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獣医師監修|犬の生理(ヒート)出血期間や注意点、避妊手術との兼ね合いは

メス犬の飼い主さんなら知っておきたい犬の生理(ヒート)。今回は、犬の生理と人の生理との違い、犬の発情周期と行動の変化、生理中の過ごし方、妊娠のリスク回避や避妊手術について解説。また、マナーパンツの種類や選び方、使う際の注意点もご紹介します。

加藤 憲一 先生

 獣医師
 相模原プリモ動物医療センター院長

 日本大学生物資源科学部獣医学科卒業
 麻布大学附属動物病院腫瘍科専科研修医
●資格:獣医師/日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医II種

●所属:日本獣医がん学会

●主な診療科目:一般診療(外科・内科)/腫瘍科/画像診断科

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犬の生理とは:生後いつから始まる?期間は?出血や痛みは?

チワワのミルクちゃん
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

犬の生理(ヒート)とは?

避妊手術をしていないメス犬が成熟すると、子犬を授かれる期間と、そうでない期間を一定の周期(=発情周期)で繰り返すようになります。犬の発情周期は4つの時期に分かれ、そのうち「発情前期」「発情期」「発情後期」を総称して「ヒート」と呼びます。

なお、発情前期~発情期には、発情出血と呼ばれる陰部からの出血が見られるため、「生理」と表現されることもありますが、そのメカニズムは人の生理とは異なるものです。

人の生理と犬の生理の違い

人の生理は約1か月周期で起こり、不要になった子宮内膜を体外へ排出するしくみです。はがれ落ちた子宮内膜を排出する際に子宮が収縮するため、痛み(生理痛)を伴うこともあるでしょう。

一方、犬の生理(ヒート)は約半年~1年に1回という周期で起こります。妊娠に備えて子宮内膜が充血することで出血するため、人のような生理痛はないといわれています。

犬の生理(ヒート)は生後いつから?何才まで続くの?

犬の生理(ヒート)は一般的に生後6~10か月ごろから始まるとされています。ただし、個体差や犬種、季節、飼育環境などの影響を受けるため、生後1年を過ぎてから始まる場合もあるでしょう。

また、犬は高齢になっても生理(ヒート)が完全になくなることはないと考えられていますが、加齢に伴い発情時の体の変化は徐々に小さくなるため、高齢になると、はっきりとした発情の兆候は確認しにくくなります。

こんな症状が見られたら生理(ヒート)のサイン!発情周期と期間中の行動・変化

トイ・プードルのうみちゃん
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
1回のヒート期間は、個体差があるもののおよそ2~3カ月程度。この期間は妊娠に備えて、心と体にさまざまな変化があらわれます
時期期間症状・行動の変化
発情前期約10日間妊娠に備えた体の変化が始まる時期で、以下のような症状が見られます。オス犬を引き付けるフェロモンを出すようになりますが、まだ交尾を受け入れる段階ではありません。
  • 陰部の腫れ
  • 陰部、子宮内膜からの出血
  • 食欲がおちる
  • お尻を気にしてよくなめる
  • ソワソワして落ち着かない
  • オシッコの回数が増える
発情期約10日間発情期に入ってから2~3日で排卵し、その前後5日間くらいが妊娠可能期間です。オス犬を受け入れるようになり、以下のような変化が見られます。
  • 出血量が少なくなる、出血が止まる場合も
  • 前期の症状に加えてふだんよりも興奮気味になる
  • オス犬に積極的に近づく、許容姿勢をとる
発情後期約2か月間排卵された卵子に授精する能力が無くなると、発情期が終了し発情後期(発情休止期)に入ります。陰部の腫れも治まり、じょじょに体が通常の状態へ戻っていきますが、偽妊娠(想像妊娠)を起こす場合もあります。
無発情期約4~8か月間ヒートが終わり、次の発情兆候が見られるまでの期間です。症状はとくにありません。

愛犬に生理(ヒート)が来ないときは

避妊手術などを行わない限りは、発情周期が突然なくなることはまずありません。発情出血は毎回必ず一定量出るわけではありませんので、出血以外に外陰部の腫れなどそのほかの発情兆候もあわせて理解することが大切です。

もし、発情が来るはずの時期に来ていないように見える場合は、動物病院に相談するようにしましょう。なお、近年は犬の小型化が流行し、成長期の過度な栄養制限により、一定の月齢に達しても生理(ヒート)がこないケースもあるようです。

犬の生理(ヒート)中の注意点

ポメラニアンのうさぴーちゃん
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

散歩やお出かけはどうする?

