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獣医師監修|犬のうんちが黒い?犬の血便の見極め方と病院のかかり方
愛犬が血便をしたら、まずは落ち着いて対処し、早めに動物病院を受診することが大切です。そこで今回は、犬の血便の見極め方や血便の症状が見られたときの対処法、原因についてご紹介します。病院での検査・治療法や予防法も解説するので参考にしてください。

いぬのきもち獣医師相談室
そもそも犬の血便とはどんな見た目か
愛犬に血便の症状が見られたら、早めに対処しましょう。まずは、血便がどのように見えるかを知っておき、血便に早期に気が付くことが重要です。
赤くなくても血便のことも 犬の血便は大きく分けて2種類
血便とは、何らかの原因によって食べたものの通り道から血が出ることで、便(ウンチ)に血が混じったり、血が付着したりしている状態のこと。血便と聞くと赤い色を思い浮かべるかもしれませんが、血が出ている場所から体の外に出てくるまでに時間がかかると、血液が黒色になっています。そのため、便と一緒に出てきた血液の色により「赤い血便」と「黒い血便」、大きく2種類に分けられます。
赤い血便
赤い血便は、すぐに血であるとわかるような赤色の血液が便のまわりに付着している、または便に混じっているものです。赤い血便で疑われるのは大腸など肛門に比較的近い消化管や、肛門からの出血です。血液が赤いまま出てくるのは、血液が便に付着してから体外へ排出されるまでの間が短いために消化などの影響をほとんど受けないからです。
【症例写真】肛門付近での炎症が原因と考えられる血便
【症例写真】腸のトラブルが原因と考えられる血便(鮮血便)
黒い血便(タール便)
黒い血便はタール便とも表現される、粘り気がある黒っぽい便を指します。黒い血便で疑われるのは、胃、十二指腸などの上部消化管からの出血です。上部消化管での出血では、滑液が消化管を通る際に胃酸や消化酵素の影響を受け、便として出てくるまでに黒っぽく変色するためです。
血便を見つけたときの対処法
血便を見つけた際、動物病院へ行く前にできる対処法や注意点についてご紹介します。
便の状態をチェックし記録しておく
診察の手助けにもなるので、愛犬の血便の様子をしっかりと確認しましょう。チェックする際は、以下の点に注意してみてください。
また、便を取っておいたり写真に残しておいたりすると、動物病院での診察の際によいヒントとなります。血便と思われる便はなるべく捨てずに、丸ごとビニール袋などに入れてなるべく新鮮なうちに動物病院に持っていくようにしましょう。
【血便を見つけたときのチェックリスト】
◆便の色をチェックする
└赤い血便/黒い血便/どちらともいえない
◆便の外側に付着しているものをチェックする
└赤い血液/ゼリー状の粘液/何もついていない(血液が便の中に混じっている)
◆便の形状をチェックする
└下痢・水っぽい/軟便/硬い/普通
◆血便の回数や頻度をチェックする
└1日の回数は普通だが、数日続いている/今日初めて見られたが、1日の頻度が高い
◆排便時の様子に変化がないかチェックする
└排便の姿勢を頻繁にとるが量は出ていない/排便時に痛みがあるような行動をとっている/排便のコントロールができていない
愛犬の様子を観察する
血便の状態を確認すると同時に、愛犬の状態を観察することも大切です。下記のような症状が見られる場合は、たとえ1回しか血便をしなかったとしても早急に動物病院を受診しましょう。
・嘔吐や発熱の症状がある
・元気がなく、ぐったりとしている
・食欲が落ちている・ご飯を食べない
また、血便を見つける前の数日で、変わった食べ物や異物を食べた可能性がある場合も要注意です。すぐに動物病院へ行き、与えた時間、ものや量などを伝えて診てもらいましょう。
子犬や老犬は要注意!至急動物病院へ
子犬や老犬は特に体力や抵抗力がないため短時間で症状が進行します。子犬や老犬が血便をしたときにはなるべく早く動物病院へ連れて行き、診察を受けましょう。
犬の血便を引き起こす主な原因
血便を見つけたときに考えられる主な原因を見ていきましょう。
肛門周辺の病気
血便の原因となる肛門周辺の病気では「肛門狭窄」「会陰ヘルニア」「直腸脱」などが挙げられます。また、便が硬めの場合は、人でいう「痔」になっているケースも。肛門周囲で出血がある場合は、便のまわりに赤い血が付着します。
直腸の悪性腫瘍(ガン)
