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【獣医師監修】犬ににんにくは絶対にNG。食べてしまったときの症状と対処方法

人にとってはパワーの源といったイメージのある「にんにく」ですが、犬には与えてはいけない食べ物です。なぜなら、にんにくは玉ねぎやニラなどと同じネギ科の植物。犬が中毒になる成分が含まれているからです。犬がにんにくを誤食したときに見られる症状と対処法を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬はにんにくを食べてはいけない。命の危険あり

たくさんのニンニク
Wako Megumi/gettyimages
疲労回復や強壮効果があるスタミナ食として知られている「にんにく」。愛犬にもニンニクを与えて、パワーチャージさせたいという飼い主もいるようです。インターネット上では「与えて大丈夫」「与えてはいけない」と賛否両論の情報が散見されますが、正しい答えは「犬には、にんにくを与えてはいけない」です。

なぜなら、にんにくは「ネギ科」の植物だから。
ネギ科の植物には、「有機チオ硫酸化合物」という重篤な中毒症状を引き起こす原因物質が含まれているからです。ですから、犬にはネギ科の野菜であるにんにくはもちろんのこと、長ねぎ、玉ねぎ、わけぎ、ニラなどネギ科の野菜全般を与えてはいけません。

犬がにんにくを食べたときに見られる症状|中毒により貧血や急性腎不全を起こすことがあり危険

緑色のダウンベストを着てソファの上に腹這いになり、カメラをじっと見つめる茶色いミニチュア・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬がにんにくを食べると、どのような症状が現れるのか確認しておきましょう。

中毒(アレルギー)が考えられる症状

犬がニンニクを食べて中毒になると貧血を起こし、以下のようにいろいろな症状が見られるようになります。


  • 元気がなくなる

  • 下痢、嘔吐をする

  • 食欲がなくなる

  • 血尿が出る

  • 発熱する

  • ふらついて歩けなくなる

  • 歯茎や目の結膜が白くなる(貧血)

  • 黄疸が出る

  • 脈が弱くなる

  • 呼吸や脈が速くなる

  • 呼吸困難になる

  • 血便が出る

  • 吐血する

  • 意識がなくなる(ショック症状)

症状が出るまでの時間

犬がにんにくを食べてから中毒の症状が現れるまでの時間は、個体差があるので一概には言い切れず、早いと食後30〜60分程度で、遅い場合では食後1〜3日ほど経ってから症状が出る場合もあります。

犬がにんにくを食べてしまった場合の対処方法

黄色いボール状のおもちゃをくわえて、自慢げにカメラを見つめるポメラニアン
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
愛犬がにんにくを誤飲してしまった場合は、量の多少や症状の有無に関わらず、早急に動物病院に連れて行ってください。
受診前の注意点と受診時に要しておきたいもの、病院での治療方法について紹介します。

すぐに病院へ。自己流で吐かせるのは危険!

愛犬がにんにくを食べてしまったときに、飼い主が無理矢理に吐き出させようとするのはたいへん危険です。
インターネット上などで、オキシドールや塩水を使って吐かせる方法が紹介されていることがありますが、絶対にやってはいけません。オキシドールは、胃の粘膜がただれて激しい炎症を起こす可能性もあり、オキシドールを使った催吐処置は動物病院でもほとんど推奨されていません。
また、塩水を使う方法も、犬が嘔吐するほど濃い濃度の塩水を飲ませること自体、犬の体、とくに腎臓に害を及ぼす危険性があります。
いずれにしても、飲み込んだものを吐き出させる「催吐処置」は医療行為なので、自己流の対処は禁物。すぐに病院に連れて行ってください。

すでに何らかの症状が出ている場合には、時間が経つとさらに悪化する可能性があります。自然治癒は見込めないため、速やかに病院を受診してください。

受診する際には、「いつ食べたか」「どのくらい何を食べたのか(推量で可)」「食べてから運動をしたか」「水を飲んだか」「どんな症状が見られたか」などをメモして獣医師に見せると、よりスムーズに診察・治療が進むでしょう。

病院での治療方法

残念ながら、にんにくを食べてしまった場合の解毒剤や治療法はありません。病院で行われるのは、おもに以下の対症療法になります。

◆中毒症状の原因物質を取り除く
食べてからあまり時間が経っていない場合は、催吐処置で食べたものを吐き出させます。
食べてから約2〜4時間以内で緊急性が高い場合は、全身麻酔のもとで胃洗浄が行われます。また、活性炭などの吸着剤や下剤を使って毒物の除去を図ることもあります。

◆赤血球やヘモグロビンの酸化を抑える
中毒症状がある場合は、抗酸化剤やステロイド剤を用いて、赤血球の破壊を食い止めます。

◆症状に応じた対症療法を行う
重度の貧血がある場合は、輸血を行うことも。また、腎臓のダメージやその他の症状によっては、点滴やビタミン剤の投与を行い、体力の回復を図るケースもあります。

