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【獣医師監修】犬にじゃがいもを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

じゃがいもは犬に与えても大丈夫ですが、与える際には少し注意が必要です。犬の体にとってメリットとなるじゃがいもの栄養素とその働き、与える際の注意点を解説します。また、さつまいも里芋などほかの芋類の与え方やプロが考案したじゃがいもを使った手作りおやつレシピも紹介します。

佐野 忠士 先生

犬にじゃがいもを与えるときは過剰摂取による弊害に要注意

Jupiterimages/gettyimages
じゃがいもは犬が食べてもOKな野菜のひとつです。犬が活動するためのエネルギー源となる炭水化物や抗酸化作用を持つビタミンC、高血圧の予防に役立つカリウム、便通をよくする整腸作用が期待できる食物繊維をはじめ、さまざまな栄養素が含まれています。茹でたり電子レンジで加熱したりするだけでOKという調理のしやすさも魅力のひとつといえます。

普段から完全栄養食のドッグフードを食べて入れば、犬の体に必要ない要素が不足することはほぼありませんが、フードをあまり食べたがらないときや体力が落ちているときなどに栄養補給の目的で食事にプラスするのもよいでしょう。

ただし、犬の体に役立つ栄養素が豊富なだけに、与える量には注意が必要です。炭水化物の過剰摂取はカロリーオーバーにつながり、肥満や糖尿病の心配があります。また、腎臓病や加齢で腎臓の機能が低下していると、余分なカリウムを排出できなくなり、体に深刻な影響を及ぼすかもしれません。じゃがいもを愛犬の健康に役立てたいなら、まず犬にとってプラスになる栄養素とその働き、与える際の注意点をよく理解しておきましょう。

なお、他の野菜と比べてカリウムが多く含まれているため、腎臓病などの持病がある犬にじゃがいもを与える場合は、獣医師に必ず相談してください。

じゃがいものおもな栄養素|炭水化物が約15%

青い布性のトレイから顔を出している茶色のチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
じゃがいも(皮なし・電子レンジ調理)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー78kal
水分78g
タンパク質1.9g
脂質0.1g
炭水化物19g
灰分(無機質)1g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がじゃがいもを食べるメリット|エネルギー補給、利尿作用、高血圧の予防、腸内環境の改善など

舌を出して正面を向いている茶色い巻き毛の小型犬(MIX)
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の健康をキープするのに役立つじゃがいもの栄養素を紹介します。

でんぷん(炭水化物)|エネルギーの源

「犬の3大栄養素」は、炭水化物、タンパク質、脂肪。そのなかでも、犬の生命活動に必要なエネルギー源となるのが炭水化物です。じゃがいもは、可食部の約15%が炭水化物 。愛犬の元気の素であるエネルギーを補給するのに役立つ食材といえます。

ちなみに「炭水化物」は、栄養学上では消化酵素によって分解される「糖質」と、分解されない「繊維質」の総称ですが、動物の3大栄養素のひとつとして炭水化物を指す場合は、エネルギー源としておもに「糖質」のことを指しています。

じゃがいもに多く含まれる糖質は、多糖類の一種である「でんぷん」です。でんぷんは、芋類や穀物に多く含まれているもので、犬の体内で消化酵素によって消化吸収されやすく、速やかにエネルギー源となります。

カリウム|不要な塩分の排出と高血圧の予防

じゃがいもには、カリウムが豊富に含まれています。カリウムは、体内に溜まった余分な塩分を尿と一緒に体外に排出することで血圧をコントロールする作用があるため、高血圧を予防する効果が期待されます。また、神経伝達や筋肉の収縮にもカリウムが深く関与する栄養素なので、不足すると成長が遅れたり、筋肉のマヒ、食欲不振などの症状を引き起こしたりする可能性があります。

ビタミンB群|エネルギー代謝をサポート

ビタミンB群には「ビタミンB1・B2・B6」「ナイアシン」「葉酸」「パントテン酸」などの8種類があり、脂肪や炭水化物、タンパク質、糖の代謝を助け、エネルギーを生み出す働きがあります。そのなかで、じゃがいもに多いのは、ビタミンB1、B6、ナイアシン、パントテン酸です。

