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【獣医師監修】犬にスイカを与えても大丈夫。スイカを食べるメリットと与え方を解説
スイカは、犬に与えてもよいフルーツのひとつです。多くのフルーツは糖分が多くカロリーが高いため、犬に与えるには注意が必要ですが、スイカは約90%が水分。 ビタミンやミネラルなどもたっぷり含まれています。愛犬の夏バテ防止や健康維持に役立つスイカの栄養と与え方を紹介します。

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬は適量ならスイカを食べても大丈夫
スイカには、疲労回復や利尿効果があるといわれるカリウムが豊富に含まれているので、寒冷地原産のハスキーなどや、毛が密であるワンちゃん、またパグ、フレンチブルドッグなど短い鼻の犬種(短頭種;たんとうしゅ)のように
暑さに弱い犬種には、夏バテ防止の効果が期待できます。
ほかの多くのフルーツは、糖分が高く、カロリーも高めですが、スイカはほぼ9割が水分。ほかのフルーツに比べると糖分もカロリーも低めなので、あまり肥満や糖尿病の心配をしないでおやつに取り入れることができるでしょう。
さらに、カリウムのほかにもリコピンやビタミンC 、βカロテンなど抗酸化作用のある栄養素が豊富に含まれているので、適量を与えれば愛犬の健康維持の強い味方になってくれます。
スイカのおもな栄養素|ほぼ90%が水分、ビタミン・ミネラルも豊富
スイカに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー | 41kal |
---|---|
水分 | 89.6g |
タンパク質 | 0.6g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 9.5g |
灰分(無機質) | 0.2g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬がスイカを食べるメリット|熱中症対策と夏バテ防止、健康維持
スイカに含まれている成分のなかから、犬の健康を維持するために役立つものをピックアップして紹介します。
水分|約90%が水分、水分補給で熱中症予防
スイカは約90%が水分でできています。
夏の暑さが厳しくなると、犬も人間同様に夏バテして、水分補給すらまともにできなくなることがあります。そんなときにおすすめなのが、スイカです。水を飲みたがらない犬に、小さく切ったスイカを与えてみてください。ほんのり甘味のあるスイカなら、犬が興味を示して食べてくれるかもしれません。少しずつ食べながら水分と栄養補給を同時に行うことができます。
リコピン|抗酸化作用で病気予防と老化防止
植物の赤い色のもとになっているのが、リコピンという天然カロテノイド色素です。
リコピンが多い野菜としてはトマトがよく知られていますが、じつはスイカにはトマトの約1.5倍のリコピンが含まれています(可食部分の同重量比較)。
リコピンには強い抗酸化作用が期待されているので、愛犬の健康維持とアンチエイジングに役立つと考えられます。
ビタミンC|強い抗酸化作用でアンチエイジング、関節炎などの予防も
リコピンと同様に、病気や老化の要因になると考えられる活性酸素を強力な抗酸化作用で取り除く働きをするのが、ビタミンC(アスコルビン酸)です。ビタミンCには、ほかにも鉄分の吸収促進や、解毒やホルモン代謝を担う酵素のサポート、コラーゲン合成への関与など、さまざまな働きがあります。愛犬を病気から守るだけでなく、若さを維持し、関節炎を予防するのに役立つ重要な栄養素といえるでしょう。
なお、犬は体内でビタミンCを合成することができるため、長く「犬にビタミン摂取は不要」と考えられてきました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかってきました。5歳を過ぎる頃からビタミンCの合成能力が衰え始めるとも考えられるので、食べ物やサプリメントからビタミンCの補給を図るとよいかもしれません。
シトルリン|血流の促進とむくみ予防
シトルリンは、1930年に日本でスイカから発見されたアミノ酸の一種。スイカ以外のフルーツにはあまり見られない成分です。シトルリンには、血管を拡張させて血流を促す作用があるので、血液循環の改善や動脈硬化の予防、むくみの改善および予防の効果が期待できると考えられます。
カリウム|高血圧の予防、ただし腎臓病には注意
