犬と暮らす
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【獣医師が解説】犬を多頭飼いするには?知っておくべきメリット・デメリットと誤解や注意点
犬同士の関係・相性・種類について
また犬は人よりもずっとクールで、「社会空間行動(パーソナルディスタンス)」のもと、他者とは一定の距離を保ちながら過ごしたいという気持ちを抱えているもの。つまり犬同士が仲睦まじくなければならないというのは人の思い込みで、実際には犬同士が相手に警戒心を抱かない、問題行動を起こさないだけで十分「仲良し」といえるのです。
多頭飼いに向いている犬種、向いていない犬種
多頭飼いに適している性別の組み合わせ
メス同士であっても互いに排他的になることはありますので、初めて多頭飼いをするときには去勢を済ませたオスとメスの組み合わせを選ぶのが安全です。
多頭飼いに適している年齢の組み合わせ
多頭飼いに向いている犬の性格の組み合わせ
先住犬がおっとりとしていて穏やかな性格であれば、新しい犬も同じようなタイプの子を選ぶことで多頭飼いが成功しやすくなります。先住犬がおっとりした性格の場合、新し迎える犬がやんちゃなタイプの場合、あまり相性が良くなく、ストレスを感じてしまうケースもあります。
先住犬が好奇心旺盛で明るい性格の場合には、新しい犬が遊び好きな性格でもうまくいく可能性は高いでしょう。また新しく迎える犬が内気な性格だったとしても、先住犬が歩み寄れるのであれば、お互いに楽しく暮らしていくことができます。
多頭飼いを始めるタイミング
多頭飼い体験談 失敗例・成功例
<失敗だったケース・多頭飼いをして大変になったこと>
多頭飼いの失敗談としてよくあるのが、犬同士の相性がよくないというケース。飼い主さんたちからも、以下のような声があがっていました。
「同姓で年齢が近い犬を引き取ったところ、序列争いが勃発…。一触即発の関係のため、それぞれのケージから出すことができず、散歩も別々に行っています。」
「片方がいじめてばかりいるので、見張っていなければいけませんでした。」
「先住犬がストレスでご飯が食べられなくなり、点滴が必要になるほど衰弱してしまいました。」
「ケンカになるとなかなか止められず、みんなケガしてしまうので大変です。メスの犬を避妊することで、だいぶケンカの回数が減りました。」
多頭飼いによって、散歩や病気のときなどのお世話や金銭面での負担が増えたという意見もありました。
「お金も時間も飼っている頭数分かかります。大人しい子であれば病院にも1人で連れて行けますが、怖がりの子を2頭を連れていくのは大変です。」
「先住犬のしつけがきちんとできていないと、トイレや無駄吠えなどすべてが倍大変になります。」
<成功したケース・多頭飼いをして良かったこと>
トイ・プードルと別の犬種を各2頭ずつ、合計4頭飼っている飼い主さん。普段からそれぞれの性格の違いを把握し、1頭ずつときちんとした信頼関係を結ぶことを意識しています。個別のトレーニングやふれあい、話しかける時間を通じて愛犬たちの気持ちを安定させた結果、愛犬同士は絶妙のタイミングで接し合うようになりました。
先住犬がペットショップにいた犬と仲良くなり、しつけの先生も認める相性の良さだったため、飼うことを決めたという飼い主さん。先住犬は新しい犬にトイレの場所を教えるなどいいお姉ちゃんになり、新しい犬もすぐに家に慣れました。仲良しの姿に家族は癒され、近所でも人気者の存在になっています。
「くっついて寝ていたり、お耳やお口をぺろぺろしあったりしているのを見ると、とても幸せな気持ちになります。おやつのときにもオスワリをしながら並んで食べていて可愛いです」
「外出先から帰宅したとき、2頭揃って出迎えてくれるのがとても嬉しいです」
多頭飼いを始める前に準備すること
改めて愛犬の社交性をテストする
□散歩中にほかの犬が近づいてきたら、相手のニオイをかいで挨拶したあと、クールダウンできている。あるいは自分が興味のある相手だったとしても、飼い主さんのコントロールに従って元に戻れる
去勢・避妊手術を済ませておく
ケージやトイレなどの環境を個々で用意する
トイレは将来的に共有しても構いませんが、個体によっては共有することを嫌がるケースもありますので、念のため個別に用意しておくことをおすすめします。
