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獣医師監修|犬の血便の原因 病院へ行くべき症状や対処法を解説
愛犬が血便をしたら、まずは落ち着いて対処し、動物病院を受診することが大切です。そこで今回は、犬に血便の症状が見られたときの対処法や、血便の種類、原因についてご紹介します。病院での検査・治療法や予防法も解説するので参考にしてください。
犬が血便になったときの対処法

愛犬に血便の症状が見られたら、早めに対処することが重要です。まずは、動物病院へ行く前にしておきたい、血便が出たときの対処法や注意点についてご紹介します。
便の状態をチェックする
診察の手助けにもなるので、愛犬の血便の様子をしっかりと確認しましょう。チェックする際は、以下の点に注意してみてください。
【血便のチェックリスト】
◆便の色を確認する
└赤い血便/黒い血便/どちらともいえない
◆便の外側に付着しているものを確認する
└鮮血/ゼリー状の粘液/何もついていない(血液が便の中に混じっている)
◆便の形状を確認する
└下痢・水っぽい/軟便/硬い/普通
◆血便の回数や頻度を確認する
└1日の回数は普通だが、数日続いている/今日初めて見られたが、1日の頻度が高い
愛犬の様子をチェックする
血便の状態を確認するのとともに行いたいのが、愛犬の状態チェックです。下記のような症状が見られる場合は、たとえ1回の血便であっても後回しにせず、すぐに動物病院を受診しましょう。
・嘔吐や発熱の症状がある
・元気がなく、ぐったりとしている
・食欲が落ちている・ご飯を食べない
また、ここ数日で何か変わった食べ物を与えた場合も要注意です。すぐに動物病院へ行き、与えた時間、ものや量などを伝えて診てもらってください。
子犬や老犬も要注意!至急動物病院へ
子犬や老犬に血便の症状が見られるときは、事態が深刻であることが多いです。また、体力や抵抗力がないため、短時間で症状が進行しやすく、回復するまでに時間がかかることも。子犬や老犬が血便をしたときは、至急動物病院へ連れて行き、診察を受けましょう。
血便で動物病院を受診するときは、便を捨てずにビニール袋などに入れて持参すると、診察のヒントになることがあります。捨てずに持っていくようにしましょう。
そもそも犬の血便とは

犬の血便は大きく分けて2種類
血便とは、何らかの原因によって便(ウンチ)に血が混じったり、付着したりしている状態のこと。血便と聞くと、赤い色をした便を思い浮かべるかもしれませんが、血便には「赤い血便」と「黒い血便」、大きく分けて2種類あります。
赤い血便
赤い血便が出るときは、小腸や結腸、大腸などの下部消化管や、肛門からの出血が疑われます。これは、下部消化管からの出血だと、便に付着してから体外へ排出されるまでの間が短く、血液が消化などの影響をほとんど受けないためです。
赤い血便の場合は、便の周りに鮮血が付着しているだけではなく、便に鮮血が混じっているものや、水様性のものもあり、それぞれ重症度が異なります。
【症例写真】肛門付近での炎症が原因と考えられる血便

【症例写真】腸のトラブルが原因と考えられる血便(鮮血便)

黒い血便(タール状・タール便)
黒い血便が出る場合は、胃や食道、十二指腸などの上部消化管からの出血が疑われます。これは、上部消化管から出血すると、血液が消化管を通る際に、胃酸や消化酵素の影響を受けるなどして黒っぽく変色するためです。
ただし、血液の多いレバー肉を食べた際にも、一時的に黒色の便が出ることがあります。
犬の血便の主な原因