ビタミンB1

ビタミンB1は、皮膚や粘膜の健康を維持するのに役立つ栄養素です。ビタミンB1が不足すると、犬の皮膚にトラブルが起こったり、毛艶が悪くなったりする場合があります。また、歩行障害や筋力低下の原因にもなります。

ビタミンB6

ビタミンB6は、アミノ酸の代謝をサポートする栄養素。犬の皮膚や粘膜を健康な状態に保つのにも役立ちます。

ナイアシン

ナイアシンは、ビタミンB3ともいわれ、細胞の代謝促進や肝臓の代謝をサポートする働きがあります。

パントテン酸

ビタミンB5ともいわれるもので、エネルギー代謝にかかわっています。不足すると、犬の皮膚炎などの原因になります。
総合栄養食のドッグフードを主食にしていれば、犬に必要なビタミンB群が不足することはありませんが、ドッグフードを食べたがらないときや、妊娠中の母犬や成長期の子犬などは、じゃがいもなどで栄養を補給してもよいかもしれません。

ビタミンC|抗酸化作用で病気予防と若さの維持

ビタミンCは、みかんやりんご、レモンなどの果物に多く含まれるイメージがあるかもしれませんが、じつは、じゃがいもにもビタミンCが豊富に含まれています。その含有量は、なんとりんごの約7倍(可食部同量比)。一般的にビタミンCは熱に弱く壊れやすいといわれますが、じゃがいものビタミンCはでんぷん質に包まれていることから加熱しても損なわれにくい特徴があります。

ビタミンCは、コラーゲンをつくるのになくてはならない栄養素であり、毛細血管や歯、骨を健康に保つほか、鉄分の吸収や解毒やホルモン代謝のサポート、活性酸素を除去する抗酸化作用などがあります。そうしたさまざまな働きによって愛犬の健康を守り、老化防止にも役立ってくれるお役立ち栄養素といえます。

なお、健康な犬は自分の体内でブドウ糖からビタミンCを合成できるので、「犬のビタミンC摂取は必要ない」と考えられていましたが、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかってきました。健康な犬でも5歳を過ぎれば体内のビタミンC合成能力が低下するとも考えられているので、シニア犬などはビタミンCの補給を図るためにじゃがいもを与えてもよいかもしれません。

食物繊維|整腸作用、とくに便秘の予防と解消

食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。水溶性食物繊維は、腸の中で糖質の吸収をゆるやかにし、食後の血糖値の上昇を穏やかにする働きやコレステロールを排出。一方の不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便のカサを増して腸壁を刺激。スムーズな排便を促す作用があります。

じゃがいもには、これら2つの食物繊維が含まれていますが、水溶性食物繊維より不溶性食物繊維のほうが多いので、どちらかというとスムーズな便通や便秘の解消が期待できそうです。

ただし、腸内で不溶性食物繊維が過剰になると、便が大きくなり過ぎて、かえって排便が困難になる場合があります。愛犬の便秘を予防・解消に期待してじゃがいもを与えるなら、過剰にならないように注意しましょう。

マグネシウム|心臓の正常な動き、丈夫な骨や歯をつくる

じゃがいもには、犬の体に主要必須ミネラルのひとつであるマグネシウムが含まれています。マグネシウムは、心臓の正常な活動や骨や歯をつくるのに必要な栄養素ですが、過剰摂取によって、尿中の濃度が高くなると、「ストルバイト結石」を形成しやすくなる心配があります。尿石症の既往がある犬や、腎臓や肝臓などに問題のある犬には、マグネシウムを多く含む食べ物を与えるのは注意が必要です。

犬がじゃがいもを食べるデメリット|高カリウム血症とじゃがいもの芽の中毒に要注意

顔を白い毛布に付けて横目でこちらを見ているチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

カリウム|腎疾患、心疾患の犬は高カリウム血症に注意

健康な犬の場合、カリウムは犬の体の中で使われたあと、腎臓で濾過され尿として体外に排出されます。しかし、腎臓の機能が低下していると上手に排出ができず、血液の中にカリウムが多量に残ってしまうことがあります。そうした状態を「高カリウム血症」といい、四肢の痺れや筋力低下、嘔吐、不整脈、頻脈などの原因となることがわかっています。

重篤になれば、命にかかわることあるので、血液中のカリウム濃度が上がり過ぎないよう注意しなければなりません。腎臓病を患っている犬や、加齢で腎機能が低下している犬、心臓病のある犬にじゃがいも与える際には、事前に獣医師に相談してください。

