犬と暮らす
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日本での犬の飼い方が「欧米スタイル」へ変化したワケ|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.69
バブル期に、ゴールデン・レトリーバーが流行ったのを覚えていますか? 犬の飼い方が外飼いから室内に変わったのも、この頃からです。当時、犬のしつけ方にも大きな変化が起こっていました。その渦中にいて一部始終を見てきた西川先生が、その当時の変化を伝えます(編集部)
これ、1999年、私が家庭犬のためのしつけ方教室を開校した当時の、教室のキーワードです。
リビングで一緒に生活し、お出かけにも旅行にも一緒に連れて行くという欧米スタイルの犬の飼い方へと、日本の犬の飼い方は当時大きく変わり始めていた。
でも、そのキーワードは2000年代半ば以降、「科学的理論に基づいた犬のトレーニング」にスイッチすることとなります。
なぜ、キーワードを変えていくことになったのか。
それは、犬のしつけトレーニングにおける根本的な考え方に、変化があったからです。
今回はそんな話を。
日本には存在しなかったコンパニオン・ドッグ
作業犬および猟犬を除くと、そのいずれかしか存在しなかった日本の犬に、家の中を自由に過ごさせ飼い主のお出かけにも旅行にもどこにでも連れていく犬、すなわちコンパニオン・ドッグという新しい飼い方が仲間入りしてきたのは1990年代初頭、バブル経済の末期のこと。
バブル期は生活のあらゆるシーンが欧米化されていき、犬の飼い方にも同じことが起きていた。具体的な現象として、ゴールデン・レトリーバーのブームがありました。
当時日本では、大型犬は警察犬訓練所に預けるものでした。90年代初頭のゴールデン・レトリーバーたちも、多くが警察犬訓練所に預けられたわけです。
しかしながら、訓練所から戻ってきても、イメージしていた欧米的な犬との生活は楽しめなかった。
なぜなら、訓練所で学んでくるのは、庭に犬舎を用意され必要なときにガードドッグ(訓練所帰りの番犬)として庭に放たれる、そうした犬に必要なこと。家の中で家族とまったり過ごし、どこにでも連れて行けるような犬に必要なことを、教えられてくるわけではなかったからです。
訓練所に預けてもコンパニオン・ドッグにはならない
飼い主たちの求める犬の姿は変わってきている、しかしながらその求める姿に育てる方法を日本人は知らない。
それを教えられる人材が必要だが、日本にはいない。
いないなら育成しようではないか。
JAHA(日本動物病院協会)の家庭犬しつけインストラクター養成講座がスタートしたのは、1994年のことです。
「欧米スタイル」をキーワードにした理由
ということでJAHAの養成講座がスタートした当時の講師は、アメリカ在住のペットドッグトレーナー、T先生でした。
年に1〜2回、1〜2週間日本に滞在してもらい、滞在中に全国各地で集中的な講義を行ってもらう。
養成講座を修了しインストラターの認定を受けるには年に数回ある講義を、順を追って受け、最短でも3年はかかるという内容でした。私は1994年に受講を開始しましたので、認定まで足掛け5年要したことになります。
コンパニオン・ドッグという欧米スタイルの犬に育てる方法を、アメリカ人に学んだ。だから「欧米スタイルの犬のトレーニング」というキーワードにした。まぁそういうわけです。
その後、欧米スタイル、欧米流というキーワードは「科学的理論に基づいた犬のトレーニング」とスイッチさせていくのですが、さてそのお話は次回に持ち越しへ、ということで……。
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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