生理(ヒート)中は神経質になりやすく、体調の変化も招きやすいため、長時間や遠距離のお出かけは避けたほうがよいでしょう。また、愛犬の体を守り、周囲に迷惑をかけないためにも、ドッグカフェなどのペット同伴施設の利用は、控えることをおすすめします。
なお、生理(ヒート)中も散歩に行くことは可能ですが、ふだんとは異なる配慮が必要です。

散歩は必要最小限に

生理(ヒート)中のメス犬のニオイはオス犬の関心を強く引くため、脱走や犬同士のトラブルを招く可能性があります。そのため、生理(ヒート)中の散歩はマナーパンツやオムツを着用し、ほかの犬との接触を避け、時間・散歩量ともに必要最小限にとどめて行いましょう。
また、ペットシーツを使用して排泄物を残さない配慮も必要です。

ドッグランはNG!

先述のように、生理(ヒート)中のメス犬のニオイはオス犬を興奮させ、事故や望まない妊娠につながるリスクがあるため、ドッグランの利用はNGです。
以下の記事では、ドッグランでのマナーについて触れていますので、こちらも確認してみてください。

トリミングやペットホテルも避けたほうがベター

トリミングサロンやペットホテルも、ほかの犬への配慮として利用を避けたほうがベターです。やむを得ず利用する必要がある場合は、ほかの犬と接触しない環境の施設を選び、予約する際は生理(ヒート)中であることを伝えましょう。各施設でルールなどを設けている場合もあるので、事前に確認してください。

生理(ヒート)中のお手入れは?

シャンプーをする場合は慎重に

生理(ヒート)中は免疫力が低下し、体調を崩すことも少なくありませんので、シャンプーは体調をよく見て慎重に行ってください。もし、ニオイや陰部の汚れが気になる場合は、部分シャンプーをしてあげるとよいでしょう。

外陰部周辺を清潔に保つために

生理(ヒート)中は発情出血で外陰部周辺が汚れやすくなりますので、お湯で湿らせた清潔なタオルで拭いてあげましょう。ただし、腫れた陰部付近は皮膚が敏感になっているため、強くこするのはNGです。

望まない妊娠を避けるには?

望まない妊娠を避けるには、妊娠する可能性が高い時期にオス犬と接触しないよう、飼い主さんが愛犬の行動をコントロールする必要があります。気を付けるべき時期については、次の章で詳しくご紹介します。また、後述する「避妊手術」を受けることも手段のひとつです。

室内の対策

生理(ヒート)中は出血で室内を汚してしまう可能性があるため、ソファやベッドなど、洗えないものにはカバーをかけてください。また、床などに落ちた血はまめに拭き取るようにしましょう。

出血が多い場合や気になる場合は、皮膚トラブルに注意しながら犬用のマナーパンツやオムツを利用するのもひとつの手です。

犬の生理(ヒート)と妊娠・避妊手術について

柴犬のくるみちゃん
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

発情前期の始まりから発情期の終わりまでは妊娠のリスクがあると思って

一般的に、犬が交配して妊娠しやすい時期(交配適期)は、発情期の5~6日目にあたるとされています。しかし、犬の精子は受精可能期間が比較的長いため、この時期より以前に交配をしても妊娠する可能性があります。

発情期の始まりのタイミングを毎回正確に判断するのは難しいので、愛犬の望まない妊娠を避けるには、気を付けるべき期間をより長めに見積もり、「発情出血が始まってから、発情期が完全に終わる(発情出血がなくなり、外陰部の腫れが徐々になくなり、オスを受け入れるような素振りがなくなる)まで」を目安にするようにしましょう。

避妊手術とは:受けるとどうなる?いつ受けるべき?

