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【栄養士監修】犬に梨をあげるのは大丈夫?あげる時に注意すること

梨は犬が食べても大丈夫な果物のひとつです。成分中の約90%は水分で、それほど栄養価は高くありませんが、甘みを好む犬にとっては水分補給の目的で与えやすい食べ物といえます。ただし、梨の皮や芯は固く消化しにくいので取り除いてあげるなど、与える際には注意点もあります。

佐野 忠士 先生

犬は適量なら梨を食べても大丈夫

梨は約90%が水分でできていて、犬に食べさせても大丈夫なフルーツのひとつです。まだ暑さが残る晩夏から出回る秋のはしりの果物なので、甘みを好む犬が、梨のほのかな甘みに誘われてシャリシャリと食べてくれれば、水分の補給にもなり、熱中症や脱水の予防になるかもしれません。梨が市場に出回り始めるのは、まだ暑さが残る晩夏なので、夏バテ気味の犬には役立つでしょう。

梨はほとんどが水分のため、あまり栄養価は高くありませんが、高血圧の予防が期待できる「カリウム」、お腹の調子を整える「食物繊維」、疲労回復に役立つ「アスパラギン酸」、消化を助ける酵素「プロテアーゼ」などが含まれており、愛犬の健康維持に役立つと考えられます。

ただし、与える際は適量を守り、皮や芯は取り除いてあげましょう。また、梨でまれにアレルギーを生じることもあるので、初めて与えるときは注意が必要です。

梨のおもな栄養素|ほぼ90%が水分

目の前に目の前に差し出された梨を食べたそうな顔をして見つめるウェルシュ・コーギー・ペンブローク
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
梨(和梨)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー38kal
水分88g
タンパク質0.3g
脂質0.1g
炭水化物11.3g
灰分(無機質)0.3g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬が梨を食べるメリット|水分補給、便秘解消、疲労回復などに期待

2個の梨のうしろに、梨のネットを頭にかぶったチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の体に役立つと考えられる梨のおもな栄養成分を紹介します。

水分|約90%が水分、熱中症や脱水の予防に役立つ

みずみずしい梨は、含まれる栄養成分の約90%が水分です。夏の暑い季節に梨を与えることで水分の補給を図るのもよいでしょう。犬は甘みを好む動物なので、梨の甘みに誘われてシャリシャリと食べてくれるかもしれません。残暑が続く日などは、熱中症予防のためにおやつに梨を与えてみるのもおすすめです。

カリウム|不要な塩分の排出と高血圧の予防。ただし腎臓病の犬は要注意!

カリウムは細胞を正常な状態に保ち、体液の浸透圧を調整する役割を果たすミネラルの一種です。利尿作用があり、体内の余分な塩分を尿と一緒に排出して血圧を下げる働きをします。梨を食べたあとは、通常より尿の回数が多くなることを想定して与えましょう。

また、カリウムは筋肉を作り、筋肉の機能を調整する働きもあるので、カリウムが不足すると体がだるくなったり、脱力感や疲労感が生まれたりします。カリウムをしっかり摂取して、ナトリウムとの適度なバランスを取ることは疲労回復にも役立つのです。

ただし、加齢や腎臓病で腎臓の機能が低下していると、余分なカリウムを上手に体外に排出できなくなり、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になる心配があります。シニア犬や腎臓病のある犬、心機能が低下している犬の場合は、過剰に与えないよう注意が必要です。

食物繊維|整腸作用と便秘の解消

食物繊維には水に溶ける性質の「水溶性食物繊維」と、水に溶けない性質の「不溶性食物繊維」の2種類があります。
水溶性食物繊維には、糖質の吸収をゆるやかにして、血糖値の急上昇を抑える働きやコレステロールを体外に出す作用がある一方、不溶性食物繊維には、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便の量を増やすことで排便を促す働きや、腸内の毒素やコレステロールを体外に排出する作用があります。

梨には、その両方が含まれていますが、不溶性食物繊維が水溶性食物繊維の約3倍以上含まれているので、どちらかというと便秘解消の効果が期待できます。ただし、不溶性食物繊維を過剰に摂取すると水を吸って膨らんだ便が大きくなり過ぎ、かえって排便が困難になる可能性があるので、与える量には気をつけましょう。