大腸ポリープがガン化することなどにより発症します。赤い鮮血が混じった便が出るため、比較的早期に発見しやすいです。下痢や嘔吐などの症状も同時に起こる場合が多いので、すぐに動物病院を受診しましょう。出血の量が多いと貧血を起こすことがあります。
大腸炎
大腸の粘膜が炎症を起こし、下痢や軟便、ゼリー状の粘液が便に付着するなどの症状が見られます。炎症が進んで潰瘍ができると血液が混ざり、赤色の血便になることもあります。排便回数が増え、便が出ないのに何度もトイレに行くといった症状も見られます。
誤飲・誤食
犬が異物を飲み込んでしまった場合、その異物が消化管の粘膜を傷つけたり、異物が刺激となって炎症を起こしたりすることで出血し、血便が見られることがあります。出血を起こしている場所により、黒い血便になる場合と赤い血便になる場合があります。
中毒症状
玉ねぎや長ねぎなどを口にした場合、量によっては中毒症状を起こし、血便や血尿、下痢、嘔吐、けいれんなどの症状が見られます。場合によっては死に至るケースもあるので、玉ねぎや長ねぎなどのねぎ類は犬に与えてはいけない食材です。食べたとわかった時点ですぐに病院を受診してください。
ウイルス感染
水様性の血便とともに嘔吐の症状があるときは、パルボウイルスなどの感染症にかかっている危険性があります。パルボウイルス感染症は子犬に多く見られ、“トマトジュース様”と表現される、赤い下痢が見られます。死に至る危険な病気ですので、至急動物病院を受診してください。
ストレス
ストレスが原因で血便や下痢などの症状が出ることもあります。この場合、便の量が少なくなる、便の頻度が増える、便の周囲にゼリー状の粘液が付着しているなどの変化が見られることもあります。
胃十二指腸潰瘍
胃や十二指腸に潰瘍ができると、黒い血便が出ます。これに加えて嘔吐や下痢、腹痛、食欲不振、元気消失などの症状が見られます。
犬の血便の検査・治療法と自宅での注意点
犬が血便になり動物病院を受診すると、以下のような検査や治療を行うことがあります。
血便の症状があるときの検査方法
まずは、問題となる便の検査を行います。さらに症状や状態に応じて、血液検査やレントゲン検査、エコー検査なども追加で行う場合もあります。
血便の治療法
血便の原因に基づいて治療を行います。例えば、原因が寄生虫であれば駆虫薬などで治療し、細菌やウイルス感染であれば抗生物質などを使って治療します。ストレスが原因なら、整腸剤や腸の炎症を抑える薬などを使用することもあるでしょう。
犬の体力が落ちているときは、点滴をして回復を図るなどの治療が必要です。症状が重い場合は、入院が必要になります。
自宅での注意点
獣医師の指示に従って食事や薬を与えましょう。血便の症状が見られなくなったからと、飼い主さんの判断で薬をやめるのはよくありません。また、犬が快適に過ごせるように空調管理を徹底し、元気があって運動に制限がない場合は、ストレスをためないように散歩に連れて行ってあげてもいいでしょう。
犬の血便の予防としてできること
バランスのよい食事とストレスフリーな生活を心がける
血便を予防するためにも、栄養バランスに優れた総合栄養食のドッグフードと新鮮な水を与えて、免疫力を高めましょう。水分不足は便が硬くなる原因でもあるので、飲みたいときに水が飲める環境を作っておきましょう。また、ストレスをためないように、散歩や遊びの時間を毎日とってあげることも大切です。
動物病院で定期健診を受ける
動物病院での定期健診は、血便を引き起こす病気以外にも、さまざまな病気の早期発見につながります。成犬は年に1回、シニア犬は半年に1回を目安に定期健診を受けるようにし、予防接種やノミ・ダニ、フィラリアの予防も定期的に行いましょう。
便は健康のバロメーターです。病気が進行する前に、便の状態から変化に気が付くこともできます。日頃から愛犬の便の状態を観察するようにしておきましょう。
参考・写真/「いぬのきもち」2017年6月号『危険な固さ・色がわかる2大スケールつき 愛犬のウンチで健康チェック!』
参考/「いぬのきもち」2016年11月号『食べ物の通り道をたどれば、内臓の病気がよくわかる 犬のウンチ・オシッコができるまで』
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/Yoko N
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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