ではここで、血便を引き起こす主な原因について見ていきましょう。
肛門周辺の病気
血便の原因となる肛門周辺の病気としては、「肛門狭窄」「会陰ヘルニア」「直腸脱」などが挙げられます。また、便が硬めの場合は、人でいう「痔」になっているケースも。
直腸の悪性腫瘍(ガン)
大腸ポリープがガン化することなどにより発症するといわれています。鮮血が混じった便が出るため、比較的早期発見しやすいですが、出血がひどいと貧血を起こすことがあります。下痢や嘔吐などの症状も見られるので、すぐに動物病院を受診しましょう。
大腸炎
大腸の粘膜が炎症を起こし、下痢や軟便、ゼリー状の粘液が便に付着するなどの症状が見られます。炎症が進んで潰瘍ができると血液が混ざり、血便になることも。排便回数が増え、便が出ないのに何度もトイレに行くといった症状が見られます。
誤飲・誤食
犬が異物を飲み込んでしまった場合にも、異物によって消化管の粘膜が傷つけられたり炎症を起こしたりして出血し、血便の症状が見られることがあります。
中毒症状
玉ねぎや長ねぎなどのねぎ類は、犬に与えてはいけない食材です。万が一口にした場合、量によっては中毒症状を起こし、血便や血尿、下痢、嘔吐、けいれんなどの症状が見られます。症状の出方には個体差がありますが、時間が経つにつれて悪化することが多く、場合によっては死に至るケースもあるので、大変危険です。
ウイルス感染
水様性の血便とともに嘔吐の症状があるときは、パルボウイルスなどの感染症にかかっている危険性があります。パルボウイルス感染症は子犬に多く見られ、嘔吐や下痢、脱水症状、発熱、腹痛、食欲不振などの症状が見られます。致死率が高いため、至急動物病院を受診してください。
ストレス
ストレスが原因で血便や下痢などの症状が出ることもあります。この場合、便の量が少なくなったり、頻度が増えたりするほか、ゼリー状の粘液が付着していることもあります。
胃十二指腸潰瘍
胃や十二指腸に潰瘍ができると、黒い血便のほか、嘔吐や下痢、上部腹痛、食欲不振、元気消失などの症状が見られます。これには、さまざまな原因が考えられますが、薬の副作用によって発症するケースもあるようです。ほかにも、胃や十二指腸に腫瘍やポリープができた場合も、血便の症状が現れることがあります。
犬の血便の検査・治療法

犬が血便になると、以下のような検査や治療を行うことがあります。
血便の検査方法
検査の内容は、症状によって異なります。検便だけの場合もあれば、血液検査やレントゲン検査、エコー検査など、症状によって必要になる検査が増える場合もあります。獣医師の説明をよく聞き、しっかりと理解することが大切です。
血便の治療法
血便の原因に基づいて治療を行います。例えば、原因が寄生虫であれば駆虫薬などで治療し、細菌やウイルス感染であれば抗生物質などを使って治療します。ストレスが原因なら、整腸剤や腸の炎症を抑える薬などを使用することもあるでしょう。
一方、症状が重い場合は、入院や手術が必要になります。犬の体力が落ちているときは、点滴をして回復を図るなどの治療が必要です。
自宅での注意点
獣医師の指示に従って、食事や薬を与えましょう。血便の症状が見られなくなったからと、飼い主さんの判断で薬をやめるのはNGです。また、犬が快適に過ごせるように空調管理を徹底し、元気があって運動に制限がない場合は、ストレスをためないように散歩に連れて行ってあげることも大切です。
犬の血便の予防法

バランスのよい食事とストレスフリーな生活を心がける
血便を予防するためにも、栄養バランスに優れた総合栄養食のドッグフードと新鮮な水を与えて、免疫力を高めましょう。水分不足は便が硬くなる原因でもあるので、注意してください。また、ストレスをためないように、散歩や遊びの時間を毎日とってあげることも大切です。
動物病院で定期健診を受ける
そして、動物病院での定期健診は、血便を引き起こす病気など、さまざまな病気の早期発見につながります。成犬は年に1回、シニア犬は半年に1回を目安に定期健診を受けるようにし、予防接種やノミ・ダニ、フィラリアの予防も定期的に行いましょう。
便は健康のバロメーターです。日頃から愛犬の便の状態を観察するようにしましょう。
参考/「いぬのきもち」2016年11月号『食べ物の通り道をたどれば、内臓の病気がよくわかる 犬のウンチ・オシッコができるまで』(監修:ノヤ動物病院院長 野矢雅彦先生)
「いぬのきもち」2017年6月号『危険な硬さ・色がわかる2大スケールつき 愛犬のウンチで健康チェック!』(監修:東京動物医療センター副院長 南直秀先生)
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/hasebe
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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