ちなみに洋梨(ラ・フランス)は、和梨に比べると約2倍(同可食部比)の食物繊維を含んでいます。

アスパラギン酸|疲労回復、解毒作用にも期待

アスパラギン酸とは、アスパラガスに多く含まれることから名付けられたアミノ酸の一種で、梨にも100gあたり140mgのアスパラギン酸が含まれています。

アスパラギン酸は、体の疲労によって生じた乳酸を分解してエネルギーに変換する作用があるため、疲労回復に役立つと考えられます。また、体内に溜まったアンモニアを体外に排出する解毒作用も認められています。激しい運動のあとのおやつに与えることで、疲労回復を図るのもよいでしょう。

プロテアーゼ|酵素の力で消化を促進

梨にはタンパク質を分解してアミノ酸に変える酵素であるプロテアーゼが含まれています。愛犬の胃腸が弱っているときは、プロテアーゼの多い食べ物で消化促進を図るのもよいかもしれません。

犬に梨を与えるときの注意ポイント|皮や芯は取り除き、生で切り分けて与えよう

梨の入ったボールのうしろにお行儀よく座っているヨークシャー・テリア
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の健康維持に役立つ栄養成分を活かすために必要な注意点についても紹介します。

未成熟の梨は与えてはいけない

一般的に市販されている梨は、実が熟した状態なので問題はないのですが、成熟しきっていない梨の実には「アミグダリン」という有害物質が含まれています。犬がアミグダリンを含む食べ物を口にすると、中毒を起こす危険性があるので、注意が必要です。梨狩りに行った際や、梨園の近くを散歩する際は、収穫時期を迎える前に地面に落ちた実が転がっていないか、愛犬が誤ってそうした実をかじったりしないか、十分に注意してください。

与えてよい部位

皮や芯は犬には消化しにくく、皮には農薬が残っている場合があるので、必ず皮を剥き、芯を取り除いてください。
与える際は、喉に詰まらせる心配がないよう、小さめにカットして与えます。とくに、超小型犬や小型犬の場合は、すりおろすかフードプロセッサーでペースト状にして与えるのもよいでしょう。

なお、梨の種にはごく少量ですが中毒を引き起こすアミグダリンが含まれているので、犬の口に入らないように注意してください。

皮や芯、種を少々食べてしまってもすぐに病院へ行く必要はありませんが、普段と違う様子が見られたら念のため動物病院で診てもらいましょう。

与えるときの適量

犬に梨を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)49g~98g(1/8個~1/4個)
中型(6~15kg)113g~225g(1/3 個~2/3個)
大型(20~50kg)378g~554g(1個~1・2/3個)

※梨1個大=387g(可食部329g)として計算
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

梨に含まれる消化酵素やビタミンは、加熱すると効力が落ちるので、梨は生のまま与えます。

少量のタンパク質で食物アレルギーの可能性も

梨には、わずかですがタンパク質が含まれています。食物アレルギーは、タンパク質に自己免疫機能が過剰に反応することで生じるので、ごくまれに梨でアレルギー反応を示す犬もあります。初めて梨を与えるときは、少し食べさせてみて体調に変化がないことを確認してから与えるようにしましょう。

缶詰の梨は糖分が多いので与えない

旬の季節以外はあまり手に入らない生の梨。缶詰なら1年を通して手に入れることができます。
しかしながら、缶詰の梨は生に比べ糖分がかなり多いので、愛犬に与えるのは避けてください。

水分豊富が豊富で消化酵素を含む梨は、適量であれば犬が食べても大丈夫

いねのきもち編集室で行った果物に関するアンケート結果によると、「梨は食べてもいい果物である」という回答が84.9%でした。
みなさん、さすがよくご存知です!

約90%が水分で、カリウムや食物繊維、タンパク質分解酵素などを含む梨は、犬の健康維持に役立つ果物のひとつといえます。皮や芯、種をのり除けば、秋のおやつタイムに取り入れてみるのもよいでしょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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