犬と暮らす
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【獣医師監修】犬が玉ねぎを食べてしまったときの症状と対処方法
犬に玉ねぎを与えてはいけません。ほんの少し食べたり舐めたりしただけでも「玉ねぎ中毒」になる可能性があり、最悪の場合は死に至ることも。致死量は犬の体重1 Kgに対して約20g以上といわれていますが、じつは体重に対する量より、犬それぞれが待つ遺伝子に関係しているという報告もなされています。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬は玉ねぎを食べてはいけない。命の危険あり
とくに気をつけたいのが、ハンバーグやスープ、パスタなど玉ねぎが使われている料理です。玉ねぎは、加熱・加工しても、犬の体に害を及ぼす成分は変わらずそのまま残っています。愛犬にじっと見つめられると、食卓から少しお裾分けしてあげたくなるかもしれませんが、料理に紛れている玉ねぎがうっかり愛犬の口に入ったらたいへんです。目を離した隙に愛犬が食卓の料理を舐めたりしないよう気をつけましょう。また、玉ねぎを保管する際は、犬の目に入らない場所に置くようにしてください。
犬が玉ねぎを食べたときに見られる症状|「玉ねぎ中毒」で下痢、嘔吐、血尿、発熱、呼吸困難など
中毒が考えられる症状
- 元気がなくなる
- 下痢、嘔吐をする
- 血尿が出る
- 発熱する
- ふらついて歩けなくなる
- 歯茎や目の結膜が白くなる(貧血)
- 粘膜が黄色く見える(黄疸が出る)
- 脈が弱くなる
- 呼吸や脈が速くなる
- 呼吸困難になる
- 血便が出る
- 吐血する
- 意識がなくなる(ショック症状)
症状が出るまでの時間
犬が玉ねぎを食べてしまった場合の対処方法
受診前の注意点と受診時に要しておきたいもの、病院での治療方法について紹介します。
すぐに病院へ。自己流で吐かせるのは危険!
インターネット上などで、オキシドールや塩水を使って吐かせる方法が紹介されていることがありますが、絶対にやってはいけません。オキシドールは、胃の粘膜がただれて激しい炎症を起こす可能性もあり、オキシドールを使った催吐処置は動物病院でも注意深く実施される手技なのです。
また、塩水を使う方法も、犬が嘔吐するほど濃い濃度の塩水を飲ませること自体、犬の体、とくに腎臓に害を及ぼす危険性があります。
いずれにしても、飲み込んだものを吐き出させる「催吐処置」は医療行為なので、自己流の対処は禁物。すぐに病院に連れて行ってください。
とくに多くの量を食べてしまったことが明らかであったり、すでに何らかの症状が出ている場合には、時間が経つとさらに悪化する可能性があります。自然治癒は見込めないため、速やかに病院を受診してください。
受診する際には、「いつ食べたか」「どのくらい何を食べたのか(推量で可)」「食べてから運動をしたか」「水を飲んだか」「どんな症状が見られたか」などをメモして獣医師に見せると、よりスムーズに診察・治療が進むでしょう。
病院での治療方法
◆中毒症状の原因物質を取り除く
食べてからあまり時間が経っていない場合は、催吐処置で食べたものを吐き出させます。
食べてから約2〜4時間以内で緊急性が高い場合は、胃洗浄が行われます。また、活性炭などの吸着剤や下剤を使って毒物の除去を図ることもあります。
◆赤血球やヘモグロビンの酸化を抑える
中毒症状が見られる場合は、抗酸化剤やステロイド剤を用いて、赤血球の破壊を食い止めます。
◆症状に応じた対症療法を行う
重度の貧血があれば、輸血を行う場合があります。また、腎臓がダメージを受けている場合や、その他の症状に対して、点滴やビタミン剤の投与を行い、体力の回復を図ります。
犬は玉ねぎを食べてはいけない理由|玉ねぎに含まれる成分が貧血や急性腎不全を引き起こす
玉ねぎに含まれる「有機チオ硫酸化合物」が中毒の原因
有機チオ硫酸化合物には、赤血球や赤血球の中にあるヘモグロビンを酸化する作用があります。ヘモグロビンは、赤血球の中にあるタンパク質で、体全体に酸素を運ぶ役割を担っていますが、酸化すると「メトヘモグロビン」という物資に変化し、酸素を運ぶ働きを失ってしまうのです。
そして、このメトヘモグロビンが増えると、赤血球が「ハインツ小体」という物質を形成し、「還元型グルタチオン」と反応して赤血球を破壊します。こうしたメカニズムによって貧血(ハインツ小体性溶血性貧血)や血尿が起こり、さらには急性腎不全を引き越し、命を落とす事態を招くこともあります。
辛味成分「硫化アリル」が変化した「アリシン」は貧血や胃の不調の原因に
