多いので、新しい犬が来たら下記の内容を忘れずに行ってトラブル回避に努めてください。

トイレのしつけのコツは先住犬のトイレ成功を褒めること

新しい犬に対するトイレのしつけには、先住犬がトイレの上でウンチやオシッコを成功させたタイミングで、先住犬のことを大げさなくらい褒めてあげる方法が効果的です。するとそれを見ていた新しい犬が真似をして、同じようにトイレの上で排泄するようになります。

先住犬とともに新しい犬を迎えに行き、2頭同時に家のなかへ入る

新しい犬を初めて家のなかへ入れるときには、先住犬とともにブリーダーさんの自宅やペットショップなどへ新しい犬を迎えに行き、2頭同時に家のなかに入れるのが良いでしょう。そうすることで先住犬の縄張り意識が抑えられ、新しい犬も恐怖心を抱きにくくなります。

最初は先住犬を優先する

新しい犬が家に来た最初のうちは、「ただいま」の声かけや散歩、ゴハンやおやつなどの優先権をすべて先住犬へ与えることを意識してみてください。新しい犬にそれが当たり前だという感覚が身につけば、犬同士の争いごとも起こりにくくなります。

犬同士の序列が見えてきたらそれに応じて優先権を変更してもOK

多頭飼いを始めてから半年以上経過し、徐々に犬同士の序列が見えてきたら、それに応じて優先権を変更するのもひとつの手です。たとえばおもちゃの取り合いに勝つ、プロレスごっこで上にくる、おやつなどを与えたときに真っ先に食べようとするといった様子を観察してみると分かりやすいかもしれません。

【獣医師が教える】多頭飼いのメリット・デメリットとは?

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犬同士の相性や多頭飼いの体験談、事前準備や新しい犬を迎えたあとの注意点について解説してきました。ここで改めて、飼い主さんや犬にとっての多頭飼いのメリットやデメリットを考えてみましょう。

獣医師が教える多頭飼いのメリット

まずは多頭飼いの魅力やメリットを5つ解説します。
・ペットロスを防ぐきっかけになることも
犬の飼い主さんが増えている昨今、愛犬を亡くしたことがきっかけで起こるペットロスが大きな社会問題となっています。このペットロスの症状を軽減するための方法はさまざまですが、多頭飼いによってある程度気持ちが軽くなったというケースも少なくはないようです。実際に残った愛犬のお世話をすることで気が紛れた、残った愛犬に救われたという声もありました。
・愛犬それぞれがもつ個性を実感できる
多頭飼いをしたことで改めて先住犬の魅力に気付くことや、1頭1頭がもつ個性の愛らしさを実感することも多いでしょう。飼い主さんのなかには、愛犬それぞれの個性や感情に触れるたびに、家族全員が心穏やかになれたという方もいるようです。
・世話や犬たちとのふれあいを通じて家族の絆が深まる
犬が増えた分だけフードやトイレのお世話は大変になりますが、それをみんなで協力して行うことによって、以前よりも家族同士の交流が活発になることがあります。愛犬のお世話や犬たちとのふれあいには、家族同士の絆を深める効果があるのかもしれません。
・より規則正しい生活が送れるようになる
犬の数に比例してお世話の時間が増える多頭飼いには、朝はしっかりと起きて散歩に行く、夜は犬に合わせて早めに寝るなど、より規則正しい生活を送れるようになるというメリットも。また愛犬たちと一緒に散歩をすることは、人の健康面にも良い効果を与えてくれるでしょう。
・犬たちは仲間の存在によって苦手を克服できる場合も
犬にはまわりの個体となんとなく同じ行動をとりたくなる性質があります。たとえば人のことが苦手な犬も、ほかの犬が人に近づいていくのを見てそれを真似した結果、人に慣れていくことは多いです。仲間の存在によって苦手なものを克服できるというのも、多頭飼いをするうえではメリットになりそうですね。

獣医師が教える多頭飼いのデメリット

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多頭飼いには飼い主さんや犬にとってのメリットがたくさんある一方で、1頭だけを飼うときと比べてデメリットがあるのも事実です。ここでは多頭飼いの代表的なデメリットを4つ解説します。
・散歩やお世話の負担が増える
先述したように、飼っている犬の数に比例してフードの準備や片付け、トリミング、歯磨きなどのお世話の量は増えていきます。また年の差がある犬を飼っている場合は散歩のペースが異なるため、別々に連れて行かなくてはならないことも多いです。
・フードや医療費など、経済的にも負担が大きくなる
ペットシーツ代やフード、医療費、フィラリアの予防接種などの経済的負担が大きくなることも、多頭飼いをするうえでは避けられない問題です。特に先住犬もしくは新しく来た犬が病気がちだと、検査や手術などで当初の予定よりも医療費がかかってしまうケースもあります。
・犬同士が仲良くなれなかったとき、順位争いのときにはストレスがたまる
愛犬同士の相性が悪く、仲良くなれなかったり、順位争いでのトラブルが多かったりすると、飼い主さんも愛犬たちもストレスフルな状況に陥ってしまいがちです。特に喧嘩などの問題行動が勃発すると、犬たちが接触しなくても済むような環境づくりをしなければならなくなり、飼い主さん自身もさらにストレスがたまっていきます。
・相性が悪い場合は飼い続けることができなくなることも
いろいろな方法を試しても先住犬と新しい犬が仲良くなれなかった場合、そのまま放っておくと一方の犬が病気になってしまったり、性格が変わってしまったりすることがあります。そうなった際には、残念ですが手放す選択肢も考えなければなりません。

多頭飼いがうまくいくかどうかは飼い主さん次第

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多頭飼いが成功し家族全員が幸せになれるかどうかは、飼い主さん自身の心構えや事前の念入りな準備にかかっています。多頭飼いをすることになったら早い段階で相性の確認や先住犬のケア、多頭飼いに適した環境づくりを行い、万全の状態で新しい犬を迎えてあげてくださいね。
監修/滝田雄磨(SHIBUYAフレンズ動物病院 院長)
滝田先生
文/子狸ぼん
※写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
参考
「いぬのきもち」WEB MAGAZINE『こんなハズじゃなかった…飼い主さんが明かす「多頭飼いの失敗談」』

「いぬのきもち」WEB MAGAZINE『憧れの、犬の多頭飼い「まさかこんなはずじゃ…」な事態に陥るかも…』
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