避妊手術は、妊娠に関わる器官である卵巣や子宮を摘出する手術です。避妊手術にはメリット・デメリットがありますので、しっかり理解したうえで検討しましょう。

避妊手術のメリット・デメリット

避妊手術は、初めての発情を迎える前に行うと、乳腺腫瘍の発生率が大幅にダウンするといわれています。さらに発情期に起こる情緒不安定や、本能的にオス犬を求めるといった精神的ストレスからも解放されるほか、発情後期に起こりやすい偽妊娠の心配がなくなるといったメリットも。

一方で、避妊手術のデメリットとしては、手術による一時的な体の負担や、肥満になりやすくなる、子犬を授かれないことが挙げられます。

以下の記事では避妊手術について詳しく解説していますので、あわせて参考にしてみてください。

避妊手術を受けるタイミングは?

避妊手術は、若くて体力のあるうちに受けたほうがよいと考えられていますが、年齢を重ねた犬でも健康状態や全身麻酔に対して問題がなければ、避妊手術を受けることは可能です。

なお、避妊手術を受ける場合は、発情周期との兼ね合いにも注意が必要です。避妊手術を予定していたのに生理(ヒート)が来てしまったときは、発情出血が終わってからしばらく期間を空けることがあります。いずれにせよ、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

獣医師に聞くマナーパンツ(サニタリーパンツ)の選び方・使うときの注意点

カニーヘン・ダックスフンドのあずきちゃん
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
マナーパンツ(サニタリーパンツ)は、オス犬にとって強い刺激となる発情出血が外部に漏れるのを防ぐ効果があり、ほかの犬への配慮として生理(ヒート)中には欠かせないアイテムです。また、万が一のときも交尾行為を抑止することができるほか、ほかの飼い主さんへ生理(ヒート)中だということを知らせる手段にもなります。

※先述したとおり、生理(ヒート)中は外出を控え、散歩も最小限にとどめるのが大原則です。「マナーパンツを着用していればいつもどおり生活できる」というわけではありませんので、注意してください。

マナーパンツ(サニタリーパンツ)の種類と選び方

犬用のマナーパンツには、大きく分けて紙製と布製の2種類の素材があります。それぞれに特徴がありますので、愛犬と飼い主さんに合ったものを選んでください。

紙製のマナーパンツ(サニタリーパンツ)

紙製のマナーパンツは汚れたら捨てられるので、洗濯の手間がなく手軽に使うことができます。そのため、忙しい飼い主さんにも、管理が楽な点がメリットといえるでしょう。

ただし、紙製のマナーパンツは使い捨てできるぶん、コストがかさむ傾向が。また、愛犬の体格によっては合うサイズがない場合もあるので注意してください。

選ぶ際は、愛犬の体にきちんとフィットするものを選択するのがポイント。ゆるすぎても、きつすぎても、皮膚が擦れて傷めてしまうことがあります。

布製のマナーパンツ(サニタリーパンツ)

愛犬の肌に合った素材を選べて、繰り返し使用することができるコスパのよさも魅力です。色や柄が豊富なので、選ぶ楽しみもあります。

ただし、使用後は毎回きちんと洗って衛生的に使う必要があるため、管理にやや手間がかかるでしょう。

選ぶ際は、前述の紙製タイプと同様に、愛犬に合うサイズであることが重要です。また、着用時に皮膚のデリケートな部分に当たりやすいので、不衛生にならないよう配慮してください。
愛犬の体に合わせたサイズや飼い主さんの好みで、手作りするのもいいかもしれませんね。

使うときの注意点

皮膚への負担の面から、生理(ヒート)中のマナーパンツは必要なときのみ、短時間着用させるようにしましょう。
犬はもともと皮膚が薄く、蒸れや擦れにより皮膚トラブルを起こしやすいので、自宅など迷惑にならない場所では長時間着せたままにするのは控えてください。

マナーパッドを併用しても

マナーパンツ(サニタリーパンツ)の種類や経血量などに応じて、パンツの中に吸水性の高いマナーパッドをセットして装着する場合もあります。犬用のマナーパッドがない場合は、ペットシーツや人用の生理用ナプキンを折りたたんだもので代用することもできますよ。
生理(ヒート)中は、ふだんとは異なるお世話も必要になってきます。愛犬の心と体の変化を理解して、少しでも快適に生活できるようサポートしてあげてくださいね。
参考/「いぬのきもち」2016年10月号『体の変化や去勢・避妊手術の知識も身につく 男子犬 女子犬 違いを生かす育て方』
監修/加藤憲一先生(相模原プリモ動物医療センター院長)
文/terasato
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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