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【獣医師監修】犬はどんなときにパンティングする? 病気の症状の場合は
犬が大きく口を開けて舌を出し、ハアハアと浅く速く呼吸することをパンティングといいます。犬はどんなときにパンティングをするのでしょうか。ここでは、ときには病気の症状の一つとしてみられることもある「犬のパンティング」に注目。そのしくみから病気かどうかの見極め、病気だったときの対処法まで解説します。
この記事の監修

今井 巡 先生
相模原プリモ動物医療センター第2病院院長
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業
●資格:獣医師
●所属:日本大学動物病院整形外科専科
手術実績:664件(2017年医療センター実績)
手術実施症例:各種骨折症例、頸部椎間板ヘルニア(ベントラルスロット)、腰部椎間板ヘルニア、椎体固定他
●主な診療科目:一般診療(外科・内科)、整形外科、神経外科
パンティングとは?

パンティングとは、気温が高いときや運動しているとき、興奮しているときなどに見られ、口を大きく開き、浅く速く呼吸をすることをいいます。
人は体温が上昇すると汗をかき、それが蒸発するときの気化熱で体温を下げています。ところが犬は主な汗腺が足の裏側などにしか存在しないので、汗をかいて体温を下げるということができません。そこで、ハアハアと呼吸することによって唾液を蒸発させ、その気化熱で体温を下げているのです。
危険なパンティングの見分け方。こんなときは要注意

散歩や運動で体温が一時的に上昇し、パンティングによって体温を下げようとするのは、犬にとって自然な行動です。しばらくして体温が下がってくればパンティングも治まります。そのため、危険なパンティングかどうか見分けることが難しい場合もありますが、いつもの「ハアハア」というパンティングにプラスして、次のような症状が見られたら要注意です。
- いつまでたっても治まらない
- 気温が高くなく、運動や興奮をしていないのにパンティングしている
- ハアハアという息づかいの音に雑音が混ざっている
- いつものハアハアより息苦しそうだ
- パンティングと同時に震えが見られる
- 舌の色が悪い(正常時はピンク色なのに紫色や白っぽい色をしている)
- 落ち着きがない
こうした状態が見られたら、早めに動物病院で診察を受けましょう。
真夏でなくても熱中症に注意

気温や湿度の高いところで激しい運動をしたり、屋外で長い時間直射日光を浴びていたり、高温で換気不十分な場所に閉じ込められていたりするときに起こりやすいのが熱中症。真夏の時期を過ぎても、これらの条件に当てはまる場合は注意が必要です。
犬が熱中症になると、ぐったりとして息が荒く全身が熱くなり、ときに尿や便の失禁が見られることがあります。こんなときはすぐに動物病院へ連れて行きましょう。応急処置として全身に冷水を浴びせたり、氷枕などを使ったりするのも有効です。
熱中症は、気温が高い季節の外出はもちろんのこと、涼しい時期でも室内の温度・管理に気をつかった事前の予防策が肝心です。
いぬのきもち WEB MAGAZINE「涼しい時期でも要注意!全国各地、犬の「熱中症」体験談をご紹介」
異常なパンティングで疑われる病気

ここでは、熱中症以外で異常なパンティングが症状の一つとして現れる病気を紹介。もし愛犬が病気かも?と感じたら、迷わず動物病院を受診してください。
心不全
心不全とは、心臓の機能に異常が現れ、心臓から十分な量の血液を送り出すことができなくなる状態。体の中が酸欠状態になってしまいます。初期ではパンティングや空咳が見られ、心雑音も聞こえます。進行すると安静にしていても呼吸が困難になり、チアノーゼ(舌が紫色になる症状)が見られます。愛犬の異常なパンティングが気になるときは、動物病院で診察してもらうようにしましょう。
誤嚥性肺炎
誤嚥(ごえん)とは、飲み物や食べ物が食道ではなく誤って気道に入ってしまうこと。この際、細菌も一緒に誤嚥することにより起こる肺炎を、誤嚥性肺炎といいます。症状として、苦しそうな呼吸や咳のほか、食欲低下や元気がなくなるなどといった様子が見られます。
肺炎の場合、レントゲン撮影で肺に白い影が映ります。抗生物質の投与などで治療しますが、重症化するケースも。呼吸や咳がひどいときはすぐに動物病院で診察してもらいましょう。
分離不安症
暑いわけでもなく、体に異常もないのにパンティングを繰り返す場合は、心の病気である「分離不安症」が疑われます。
この病気は、飼い主さんに対して依存しすぎることで起こります。パンティングのほかに、むやみに吠えたり遠吠えをしたり、毛が抜けて炎症が起きるほど体の一カ所をなめてしまうことがあります。
治療には、愛犬との関わり方を見直し、適度な距離を再構築していくことが大切。動物行動学や行動療法に詳しい獣医師やドッグトレーナーに相談することをおすすめします。他にもホルモン状態や痛みなど、様々な原因でパンティングは起こります。
体温調節のための「パンティング」ですが、場合によっては病気や熱中症が原因となっているおそれも。通常のパンティングと見分けづらいことがあるかもしれませんが、しばらくしても治まらなかったり、呼吸に異音が混じっていたりするときは、すぐに動物病院で受診してくださいね。
参考/「いぬのきもち」WEB MAGAZINE『涼しい時期でも要注意!全国各地、犬の「熱中症」体験談をご紹介』
監修/今井巡先生(相模原プリモ動物医療センター第2病院院長)
文/kate
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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