犬がにんにくを食べてはいけない理由|有害成分が貧血や急性腎不全を引き起こす

ピンク色のおもちゃ(?)を口の中いっぱいに入れて、カメラを見つめる黒いフレンチ・ブルドッグ顔のアップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
にんにくが犬にとって危険な理由を、しっかり確認しておきましょう。

にんにくに含まれる「有機チオ硫酸化合物」が中毒の原因

にんにくには硫黄の一種である「有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)」が含まれています。この有機チオ硫酸化合物が血球に影響を及ぼし、貧血を起こした状態がいわゆる「玉ねぎ中毒」です。

有機チオ硫酸化合物には、赤血球や赤血球の中にあるヘモグロビンを酸化する作用があります。ヘモグロビンは、赤血球の中にあるタンパク質で、体全体に酸素を運ぶ役割を担っていますが、酸化すると「メトヘモグロビン」という物資に変化し、酸素を運ぶ働きを失ってしまうのです。また、これにより脆弱(ぜいじゃく)となった赤血球は壊れやすくなり、溶血性貧血、血尿そして急性腎不全を引き起こし、命を落とす事態を招くこともあるのです。

辛味成分「硫化アリル」が変化した「アリシン」は貧血や胃の不調の原因に

にんにくを切ったりすり潰したりすると、辛味成分「硫化アリル」が空気に触れて「アリシン」という物資に変化します。

さらにこのアリシンは、犬の体内で分解され「二流化アリル(ジアリルジスルフィド)」になるのですが、犬は二流化アリルを消化する酵素を持っていないため、二流化アリルが赤血球に障害を与え、貧血を起こすことがあります。また、アリシンには強い殺菌作用があるため、胃壁を傷つけたり腸内細菌を死滅させたりしてしまう恐れもあります。

部位別のリスク

先述したとおり、実には中毒を引き起こす物質が含まれているため与えてはいけません。皮自体には中毒物質は含まれていませんが、皮に実の成分が付着することもあるので皮も与えないようにしましょう。

状態別のリスク

にんにくに含まれるチオ硫酸化合物は、熱を加えても分解されません。にんにくよりはるかに多くのチオ硫酸化合物を含む玉ねぎや長ねぎの場合は、すき焼きや煮物の残り汁を犬が口にしただけで、中毒になる場合があるほど有毒です。

危険な量の目安

犬がにんにくを食べてしまった場合の危険目安量(致死量)を提示している情報もありますが、明確な危険目安量は明らかになっていません。個体差があるため、ほんの少しでも致死量になることがあります。微量でも与えないでください。

犬のにんにく誤飲を防ぐ方法

レースのカーテンが閉まった窓の前、毛足の長いベージュのクッションの上に乗って、顎をあげて横を向いているチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の「玉ねぎ中毒」の原因の多くは、飼い主が目を離した隙の盗食です。犬は匂いに敏感なので、目にしみるような匂いのものを好んで食べることはほとんどありませんが、人間用に調理された料理や飼い主が食べているものには興味を示すことがあります。

とくに、にんにくは餃子や鍋物、煮物、トマトソースなど調理された食べ物のなかに入っていることが多いでしょう。そのため、犬が食卓に載っている料理を舐めたり、食べたりしてしまうことも十分に考えられます。にんにくを取り除いたとしても、煮汁のなかにはにんにくのエキスが滲み出ているので、犬の体に害を及ぼす危険性が高いといえます。

おいしい料理を愛犬にお裾分けしたくなることもあるかもしれませんが、にんにくが愛犬の健康を害するリスクの高い食材であることを十分に理解し、にんにくが入っている料理が愛犬の目に触れないよう細心の注意を払いましょう。

また、調理後はにんにくの皮や切れ端が床に落ちていないかよく注意し、にんにくの保管も犬の目に触れない場所にしましょう。

にんにくは犬にとって危険。「玉ねぎ中毒」の原因になるので与えないで!

にんにくを犬にとって危険な食べ物として紹介てきましたが、じつは、にんにく(ガーリック)を使ったドッグフードやサプリメントはたくさん市販されています。これは、日本のドッグフードの基準にもなっている「アメリカ飼料検査官協会(AAFCO)」が、適量のにんにくであれば中毒症状である溶血性貧血を起こすことはなく、にんにくの消化促進効能などが犬の健康に役立つという見解を示しているからです。

人がにんにくを食べたときに得られるメリットを犬の場合でも期待したいところですが、犬に与えてよい明確な適量基準はなく、中毒のリスクを考えると、にんにくを含む「ネギ類はすべて与えない」と覚えておくほうがよいでしょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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