家庭内での“しつけ&ルール”を確認しておく
「○○はリビングには置かない」、「愛犬がのりたがっても、ソファの上にはのせない」などのルールを、事前に家族で話し合ってきちんと決めておきましょう。
何度か「顔合わせ」を行う
先住犬に話しかけ、状況を「説明」しておく
「みんなで仲良くしようね」「我が家のルールをいろいろと教えてあげてね」「もうすぐお姉ちゃん(お兄ちゃんに)になるんだよ。頼むね」など、先住犬への感謝の気持ちも添えて説明してあげてください。
飼い主さん自身も「心を整える」
犬の問題行動はこれらの欲求が満たされていないことによって起こりますので、「いい飼い主さん」になるためには犬の本質を客観的にとらえ、自分の理想やイメージを押し付けすぎないことが大切です。
多頭飼いを始めたら気を付けたいこと
トイレのしつけのコツは先住犬のトイレ成功を褒めること
先住犬とともに新しい犬を迎えに行き、2頭同時に家のなかへ入る
最初は先住犬を優先する
犬同士の序列が見えてきたらそれに応じて優先権を変更してもOK
【獣医師が教える】多頭飼いのメリット・デメリットとは?
獣医師が教える多頭飼いのメリット
犬の飼い主さんが増えている昨今、愛犬を亡くしたことがきっかけで起こるペットロスが大きな社会問題となっています。このペットロスの症状を軽減するための方法はさまざまですが、多頭飼いによってある程度気持ちが軽くなったというケースも少なくはないようです。実際に残った愛犬のお世話をすることで気が紛れた、残った愛犬に救われたという声もありました。
多頭飼いをしたことで改めて先住犬の魅力に気付くことや、1頭1頭がもつ個性の愛らしさを実感することも多いでしょう。飼い主さんのなかには、愛犬それぞれの個性や感情に触れるたびに、家族全員が心穏やかになれたという方もいるようです。
犬が増えた分だけフードやトイレのお世話は大変になりますが、それをみんなで協力して行うことによって、以前よりも家族同士の交流が活発になることがあります。愛犬のお世話や犬たちとのふれあいには、家族同士の絆を深める効果があるのかもしれません。
犬の数に比例してお世話の時間が増える多頭飼いには、朝はしっかりと起きて散歩に行く、夜は犬に合わせて早めに寝るなど、より規則正しい生活を送れるようになるというメリットも。また愛犬たちと一緒に散歩をすることは、人の健康面にも良い効果を与えてくれるでしょう。
犬にはまわりの個体となんとなく同じ行動をとりたくなる性質があります。たとえば人のことが苦手な犬も、ほかの犬が人に近づいていくのを見てそれを真似した結果、人に慣れていくことは多いです。仲間の存在によって苦手なものを克服できるというのも、多頭飼いをするうえではメリットになりそうですね。
獣医師が教える多頭飼いのデメリット
先述したように、飼っている犬の数に比例してフードの準備や片付け、トリミング、歯磨きなどのお世話の量は増えていきます。また年の差がある犬を飼っている場合は散歩のペースが異なるため、別々に連れて行かなくてはならないことも多いです。
ペットシーツ代やフード、医療費、フィラリアの予防接種などの経済的負担が大きくなることも、多頭飼いをするうえでは避けられない問題です。特に先住犬もしくは新しく来た犬が病気がちだと、検査や手術などで当初の予定よりも医療費がかかってしまうケースもあります。
愛犬同士の相性が悪く、仲良くなれなかったり、順位争いでのトラブルが多かったりすると、飼い主さんも愛犬たちもストレスフルな状況に陥ってしまいがちです。特に喧嘩などの問題行動が勃発すると、犬たちが接触しなくても済むような環境づくりをしなければならなくなり、飼い主さん自身もさらにストレスがたまっていきます。
いろいろな方法を試しても先住犬と新しい犬が仲良くなれなかった場合、そのまま放っておくと一方の犬が病気になってしまったり、性格が変わってしまったりすることがあります。そうなった際には、残念ですが手放す選択肢も考えなければなりません。
多頭飼いがうまくいくかどうかは飼い主さん次第
※写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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