犬と暮らす
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犬を人と同じように扱うリスクとは? 大切に思う気持ちでも、愛犬を苦しめる結果に?
この記事では、犬のことを人のように扱ってしまうリスクについて、いぬのきもち獣医師相談室の先生が解説します。
犬を人のように扱うことのリスクとは?
「よく見られる犬を人のように扱うことの具体例としては……
- 犬優先の生活を送る
- 人の食べているものを与えて、一緒に食事をする
- 愛犬が欲しがるままに食べ物を与えて、結果的に栄養バランスを考えていない
- 物理的にも精神的にも、人と犬が密着しすぎている
「まず、人と同じ食べ物を与えることについてですが、犬には与えてはいけない食べ物があります。一緒に食事をしていて、『少しならいいよね』と与えてしまった飼い主さんが実際にいました。
私が見た例でいうと、人と同じように手作りの食事がいいと信じて与え、栄養バランスが悪くなった犬がいました。ほかにも、人には問題のないものの、犬には中毒を起こすとされているチョコレートやブドウをおやつとして与えられていた犬がいましたね」
「そうですね。私が見た飼い主さんには早めに気づいてやめるよう伝えたので、運よく犬には影響がありませんでした。
また、人の食べ物がよくないこととして、犬にとっては味が濃すぎるため塩分や糖分、脂肪の摂りすぎになります。濃い味に慣れてしまうとフードが味気なく感じられ、食べることを嫌がることも。そうなると、飼い主さんも愛犬が食べる人の食事を与えることになってしまう場合もあります。
おやつにも同じことがいえますが、犬としての食事をきちんとさせないと、病気になるリスクが高くなります」
「人と密着しすぎた生活を送っていると、犬が分離不安になってしまう恐れがあります。なにか問題行動を起こすようになってから、初めて愛犬が分離不安だと気づく飼い主さんもいます。
また、人と同じように扱っていると、犬は自分のことを『人間たちの中の一員』だと考え、犬同士のかかわりができないコになってしまいます。社会性の乏しい犬になるリスクが高くなるといえるでしょう」
犬にとっての幸せを考えよう
「愛犬を人のように大切に思う気持ちは理解できますが、その行為が人の幸せなのか、犬の幸せなのかを考える必要があります。『責任をもって犬を大切に飼うこと』と『人と同じように扱って飼うこと』は、大事にする思いは同じであっても、じつはまったく別の結果になってしまいます。
人と同等に扱いすぎてしまうと、『愛犬を人のように扱う=人と同じことができる、人の常識が通じるのが当然』という認識になってしまう飼い主さんもいるので、気をつけたいですね」
「たとえば、愛犬がトイレで排泄できないことを、『いつまでもトイレを覚えられない(=トイレを覚えるのは当然)』という思考になってしまいます。しかし、犬の生態として考えてみると、自然界では毎回同じ場所でトイレはしません」
「そうですね。そのほかにも、重心が前足にある犬を立ち上がらせて、不安定な後ろの二本足で歩かせている人を見かけることもあります。
飼い主さんが喜ぶ姿を見たり、二本足で歩いたときにご褒美をもらえたりすることで、犬がその行為を覚えるようになりますが、犬にとって好ましい行動ではありません」
「犬は人と同じ生き物ではないので、人のような行為を求めることは愛犬から犬らしさを奪い苦しめることもあります。人の子のように大切な存在ではあるけれど、人と犬は生態も解剖学的にも知能もまったく違う生き物であることを理解しましょう。
犬という動物としての健康面や精神面をきちんと人が管理してあげないと、犬が犬として生きていく楽しみや経験を奪ってしまうことになります。愛犬は犬らしく、人は人らしい生活を送ることが、お互いを思いやり、幸せにつながるのではないでしょうか」
犬種や年代によっても、犬との接し方に注意点はある?
「一般的に、日本犬は独立心が強く、あまりベタベタしないコが多いとされています。一方で、洋犬の小型犬はわりと飼い主さんと遊ぶのが好きなコが多いような気がします。
犬種もですが個体差もありますので、愛犬の性格からスキンシップが好きかどうかを見極めて、距離感を保てばいいと思います」
「子犬や成犬はスキンシップの好きなコも苦手なコもそれぞれいますが、シニアになると心身の衰えから心細さや不安が顕著になってきて、飼い主さんとのスキンシップやそばにいてもらうことを望むコが多いようです。
そのため、子犬からシニアまでずっと同じ距離感ということではありません。病気や体調、年齢で距離感は変化するので、愛犬の様子を見ながらスキンシップをとったり、遊んだり、お互い少し離れたりするようにしてあげてくださいね」
※写真は「いぬ・ねこのきもちアプリ」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
取材・文/sorami
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