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【獣医師監修】犬にバナナを与えても大丈夫。バナナを食べるメリットと与え方を解説

バナナは、人だけでなく犬の体にもよい栄養素を含む果物です。パワーの源になる糖分、腸の働きをよくする食物繊維のほかに、ビタミンやミネラルも豊富で、犬の健康維持に役立つと考えられます。犬にバナナを与えるメリットと与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬は適量ならバナナを食べても大丈夫

バナナを食べるイングリッシュブルドッグ
claudiio Doenitz/gettyimages
季節を問わず、一年中手頃な値段で手に入るバナナ。忙しい日の朝ごはんや運動中のエネルギー補給に食べている人が多いようです。犬の体によくない有毒成分は含まれていないので、犬に与えても基本的には問題はありません。

バナナは、さまざまな栄養素がバランスよく含まれている栄養価の高い果物として知られています。エネルギーの源となる糖分、腸の働きをよくする食物繊維のほかに、タンパク質、各種のビタミン・ミネラル類も豊富。主食で総合栄養食を与えていれば、基本的には犬の体に必要な栄養素が不足する心配はありませんが、甘いものを好む犬のおやつに活用して栄養補給を図るのもよいでしょう。

一方で、バナナは栄養価が高い割に低カロリーとはいわれるものの、果物のなかではカロリーが高め。糖分が多いので、与え過ぎは肥満や糖尿病などのリスクにつながります。また、バナナで稀にアレルギーを発症する犬もいるので、与える際には注意が必要です。

バナナのおもな栄養素|水分は少なめ、炭水化物が2割強

バナナボートの上に横たわり、気持ちよさそうに寝ている茶色の柴犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
バナナに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー93kcal
水分75.4g
タンパク質1.1g
脂質0.2g
炭水化物22.5g
灰分(無機質)0.8g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がバナナを食べるメリット|効率よくエネルギー補給、多彩な栄養素で健康をキープ

バナナのおもちゃの尻尾を齧って、横目使いでちらっとカメラを見ているチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
バナナには多種多様な栄養素が含まれています。代表的なものを紹介します。

糖類|持続的なエネルギー補給

先の表で紹介したように、バナナ100gあたりに含まれる炭水化物の量は22.5g。そのうち食物繊維の1.1gを除いた分、すなわち21.4gが糖質量になります。この量は、同じ果物の可食部100gと比べてもトップクラスの多さです。

糖質は犬が生きていくために必要なエネルギー源となる大切なものです。しかも、バナナには、デンプン、ブドウ糖、ショ糖、果糖といったさまざまな糖質が含まれています。それらはすぐに体内でエネルギーに変換されるものもあれば、ゆっくり変換されるものもあるので、持続的に犬の体にエネルギーを補給することができます。つまり、元気な状態を長時間キープするのに役立つのです。

アスリートが試合や競技中にバナナを食べているのを目にすることがありますが、そうしたバナナの持続的なエネルギー補給効果を活かしているのですね。

ただし、糖分が多いバナナを愛犬に与えるときは、過剰摂取にならないよう注意が必要です。主食の量と合わせて1日の必要摂取総カロリーを上回らないよう気をつけましょう。

食物繊維|便秘の予防や解消

食物繊維には、水に溶けやすい性質の「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい性質の「不溶性食物繊維」の2種類があります。前者は、食後の血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールを低下させたりする働きがあり、後者は便のカサを増して腸を刺激し、便通を促す働きがあります。

バナナには、これら2種類の食物繊維が含まれているので、腸内環境を正常に保ち、便通をスムーズにする効果が期待されます。ただし、バナナには不溶性食物繊維が水溶性食物繊維の10倍含まれているので、多量に摂取すると便が大きくなり過ぎて、かえって便が出にくくなる可能性があります。

愛犬の便秘の予防や便秘の解消を期待してバナナを与えるなら、与え過ぎないように気をつけてください。

ビタミン|体の調子を整え、健康をキープ

バナナには、ビタミンB6、B1、B2、ビタミンC、葉酸などさまざまなビタミンが含まれています。それぞれの働きは以下の通りです。

◆ビタミンB6
ビタミンB6は、アミノ酸の代謝をサポートする働きをもっています。犬の皮膚や粘膜を健康な状態に保つのにも役立つ栄養素です。

◆ビタミンB1
犬の皮膚や粘膜の健康をキープする働きをもつのがビタミンB1。ビタミンB1が不足すると、皮膚にトラブルが起こったり、毛艶が悪くなったりすることがあります。また、歩行障害や筋力の低下を起こす可能性もあります。