ソラニン・チャコニン(カニコン)|有毒物質が中毒の原因に

じゃがいもの芽や緑色の皮部分には、「ソラニン」や「チャコニン(カニコン)」という天然毒素が含まれていて、人では、吐き気や下痢、嘔吐、腹痛、頭痛、めまいを起こす原因になります。犬の場合は、吐き気や体調不良の原因になる可能性があるので、じゃがいもを与える際には芽の部分を取り除くなど注意が必要です。

炭水化物|糖尿病などの犬には血糖値の急上昇に要注意

じゃがいもに豊富に含まれている「でんぷん」。加熱したでんぷんは、犬にとって消化しやすいメリットがある反面、血糖値を上げやすいというデメリットの側面もあります。糖尿病の犬や血糖値の上昇が気になる犬の場合は、じゃがいもを与えないほうが安心でしょう。

タンパク質がアレルギー症状を引き起こすことも

食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応する現象です。じゃがいもにも100gあたり1.8gのタンパク質が含まれているので、じゃがいもでアレルギーを起こすかもしれません。じゃがいもを食べたあとに皮膚を痒がっていたり、下痢や嘔吐などの症状がみられたりした場合は、食物アレルギーかもしれません。じゃがいもを与えるのはやめて、獣医師の診察を受けてください。

なお、かぼちゃにアレルギーがある場合は、じゃがいもでも交差反応(似た構造の別のタンパク質にもアレルギー反応を起こすこと)を起こしやすいといわれているので注意しましょう。

犬にじゃがいもを与えるときの注意ポイント|芽と皮を取り除き、必ず加熱してから与えよう

左うしろを振り向いている茶色い柴犬の顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
愛犬にじゃがいもを与える際に注意したいことを以下に紹介します。

与えてよい部位

ソラニンやチャコニンが含まれている芽の部分はその周辺を含め大きめに切り取り、皮を剥いた中身を与えます。皮が緑色になっている部分も与えてはいけません。皮は消化しにくいので、与えないほうが安心です。

与えるときの適量

犬にじゃがいもを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)24g~48g(中1/3個~中2/3個)
中型(6~15kg)55g~108g(中3/4個~中1.5個)
大型(20~50kg)136g~270g(中2個~中4個)

※数値は、皮なし・電子レンジ調理の場合。避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

じゃがいもの芽の部分や、皮が緑色になっている未成熟の部分には、「ソラニン」「チャコニン」という天然毒素が含まれているので、大きめに切り取りとってください。また、犬は生のでんぷんは消化できないので、必ず茹でる、蒸す、電子レンジで加熱するなど、熱を加えてでんぷんを犬が消化しやすい状態にしてから与えます。じゃがいもの皮も犬が消化しにくいので、剝いてから中身を細かく刻むか、潰してから与えましょう。

人間用の加工食品はNG

ポテトチップス、フライドポテト、ポテトサラダ、コロッケなど、じゃがいもを使った料理やお菓子はたくさんありますが、人間用に作られたものは塩や砂糖、油、バターなどで味付けされたものが多いので、犬には与えないでください。とくに、ポテトサラダやコロッケには、犬に与えてはいけない玉ねぎが含まれている可能性があり要注意です。犬に与えてよいのは、シンプルに加熱したものだけ。味付けは一切不要です。

さつまいもや里芋などは与えて大丈夫?

ピンクの布にくるまって眠っている薄茶色のミニチュア・ダックスフンドの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
じゃがいも以外にも身近なイモ類はありますね。代表的なものについて、犬に与えてよいのか、与えるとしたらどんなことに注意したらよいのかを紹介します。

さつまいも

さつまいもはじゃがいもと同じく犬に与えてもOKです。糖質と食物繊維が豊富で、柔らかくて甘いため好む犬が多いようです。薬やサプリメントを包んで与えるのにも役立つでしょう。与える際は、じゃがいも同様、茹でる、電子レンジで加熱するなど、必ず熱を加えてから。ただし、さつまいもはカロリーが高く、太りやすいので与え過ぎには注意しましょう。

里芋

里芋も犬に与えてもOKの食材です。じゃがいも同様、必ず加熱し、初めて与える場合は少量からスタートしてください。里芋に含まれるネバネバ成分には、粘膜を保護する作用があり、免疫力を高める効果が期待できます。また、肝機能や腎機能を高める効果も期待できるようです。