さらにこのアリシンは、体内で分解されると「二流化アリル(ジアリルジスルフィド)」を生成。犬は二流化アリルを消化する酵素を持っていないため、二流化アリルが作用して赤血球が破壊されてしまい、貧血を起こすことがあるのです。また、アリシンには強い殺菌作用があるため、胃壁を傷つけたり腸内細菌を死滅させたりしてしまう恐れもあり、注意が必要です。
部位別のリスク
◆玉ねぎの実
前述のとおり、中毒の原因となる有機チオ硫酸化合物や硫化アリルを含んでいるので、犬に与えてはいけません。
◆玉ねぎの皮
玉ねぎの外皮自体には中毒を引き起こす原因物質は含まれていませんが、犬が丸ごとかじったら危険です。玉ねぎの保管場所には注意しましょう。
◆玉ねぎの葉
市販されている玉ねぎに葉の部分がついていることはまずないですが、「葉玉ねぎ」というものを見かけることもあるでしょう。これは、玉ねぎの根の部分が膨らむ前に収穫したもので、玉ねぎと同様の成分が含まれているので、犬に与えてはいけません。
状態別のリスク
◆生の玉ねぎ
有機チオ硫酸化合物や硫化アリルなどの中毒物質が含まれているので、犬に与えてはいけません。また、玉ねぎは切ったりすり潰したりして空気に触れると、硫化アリルがアリシンに変化し、犬の体に有害な成分となります。
◆加熱した玉ねぎ
有機チオ硫酸化合物やアリシンは、加熱してもなくなることはありません。茹でる、炒める、蒸すなどしても、犬に有害な成分は残ったままなので、加熱しても与えてはいけません。ハンバーグやスープ、トマトソースなど、見た目に玉ねぎが入っていることがわからなくても、中に含まれている場合があるので、人用に調理された食品を犬に与えるのは避けましょう。
◆玉ねぎの匂い
玉ねぎを刻んだり潰したりすると、空気中に「syn―プロパン血アールーS―オキシド」という目にしみる成分が放出されます。この匂いを嗅ぐだけで、犬が不調をきたすことがあるので注意が必要です。また、玉ねぎの匂いは、調理したあとにさっと洗ったくらいではなかなか落ちません。匂いが残っているということは、つまり玉ねぎの成分が手についたままであるということなので、その手を愛犬が舐めたら危険です。玉ねぎを調理したしたあとは、しっかり洗い流すように気をつけましょう。
日本犬は玉ねぎ中毒になりやすいってホント?
その理由として考えられているのが、日本犬が遺伝的に赤血球内に多く「グルタチオン」を多く持っていることです。グルタチオンは、有機チオ硫酸化合物に反応して酸化に弱い性質があります。言い換えれば、グルタチオンを多く持っている犬ほど、有機チオ硫酸化合物による酸化の影響を受けやすく、中毒症状が起こりやすいのです。
危険な量の目安
犬が玉ねぎ(可食部)を誤飲した場合の危険目安量を提示している情報もありますが、個体差があるため、ほんの少しでも致死量になることがあります。微量でも与えないようにしてください。
犬の玉ねぎ誤飲を防ぐ方法
おいしい料理を愛犬にお裾分けしたくなることもあるかもしれませんが、玉ねぎが愛犬の健康を害するリスクの高い食材であることを十分に理解し、玉ねぎそのものはもちろん、玉ねぎが入っている料理も、愛犬の目にふれないよう細心の注意を払いましょう。
調理後は玉ねぎの切れ端が床に落ちていないか、また普段犬の手の届くところに玉ねぎを置いていないか、よく確認してください。
犬に玉ねぎはNG! ネギの仲間はすべて中毒の危険性あり
長ねぎ、あさつき、わけぎ、ニラ、ニンニク、らっきょうなどは、玉ねぎと同じ「ネギ科」の野菜です。これらにも玉ねぎと同じ中毒症状を引き起こす物質を含んでいるので、玉ねぎ同様、犬に食べさせてはいけません。
しかし、ニンニク(ガーリック)を使ったドッグフードやサプリメントはたくさん市販されています。これは、日本のドッグフードの基準にもなっている「アメリカ飼料検査官協会(AAFCO)」が、適量のニンニクであれば中毒症状である溶血性貧血を起こすことはなく、ニンニクの持つ消化促進効能などが犬の健康に役立つという見解を示しているからです。
ただし、ニンニクを食べさせてよい適量の明確な基準はないので、愛犬の健康を第一に考えるなら「ネギ類はすべて与えない」と覚えておくほうがよいでしょう。
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのいぬのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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