◆ビタミンB2
ビタミンB2には、糖質をエネルギーに変換する働きがあります。犬の健やかな成長、被毛や皮膚の健康を保つのにも役立ちます。

◆ビタミンC
ビタミンCは、犬の皮膚や粘膜を健康に保つのに役立つ栄養素です。また、強い抗酸化作用があるので、病気の予防やアンチエイジングにも役立つと考えられます。
犬は、もともと体内でビタミンCを合成できるので、食べ物などからの補給は必要ないと考えられてきましたが、最近の研究結果から犬にもビタミンC不足の可能性があることがわかりました。加齢によってビタミンC合成機能が低下することも考えられるので、シニア犬などはバナナからビタミンCを補ってもよいかもしれません。

◆葉酸
葉酸はビタミンB群のひとつで、DNAの合成に関わっています。妊娠中の母犬や、成長期の犬にはとくに必要であると考えられます。また、葉酸が不足すると、貧血や口内炎の原因になります。

ミネラル|高血圧の予防、丈夫な骨のキープなど

バナナは、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルも豊富に含んでいます。おもなミネラルの働きは以下の通りです。

◆カリウム
バナナはカリウムの含有量が比較的高い果物のひとつです。
カリウムにはナトリウムとバランスをとりながら、細胞を正常な状態に保ち、体液の浸透圧を調整する働きがあります。また、体内の余分なナトリウム、つまり塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧を下げる役割も果たしています。

ただし、腎臓病の犬や腎機能が低下している犬にカリウムの多いバナナを与えるのは、注意が必要です。腎臓の働きが悪くなると、体内で不要になったカリウムを尿とし排泄する能力が落ち、血液の中のカリウム濃度が高くなる「高カリウム血症」になる可能性があります。高カリウム血症は、四肢の痺れや筋力の低下、不整脈や頻脈の原因となるので、腎臓病や心機能低下がある犬にはバナナは与えないほうが安心です。

なお、カリウムなどの体への影響については、それぞれの個体で大きく異なってきます。定期的な血液検査、健康診断でかかりつけの獣医師に相談するようにしてください。

◆カルシウム
あまりイメージがないかもしれませんが、バナナにはカルシウムが含まれています。
カルシウムは、筋肉をスムーズに動かすのに役立つ栄養素です。また、「リン」とバランスをとって骨や歯の健康を保つ働きもあります。
犬は体内でカルシウムを合成することができないため、食べ物から摂取する必要があります。ふだんから適量のドッグフード(総合栄養食)を主食として与えていれば、カルシウムが不足することはありませんが、手作りのごはんを与えている場合は、不足することがあるかもしれません。バナナでカルシウム不足を補うのもよいでしょう。

ただし、カルシウムはシュウ酸と結びついて「シュウ酸カルシウム結晶」を作り、尿路結石症を引き起こすことがあるので、尿路結石の心配がある犬にバナナを与えるときは、注意してください。

◆マグネシウム
マグネシウムは、丈夫な骨をキープしたり、神経の伝達や筋収縮をスムーズにしたりするミネラルです。マグネシウムは、魚や大豆に多く含まれていますが、果物のなかではバナナに多く含まれています。カルシウムと共にバランスよく摂取することで、骨の健康をキープできるので、その両方が含まれているバナナは望ましい食べ物といえるでしょう。

ただし、マグネシウムは多量に摂取すると「ストルバイト結石」を形成しやすくなるといわれています。尿石症の既往がある犬にマグネシウムを多く含むバナナを与えるときは注意が必要です。

ポリフェノール|歯周病の予防

バナナはポリフェノールの含有量も多い果物で、熟して「ジュガースポット」といわれる茶色い斑点が現れたバナナほど、ポリフェノールを多く含んでいます。
ポリフェノールは、歯周病の予防が期待できる栄養素です。抗酸化作用もあるので、とくにシニア犬に摂取してもらいたい成分です。

ただし、バナナのような繊維の柔らかい食べ物は歯の隙間に詰まりやすく、歯周病の原因になりやすいものです。愛犬のおやつにバナナを与えたあとは、歯磨きを忘れないようにしましょう。

バナナが癌予防に効くってホント?