カリウムには、体液の浸透圧を調整する作用があり、体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧が高くなるのを防ぐ役割を担っています。また、神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっていて、健康な体の維持にはなくてはならない大事なミネラルのひとつです。
ただし、腎臓病がある場合にはカリウムの摂取には注意が必要です。腎臓の機能が低下すると尿へのカリウムの排出が減って、血液中のカリウム濃度が高まる「高カリウム血症」となるからです。「高カリウム血症」になると、四肢のしびれや筋力の低下、不整脈などを引き起こす危険があるので、腎臓病や心臓病がある場合は注意が必要です。
ナトリウムやカリウムなど電解質への影響は、健康だから大丈夫!とは言い切れないことも多いです。とくに高齢の場合は、定期的に血液検査などで体の状態をチェックしてください。
マグネシウム|心臓の働きには不可欠、ただし尿路結石には注意
マグネシウムは、神経の伝達や筋肉の収縮に必要な成分で、心臓の正常な働きになくてはならないものです。また、丈夫な歯や骨を維持するのに欠かせない栄養素でもあります。
ただし、マグネシウムを多量に摂取すると「ストルバイト結石」を形成しやすくなるといわれています。尿路結石の既往がある犬には、マグネシウムを多く含む食べ物には注意が必要です。
βカロテン|健康な皮膚や被毛、粘膜、歯を維持
βカロテンは、犬の体内で必要な分だけのビタミンAに変換され、愛犬の健康維持に役立ってくれるものです。
ビタミンAには、おもに皮膚や被毛の健康状態を保ち、丈夫な粘膜や歯をつくる働きがあります。人の場合は、さらに夜間の視力の維持を助けるといわれていますが、犬の場合も同じかどうかはわかっていません。
さらに、βカロテンはビタミンAとして働くだけではなく、それ自体が持つ抗酸化作用で、有害な活性酸素を除去して老化を防ぐ効果も期待されます。
犬にスイカを与えるときの注意ポイント|消化の悪い皮や種は除き、小さく切って与えよう
どんなに体によい食べ物でも、与えてよい適量があります。過剰摂取はかえって体調を崩す原因にもなりますので、適量を守って与えることが大事です。犬にスイカをあげるときの適量と、おすすめの与え方を紹介します。
与えてよい部位
スイカの皮や種は固くて消化が悪いものです。犬に与えるのは、赤い部分だけにしましょう。
与えるときの適量
犬にスイカを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの接種可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 46g~91g(3cm角1.5個~3cm角2.5個) |
中型(6~15kg) | 105g~208g(3cm角3個~3cm角6個) |
大型(20~50kg) | 258g~514g(3cm角7個~3cm角14個) |
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
調理方法
皮と種を除き、赤い果実の部分だけを小さくカットして与えましょう。とくにすり潰したりする必要はありません。
ウリ科のアレルギーがある犬には与えない
スイカは、メロンやきゅうりなどと同じウリ科の植物です。前にそうしたウリ科の野菜や果物を食べてアレルギー症状が見られた犬には、スイカは与えないでください。
アレルギーの症状としては、アレルギー性皮膚炎(体を痒がる、皮膚が赤くなるなど)や嘔吐、下痢などがあります。
とくにコッカー・スパニエルやスプリンガー・スパニエル、ボクサー、コリー、ダルメシアンなどの犬種に、ウリ科の食物アレルギーが出やすいという報告があります。それらの犬種の飼い主さんは、とくに注意をしましょう。
タンパク質が食物アレルギー症状を引き起こすことも
スイカにはタンパク質が含まれています。このタンパク質に犬の免疫機能が過剰に反応すると、稀にアレルギーを起こすことも考えられます。ウリ科の食物アレルギーがない犬でも、ほかに何らかの食物アレルギーがある場合は、スイカを与える際は注意が必要です。
スイカは適量なら熱中症予防や夏バテ防止に役立つ
水分が多く、低糖&低カロリー、ビタミンやミネラルが豊富なスイカは、適量を守れば愛犬の健康維持に役立つフルーツです。腎臓病や尿路結石の心配がない犬なら、夏のおやつに取り入れてみるのもよいでしょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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