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【獣医師監修】犬にさつまいも(サツマイモ)を与えても大丈夫。さつまいもを食べるメリットと与え方を解説

秋の味覚さつまいもは、犬に与えても大丈夫な野菜のひとつです。じゃがいもの仲間というイメージがあるかもしれませんが、じゃがいもはナス科、さつまいもはヒルガオ科。それぞれに含まれる栄養素は違います。犬がさつまいもを食べるメリットと与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬は適量ならさつまいもを食べても大丈夫

サーモンのグリル
zepp1969/gettyimages
焼き芋やふかし芋など、ただ加熱しただけで甘みとホクホクとした食感を楽しめる、さつまいも。近頃では、焼き芋専門店も出現していて、水分が多く、蜜がしたたるようなねっとり系の品種も人気のようです。
さつまいもには、中毒を起こすような有害な成分は含まれていないので、犬に与えても大丈夫です。実際、市販されている犬のおやつやドッグカフェのメニューにも、さつまいもを使ったものが多いようです。

さつまいもには、犬が体を動かすのに必要なエネルギー源となる炭水化物や腸内環境を整える食物繊維をはじめ、各種のビタミン、ミネラルなどが多く含まれています。さらに、茹でたり、電子レンジで加熱したりするだけでOKという調理の手軽さも魅力。

ただし、栄養価が高い分、与える量には注意が必要です。普段の食事にプラスして与えてしまうと、1日に食事で摂取すべきカロリーをオーバーしてしまい、さらには栄養のバランスも崩れてしまいます。愛犬の健康をキープするためには、さつまいもの栄養価を正しく理解し、カロリーオーバーや特定の栄養素だけ過剰摂取にならないよう、主食とのバランスを考えて取り入れることが大切です。

さつまいものおもな栄養素|炭水化物が約30%、でんぷん、食物繊維が豊富

差し出された焼き芋にかじりついているジャック・ラッセル・テリア
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
さつまいもに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー126kal
水分65.6g
タンパク質1.2g
脂質0.2g
炭水化物31.9g
灰分(無機質)1.0g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がさつまいもを食べるメリット|エネルギー補給、下痢や便秘の予防、高血圧の予防など

枯れ草の上に腹ばいになり、鼻先に置かれた焼き芋を見つめているラブラドール・レトリーバー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
さつまいもに含まれる栄養素のうち、犬の体に役立つおもなものを紹介します。

でんぷん(炭水化物)|エネルギーの供給源

犬が生きていくのに必要な3大栄養素は、炭水化物、タンパク質、脂肪。なかでも、炭水化物は犬の生命活動に必要なエネルギー源となる大切なものです。さつまいもは、可食部の約30%が炭水化物なので、犬のエネルギー補給に役立つ食材といえます。

ちなみに、栄養学上「炭水化物」は、消化酵素によって分解される「糖質」と、分解されない「繊維質」の総称として使われていますが、動物の3大栄養素のひとつとして炭水化物を挙げるときは、エネルギー源としての意味合いからおもに糖質のことを指しています。さつまいもに多く含まれる糖質は、多糖類の一種である「でんぷん」です。でんぷんは、芋類や穀物に多く含まれているもので、体の中に取り込まれると、消化酵素によって消化吸収され、エネルギー源となります。

ただし、使いきれなかった糖質は脂肪となって体内に蓄積していくので、与える量には注意が必要です。とくに、さつまいもを食べたあとは血糖値が上がりやすくなるので、糖尿病を患っている犬や体重を制限したい犬には与えない、またはごく少量に止めるようにしてください。

食物繊維|不溶性食物繊維が豊富。スムーズな排便と便秘の解消

食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。水溶性食物繊維は、腸の中で糖質の吸収をゆるやかにし、食後の血糖値の上昇を穏やかにする働きやコレステロールを排出。一方の不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便のカサを増して腸壁を刺激。スムーズな排便を促す作用があります。

さつまいもには、これら2つの食物繊維が含まれていますが、不溶性食物繊維のほうが水溶性の約3倍あるので、便秘の解消やスムーズな便通が期待できそうです。

ただし、不溶性食物繊維を過剰に摂取すると、腸の中で便が大きく膨らみ過ぎて、かえって便が出にくくなる場合があります。愛犬が便秘気味だからといって、多量には与えないようにしましょう。

ヤラピン|整腸作用と便秘の予防

さつまいもを切ったときに、断面から滲み出てくる白い液が「ヤラピン」という成分です。ヤラピンには、腸のぜん動運動を促す働きがあり、熱を加えても減少しにくく、食物繊維との相乗効果で整腸作用と便秘の予防が期待できます。

ビタミン|抗酸化作用で病気予防と老化防止、免疫力アップにも期待

さつまいもには、各種のビタミンも含まれています。代表的なのが以下の3つです。

ビタミンC

ビタミンCというと、みかんやりんご、レモンなど酸味のある果物に多いイメージがあるかもしれませんが、じつは、さつまいもにもビタミンCが多く含まれています。その含有量は、なんとりんごの約7倍(可食部同量比)。一般的にビタミンCは熱に弱い性質がありますが、さつまいものビタミンCはでんぷん質に包まれているので、蒸したり焼いたりといった加熱調理をしても損なわれにくい性質があります。

ビタミンCは、タンパク質からコラーゲンを生成するのをサポートして毛細血管や歯、骨を健康に保つほか、鉄分の吸収促進や解毒やホルモン代謝のサポート、抗酸化作用などがあり、愛犬の健康維持と老化防止に役立ってくれます。

なお、健康な犬は自分の体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができるため、従来「犬のビタミンC摂取は必要ない」と考えられていました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかってきました。健康な犬でも5歳を過ぎれば体内のビタミンC合成能力が低下するとも考えられているので、シニア犬などはさつまいもなどでビタミンCの補給を図ってもよいでしょう。