体の外から侵入しようとするウイルスや細菌、または体の中で発生するがん細胞を無害化する抵抗力を「免疫力」といいます。血液中の白血球は、免疫力を発揮する「免疫細胞」といわれていますが、バナナには白血球の働きを促進する効果が期待されています。
しかし、これはあくまで人間の体を想定した研究結果であって、同様の効果が犬の体にもあてはまるかどうかは明らかになっていません。

バナナがてんかん予防に効くってホント?

脳の神経細胞に突然発生する激しい興奮によって、発作が起こる「てんかん」。頭部の外傷や脳梗塞などが原因になって起こるものや、感染・炎症によって起こるもの、そして「これ」といった原因がわからず突発的に発作を繰り返すものがあります。

WEB上では、「犬のてんかんにケトン食事療法が有効」という情報がありますが、昔から行われているてんかんの食事療法「ケトン食事療法」は、炭水化物の摂取量を極端に減らして脂質を多めにすることで、ケトン体という物資を体内に増やし、それによって痙攣発作を抑えるものです。この「ケトン食事療法」では、GI値(食品の血糖値上昇指数)が低いバナナの摂取が推奨されているので、犬のてんかんにもバナナがよいという期待があるのかもしれません。しかし、この療法自体、人に対する民間療法的ものであること、さらに現段階では犬に同様の効果ができるかは明らかになっておらず、推奨できるものではありません。

犬にバナナを与えるときの注意ポイント|必ず皮を剥き、小さくカットするか潰して

バナナベットにすっぽりはまり、顔をこちらに向けている薄茶色のカニーンヘン・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬にバナナを与えるときは、以下の点に注意してください。

与えてよい部位

皮は固く消化が悪いので、必ず剥いてから与えます。筋のような繊管束も消化がよくないので、取り除いてあげましょう。

与えるときの適量

犬にバナナを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)20g~40g(大1/6本~大1/3本)
中型(6~15kg)46g~92g(大1/3本~大3/4本)
大型(20~50kg)114g~226g(大1本~大1・4/5本)

※バナナ大1本200g(可食部約120g)として算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

皮を剥いてそのまま愛犬に差し出したくなるかもしれませんが、大きな塊のまま飲み込むと、喉に詰まったり食べ過ぎたりする可能性があるので、適量を小さくカットしてから与えます。子犬やシニア犬には、潰して与えるのもよいでしょう。
バナナを冷蔵庫で保管していることはあまりないと思いますが、冷たいバナナは下痢の原因になるので、常温のバナナを用いるようにしてください。

バナナの加工食品は与えてよい?

基本的に、人間用に加工された製品は愛犬に与えないほうがよいとされていますが、原材料や製法によっては与えて大丈夫な場合があります。

◆バナナジュース
砂糖無添加のものであればOK。他の果物が混ざっているミックスジュースなどはNGです。

◆バナナヨーグルト
砂糖無添加のものであればOK。他の果物が混ざっているもの、添加物が多いものはNGです。

◆バナナチップ
シンプルに乾燥させただけのものならOK。砂糖を添加していたり油で揚げているものはNGです。

◆バナナケーキ
糖分が多いのでNGです。

バナナアレルギーに注意!

アレルギーは、体内の免疫機能がタンパク質に対して異常に反応することで起こるものです。バナナにはタンパク質が含まれているので、アレルギーを引き起こす可能性はゼロではありません。バナナを食べたあとで皮膚を痒がったり、下痢や嘔吐を起こしたりしたときは、バナナアレルギーかもしれません。すみやかに獣医師の診察を受けましょう。

栄養価の高いバナナは犬のおやつにおすすめ。ただし、与え過ぎには注意!

さまざまな栄養素を含む栄養価の高いバナナ。健康な体をキープし、病気を予防するのに役立つことが期待されることから、おやつに取り入れてみるのもよいでしょう。
いくら栄養価が高いからといっても、バナナはあくまでおやつ。糖分が多くカロリーが高めの果物なので、バナナをおやつで与るのは、1日の必要摂取カロリーの1割程度に。バナナを与えた分の主食を減らしてカロリーオーバーしないよう注意しましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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