山芋(とろろいも)

粘り気があり、口のまわりや皮膚につくと山芋に含まれている成分のせいで痒みを感じるケースがあります。犬には与えないようにしましょう。

プロ考案!特別な日におすすめのじゃがいもを使ったおやつレシピ

お誕生日など特別な日におすすめのおやつレシピを紹介します。

じゃがいものオープンサンド

じゃがいものオープンサンド
【材料(直径7cm 2個分)】
じゃがいも(皮、芽、緑色の部分は除く)… 2分の1個
卵 … L1個
プレーンヨーグルト(1~2時間水切りしたもの)… 20g
ミニトマト(半分に切る)… 1個
サニーレタス … 6g
紫キャベツ … 5g
きゅうり … 2cm
パセリ(みじん切り)… 少量
エキストラバージンのオリーブオイル … 小さじ1

【作り方】

  1. 茹で卵を作ります。鍋に卵を入れ、水を加えて火にかけ、沸騰後10分間茹でたら冷水にさらして殻を剝いておきます。

  2. 紫キャベツ、きゅうり、1の茹で卵を5mm角に切り、ヨーグルトと和えてタルタルソースを作ります。

  3. じゃがいもは1.5cm幅の輪切りにし、フライパンを熱してオリーブオイル、じゃがいもを入れて焼きます。竹串がすっと通り、焼き色がついたらOKです。

  4. 3のじゃがいもにレタス、タルタルソース、ミニトマト、 パセリをのせたら完成です!

  5. 生の食材を使っているので作ったら冷蔵庫に入れ、当日中に食べきれるよう作る量は調整しましょう。

デコレーションケーキ

デコレーションケーキ
【材料(作りやすい分量)】
小麦粉(強力粉)… 35g
卵 L2個
プレーンヨーグルト (1~2時間水切りしたもの)… 100g
じゃがいも (皮、芽、緑色の部分は除く)… 170g
黒ねりごま … 適量
かぼちゃパウダー … 適量

【作り方】

  1. じゃがいもを茹でて、裏ごしします。

  2. オーブンは180℃に予熱します。

  3. スポンジ生地を作るために、卵を卵白と卵黄に分け、卵白をツノが立つまで固く泡立てます。そこに卵黄を加え、さらに泡立てます。

  4. 3に小麦粉を加えて切るように混ぜ、型に流し入れます。

  5. 180℃のオーブンに入れて20分間焼きます。

  6. オーブンから取り出し、完全に冷めたら型から取り出してください。

  7. スポンジの上部を平行に切り落とし、全体にヨーグルトを塗ります。

  8. 1のじゃがいものうち、3~5gは黒ねりごまと混ぜて犬の目鼻形に、50gはかぼちゃパウダーと混ぜて骨型に成形しましょう。

  9. 残りのじゃがいもを犬の形に整えて飾り、スキムミルク(分量外)を水で溶いて爪楊枝で目の上に載せ、アイキャッチを作ったら完成です。


かぼちゃパウダーは、着色料や砂糖などを含まないものを選んでください。また、大型犬でもホールごとでは多いので、与え過ぎないよう注意しましょう。冷凍保存の期間は約2週間です。

犬にじゃがいもを与えるなら必ず加熱。ただし腎臓病や糖尿病の犬は要注意

じゃがいもは、有毒物質が含まれている芽の部分をきちんと取り除いて加熱すれば、犬に与えても大丈夫です。ただし、適量のドッグフードを食べていれば、基本的には犬の体に必要な栄養素が不足することはないので、栄養補給の目的でじゃがいもを与えたい場合は、1日の摂取カロリーをオーバーしないようドッグフードの量を調整してください。また、じゃがいもは腎臓病や糖尿病の心配がある犬には与えないほうが安心な場合も。迷う場合は、与える前に獣医師に相談してみましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 准教授 )
参考/「いぬのきもち」セレクション『愛犬と季節のイベントを一年中楽しめる!手づくりレシピBOOK 』
(監修:高円寺アニマルクリニック 院長 高崎一哉先生、レシピ考案・料理制作・熱量計算:ペット栄養管理士 ペット東洋医学アドバイザー いちかわあやこ先生)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのいぬのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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