ビタミンB1

さつまいもには「チアミン」と呼ばれるビタミンB1 が含まれています。チアミンには、糖質を代謝してエネルギーに変える働きがあるので、疲労回復や筋肉の機能を正常に保つのに役立つと考えられます。

ビタミンE

細胞を覆っている細胞膜が酸化すると、皮膚病や腎臓病、消化器疾患などの病気になりやすくなります。ビタミンEには、細胞膜にダメージを与える活性酸素を除去する抗酸化作用があるので、愛犬を生活習慣病や加齢によって起こる病気から守ってくれることが期待されます。

なお、ビタミンEは、体内で細胞膜を守るために働いたあと、「ビタミンEラジカル」に変わります。これは、体にとってよくない成分ですが、体内にビタミンCがあれば、また元のビタミンEに戻ることができます。さつまいもにはビタミンEもビタミンCも含まれているので、相互作用により、よりよい効果が期待できるでしょう。

カリウム|不要な塩分の排出と高血圧の予防

さつまいもにはミネラルのひとつであるカリウムが多く含まれています。カリウムは、体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧が高くなるのを防ぐ働きがあります。また、カリウムは神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっているので、過不足なく摂取することが大切です。

ただし、加齢や腎臓病で腎臓の機能が低下していると、余分なカリウムを上手に体外に排出できなくなり、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になる心配があります。高カリウム血症は、痙攣や頻脈、不整脈などを引き起こす原因になり、重篤になると命に関わることも。シニア犬や腎臓病のある犬、心機能が低下している犬にさつまいもを与えるときは注意が必要です。

犬にさつまいもを与えるときの注意ポイント|皮を剥き、必ず加熱してから与える

差し出された焼き芋を、舌を出して舐めようとしているウェルシュ・コーギー・ペンブローク
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬にさつまいもを与える場合の調理法や与える際の注意点を紹介します。

与えてよい部位

さつまいもの皮が繊維質が固いので、除いたほうが安心です。

与えるときの適量

犬にさつまいもを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)15g~30g(1/3切~3/4切)
中型(6~15kg)34g~68g(3/4切~1.5切)
大型(20~50kg)84~167g(2切~4切)

※さつまいも生1切=1.5cm厚さ、40gとして算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理のしかた

生のさつまいもは固く、消化しされにくいため、下痢や嘔吐などの症状を引き起こしかねません。茹でたり蒸したりしてしっかり加熱し、消化されやすい状態にしてから与えましょう。加熱することでさつまいもの甘みが増すので、甘いものを好む犬には喜ばれるでしょう。与える際は、愛犬が火傷しないように十分に冷ましてから、喉につまらせない程度の大きさに切って与えてください。

なお、さつまいもにはシュウ酸が含まれています。シュウ酸はカルシウムと結合することで膀胱結石(シュウ酸カルシウム結石)を引き起こすことがあります。皮を剥いて小さく刻んで茹でれば、水に溶けやすい性質のシュウ酸やカリウムを減らすことができますが、すべて除去できるわけではありません。また、焼き芋や蒸かし芋(電子レンジによる加熱も同様)では、シュウ酸やカリウムを減らすことはできません。
結石を患ったことのある犬や腎臓病でカリウムの除去がうまくできなくなっている犬には、念のため与えないほうがよいでしょう。

焼き芋や干し芋を与えても大丈夫?

焼き芋はじっくり時間をかけて加熱してあるため、蒸したさつまいもより水分が減って糖度が高まり、同分量当たりのカロリーが高くなっています。干し芋はさらに水分が減り、蒸したさつまいもの約2倍(可食部同量比)のカロリーがあります。保存料や甘味料などの添加物を使っていない干し芋なら愛犬に与えても安心ですが、カロリーオーバーにならないよう与える量には注意してください。

また、さつまいもを使った人間用の加工食品は添加物を使っているものが多く、スイーツは砂糖を加えてあるので、愛犬には与えないようにしましょう。

まれにタンパク質がアレルギー症状を引き起こすことも

さつまいもはアレルギー源にはなりにくい食材といわれていますが、ごく少量とはいえ、タンパク質を含む食べ物です。食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応する現象なので、まれにさつまいもでアレルギーを起こす犬も。最初はまず少量から与えてみて、皮膚の痒みや湿疹、下痢、嘔吐などが起こらないことを確認してから、その後も与えるようにしましょう。

さつまいもを使った市販の犬のおやつ

さつまいもを原料としている犬用のおやつも市販されています。ぜひチェックしてみてください。

犬用おやつ スティックタイプ

さつまいもを丸ごと(皮なし)使ったスティック状のおやつです。保存料や着色料などの添加物は使われていません。

犬用おやつ さつまいも入りボーロ

さつまいもに加え、馬鈴薯(ばれいしょ)でんぷん、砂糖、鶏卵など国産の材料を使い、国内の工場で作られたボーロです。

犬用おやつ 四角いおいもちゃん

静岡県遠州地方で栽培されたさつまいもを自社で干し芋に加工し、手でちぎりやすい大きさにしたさつまいも100%の犬用おやつです。保存料・甘味料・香料などの添加物は使われていません。

さつまいもを愛犬のおやつに取り入れるなら、カロリーに注意して

さつまいもは栄養価が高く、調理も簡単なので、愛犬の食事のトッピングやおやつに取り入れやすい食材といえます。甘みは犬が好むので、食欲が落ちてエネルギー不足が心配されるときに活用してみるのもよいかもしれません。ただし、主食と合わせて1日の適正な摂取カロリーを超えないように注意してください。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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